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『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#きっかけ

R18、入るかもしれません。ので、18才未満立ち入り禁止です。
大丈夫な方だけスクロールしてどうぞ。




















「今日は、男同士・・か・・。」
録音状態を確かめながら呟く。この公園のそばに立つマンションのある一角にマイクを向けるようになってもう3カ月が経っている。
集音マイクを固定してイヤホンをつけ、じっと聞き入った。

☆ ☆ ☆


「おい、智(さとる)、今日は来られるのか?。」
帰ろうとしていた俺は、通りかかった購買の前で呼びとめられ、
「悪い、今日は出かけるんだ。」
片手を立てて断る。声をかけてきたのは近くのベンチに腰をおろしている涼二だ。
「ちぇっ。まあ、いいけどさ。この頃つきあい悪くねえ?」
どきっとした。
「絡むなよ涼二。智だって予定があるんだから。な?」
彼の横にいた和泉が、涼二の首に腕を回して軽く絞めながら智に笑う。
「ごめん。」
「いいって。けど、今度は来られるんだろ?」
「え・と、それっていつだっけ?」
「んーっと、」
言いながら器用に片手でスマホを取り出す。残りはまだ涼二の首だ。
「おい、放せよ。」
その手を外そうとしているが、そのたび指でくすぐられて力が入らないようだ。
「ああ、十五日だ。涼二がやっとお酒飲める年になる、‘お祝い’。」
十五日。
「そうだった。バースデーだったっけ。了解。」
「何?日にち決めて出掛けてるの?」
「まぁそうゆうこと。じゃあな。」


そう、今日は六のつく日だ。最初はわからなくて失敗もしたけど、気付いてからは気分にも余裕が出来たし、準備も出来る。他人には言えない事だけど。

それは、他人の会話をぬすみ聞く行為。
もちろん悪いことだって分かってる。でも、つい聞いちゃったんだ、アノ時のなま声。一遍でハマって抜け出せない。だって、俺も性少年だから。おかずにして抜いたことだってある。恥ずかしいけど。それくらいすごかった。


 最初はほんとに音を拾うため。日記代わりに始めた自己制作の動画に付ける音探し。この公園で夜の音を拾おうと、何気なく集音マイクをぐるっと回した時だった。

―ーあ・・っ・・・ああっ

え?

―ーやあ・・っ、や・やめて・・・・
―ーうそつけ。もうこんなにしてるくせに。
―ーひ・・いっ。・・・いや・・そこはっ
―ー腰を動かしながら言う台詞じゃないぜ。
―ーう・くうっ・・・

「な・・・何これ」
狼狽えて思わず大声を出した。ヤバい撮影でも拾ったのかと思って慌てて口を塞いであたりを見回す。でもここは小さな公園だ。人影が無いのはすぐ分かる。
「・・・ってことは・・・・」
マイクを宙に向けてゆっくり体を回した。

―ー涎をこぼしてるのが見えるだろ?

入った。

―ー嫌っ
―ーミラールーム程じゃないが鏡はたくさんある。いい趣味だ。
―ー悪趣味だよっ

ごくりと喉が鳴った。これ、どこかの部屋の会話だ。それも真っ最中の。興奮してきて体がぶるっと震える。
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『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#きっかけ ー2

R、入ります。 18才未満の方、苦手な方はご遠慮ください。 大丈夫な方だけ、スクロールしてどうぞ。























・・・・あのあと、大変だったっけ・・・。
智は苦笑した。
唾を飲んで夢中で聞き入っているうち、妙な事に気付いたのだ。

―・・・ゃ・・だ、俺ばっかり・・
―いいじゃないか、痕付けたって。仕事場で脱ぐ訳じゃないんだろ?

俺?・・ま、今どきは女の子でも言うけど、

―脱がないけ・・どっ。そこ・・目立つか・・・んんっ
―ほら、目、逸らすなよ。やらしいかっこ。体もココもピンクになってる。
―ぃや・・。そ・・っな、擦っちゃ・・、出ちゃう・・・から・・

で・・出る・・って、何が?

―くく・・。リングでも嵌めるか?そしたら・・トイレも個室だな。ん?
―そ・・んな・・。あ・・ダメ、も・・イく・・
―想像して、興奮したか?・・ひろあき。

ひろあき?・・・ってまさか、男同士?!

―あ・ああッ――・・っ


そのあとのやり取りは耳に入らなかった。
だって、俺もコーフンして前が痛かったのに、男同士の行為を聞いていたなんて大ショックだったんだ。
なのに・・、部屋へ帰って迷った挙句再生しちゃって、抜いてしまった。。

(あの時は軽ーくへこんだもんな。俺、女の子好きなのに、って。でも、世の中けっこういるんだ、ってのもわかっちゃったし。)

あれから、しばらく通い詰めてあのマンションを発見したことは、誰にも内緒だ。


☆ ☆ ☆


「・・・なあ、智。自主制作やってる?」
飲みながら涼二が聞いてくる。
「やってるよ。」
「けど、全っ然見せてくんねえじゃん、最近。おまえの面白いのに。」
「そうだよ。俺だって待ってるのに。」
「うん・・、ごめん、涼二、和泉。もうちょっとしたら出来るし、そしたらまた呼ぶから。」
「必ずだぞ。」

俺と涼二と和泉は大学で知り合った。もう一人、塾で知り合った内海との四人で大概つるんでワイワイやっている。
二人の言う’自主制作‘はほんとの趣味で他人に見せる気なんてなかったけど、みんなと俺の部屋で飲んでいる時内海が偶然俺のノートPCを起こして見つけてしまい、それから出来あがるたびに’上映会‘という名の飲み会が行われるようになってしまった。

(ま、けなされることは無いしいいんだけど。)

今回の名目は涼二の誕生日。
これで全員二十才になったから、大っぴらに酒も飲める。でもそろそろお開きにしたい。明日は十六日。秘密の楽しみの日、だ。


☆ ☆ ☆


この日はセッティングして聞きはじめたら、すぐだった。

―ここ・・?
―そう。知ってるのか?
―ううん。ただ、ラブホと違うなあって思っただけ。
―ふうん

そして衣擦れの音がした。シュッというのは多分ネクタイを抜いた音。これくらいは分かるようになっている自分。

―あっ
―誰かと来たことがあるのか?
―や・やめて
―言えよ、誰とだ?
―き・来てない・・・
―ほんとか
―ほんっ・・・と・だ、から・・・・っ、や・・・、やめ

どさりと、どうやらベッドに倒れ込んだような音がした。

―重い。どいて・・・・っつ、あ・う
―正直に言わないなら
―い・・・っ、言ってる・・・・ぅ・んんっ、・・・、ひあぁ
―今日はばかに早いじゃないか。もうこんなにしてるのか?
―それは・・・っ、

言葉が途中で途切れる。すこしして喘ぎ声がきこえた。どうやらキスをしているらしい。忙しない息の音が続く。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#きっかけー3

今回もR、ですので、18才未満、苦手な方はご遠慮くださいね。 大丈夫な方はスクロールしてどうぞ。





























―・・・・、いつそんなことを覚えた?

年上の男の声が低くなる。

―え・・・・?
―俺の目を盗んで、誰と、こんな事してたんだ?
―してないよっ。
―・・・・
―痛いっ・・・・、なっ、何する・・・ひっ・・・

何をしたのかすぐには解らなかった。思わず音を大きくする。途端、

―嫌あっ!  

耳に大声が入って、慌ててボリュームを落とした。

―あっ・・・ああっ・・・、や・・いや・・・、ゃめ・・・やめて、お願い・・・っ
―どこで媚(こび)を売ってたんだ?言えよ
―し・・てな・・・・、ひぃ
―そんなに言いたくない相手なのか?
―ほん・・とに、俺・は・・・あくっ・・・・、
―言わないならそれでもいいさ。帰る
―え・・・?

相手の驚愕が伝わって来るような声だ。

―待って・・・・、あっ・・ま・・・
―俺よりそいつの方がいいんだろ?呼び出して、してもらえ
―そんな・こと・・・っ、ああ・・、無・・・・、置いてかない・で
―触るな
―やだ。だって・・、俺、・・・・ああぅっ

切羽詰まった様子にこっちもどきどきして肩に力が入る。

―しつこいな。放せ
―・・・信じてよ・・。俺、ほんとに、誰にも

ばしっと叩く音。そしてまた何かが倒れる音。

―あっ・・・あぁっ・あ・・・・、あ・あ――っ

高く鳴く声が聞こえて、分かった。責められていた年下の方が叩かれて、倒れ込んで、その衝撃で達ったんだ。
興奮してこっちもあそこが痛いくらいになってる。だけど、

―俺との時より感じたんじゃないのか、そいつのこと思いだして

年上の方はまだ疑ってる。

―・・、そんな・・・・・っ
―本当にしてないなら、

何か小さい、それとも、軽い?物が落ちたような音。

―それでもう一回達ってみろ
―・・・・・・これで・・って?

年下の声が震えてる

―最大にしてだ。そうしたら信じてやってもいい。
―・・ほんと・・に?

返事はなかったが、決心したようだ。

―はあっ!・・・ああっ・・ああっ・ぁ・・・ああっ

急激に昇り詰める、声。すぐ達したらしく、二度目の甲高い声を放った。
しばらく、途切れ途切れの呼吸だけが続いた。のめり込んで聞いていたおかげで、何かのスイッチを切る音を聞き取ることが出来た。そうか、年下は、何か道具で責められていたんだ。
でも、年下って、年上に首ったけで何も目に入らない感じに聞こえたけど。俺が勝手に思ってるだけなのかな。一人であれこれ妄想してたら、

―行くな・・・。どこにも行かないでくれ。おまえは俺だけのものだ。

年上の、泣きそうな声が聞こえてきてびっくりした。まさか、あんなに苛めてたのに。年上の方が恋人が離れていきそうに思って不安だったなんて。





『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#きっかけー4

今回でRはひとまず終わりです。 ですが、18才未満や苦手な方はご遠慮くださいね。  大丈夫な方はスクロールして、どうぞ。



































―おまえを、どこかに閉じ込めておきたい。でも、それもできない。俺は、おまえを止められないんだ。

泣き言まで聞こえてきた。。さっきまでの強気で傲慢な態度、どこへやっちゃったんだろ。

―ん・・・・

年下が、気付いた。絶対に気付かれてないのに息を潜めてしまう。

― ――――――。

年上が、相手の名前を呼んだようだった。くぐもった声で聞き取れない。

―あ・・、――――――。・・・おれ、ほんと・・・・、信じて

年下の、掠れて応える声が、縋るようだ。

―あんたのとこしか、居るとこない・・・・んだ。
―・・わかった。
―ほんと・・・に?

キスで答えたみたい。

―ん・・・ふ・・ぁ、あ・ん・・・・
―悪かった

年上の声が優しい。

―・・・・いいけど。・・・でも、どうして?何かあった?
―別・に。何もない

年上の声が狼狽えた、ようだ。

―俺に隠し事しないって、言ってくれたよね。
―だから、何も、ない
―じゃ、誰かに会ったの?
―・・・・・・・
―そうなんだ。

確定。って聞こえる。

―俺を知ってるやつなんだね?

無言。やーな間。探り合いをしてそう。

―ガイ?
―ちっ・違っ、会社の・・・・っ

口を滑らせた年上が慌ててる。

―会社の?
―・・・・・・・
―答えてくれないなら、行くよ

行くって、どこ?思わず身を乗り出す。

―だめだ
―自分で探す。慎志(しんじ)の会社くらいすぐわかる
―だめだ、来るな。・・・・・おまえに来られたら、困る

あっ・・・、その言いかた、傷つく。

― !・・・・・
―あ・・・

あーあ。

―ち・違うんだ、稜(りょう)。

年上さん、焦ってる焦ってる。当然だよね。

―俺、目立つもんね。慎志だって外で会ったらそばに来たくないんだ・・。
―違う。そうじゃなくって・・・、おまえに色目を使うやつを見たら、ムカつくし、触られでもしたら、そいつ、殴りたくなるから・・・

いきなり、聞こえなくなった。でも、これって、ノロケじゃん?

―手で押さえないでよ。続き、聞かせて?

年下、りょうくん、声が弾んでるよ。

―だから・・・・、会社には、来ないでくれ。頼む。
―じゃ・・・、誰?

少しの沈黙。あれだと、年上のしんじさん、負けるな。

―会社・・・の・・・、取引先
―取引先?
―俺を・・・・・、はじめておまえのいる店に連れてってくれた、人だ。



何だか話がシリアスになって来て、俺は録音を止めた。ここから先は立ち入らない方がいいと思ったんだ。
他人の情事をこっそり聞いているだけでもよくない事なんだから、本当は。
「かーえろ、っと。」
機材をバッグにしまい、自転車に乗る。
「あ」
ポツン、と顔に水滴が。雨が本格的になる前に部屋に戻れ、ホッとした。

「結構たまっちゃったなー。どうしょう、これ。」
シャワーを浴び、小腹を満たして今日の録音を落としこむ。
PCの中に収めた秘密ファイル。パスをかけて隠してあるけど、中身は男女の分も合わせ
るともう5つになる。
「でも・・、止めらんないし。また、行っちゃうだろうし、な・・・」
見つかったら大事なんで、ちゃんと隠して閉じてから、ごろんと横になった。

「あーああ、俺も誰か欲しいな―・・・、この際、ヤれるんなら男だっ・・て?」
え? 俺、今なんて?
思わず口を手で覆い、あたりを見回す。一人で、自分の部屋に居るのに。

「俺・・、聞きすぎて毒されちゃった?」

そんなはずは無い。ちゃんとグラビアで興奮するし、抜けるし、’彼女’が欲しいんで。
でも・・。


変な事で悶々として、よく眠れなかった。


『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#叔父さんと友人たち

「智、昨夜、何かしてたのか?」

朝からの講義を取っていた俺は、早くも二コマ目で眠気に襲われた。無事に起きていられ
たのは横に居た内海のお陰だ。
「んー・・、ちょっとね。」
「自主制作で音録りにでも励んでいたとか?」
「ばっ・・、変な言い方するな、内海」
「いってーな。本で叩くなよ。で?出来たのか? おまえの作るのってユニークで俺楽し
みにしてんだぜ。」
「・・サンキュ。も―ちょっとしたら完成するとおもうから、そしたら」
「また飲もう、って?」
「まーな。」
内海と話すのは楽しい。俺と違う感性が刺激になってそれが色々発展するんだ。


昼休み、午後からの講義を受ける涼二、和泉と合流し学食でだべる。二人は理工系だから
時々会話がマニアックになってついて行けないけど聞いてる分には面白くて退屈しない。



今日のバイトは22時まで。時間になり交替して店の外へ。スマホを取り出せば、着信二
件とメール。名前は・・、
「和弘叔父さんだ」
父さんの八つ下の弟で、俺とは一回りと少し年が離れている。(智は父親が二七才の時
の子供)そのせい、だけでもないけど親より話しやすくて会えるとよく喋っているんだ。
「何だろ?えーと、・・・・わ、こっち来てるんだ。連絡欲しい、って? うん、するする」
すぐに送信すると、着信音が鳴る。

「おじさん?」
::ひさしぶり。元気そうだね」
::うん。今日は何?出張?」
::ああ。明日で終わりそうなんだ。智の都合がよかったらお昼を一緒にどうかなと
  思って」
::うっそ。すげーうれしい。じゃ、どこで待ち合わせする?」
::東京駅を見たいと思っているんだけど、いいかい?」
::オッケー。あ、時間」
::12時半、で、どう?」
::りょーかい。じゃあ明日。おやすみなさい。」
::おやすみ。」

叔父さんは福祉用具系の会社に勤めている。以前入院したことがあって、それから福祉に
興味が出てその方面に進んだらしい。
「使ってくれる人が、人生に前向きになる手伝いが出来る。そう思ってやってるんだよ。」
と話してくれる時目がキラキラしていて、やり甲斐があるんだろうなあ、って見ていた。

東京駅は最近、復原何とか・・で、昔の完成形になったらしい。
最初、ポスターだかネットだかで‘東京駅・復原・・’って見た時、
「字、間違ってるよ」って思っていたら解説が出ていて、

建造物の分野で、失われた建物を当時のように再現すること、あるいは推測に基づく場合を「復元」。
一方、改修等で形が変わっていたものを当初の姿に戻すこと、あるいは旧部材(部分品や材料)や文献等が残っており、根拠が確かな場合を「復原」と使いわけることがある

ってなっていた。
つまり、増築とか改築してたらしいのを、元の形に戻したから、‘復原’の字が使われているんだ。
日本語ってムズカシイ。

確かに今の東京駅はカッコよくって、ただ見に行くだけでもうきうきだ。
それに、叔父さんのスーツ姿も見られる。家に来る時は大概ジャンパーとかのラフな服装
だからそれも密かな楽しみだったりする。
「さあてっと。電話でんわ。」
待ち合わせは駅舎を出た丸の内側。赤レンガの、見応えのある方だ。平日でも人が多いか
ら、どうしたって携帯で連絡入れないと・・・、

「智!」

え?叔父さん?
名前を呼ばれ、慌てて周囲を見回せば、手を上げ大きく振っているビジネスマンが。
「ここ。早かったんだね。迷わな・・・」
「・・叔父さん。目立つよ」
俺よりずっと年上なのに、子供みたいに手を振ったりするもんだからちょっと恥ずかしい。
駆け寄ってそう言ったら、
「これだけ人がいるんだから目立たないと分からないだろう?それに僕は今日はスーツだ
し。ほかの人に紛れて智が見つけにくいかな、と思ったんだ。」
嬉しそうに笑ってくれる。その笑顔に心臓がキュンとした。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#叔父さんと友人たちー2

{智くん、叔父さんと東京駅デート(?)です。


まずは腹ごしらえ、どこにしよう?二人で駅の案内を見ながら迷い、食後は地下街を覗き
歩き、あっというまに時間が過ぎる。

「今日は楽しかったよ、智。ありがとう。」
「そんなこと。俺の方こそ・・奢ってもらったし。」
「誘ったのは僕だから。・・・・また少しお父さんに似てきたね。」
帰り際、ホームで見送る俺に和弘叔父さんはそう言って、俺の顔をじっと見つめてから手
を伸ばしそっと頬を撫でた。
その仕草にドキドキする自分がいる。
「勉強は、しすぎるのもよくないよ。バイトもだけど。大学は最後の学生生活なんだから、
楽しんで過ごすんだよ?」
「うん、和叔父さん。・・叔父さんも気をつけて。」
「ああ・・・時々は電話で声を聞かせてくれ。」
「わかった。」


翌日、教室で内海に会う。

「お早う、内海。昨日は(代返)サンキュ」
「お早。どーいたしまして。あれ?智、なんかいい顔してんじゃん?なんかあった?」
「え?別に。・・・あ、仕上がったよ、いつもの。」
「ほんとか?じゃ、明日・・、ダメだ、俺バイト。涼二・・は聞かないと。」
「和泉はいつでも空いてるもんな。」
あいつは一人っ子で自宅通学。涼二は俺達みたいな下宿バイト生だ。
メール・電話でやり取りして結果、四日後集合になった。


「智、今度はどんなの作ったんだ?」
一番乗りの内海がそう聞きながら、『わざわざ遠回りして買ってきたんだぞ』と、とあるコ
ンビニにしかないらしいビールを冷蔵庫に入れる。
「珍しいビール?」
「外国ビール。名前は後でな。」
覗こうとしたけどニヤッと笑って、俺には見せないようにしてくれちゃって。
「それなら俺も、内海だけには見せないようにしちゃおうかな?」
「お、おい、それはないだろ?」
なあ、つまみつくるからさー、と情けない顔で下手に出てくる。
「じゃ、それで手を打ってやるよ。おまえの作るつまみ、美味いし。」
「やたっ。」
いそいそキッチンに立つ内海の背中を見送り、
「あ、そうだ。冷蔵庫に入ってるのも出しといて。」
思い出して声をかけた。
「あー?何かあるん?」
「うん。昨日久しぶりに叔父さんに会ってさ。土産もらったんだ。」
「ああ、聞いたことある。一六か七くらい年が離れてるんだったろ?その叔父さん。」
「一九。父さんと八つ違うんだ。」
「へー。じゃあ今・・、三十九?ばりばりの社会人ってやつか。」
「そ。カッコ好いんだ。」


内海のつまみは、大根と大葉の千切りに甘エビを入れ、オーロラソース和えにしたものだ
った。少しだけタバスコを効かせてあり味が締まっている。
そして叔父さんの土産物は、塩麹漬けの焼き肉セット。和泉が贅沢にもワインを持って来て、‘上映会’が始まった。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#叔父さんと友人たちー3

 今日は、’上映会’からです。




部屋の明かりを落とし、薄暗がりの中、そこだけ片付けてある壁に四人の視線が向けられ
る。インストロメンタルが流れ、ノートPCにつなげたプロジェクターからの映像が映し
だされた。
真っ黒だった画面がゆっくり明るくなり、人影が行きかう。駅の案内が聞こえ、視線を巡
らせるように画像が改札から外へ向かい、駅前広場にあるモニュメントで止まった。

音楽が変わり、画像に字幕が流れていく。


*** 駅前にある、動くモニュメントに、魅かれた。

理由が知りたくて、ぼうっと眺めていた。でも、見つけられない。
ある夜、雨が降っていて・・、気付いた。
DNAの構図に似た二重螺旋形の、回転するアルミの棒。雨に濡れて表面が光り、その
光が滴になって上へ昇っていく。
そして。先端まで行きついた光は、ふっ。と。飛び立つように次から次へと消えていく。

ああ、そうか。

これが、見たかったんだ。 ***

昼間と夜のシーン。そして雨の日の夜の映像が字幕とともに切り替わり、終わった。


「おまえさ、ちょっと趣味変わった?」
見終わって、開口一番内海が言いだす。
「は?何で?」
「うん・・、なんて言うか、今日のやつ、音の入れ方とか画面の切り方とか、前のと違っ
てる感じすんだよね。」
内海の鋭さに内心焦る。今回のはたまたま叔父さんにも見てもらって、色々聞いて修正し
た後のだから。
「うつみー、言い方変。それを言うなら成長した、だろ?」
「そうそう。男はいきなり成長することあるんだからさ。なァ、智。」
「ま・・まぁね・・」
「・・・そーかな・・?」
涼二と和泉の応援(?)のお陰か内海の追及は立ち消え、
「それよりさぁ・・、聞いてくれる?」
と、涼二の恋バナに話題が映った。


俺の作品と涼二の話で盛り上がり、終電を逃がした涼二に内海、酒を飲んでいては自転車
に乗れない、と、結局和泉まで泊まる事に。
「こんな時間なんだし、静かにしろよ。」
「りょーかい。」
「わかってるって。」
「智が追い出されないように気をつける・・・ぉわっ」
「和泉!」
トイレ、と立った拍子にふらついた和泉が、片付けようとしていた俺の方に倒れ込んでき
た。
咄嗟に受け止めたはいいが、俺も一緒に床に転がってしまう。
「・・痛ってー・・」
「・・あつつ・・。さ・とる、ごめ・・」
「智!大丈夫か?」
「和泉・・、平気?」
痛がる俺と和泉に、内海と涼二が慌てて声をかけてくる。
「俺は平気だけど・・。智?」
「俺も・・大丈夫そう。」
「立てるんならどいてやれよ和泉。智が重いだろ?」
「ひどいなあ内海。俺より智の心配?」
そう言いながらも和泉はゆっくり起きあがり、今度こそトイレに行く。
「智、ほんとに大丈夫か?」
「うん、ぶつけたりしてないから。それより片付けないとテーブルどかせないし、寝る場
所ない。」
「あ、そっか。」

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#叔父さんと友人たちー4

翌朝、講義が午後からの内海に鍵を渡し、三人で部屋を出る。

「二日酔いなんて言ってたけど、あいつ絶対狙ってたぞ。泊まるの」
「そうか?」
「だって、午前中の講義取って無いじゃん。」
「智のとこが自分(内海)より学校に近いの分かってるからさ。」
朝バーガ―しながらそんな話をする。
「けど内海は勝手に覗いたりしないし汚さないし、安心できるんだ。」
なにせ内海は高校受験のための塾で知り合った同じ中学の同期生。クラスが違うからそれ
まで知らなかったやつ。だから一番付き合いがある。
「ふーん。信用してんだ。」

いったん家に戻る和泉は途中下車。涼二とも学内で別れ、本分の学業に精を出す。


「・・・っとに、資料って重たい。」
午後、図書室で本の山を横に置き、愚痴りながらレポートをまとめていると、
「iPad買って入れればいいだろ?ほら、鍵。」
後ろから内海が覗き込んでくる。
「あ、来たんだ。・・・お金も無いし、そんな器用な頭、持ってない。それにまだ新しい分
野だから探すの大変。」
「‘環境共生学’だったっけ?」
「そ。ものすごく平たくすると、自然を大事に・・、ってゆうの?そんな感じ。」
「・・江戸時代がそうだったって聞いたことある。」
横の席に座って、頬づえをつき俺を見る。アウトドア派でスポーツ好きな内海は筋肉質の
体に精悍、と言えそうな顔だち。けど笑うと子供みたいで女子によくモテる。
「内海は防災・・だよな?」
「ああ。おまえの取ってるのの隣くらいにある分野かな?デザインも入ってるけど。」
環境デザイン・環境防災科。
内海が取っているのはそこで、俺と重なる講義もある。去年はフィールドワークであちこ
ち行かされた。



「ところで、来週どうする?」
「また合コン?俺、苦手なんだけど。」
「残念。街コンさ。屋外。それならいいだろ?」
「う~~ん・・」
女の子は好きだけど苦手だ。扱いに気を付けないと一瞬で変わってしまう。
「女子が苦手、なんて言ってたら彼女出来ないぞ。」
「うるさいな。行くよ。」
「よーし、約束したからな。」

当日は夜の集合。イベントだから街の所々で休憩所があったり店を解放したりしている。

「こんばんは。」
「あ・・、こんばんは。」
内海と二人、ある店の店先で軽く腹ごしらえをしていたら、二人連れの女子が声をかけて
来た。流行りのひらひらしたスカートで足を強調したスタイルだ。
「今日私たち、初めてなんですー。お二人とも参加されているんですよね?一緒にどうで
すか?」
参加者バッヂを見つけて、ずいっと距離を詰められる。
「あ・あの・・」
目が泳ぐ俺と、
「ありがとう。連れが欲しいなって思ってたんだ。な?能見。
あ、食事済んだ?ここ、美味しそうだから入ろうと思ってたんだけど、どう?」
「「はい。」」

鮮やかに仕切る内海。すごい。
あっという間に店で食事、になってお喋りして。でも、彼女たちの話題について行けなく
なった俺はいつの間にか聞き役になっていた。

「楽しかったです。また、会ってくれますかぁ?」
ピンクのスカートの子が勢いづいて言ってくる。それに、
「うーん、会いたいけど、俺達、遠くから来てんだ。だから約束できなくて。ごめんね」
「あ、じゃあ、携番とか、メアドとか」
「それもごめん。出かけてくる前電池切れしちゃって。充電中なんだ。」
こんな可愛い子たちと会えるんだったら、持って来たんだけど。と、本当に済まなさそう
に内海が謝るからそれ以上は言えなくなったらしい。
「私たち、また来ますから、今度は絶対教えてください。」
「内海さんたちみたいな人となかなか会えないんですから。私たちの事、忘れないでくだ
さいね?」
「もちろん。今度会った時、ね。」
なんてやるもんだから、二人とも『きゃあ』なんて喜んじゃって。
まだまだくっついていたそうだったけど、友達を見つけたらしく手を振って行ってしまっ
た。

「はあ~、疲れた。」
「何だ智、まだ始まったばっかりだぜ?あと・・、一時間はゆうにある。」
「え?おまえそれ・・、充電・・」
時間を見るため取り出したのはスマホ。
「これ?無いと困るだろ?」
あっけらかん、と言われて脱力した。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#叔父さんと友人たちー5

「なあ、また泊めてくれよー。」
帰りがけ、電車の中で内海が言いだす。
「また?俺ん家、ホテルじゃないんだぜ。」
「いいじゃないか、俺とおまえの仲なんだからさー。いっそシェアするか?」
「やだ」
「何で?」
「彼女出来ても呼べないじゃないか。」
「・・・・ごもっとも。
ちぇっ、帰ろ。」
じゃあな、と、内海は自分のアパートの最寄り駅で降りて行った。


夏休みが近付き、掲示板に張り出される紙が増え、バイトもゼミも賑やかだ。
「どれにしよっかなー。」
「あ、この先生の講義、出たい。」
「お、この時間のバイトもらいっ」
紙を剥がしていくやつもいる。

「わー、そんなに書いてる?」
「智、おまえそんなにメモって、全部出る気なのか?」
「あ、内海。涼二。」
全部見てからピックアップしたのをノートに写していると、内海と涼二が横からノートを
見てビックリする。
「別に。全部受ける訳じゃないけどさ、面白そうなのあるから。」
「ふーん。ま、俺達との予定が先だろ?」
「そうそう。花火大会だってある。」
「ってか、何でノート?これに入れればいいのに。」
でなければこっち。ひょい、とi・padをかざす和泉。それ、最新型?
「ノートの方が後で書き込みしやすいんだ。キカイって面倒くさくって。」
「・・それはあるな。時々せっかく書いた文全消ししちゃって泣きそうになった事ある。」
「・・俺もある。」
「おいおい。今は休み中の‘楽しい相談会’じゃなかった?まずは涼しいとこ行ってから
にしようぜ。」
「賛成。」
陽に焼けると赤くなる涼二が真っ先に歩き出す。


「なぁ智、まだ出掛けてんの?」
氷を齧りながら内海が聞く。
「あ・・、うん。」
「六日だっけ?」
「‘六’のつく日。」
「この間は来たんじゃなかった?」
思い出したように和泉が聞くから、
「うん、雨降ったし。」
と答える。
「外で何か観察してるのか?」
「・・・そんなとこ。」
事実は言えない。絶対。
「それより予定。バイト休みつき合わせしようぜ。」
「そうそう。イベント行くのに一人じゃつまらないもんな。」


「疲(つ)っかれた~~。」
部屋に戻って、先ずベッドにダイブ。今日はバイト先で仕事が途切れずほとんど休憩無し
だったんだ。
「眠い・・けど・・、シャワー浴びたい・・・」
汗かいてるし、明日は朝から講義あるからさっぱりしたいんだけど、眠気が・・・。

ふ・・ッと意識が戻る。何でだろう?と思って体を動かすと、
「・・・痛っ、いたた・・・」
左手を枕にしていたらしい。その下にはスマホがあって、どうも角が腕の下にあったらし
い。痺れが切れてじんじんしている状態。
「そもそも何時・・?」
時計のライトをつけると、
「げ。二時一八分?!・・・あー、でも・・。ちぇっ、起きたし、シャワー浴びよう。」
すっきりして二度寝出来たから、よかったのか?
翌日だか当日だかは、講義もすっと頭に入った。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#叔父さんと友人たちー6

「やったー。明日から、夏休み!」
ファイルケースを投げ上げた涼二が、受け止めながら嬉しそうに言う。
「来年は就活してるだろうし、今年が遊べる最後だもんな。楽しもうぜ。」
「海に花火に、盆踊り。そして・・バイト。」
内海が言えば、
「ああ。バイトの合間に彼女もゲットしたいし。」
俺もそんな答えを返す。
「いいなー、俺なんか親戚がしょっちゅう来るからどこにも行けない。」
和泉が拗ねて口を尖らす。
「いいじゃん?女の子いれば誘って連れてこいよ。」
「花火なんか盛り上がるぜー。」
「海もいいな・・・。」
涼二は彼女とどうにか上手く言っているらしく、何か想像してポワンとしている。からか
おうと思ったら、着信音がした。画面を見ると家からだ。

「もしもし。」
少し離れて通話に出た。
::あ、出た。・・・智?学校いつから休みなの?まさか夏休み中家に帰って来ないなんて、無いでしょうね?」
母さんだ。
::分かってるって。帰るよ。」
::お盆は絶対だからね?みんな集まるんだし。」
::はいはい。・・あ、叔父さんは?」
::和弘・・叔父さん?来るわよ、お盆以外にも時々。・・智、笑わないの。」

母さんは、いつも叔父さんを‘和弘さん’って呼んでるから、俺が‘叔父さん’呼びする
と慌ててあとから‘叔父さん’付けをする。

::笑ってないって。・・・呼ばれてるし、行くね。帰る前には連絡入れる。」
::ちゃんと入れてよ?」
::うん。じゃ。」


待ってる三人の方へ戻ると、一人足りない。
「実家からか?」
「まあね。内海は?」
「あいつも電話。なんか呼び出されたみたいでさ、切るなりぶつぶつ言いながら行ったよ。」
「ふーん。」
「予定は聞いといたから大丈夫。智はどうなってる?」
「ああ、今出す。」


予定とゼミで隙間なく夏休みが埋まり、毎日が過ぎていく。
「明日は、無理かな」
天気予報は‘所によりにわか雨’・・・。せっかくの六の日なんだけどなあ。でも、無理し
たら元も子もないし、疑われたらOUTだ。
二十才だって過ぎてる。まさかの職質とかされようものなら・・・。想像してブルッと震
えがくる。
「やーめやめ。次回に持ち越し。」
自分で言って、気持ちを切り替えた。


8月に入り、外出が増える。海にも行ったし、花火大会も。でも、どちらも楽しんだだけ
で彼女をゲットする事は出来ず・・。ちょっと落ち込んだまま実家へ帰る。

「ただーいまー」
「お帰り。」
「あれ?姉さんだけ?」
出迎えてくれたのは姉の彩香。
「母さんは?」
「買い物行ったわ。明日のために。」
「明日?何かあるの?」
何気なく聞いただけなのに、姉貴の顔が赤くなる。
「べ・別に。何にもないわよ。・・あ、れ・い蔵庫に西瓜冷えてるからっ。」
言うだけ言って、すぐパタパタと自分の部屋へ上がってしまった。
「・・・ 変なの。」

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#夏休みの出会い

「ただいまー。智、居るんなら手伝ってー。」
「お帰り。」
母さんの声に部屋から降りて玄関へ行くと、大荷物。
「どしたの?これ。」
「お客さんが来るからそれも含めた買い出し。今日はポイントが付くのよ。」
「ふーん。台所持っていけばいいの?」
「そうね・・。一度全部持っていこうかな。・・お願いね。」
はいはい。

片付けを手伝い、西瓜にありついていたらもう夕方だ。忙しく料理を作っている母さんの
後ろ姿を見ながら聞く。
「そうだ母さん、明日、なんかあるの?」
「まーね。・・・彩香、話した?」
「別に。明日何かあるみたいなことはちらっと言ってたけど。」
「なら、明日になれば分かるんだしいいじゃない。出かけるの?」
「・・予定はないけど。」
「和弘さんも来るわよ。」
「え?・・それなら」
母さん、クスクス笑いながら、
「智って、ほんと和弘さん好きね。恋人みたい。」
「そ・・そんなんじゃないって!」
俺は母さんの例えに赤くなりながら食べ終えた西瓜の皮を流しに入れ、部屋へ逃げた。


「でも、何なんだろ?和叔父さん以外にも来そうだし・・・。」
夕食の時だって何も話題にならず、姉貴は母さんと喋りながら笑っている。俺と父さんは
ついていけず早々に部屋へ。そして夜遅くまで台所から音がしていた。


翌朝。
九時過ぎくらいに叔父さんが来る。

「お早う。」
「お早う、和叔父さん。どうしたの?こんな早く」
「ああ、ちょっとね。・・・お早う、彩香ちゃん。こんな格好で大丈夫かい?」
「お早うございます、叔父さん。うん、すっごくダンディー。章雄さん(ふみお)さんだ
って驚くわ。」

え?

「姉貴、章雄さんって、誰?」
知らない名前が出て、聞いたら、
「あ・・。」
なぜか赤くなる姉貴。そして和叔父さんが、
「知らないのかい?智。今日は・・」
「駄目っ、叔父さん、言っちゃダメッ。」
慌てて叔父さんの口を塞ぐ素振りをしてからぱっと向きを変えて、
「お母さん!叔父さん来たわ!」
奥へ駆け込む。 

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#夏休みの出会いー2


「姉貴・・、どうしちゃったの?」
瞬きを、五・六回繰り返し唖然として和叔父さんを見る。
「さあ?だけど彩香ちゃんが‘言うな’と言ってるんだから智くんにはまだ内緒にしてお
く。」
「ええ?そんな意地悪しないで教えてよ?
誰なのさ、章雄さんって」
「名前を知っているんなら、それでいいじゃないか。・・・・・ところで智、今身長いくつくらい?」
「身長?しばらく測ってないけど・・、一七〇くらい?」
「そうか。ありがとう。」
「和叔父さん?」
叔父さんは、俺にしつこく聞かれると思ったのか、すっと居間へいってしまう。慌てて後
を追った。

居間の手前にある台所を覗くと、いつになく料理がたくさん並んでいる。そしてめったに
出てこない食器もある。
母さんまで、よそいきの服を着ていて。

(誰か、来るんだ。)
ようやく思い至る。多分それが‘章雄さん’だ。・・・でも、親戚にそんな名前の人、いた
っけ?


「ねえ母さん、親戚に‘章雄’さんって、いた?」
姉貴はどうやら自分の部屋へ行ったらしい。いない間に、とおふくろに聞くと、
「居ないわねぇ。でも、これから出来るかもよ、章雄さんって親戚が。」
「は?これから出来る?」
「そう。お昼一緒に食べるから、ちゃんと挨拶してね。」
手は休めず続ける。
「・・だからこんなご馳走なの?」
「当たり前でしょう?和弘、さんだけならもっと楽。」
「あー、言ってやろ。」
お菓子の皿を取り、居間へむかう。
「ちょっと、智。」


居間へ入るとなぜか父さんもYシャツを着てネクタイしている。
「父さん、今日、‘章雄さんって親戚になるかもしれない人’が来るんだって。知ってた?」
菓子皿を座卓に置き、俺も横に座りこむ。
「彩香に聞いた。」
「ふーん」
聞かされてなかったのは俺だけか。
「まだそうなるか分からんのに、母さんも彩香もウキウキそわそわして・・。」
「初めてなんだからしょうがないよ、兄さん。」
「初めて来る人?」
「あ・・、うん。」
和叔父さんなら教えてくれそうだと思って、また聞いてみる。
「それってさ、姉貴の知り合い?」
「まあね」
「そっか、だから俺知らないんだ。」
「だけど、智君の、一番近い親戚になるかも知れないひとだよ。ね、兄さん。」
「俺はまだ顔も見てない。」
妙に不機嫌な父さんがぶすっとして言う。
「そりゃあ兄さんは彩香ちゃんに過保護だから。」
くすくす笑う和叔父さん。
「当たり前だ。彩香は俺の大事な娘だぞ。」
言って、菓子皿の中の煎餅を取りバリバリ噛みはじめる父さん。和叔父さんはまだ笑いな
がら、
「でもちゃんと紹介してくれるんだから、きっといい彼・・・・、あ」
慌てて口を押さえたけど、聞こえちゃったもんね。
「もうじき来るのって、姉貴の彼氏?」
思いッきり喰いつく。
「そうみたいだよ。」
和叔父さん、苦笑いしながら教えてくれた。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会い-2

姉の交際相手が来る。

「姉貴がそこまで付き合いしてる相手がいるなんてなあ。」
父さんの不機嫌に付き合いきれなくて部屋へ上がり、ベッドに寝転がった。
気になって課題も進まない。 どんな男性なんだろう?
俺より四つ年上の姉は社会人で働いているから、当然同じ会社の人なんだろうと思ってい
たら、大学の先輩なんだと言う。
ボランティア活動をしている時に知り合ったとか。

以前、和叔父さんに話していた時の姉曰く、
「何かに取り組んでいる時の章雄さんは、かっこいいのよ。」
だそうだけど。

「姉さん、面食いだったけどなー。」
俺もどうせなら自慢できる人が姉貴の相手だったらいいなと勝手に想っているうちに、玄
関のチャイムが鳴った。

来た。

飛び起きて耳を済ませれば母さんと姉貴が何か言ってるのが聞こえる。そして足音が廊下
を移動していく。
「どうしよう、下りていいのかな・・・」
こんな時のタイミングが分からない。ウロウロしていたら、
「智―、下りてらっしゃい。」
と、母さんが呼んだ。


「はー・・、今いく。」
あんまり急いでも‘待ちかまえていた’みたいでなんだし。急ぐ気持ちと足がばらばらに
なって、階段をどたどた音を立てて下りてしまった。

「もー、大きな音で下りてこないでよ、智ってば。・・・恥ずかしいでしょ。」
「べっ・・べつにいいだろ。」
部屋に入るなり姉貴に言われカチンときたけど、
「まあまあ。智くんは今日何があるのか知らなかったんだし、いいじゃないか。」
和叔父さんが俺を助けてくれてほっとしてその隣へ座る。

俺、和叔父さん、父さん。その向かいに姉貴・・・、姉さんと、章雄・さん。


初めて見た姉貴の交際相手。
(へぇ・・、意外)

イケメンじゃ、なかった。てっきりTVに出てる系のイケメン男だろうと思っていたのに。
(あ、でも)
話は分かりやすいし、俺が言ったら失礼だろうけど考え方がしっかりしてる。それに、笑
うと人懐こい笑顔になって安心できるってのかな?そんな感じ。

姉さん、やるじゃん。

父さんも最後には不機嫌じゃなくなっていた。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー3

 智パパ、早くも花嫁の父の心境・・・?


「それでは、失礼します。今日は招待いただいて本当にありがとうございました。」
フルネーム、加田浦 章雄(かたうら ふみお)さんは、昼食を一緒に食べて二時前には
帰っていった。



「礼儀正しい人だったわね。」
「そうでしょ。あ、智そのカップここに纏めて。」
「はーい」
俺を助手に使って、母さんと姉貴は使った食器を片づけながら喋っている。
「大学入って最初のボランティアで知り合ったんだっけ?あね・・姉さん。」
「ええ、そうよ。大学の構内と周囲の道路の清掃。」
言って、思い出す顔になった。
「ズルしてたら怒られて。腹が立ったけど言い返せなくってね。・・・・・それから気にな
り始めたのかなあ?」
「え?姉さんを怒らせたの?・・・勇気あるなぁ。」
「なにそれ?まるで私が恐いみたいじゃない」
「違うの?」
「智!」
「二人とも、口より手を動かして。和弘さんにお茶も出したいんだから。」
「「はーい。」」

そうだ、和叔父さん、まだ居るんだった。
父さんの不機嫌はだいぶ直ったけど、章雄さんが帰ってから何だかぶつぶつ。それに付き
合ってまだ昼間なのにビールを飲んでる。
あーあ。


食器がだいたい片付け終わったあたりで、母さんが、
「智、父さんたちにこれ、持って行って。」
「あ・うん。俺でいいの?」
「彩香に持って行かせたらお父さんきっと絡むから。」
それもそっか。
「分かった。」

「父さん、和叔父さん。お・・・」

「・・・だから、俺は我慢してたんだ」
「うん、兄さん。」
「彩香が‘彼’を連れてくるより先に、見合いさせとけばよかった・・・・」
「でも兄さん、しっかりしていそうだよ、・・・章雄君て。」
「・・それくらい、わかってるさ。彩香は・・、俺の、娘だぞ。」
「うん。・・兄さんの自慢の‘彩香ちゃん’だもんね。」


父さん、できあがっちゃってる。それに何だかクドクド言ってるし。和叔父さん、大丈夫
かなあ?

「あ、智くん、それ、お茶?」
部屋の前に立ち止ったのを見付けた和叔父さんが聞いてくれる。
「うん。母さんが持って行けって。」
「いらん。・・今日は飲むんだ。和弘、付き合ってくれるだろ?」
「それはいいけど。兄さんまだ飲むの?」
「家で飲むんだからいいじゃないか。
智。茶なんぞいいからビール持って来い」

えー?
父さん、あんまり強くなくって二日酔いひどいほうなんじゃなかったっけ?それに、家に
ビールってそんなに置いてないと思ったけど。

首を傾げた俺に、
「智!」
父さんが癇癪を起こす。
「兄さん。大声出さなくったって。僕が聞いてくるから、智くん、ちょっとだけここにい
てくれる?」
ビクッとした俺にそう言って和叔父さんが立ちあがる。
「う・うん・・。」
仕方なく座ったけど、話すことが無い。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー4

  綾香お姉さんの彼が帰って、微妙に不機嫌なお父さんに付き合わされる智くん。


「・・・大学は、どうだ・・?」

唐突に聞かれ、焦った。話の流れからして、てっきり加田浦さん・のこと聞かれると思っ
てたから

「・・普通だよ。一緒に入った内海とは学部で違ったけどよく会うし、和泉や涼二も・・・」
「いずみ?女の子と一緒にいるのか?」
「違うって。男だよ。矢仲 和泉(やなか いずみ)。」
父さんの勘違いに苦笑しながら訂正する。
ま、確かに女顔なんだけど、中身はしっかり男だし。

「まだ彼女はいないのか?」

う・・、そう来るか。

「・・いない。だからこの休みも頑張って花火行ったり海行ったりしてる。」
まあ、父さんだから言える話をする。

「智・・・」
「智くん、まだ彼女いないの?」
「え?・・わ、和叔父さん、それ、大声で言わないで」
父さんの声に和叔父さんの声が重なってびっくりして、でも母さんには聞かれたくないか
ら手を振って遮る。
「智くんならもうとっくに付き合ってる子がいると思ったのに。」
和叔父さんが持ってるお盆の上に洋酒と氷、グラスが乗っている。
「ビールじゃなくて、こっちがいいだろうって用意してもらった。智くんも飲めたよね?」
「う、うん・・。でも、それ、ウイスキー?」
「大丈夫。①フィンガーから始めていけばいいんだから。」
言いながら和叔父さんは慣れた様子でグラスに氷とお酒を入れていく。その、しなやかに
動く指先を見ながら、聞いてみる。
「『①フィンガー』・・って、何?」
「ああ、グラスに入れたウイスキーの量のことだよ。大体指一本分で、日本では三〇mlく
らい。・・・こんな感じ。」
俺の分、と置いてくれたのと、父さんや和叔父さんのグラスの琥珀色の液体の量が明らか
に違う。
「・・ああ、僕と兄さんのは②フィンガー。指・二本分。」
「ふぅん・・」
手を伸ばした俺に、和叔父さんは、
「あ。飲む時はゆっくり、ね。」
「なんで?」
「智くん、初めてみたいだし。」
子供扱いのようで(事実そうなんだけど)ムッとしてしまって・・、

「おい、止めとけ」
「智くんっ」

「っつ・・く・ふっ、ごほ・・っ、・・っ、むふっ、・・けほ・・っ」
父さんと和叔父さんの制止も聞かず、ぐい、と呷ったら喉が焼けて、カッと熱くなる。
噎せかえっていると、
「だから言ったじゃないか・・・・」
父さんは呆れ顔。和叔父さんは、
「智くん、お水。・・・・ごめん、言い方が悪かった。」
座っている場所から移動して、俺の最中をさすったり水の入ったコップを置いてくれたり
してくれる。
「う・ん・・。ありがと。・・・っ」
「智、口開けろ。」
父さんの声に、へ? とついそっちを見れば、空いた口に氷が押し込まれた。

「・・・・(冷た)っい・・へ(て)、ほうは(父さん)・・」
大きめの塊りにまともに話せない。
「ごくごく飲んだらまた噎せる。しばらくしゃぶってろ。
和弘も覚えとけ、いつか役に立つぞ。」

これは、心配してる、ことになるんだろうか?
父さんの顔を斜めに見ながら大人しく氷を舐める。

和叔父さんはそのまま俺の横に座って、
「けど兄さん、智くんがいつか彼女を連れて来た時とか、彼女の家に行った時、その子の
お父さんは兄さんと同じ気持ちを味わうんだよ?
先に経験出来て良かったんじゃない?ねえ、智くん」

俺に、彼女・・・。

「今んろこ彼女なんていらいから、全然実感らいけど・・」
氷を転がしながら喋ると変な言葉になるけど、意味は伝わる。
「ははっ、そんなこと言ったって恋に落ちるのは一瞬だ。・・・・もちろん、そうじゃない
ことだってあるけど」
なんだか寂しそうな顔をしてそう言うと、ちらっと父さんを見た。
「む・・。そりゃあ、そうだが・・・」
まだ納得できない父さんに、
「第一兄さんとっくにしたじゃないか、枝里子さんのところへ挨拶に行った時。」
何を思い出したのか、和叔父さん、母さんの名前を出して面白そうな顔をした。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー5

 お父さん、そんなこと・・・。


「何だよ」
「忘れてるんだ?兄さん。僕、あの時思わず兄さん殴りそうになったんだけど?」
智くんに話しちゃおうかな、なんて続けるから、
「俺、聞きたい」
体ごと和叔父さんに向き直る。
「だめだ話すな、和弘。」
忘れてはいるけど、ヤバそうな話だと父さんが和叔父さんに待ったをかける。
そこへ、
「はい、おまちどうさま。和弘さんのリクエスト・・・・、あら?
どうかした?」
母さんが得意の煮物とかを持って入って来た。俺たちの視線を浴びてキョトンとする。
「なんでもない。和弘、おまえが頼んだんだから、それ、受け取れ。」
「はいはい。ありがとう枝里子さん。」
「だーめ。何の話してたの?」
お盆を持ちあげて母さんが聞く。だから、
「父さんが母さんの所へ挨拶に言った話。」
「智!余計なこと言うな!」
「まあ、あの時の?」
母さん、すぐ思い出したみたいだ。
「ふふっ、あの時和弘さんがいてくれて、本当によかったわよね、お父さん。」
と、父さんに意味ありげに笑いかけ、智には早いけど聞いておけば、と可笑しそうな、面
白そうな顔で続けると、
「じゃ、ごゆっくり。」
頭上に音符が踊っていそうな機嫌良さで和叔父さんにお盆を渡し、楽しそうに出ていった。

「枝里子も覚えてるのか・・・」
「そうみたいだね。じゃあ、思い出すためにも聞いてもらおう。」
少しばかりショックな父さんに和叔父さんが追い打ちをかける。
「おまえ・・・、楽しそうだな。」
父さん、自分で琥珀色の瓶を取りあげ、氷と一緒に継ぎ足している。

「たまにはいいじゃない?

・・兄さん、枝里子さんの家に挨拶に行く時、僕も連れていったよね。緊張して何言うか
分からないからって。」
和叔父さん、そう言ってウイスキーを一口飲む。
ちらりと見えた喉仏が上下するのが、何だか色っぽい。
「ああ。」
「部屋に通されて、何度も練習していた事を言おうとして、」
意味ありげに区切ると、箸を取って、煮物を小皿に取り分けた。冬瓜と豚の角煮、ゴーヤ
のきんぴら風。

「何があったの?」
好奇心ではち切れそうになってる俺が待てずに催促する。
「普通に。ドラマなんかでも言ってる、『お嬢さんをください。必ず幸せにします』だよ。」
「・・・なんだ、そんな事か。」
「ただ言い方がね・・・」
「言い方?」
「そう。『私が幸せになるために、枝里子さんがぜってい必要なんです。必ず幸せになりますからもらってくださ・・・』」
「あ!お・・・思い出した!和弘、そっから先、言うな!」
父さんがまっ赤になって和叔父さんの言葉を邪魔して大声を出す。
「はいはい。わかったよ、兄さん。」
「えー、なんで?まだちょっとじゃないか。和叔父さん、全部教えてよ。」
「兄さんの話だから、許可が無いとね。」
和叔父さんは父さんの言う事全部聞くから。当然父さんは俺の要求を却下。
「だめだ!おまえはもうあっちへいけ。」
「・・・・父さんの横暴。」

いいよもう。母さんに聞こう。

そう思って立ち上がる。あれ?でも、父さん章雄さんのこと何も言わなかった。
忘れてる?
ちらっと和叔父さんを見たら、ふっ・・って笑って小さく頷く。和叔父さん、もしかして
父さんの気を紛らわすのに話をしたのかもしれない。

「でも、聞きたかったなぁ・・」




『耳から始まる恋愛』

『耳からは始まる恋愛』*夏休みの出会いー6

 お父さんの昔話は、聞けるのでしょうか?


結局父さんは和叔父さんを付き合わせ、夕方まで飲んで、寝てしまった。和叔父さんは母
さんを手伝って寝入った父さんを布団に入れ、
「お邪魔しました。」
帰ろうとしたけど、
「あらいいでしょ。明日急ぎの用があるの?」
「いえ、そうじゃないですが」
「だったらご飯食べて、ゆっくりしていって。智もいるし。」
有無を言わせぬまま決めてしまった。

和叔父さんがそばにいる。
こんなに長い間一緒に居られるのはずい分久しぶりで、気分が浮き立っている自分がいる。

「智、和弘さんと一緒にお風呂入って。」
夕食後、片付けを手伝っていると母さんにそう言われた。
「一緒?」
「なぁに?恥かしい?」
「そっ、そんなんじゃないけど、さっ」
「あ、ついでに抜いて洗っておいて。 ご褒美に西瓜あげるし」
「はあ?・・・・分・か・り・ました。
言っておくけど西瓜じゃないからね。」

和叔父さんは仕事を少し持ちこんできていたらしい。食後、「部屋にいるから」とタブレッ
ト版を持って二階に上がっていた。

「和叔父さん、母さんがお風呂どうぞって。どうせだから一緒に入ってって言われたけど」

二階の部屋に入って聞く。


この部屋は、母さんが「残しておくから、いつでも来て」って言ってた、もともと和叔父
さんの部屋だ。
和叔父さん、大学に入ってからほとんど帰って来ないらしいけど、でも、この部屋にいる
と落ち着くって言ってた。


「風呂・・?ああ、もうそんな時間か。」
俺の声に和叔父さんが顔を上げる。
「何?それ」
「ん?これは、データだよ。購入されたお客さんたちの。あ、個人情報になるから見ない
こと。」
事故の記録なんかもあるからね、そう言ってすぐファイルにしまう。
俺も興味ないから、そのデータ、目の上を素通りしていった。・・・あとで、その中の一人
と関わりが出来るなんて、想像さえしなかった。

「でさ、一緒に入れって。」
「僕は構わないけど智くん、嫌かい?」
「ぜんっぜん。」

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会い-7

 智くん、和叔父さんと、お風呂。ちょっとした発見が。


「ねー和叔父さん、さっきの話の続きなんだけど。」
俺は湯船に浸かりながら切り出す。
「さっきの話って?」
和叔父さん、シャワーでシャンプーを落としながら声だけで返事する。それを見ていて。

「・・細マッチョなんだ・・・」

「・・?何か言ったかい?」
「何か俺より筋肉付いてない?お腹なんてたるんでないし。」
和叔父さん、苦笑して、
「仕事上、しょっちゅう車椅子運んだり、時々お客さんの介助をしてるからじゃないか?
病気でもそうだけど、事故で体が不自由になった人たちは、‘自分が動けない。出来ていた
事ができない’ことを納得出来なくて荒れたりする。そういうひとたちと向き合う事、手
を貸すことが多いからね。」
「事故で不自由?」
「そう。交通事故や・・・、部活で」
「部活・・。」

確か和叔父さんも部活の事故だったんじゃ・・。

「智くん、交替。」
「あ、うん。」
ちょっと考えていた間に、洗い終わった和叔父さんが、声をかける。湯船を出て交替する
時肌が触れ、びくっとしてしまう。・・・なんでだ?
「あ、ごめん。」
「う・ううん。・・・和叔父さん?」
洗い場に二人で立ちんぼ。
「あ、うん・・・。智くん・・・、いや、」
迷うような顔を間近で見ちゃって、気になる。
「何?」
「・・やめておくよ。智くんは普通だから。」
「なんだよ、言ってよ和叔父さん。そんな言い方されると余計気になる。」
つい、腕を掴んだ。

「・・男の子が、いるんだ。僕のお客さんで。その子の車椅子の事で気になってる事があ
って。智くん、その子に体形が似てるんだよ。それで」
「それで?」
「手伝ってもらえたら・・、とか思ってしまったんだ。」
「え?」
「無理だよね・・。あ、気にしないで。」
和叔父さん、湯船につかりながら俺を見上げてごめんね、なんて笑うから、
「手伝いできるなら、するよ。」
思わず口走っていた。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー8

 和叔父さん、智くんの興味を引くもの、たくさん持ってます。


名前も知らないその子に、なぜか対抗意識が芽生える。俺より和叔父さんにたくさん会っ
てるかもしれなくて、口惜しい。

「でも、その子は片足を切断しなきゃならなくて・・・今は車椅子に慣れるのに必死なん
だ。」
あ、と手で口を押さえる。
「言っちゃいけないことだった。智くん、内緒だよ?」
「うん。・・・守秘義務、ってやつ?」
「そんなものかな。・・・さて、もう上がろう。湯あたりしそうだ。」
「あ、もうちょっとだけ待って。俺、まだ洗い終わってないし。」
「・・はいはい。」

それから和叔父さんはその話をしなくて、父さんの話も中途半端でもやもやしっ放し。
だから、
「母さーん、西瓜、二階で和叔父さんと食べる。」
二人分取り分けお盆に乗せた。


「和叔父さん、西瓜持ってきた。開けて。」
「智くん?」
部屋の中で動く気配がする。引き戸が開いて、
「・・ありがとう。」
「俺の分もあるし。入っていい?」
「しょうがないな。・・・聞きたいのかい?」
俺の顔を見て苦笑いする。
「だって、どっちも中途半端に聞かされたきりだよ?和叔父さん。」
せめてどっちか一つは最後まで聞かせて欲しい、お願い。と頼みこむ。
「・・・分かった。内緒に出来るね?」
「もちろん!」


「・・・それじゃあ、兄さんの話にしようか。」
「うん。・・・父さんの昔話なんて聞くの、初めてかも。」
「そんな嬉しそうな顔して。」
向かい合わせに座って体を乗り出すようにして言えば、こつんと頭を叩かれる。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー9

 一つの疑問が解決。


タブレットをテーブルの端に置き、西瓜をとる和叔父さん。。
「どこまで話したっけ?」
「母さんの家に行って、『お嫁さんにください』って言いかけたところ。」
ああ、と思い出して、笑みを浮かべる。

「『私が幸せになるために、枝里子さんがぜってい必要なんです。・・・』のあたりだった
っけ。」
「うん。その続き。」
和叔父さん、西瓜を食べるのをやめて、思い出すように遠い目になる。
「枝里子さんのお父さんは、枝里子さんをとても可愛がっていてね。つまり彼氏に対して
はとても厳しい人だったんだ。
その事も兄さんは聞かされていたから、もう緊張しきっていて。部屋に通される時も右足
と右手が一緒に出てたっけ。」
「ぷっ・・。ほんと?」
「案内してくれた枝里子さんのお母さんは、そんなとこも気に入ってくれたみたいだった
よ。にこにこ笑ってた。
部屋に入って座布団に座って。真正面にいる枝里子さんのお父さんを見た・・・その途端、
さっきの言葉をいい始めて」
言葉を切った和叔父さん。俺も思い出す。

『私が幸せになるために、枝里子さんがぜってい必要なんです。必ず幸せになりますからもらってくださ・・・』」

「・・変だよね?父さんが『お嫁さんにください』って言わなきゃいけないのに、もらってください、ってさ。まるで父さんが母さんの家に行くみたい。」
「婿養子?」
「うん」
「それは僕も思った。けど、後で聞いたら、兄さん、
『そんなこと言ってない』
って言うんだ。兄さんの頭の中では、今でも『枝里子さんをお嫁にください』なんだろう
ね。」
笑いながら、でもどっかさみしそうに続ける。
「和叔父さん?」
「・・あ、それからがまた、大変だったんだよ。」
「え?まだあるの?」
「うん。言い終わって、お辞儀したんだけど、勢い付きすぎて、座卓に頭をぶつけて」
「あたま?!」
「おでこだったかな?上に乗ってた茶碗が音を立てたくらいだから」
クスッと笑う。
俺はもう吹きだして大笑い。
「見たかった~~!」
「・・・・・・。枝里子さんのお父さん、もう呆気にとられてね。また、枝里子さんが我
慢できずに笑いだして、

『敬祐さんてばー。あんなに練習したのに!』

それを聞いたお父さん、毒気を抜かれて、言いたかったことも言えなくなって結婚、許し
たんだ。
以来、兄さん、枝里子さんの実家にもよく行くようになって仲良くしてる。」
智くんも知ってるね?そう言って話が終わった。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー10

「そんな事があったんだ・・。」
「そうだよ。智くんが生まれるずっと前の話。 面白かった?」
「うん。父さん、その頃からあんま、変わんないね。」
「変わってない。だから・・・」
「和叔父さん?」
「・・何でもない。さて、僕はもうちょっと仕事の続きをする。智くんも課題、残ってるんだろう?」
「あー、思い出させないでよ、和叔父さん。」
俺のへたれ顔に吹き出して、
「頑張れ。・・手伝えないけど。」
学生の本分、しっかり。・・・・・って、励ましてくれてる?
そこまで言われたら仕方ない。やこらせー、と立ち上がり皮だけになった西瓜を持って、
「あ・・、思い出した。和叔父さんの手伝いなら出来る。」
‘手伝い’がキーワードになって風呂場での会話を思い出す。
「俺と似てる子、なんだろ?おれ、夏休み中ならOK。連絡して。」
「・・・分かった。」
和叔父さんが了解してくれたのが嬉しくて、タブレットを見はじめた顔がどんなかなんて、
・・・見なかった。



翌日、和叔父さんはあっさり帰っていった。
父さんは、二日酔い。いつもの梅干し茶を飲みながら頭抱えてる。俺はそれを横目で見な
がら、加田浦さんと、和叔父さんと、まだ知らない和叔父さんの’俺に似ている子‘で頭
の半分が一杯になっていた。
残りの半分は、もちろん自分のこと。課題をやっつけないと単位を落とすから、本腰入れ
なきゃならない。
それに、もっと重要で切実な・・・、せめてガールフレンドが欲しい!

「ってなると、やっぱり出掛けないと。」
課題の半分しか埋まってないパソコンのディスプレイに呟く。

「母さん。俺、帰る。」
夕方になって、母さんに切り出した。晩ご飯食べてから行こうとしたけど、
「そう?明日盆踊りあるわよ?女の子の浴衣、見てきたら?」
「は?何で?」
「ガールフレンド探してるんでしょ?同級生だって何人かいるはずだから行って来なさい。」
そうか、同級生・・。
「でもやっぱり‘出会い’が欲しいよな・・・」
「行くの?行かないの?」
「どっちがいい?」
「行きなさい。ほら、‘花代’」
「えー、それで俺?」
「そうよ。」
うふふ、と笑う母さん。

さし出されていたのは、白封筒に『花代』と書かれた、盆踊りの参加費?みたいなもの。
だいたい五千円が相場らしい。出さなくてもいいみたいなんだけど、持っていった家の名前と金額が貼りだされるから、どこの家も必ず持って行く。


『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー11

 地元なだけに同級生とよく会います。


「よぉ、智。」
「あれ?石寺?」
翌日の、盆踊りの会場で、受付にいた石寺 成(いしじ みのる)と再会する。

「久しぶり。はいこれ。」
「お、サンキュ。まーな。おまえ、遠い大学行っちまうんだもん。」
「しょうがないだろ、あそこ(の大学)しか学部、無かったんだし。」
「いいけど。あ、みんな踊ってるぜ。」
「ふーん、じゃ、行ってみようかな。」

輪踊りの方へ行くと中央のやぐらの上で、
「あれ?丸開(まるかい)?」
マイクをもらって炭坑節を歌いだしたのは、同級生。
「あいつあんなに歌、上手かったっけ?」
「あ、能見君!久しぶりッ」
手を振ってこっちに来るピンクの浴衣姿は、
「未遊(みゆ)?」
こっちも同級生。そばへ来た未遊は、上から下まで俺を見て、
「能見くん、浴衣かっこいいね。」
「・・・ま、ね。」
着ているのは和叔父さんの浴衣。紺色の地に細い白糸が模様になっているやつ。自分で見てもまんざらでなかったから‘かっこいい’と言われるのがくすぐったいけど嬉しい。
「踊る?」
「えー?あんま覚えてないし。」
「大丈夫だって。行こ」
「わ・・うわ」
引っ張られて、輪の中へ。・・・炭坑節で、よかった。
どうにか手足を動かして思い出しながら前進。踊りが終わる頃には汗だくになっていた。

「はー、参った。」
やっと抜けだし、露店でかき氷を買う。
「えーっと、確かあっちに座れる所・・・」
「あっ、優奈!」
「え?」

どんっ。

「わ・・っ」
「きゃ」
「・・・・あーあ。」
辺りを見回した俺に二人連れの女の子の一人がぶつかり、間に挟まれたかき氷の容器が見事に潰れる。
「優奈ってば。だから気をつけなよって言ったのに」
「ご・・ごめんなさい!あの・・・」
「いや、俺はいいけど。・・・君のほうこそ、大丈夫?」
「私は、全然大丈夫ですから。・・・ほんとにごめんなさい」
「もう、早く行こうよ。花火、始まっちゃう。時間ないんだから」
「あ、待って。」
優奈って言う子も俺みたいに多分着物が濡れてるはず。咄嗟に引き止めて懐から手拭いを取り出す。

「これ。着物が濡れたままだと気持ち悪いだろ?使って。」
「でも・・」
「いいから。俺はもう帰るし」
「そんなこと・・・」
俺と、優奈ちゃんが押し問答になる。そこへ、
「優奈―、有加里(あかり)―、」
「あー、入江先輩!」

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー12

 おねーさま(センパイ)登場。


「あ、いたいた。何やって・・・、能見くん?」
「未遊?」
この子たちを探しに来たのは、同級生。
「何?どしたの?」
「いや、ちょっとぶつかって」
「入江先輩、知ってるんですかこの人?」
と、有加里ちゃん。
「まあね。」
「ちょうどいいや、未遊、優奈ちゃん?にこれ。きっと濡れてる。」
手拭いを差しだす。
「濡れてる?」
「うん、かき氷にぶつかったんだ。」
「・・・。わかった。借りる。ほら、行くよ二人とも。場所取り大変だったんだから。」
「はぁい。」
「でも、先輩・・・」
「いいって。能見くんなら知ってるし。」
じゃあね。
氷かかって濡れたんなら、ちゃんと拭く。未遊はそう言って優奈・・ちゃんの浴衣を拭き
ながら行ってしまった。

「優奈ちゃん、可愛かったな・・・」

ぶつかってビックリした顔。謝ってる時の仕草。浴衣からのぞいた・・項。
「あんな子、彼女に欲しいけど、あんなに可愛かったからもう彼氏居るんだろうな。」

・・・くしゅ。

「冷た。早く帰って着替えよ。」


帰って母さんに怒られた。
「せっかく和弘さんのを貸してあげたのに汚して帰って来るなんて。」
・・・不可抗力だったんだけど。
「さっさと脱いでシャワー浴びて。」
「へいへい」

風呂場から出て冷蔵庫を覗く俺に、母さんが声をかける。
「智、電話があったわよ、入江 未遊さん、から。またあとでかけるって言ってたわ。
・・・・もう彼女が出来たの?」
「違うよ、同級生。盆踊りの会場で会ったんだ。他に石寺とか、丸開とかもいたよ。」
答えながら、もしやと思う。

固定電話の前に座って鳴るのを待つ。    来た。
― もしもし」
「もしもし、あ、未遊?」
― 能見くん?よかった。携番聞いてなかったからこっちにかけたんだ。ちょっとドキドキした。」
「え?なんで」
― だって、能見くんのお母さんとなんて話すことないじゃない。」

あ、そうか。携帯でしか話さないもんな。出るのほとんど直接本人。


『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー13

さあ、クラスメイト・未遊の電話、何が出てくるんでしょう?


― でね。優奈がちゃんと謝りたいって。」
(え・・・?)
― 能見くん?聞こえてる?」
「マジで?」
― 当たり前でしょ。あの子、真面目なんだから。それで、明日家に居るの?」
「い・・いるいる。ずっと居るよ!」
― 大声出さなくってもいいって。じゃ、明日午前中に二人で行くから待ってて。」
「一緒って、未遊も来るのか?」
― なにそれ。優奈が能見くんの家なんて知ってる訳ないし、一人でなんて行けると思う?」
「・・・・。分かった。」
向こうでくすくす笑ってるのが聞こえる。
― 私の後輩なんだからね。そこのところ、忘れないで。」
最後に言って、切れた。

明日になったら、優奈ちゃんに会える。
「母さん、帰るの明日にする。」



翌日未遊と来た優奈ちゃんは、俺の目をくぎ付けにさせた。

「ほら、優奈、ちゃんと言わないと伝わらないよ?」
未遊の後ろにいた優奈ちゃん、押し出され、俺と目が合ったと同時に、
「あ・・あの・・・、昨夜は、済みませんでしたっ」
勢い付けて頭が下げられる。ビックリした。
「あ・・うん。」
「・・、これ。ちゃんと、洗いましたから・・・」
アイロンまで掛けられた手拭いが両手で差し出される。つい、まじまじ見てしまった。
下を向いたままだけど艶光りしてる黒い髪。昨夜とは全然違う、雰囲気。こっちの方が地
なんだろうけど。

「ちょっと、能見くん、何か言ったら?黙ってると優奈だって困るよ?」
「あ、・・ありがとう。
いや、何か・・・可愛いな、って。あ・・、ごめん、彼に怒られるね。」
つい口にして、しまった、と慌てて謝る。
「能見くん。」
「だからごめん、って。そんなに怒ることないだろ、未遊。」
「ちがーう。優奈に彼氏なんていないよ。何誤解してるの?」
「え・・、だってこんなに可愛いし。」
「あー、もう。とにかく、まず受け取りなさいよ、手拭い。優奈が顔、上げられないでし
ょ?」
そうだった。
もう一度ありがとうと言って、手拭いを取る。偶然指先が触れ合ってドキリとする。

「未遊」
「なあに?」
「さっきの、ほんと?」
「ん?」
聞きたい事は知ってるはずなのにわざと聞き返す。
「だから。・・・優奈ちゃんに・・、彼・・・」
「いません、そんな人。」
未遊が答えるより先に優奈ちゃんが不意に顔を上げて答え、ぱっと向きを変えて外へ飛び
出していく
「優奈!」
「あっ、待って!」
未遊が追いかけ、俺も続けて後を追い・・・、
「あっつ!・・・あちっ・・・」
日向のアスファルトに裸足で飛び出して火傷しそうになった。
「能見くん!?」
未遊の声に優奈ちゃんも立ち止まってこっちを見る。
「みゆ~~、頼むよ、優奈ちゃん連れて来て」
「・・・・はいはい。優奈」
慌てて日陰に入って未遊を拝むようにすると、ぷっと吹き出した未遊が優奈ちゃんを呼び、
優奈ちゃんがおずおず戻って来る。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー14

さて、告白した結果は?


「あのさ。・・・ごめんね?俺、変なこと言って。」
「いいえ・・・。」
続きが出てこない俺に、未遊が、
「能見くん、聞くことがあるんならさっさと言って。私たち時間ないんだから。」
と、腕時計を見る。
「・・・。
優奈ちゃん・・、彼、いないんなら・・・、俺と、・・・・付き合って、みないか?」
え? と
目を見張る優奈ちゃんへ、俺も赤くなりつつ、
「その・・、一目ぼれ、みたいなんだ、俺。・・お願いします。」
頭をさげる。

「あの・・・、私」

次の言葉に緊張する。

「・・・はぃ」

う・・・わ。
OKの言葉に下を向いたままの顔がにやける。けど、
「優奈、いいの?」
「なっ・・未遊!なんだよそれ!」
水を差すような言葉にがばっと体を起して一歩踏み出し・・・、
「熱っ・・!」
まともに体重をかけてしまい、足の裏が焼けそうで引っ込める。二人が目を見張ったあと
吹き出した。

はァ・・、かっこ悪。

「・・大丈夫ですか?」
「あ、うん、大丈夫。ありがとう。」
心配してくれる優奈ちゃんに笑うと、ぽっと赤くなる。ほんと、可愛い。

未遊に促され、三人で家へ戻る(もちろん日陰を)。
改めて、
「能見 智です。」
「新村 優奈です。」
「「よろしくお願いします」」
挨拶する。
「あ、新村(にいむら)って言うんだ。」
「はい」
「そしたら・・・、優奈ちゃん、って呼ばない方がいいのかな?」
最初から名前呼びはマズイか?とも思ったけど、
「いいんじゃない?優奈、そういうとこはっきりしてるから嫌なら’嫌’って言うし。」
「先輩」
優奈ちゃんが未遊の腕を引く。
「・・ほらね?」
「もうっ」

「智―、なにして・・・、あら、こんにちは。」
玄関の話し声に母さんが出てくる。
「あ・・こんにちは。」
「こんにちは。お邪魔しています。」
「まあまあ。智、何してるの?女の子立たせたまんま。
どうぞ上がって。・・しょーがない子ね。」
挨拶する二人を見て俺の横にまで来て、大歓迎の笑顔。


『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー15

智くん、道を間違えて(?)前進中。



「あ、いえ、ちょっと借りたもの返しに来ただけですから。」
「あの、もう帰るところですから。」
「そう・・?
じゃ、智、送ってあげなさい。」
「いいえ、大丈夫です。」
「・・お邪魔しました。」
「あ・・、そこまででも、行くよ。」
母さんにジロッと見られ、慌ててサンダルを履く。二人は、その足元を見てくすくす笑いながら外へ出て、俺も後へ続いた。




「おひさ。」
「わ、内海焼けてるー」
「屋外労働してたからな。涼二の方こそ」
「へっへっへ、彼女とおデート。テーマパーク行ってきた。」
「・・智、何ニヤニヤしてるんだよ?」
新学期、久しぶりに全員集まった学食で内海に聞かれ、鼻高々でスマホをかざす。

「じゃ~~ん。とうとう俺にも彼女が出来ました。」
「えっっ?!」
「わお、いつの間に?」
「・・・・かわいい娘(こ)だね。」
待ち受けには優奈ちゃんがこっちを向いて笑顔で手を振っている画像。
「ただ今絶賛恋愛中でーす。」
あのあと携番・メアドを交換し、週三くらいの割で連絡し合っている。
「へえー、智がねぇ」
「・・そんなに、よく話すことがあるな。」
「あるんだよな、それが」
「あー、分かる。俺だってそうだったもん。」
思い出してニヤつく涼二。
「でも、その子って年いくつ?高二?」
と聞く和泉に
「そ。だから今のうちに仲良くなって、一緒の大学に通いたいな・・・、とか」
目下の希望を打ちあける。
「それって、この大学受けて合格しろってこと?」
「・・・大胆」
「いーじゃんか。」
「いっそ留年すれば?一緒に居られる時間が長くなるぞ。」
「内海」
いつもはノリのいい内海の、妙に尖った言い方にウキウキしていた気持ちがしぼむ。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人

「あ・・、悪。そんなつもりじゃ・・・」
「・・もしかして焦ってる?内海」
「ばっ・・、そんなんじゃないって!」
彼女がいないのを気にしてるのか、と涼二の振りに顔を赤くして、いるらしい内海が慌てて否定した(日焼けで分かりにくい)。
「たださ、飲みに行けなくなるとか、泊まれなくなるとか・・。」
「なーんだ、そっちの心配?」
「だったら内海の部屋に場所変えする?」
「それはちょっと」

話が流れて、拗れそうになった雰囲気が元に戻っていく。ほっとした。


「智、ごめんな。」
「いいって。俺も浮かれ過ぎたかも。」
講義が終わって帰りかけ、校門そばで内海が待っていて俺に謝って来る。こっちも少し反省してそう答えると安心した表情で笑った。
「おまえも早く彼女作れよ。」
「ああ。・・考えてみる」


九月は台風もあって雨降りの日が多かった。そのせいであのマンションへなかなか行けない。そうなると逆に行きたくなってしまう。

「今日は大丈夫そう。」
天気予報を気にしながら待っていた二十六日。今朝まで降っていた雨もようやく止んで、午後には雲も切れ、青空が見える。夜が待ち遠しかった。




今夜は、ドキドキした。

いつものように準備してボリュームをあげると、あの部屋も人が入って来たばかりのようだった。



―ここは?
―レンタルルーム。鍵が空けば借りられるんだそうだ。一度来て見たかったから、頼んでおいたのさ。
―なぜそんなことを?
―決まってるじゃないか。おまえ、いつも声抑えてるだろ?ここならどれだけ声を出しても・・・・
―昌吾(しょうご)さん。
―照れるな。俺も聞きたい。おまえの声をな
―・・・ん・・っ・・・・

キス、してるのかな。今回は、大人同士みたい。声が二人とも渋い。

―昌吾さ・・・・、あ・・
―脱がせるってやつは、気分が盛り上がるな

シュッと音がした。ネクタイでも外してそう。会社員同士?でも片方の人、敬語使ってる。

―・・・・? 昌吾さん?何を

どさっ、て音が聞こえる。なにしたんだろ?

―動けないだろ

相手がくすくす笑ってる。他に何かしてるみたいだ。ごそごそ音がする。

―や・やめてください・・・・、こ・んな
―いいじゃないか、誰か見てる訳じゃなし。

た・確かに見てはいませんけど。‘しょうごさん’、相手の人に何したんだろ。声がすっごく恥ずかしそう。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー2



―・・・いい眺めだ。
―・・・・
―鏡でも見るか? そそられるポーズをしている。
―結構です。堪能したなら解(ほど)いてください

うっわー、相手の人、怒ってるよ。

―そう言うな。

カチャカチャと金属音。これって・・、

―しょ・・・・っ

声が途切れた。もう何回もこんな展開を聞いてるから何となく次が分かる。

―・・・っう・・ンあっ

やっぱり。ベルトはずして、・・内に手を。

―いつもより感じてるな。もう硬くなって
―見・・・、見ないでください
―どうして?せっかく椅子に座らせて手をどかせたんだ。楽しまない方がどうかしてる

手をどかす?

―そんな顔をする。だからおまえをこうしたくなる。
―・・・っ。ぁ・はアッ・・。

なんか、俺、いつもより興奮してる。しょうごさん、相手の人に、何を・・?

―・・・くぅ・・・・ん・・っ
―あいつらには見せられない顔だな、紫朗(しろう)

しろうさん、が相手の人か。多分‘しろうさん’、‘しょうごさん’のこととっても好き
なんだ。だって一度も拒否してない。

―昌吾さん・・・・

うー、もろに腰にくる声。俺も名前呼ばれたい。

―一休みするか?
―・・・・好きにすればいいでしょう?

あ、ちょっと拗ねてる。理解るけど。しょうごさん、笑ったみたい。

―わかったよ。そんなおまえをつまみにビールでも飲みながら休もう。
―し・・・

しょうごさん!・・・それ、だめだよ。 俺、思わず立ち上がっちゃった。わ、やば。

―・・・・・おい、ほんとかよ

しょうごさんの声が遠くに聞こえる。別の所にいるのかな?

―紫朗、ちょっと出てくる
―昌吾さん?

ええ?出てくる・・って。部屋から出るってこと?こっちも焦る。でも、早くも玄関、あ
たりで靴をトントンやるような音が。

―昌吾さん、どこへ?

ガチャッとドアの開く音。ほ・本気?しろうさんのこと、どうするの?

―昌吾さん!



『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー3

智くんのドキドキ、今日はひとつだけじゃないみたいです。



出てっちゃった。しろうさん置いて。どーすんだよ。・・・・・って俺が焦っても仕方な
いんだけど。でも、気になる。かといって機材放り出すわけにもいかないし。
 マンションの出入り口から、人が出てくるのが見えた。背の高い、スーツ姿。きっとし
ょうごさんだ。急ぎ足でどこかへ行くのを気付かれないように公園の明かりの無い所へ移
動して見送った。少し迷ったけど、座りなおしてもう一度マイクをあの部屋に向け直す。

部屋の中は静かだった。しろうさん、てっきり怒鳴ってると思ったのに。あれ?でも、何
か聞こえる。小さな音。ボリュームを上げた。

―・・・・・―――さん・・・・
しろうさんだ。もしかしたら・・・、泣いてる?
―・・・・・

聞いてられなくなってマイクをおろした。胸が痛くなる。

「そうだよなあ。男同士だもんな・・・・。」
これを始めてからそう経っていないけど、男女だけじゃなく、同性同士もあの部屋を使っ
てるのを聞いてびっくりした。でも大体同性同士の方が聞いてて切ない。世の中から見て、
普通じゃないから。俺の回りにだっていない。いたら、ちょっと避けるかも。そういう相
手の頭の中で自分がどんな事されてるか・・、想像したらゾッとする。

「んでも、好きになったら関係なくなるのかなあ。」
自分の声が大きく聞こえて、慌てた。そこへ誰かが近づく足音が。
(まず・・・、しょうごさんか?)
急いで影になってる所へ隠れる。やっぱりそうだった。音を立てているのはコンビニ袋。

買い物行ってたんだ。

(はやくしろうさんのとこ、行ってあげてよ。泣いてるんだから。)
口に出せない分、ぎゅっと拳を握ってしまう。
(しろうさん、怒るだろうな。放って行っちゃったもん)
ちょっぴり期待してまたマイクを向けた。

―紫朗?

あ、始まってる。

―・・・
―どうした?

どうしたって、あなたのせいだよ!こっちで勝手に突っ込んだが、

―・・・・、お帰り・なさい・・・

はい?今、何て?

―・・・・。泣いていたのか?

そ・そーだよ、しろうさん、泣いてたんだよ、しょうごさんいきなり出てっちゃうから。
しろうさん、怒んなよ!

―・・・いいえ
―おまえを置いて行くわけがないだろう?何にもないから仕入れてきただけだ。

コンビニ袋のガサガサ言う音がする。

―・・はい・・・。
―そんな顔を

あ・・・、キスしてる、みたいだ。湿った音が耳に入る。

―ん・・・ふ・ぁ・・・っ、ん・ぅ・・
―紫朗・・・

こ・声が、すっごく甘い。生唾飲み込む。
もうっ、こっちで怒ってたの、馬鹿みたいじゃないか。しかもまだ続いてるし。

―・・・しょうごさ・・・・ん・・・
―・・・・めしよりおまえが先だな

嬉しそうな声で言わないで欲しい。も、勝手に盛り上がってください。でも、聞かせてもらいますからね、だ。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー4

 智くん、聞きながら興奮している様子。
そしてRがつくので、18才未満の方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールして、どうぞ。




























―立てるか?
―・・大丈夫・で・・・
―おっと

ガタタッと、家具がこすれる音がした。

―その格好もそそるな
―誰のせいだと、っ、・・・は・・んっ、

文句が喘ぎ声になる。しょうごさーん、何して・・・。

―こ・ここではっ、やめてくださ・・っぅ
―テーブルの上だと食べ物になった気分か?

テ・テーブルっ?!ど・どんな格好で?

―あ・・んぅ。・・・んぁっ、あぁ・・

う。こっちの方が。どうする、マジでやばい。ト・トイレ・・・。

―だ・・・だめ、です・・

き・聞きたい。でも、限界。機材置いてトイレに急ぐ。走れなくて、早足しかできない。
「う・・・、急がない、と・・・」
自転車で来てるからジーンズ汚して帰れないし、必死になった。ジッパーを下ろすのまで刺激になる。
肩で息をしてくつろげた隙間から指で触ると、下着がもう既に湿っていて盛り上がってた。
「・・っ、はぁっ、う・・」
合わせの部分をかきわけ、自由にしてやると、そこはもう硬く屹立して透明な滴を溢れさせてる。
「あ・あ・・、くぅぅっ・・」
興奮しすぎていたのか、あっという間に達していた。荒い呼吸をしながら手を洗って、後始末した。こんな事になるなんて思ってなかったから、何も持ってなくてしかたなく個室のペーパーを大量に、、使う。
(今度はタオル要るな)

頭の隅にメモ。でもって、急いで引き返した。マイクを向ける。あれ?声が・・・、

―・・・そんなによかったか?

しょうごさんだ。

―落ち着いたろう?
―・・・あなたの・・せいじゃ、ないですか・・・
喘ぎながらしろうさんが答えてる。ちょっと残念。聞きそこなっちゃったみたいだ。
―本番はあっちだ。じっくり聞かせてもらう。
―昌吾さん・・・・
うっわ、声まで紅くなってる。これからどうなるんだろう?俺、保つかな?

―・・・

あれ?聞き取りにくい。部屋の中を移動したんだろうか?
「あ」
水の流れる音。
「うわー、お風呂だ・・」
浴室に入ると音は聞こえない。それにいつまで入っているのか分からない。一回、三十分も待たされて結果電池切れしたことあったんだ。
「・・しょーがないや。帰ろ。」
部屋に戻って来て今日の分をPCに落とす。
普段なら、聞きながら、なんだけどさすがに今回は出来なかった。
「あんな強烈なの、初めて聞いた」
どんな仕事をしてる人たちだったんだろう?

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー5

  智くん、現実が呼んでます。  そして。




急に着信音がしてビクッとする。この音は、
「優奈ちゃんだ。」

::もしもし」
::・・あの、ごめんなさい、遅くに」
::いいってそんなの。声が聞けてうれしい。」
時計に目をやれば二十二時半を回ってる。
::どうかした?」
::・・・、明日、競技会があって・・・」
::え?そうなの?だったらもう寝ないと」
::・・・・うん。」
::ゆうな、ちゃん?」
声が震えてるみたいで名前を呼ぶと、
::あの、能見さん・・。言ってもらって、いいですか?」
::言う、って、何?」
::・・・頑張れ、って・・・」

あ!

::うん。
  頑張れ、優奈ちゃん。俺は遠くて応援に行けないけど、ここから、応援する
  から。頑張れ。」
:: ありがとう!能見さん。
  おやすみなさい。」
::おやすみ。」

電話を切ったあと、少しだけ後ろめたかった。着信履歴が一時間おきくらいにあったから。
「ごめんね優奈ちゃん。あそこ行く時は持っていかないからさ・・」
OFFにしたスマホに謝りながら、
今度はその事・・・話しておいた方がいいかな?  と、ぼんやり思った。








さて、ちょっと休憩を。そろそろ年末年始。 番外編的に、智くんが聞いていた二人に登場してもらいます。
希望があった昌吾と紫朗のあの部屋のこと、を、それぞれの視線で。





――  事の始まりは、昌吾さんの一言だった。

「紫朗、明後日の晩、空いてたな?」
「え?はい。昌吾さんが何も入れるなと言っていたので空けてあります。」
社長室で聞かれ、答える。
何を言っているのだろう?随分前から言っていたからスケジュールを調整してあったのに。
「俺じゃない。おまえだ。」
「私、ですか?」
首を傾げる。確かに自分は社長でもある昌吾と行動を共にすることが多いが、今回はある
場所の下見・・、とだけ言われたので送迎だけすればいいだろうと用件をひとつ入れてい
たのだ。








『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー6

昌吾さんと紫朗さん。どんな人たちなんでしょう?


「何か用事があるのか?」
「ええ、まあ。」
「断れ。」
「昌吾さん・・・」
ついため息が出そうになる。
「どうせ大した用事じゃないんだろ?」
「・・緊急ではありませんが、後回しにすると面倒なんです。」
「俺も手伝うから付き合え。」
「社長。」
「二人きりの時は肩書きで呼ぶな。言ってあるはずだぞ。」
「ですが・・・あっ」
眉間にしわを寄せ、文句を言った昌吾が、いきなり紫朗の腰を抱き顎を捉え、唇を重ねる。
抗議しようとしていた紫朗の、半ば開いていた口は易々と昌吾の舌の進入を許し、すぐに口腔内を占領された。
「ん・・、んぅっ。は・・っぁ、う」
ぐるりと周回し、熟知した場所をことさら舐め回す。逃げる紫朗の舌を絡め取り、吸い上げる。
「・・ぁ、ふ・・、め、です・・しょう」
角度を変えようと僅かに離れたすき間に言えば。言葉を飲み込ませるかのように唇が密着し、唾液を送り込まれる。
飲み込みきれない分が、つ、と顎へ伝って、昌吾の指を濡らした。

かくん、と紫朗の膝が抜け、唐突に唇が離れる。
「・・付き合え。いいな。」
抱き支えたままの昌吾が近い距離の紫朗と目を合わせてもう一度言う。
下の唇を親指でなぞられ、その感触にぞくりと背中を震わせて、観念したように、
「・・わかりました。」
昌吾の望む返事をすると、にっこり笑顔になって、
「よし。」
ぎゅっと抱きしめる。紫朗の顔がほんのり赤くなった。




昌吾さん――辻口社長、は、小さいながら腕のいい職人を抱えている町工場の社長だ。
多少気の荒い者もいるが、年齢に関係なく辻口を慕ってくれ、子供のように思っていたりする。
紫朗もそうだった。そしてそれ以上に・・・恋していた。


(俺が、同性しか愛せない人間だと気付いたのは、高校に入ってから。・・あの頃はそんな自分が認められなくて、荒れたっけ。)
誰かを本気で好きになれば、女性と付き合える―――。
そう思って、来る者拒まず、手当たり次第に付き合った。幸か不幸か人並み以上の容姿に熱をあげる女子は多く、いつの間にか‘たらしの長坂’などと呼ばれるようになって。
それがある日、
「おまえが、長坂 紫朗か?」
声をかけられ、出会ったのが昌吾さんだった。

「おまえがこの間振った佳苗って子、覚えてるか?」
強い視線に押され、頷くと、昌吾さんはつかつか近付いて来て、いきなり頬を平手打ちされた。
「いい加減にしろ!佳苗はもうちょっとで手首切るとこだったんだ!」

聞かされた内容より、平手打ちより、昌吾さんの目に声が出せなかった。そして、その時から昌吾さんに魅かれ・・、今に至っている。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー7

さて、昌吾さんと紫朗さん。智くんが聞いているとは知らずに。
Rが付きます。年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な人のみ。スクロールしてどうぞ。

























「ここ、ですか?」
「ああ。」
下見するにはあまりに普通のマンションを見上げ、紫朗は思わず昌吾に聞きなおしていた。
「見るのは部屋だ。外側じゃない。」
行くぞ。そう言って鍵を見せた昌吾に続き、階段を上がる。


見回しても何のへんてつもない。
「普通の部屋じゃないで・・・、昌吾さん?」
「ああ、レンタルルームだからな。申し込んで、その時空いてれば借りられる。」
「レンタル・・・?どうして」
「決まってる。
おまえがいつも声を押さえてるからさ。ここでなら・・」
「昌吾さんっ」
顔が赤くなる。そんな俺に目を細める恋人は、すっと近付き顎に指をかけ、始まりの口付けを。

優しく重ねられる唇から促すように舌先が伸び、開いた歯列を越えて。
「・・ん・・んっ。ぅっ・・ん、ふっ」
自在に口腔内を愛撫して俺に声をあげさせる。
「紫朗。」
角度を変えるたび名前を囁く昌吾さんに、もう息が上がってしまう。
舌を絡め取られ強く吸われ、膝の力が抜ける。
「・・ほら、ここに座れ。」
ダイニングキッチンのような場所の、テーブルセットから引っ張った椅子に座らせられ見上げれば、フッと笑ったあと、ネクタイに指をかけ引き抜く昌吾さん。少しかがんで、
背広の釦を外し、そのまま脱がせるように肩を抜き・・。
「昌吾さん?」
中途半端に脱がされた上着が背もたれに引っかかり、動けない。昌吾さんは、にっ、と笑うと今度は両膝を持って広げ、椅子の足に俺の足をかけ、広げさせてしまった。
「なに、を・・」
少し下がってじっくりと俺の姿を見回す。
「・・いい眺めだ。鏡を持って来ておまえにも見せたいな。」
冗談ではない。それでなくても股間に視線を浴び、恥ずかしいのに。
「結構です。堪能したなら解いてください。」
「そう言うな。」
唇に笑みを残したまま、ベルトに手をかけ、何のためらいもなく手を入れる。
「しょ・・・・、っう・・ンあ」
「いつもより感じてるな。」

・・そう、そこはもう既に形を成しはじめている。

「見・・・、見ないでください」
待ち望んでいた、と思われたくなくて体をひねって見たが、
「どうして?せっかく手をどかせたんだ。楽しまない方がどうかしてる。」
そう言って下着のなかで硬くなった雄芯を取り出されてしまった。
頬が熱くなり、唇を噛む。
昌吾さんの喉が鳴った。

「そんな顔をする。だからおまえをこうしたくなる。」
昂ぶりを手が包み、扱かれて抑えきれない声が出てしまう。
「・・・っ。ぁ・はアッ。・・・くぅ・・・・ん・・っ」
「あいつらには見せられない顔だな、紫朗。」
一度手を止め、俺の顔を覗き込む昌吾さんも雄の顔になっている。
「昌吾さん・・・・」
もっと、ちゃんとして欲しいと名前を呼んだ。けれど、
「一休みするか?」
焦らして。
「・・・好きにすればいいでしょう?」
つい意地を張ってしまった。




『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー8

R、に入ります。今日はまだABC・・のAくらい?ですが、年齢に達していない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫!な方はスクロールして、どうぞ。






















昌吾さんはクスッと笑って、
「わかったよ。そんなおまえを鑑賞しながら休もう。」
「し・・・」
ビールでもあるかな、と背中を向けると備え付けの冷蔵庫を開け、中身が空っぽだと分かると外へ出ていく。

俺は突然、取り残された。

一人になると、静かになる。それほどここは音の出るものがなく、聞こえてこない。体の自由を取り戻そうと身動きしたけれど、なかなかうまくいかず苛立ち、何故か泣きそうになった。

「・・・・・しょうごさん・・」
どこへも行かない、戻ってくる。と思っても、こみあげてくるものが。


「紫朗?」
ハッとして顔をあげる。ドアの開く音は聞こえなかった。

「どうした?」
帰ってきた、とじっと見上げていたら訝しげに名前を呼ばれる。
「・・・・、お帰り・なさい・・・」
咄嗟に出たひとこと。
「・・・・。泣いていたのか?」
「いいえ・・」
「おまえを置いて行くわけがないだろう?何にもないから仕入れてきただけだ。」

コンビニ袋のガサガサ言う音がする。

「・・はい」
「そんな顔を」
見おろしていた昌吾さんの指先が俺の顎を掬うように持ち上げ、顔が近付く。
舌が口の中を優しく強引に侵略していく、その感覚に声が。
「・・・しょうご・さ・・・・ん」
「めしよりおまえが先だな」
唾液で濡れた唇を親指でなぞられ、体の奥がカッとなった。


「立てるか?」
「大丈夫で・・・」
「おっと」
無理に広げられた脚が痺れてふらつく。ガタタッと椅子が音を立て、テーブルに体を預け
るような姿勢に。
「その格好もそそるな。」
「誰のせいだと、っ・・・は・んっ、」
昌吾さんとテーブルに挟まれ動けないのをいいことに、この人は俺の脇に手を入れテーブ
ルに乗せてしまう。
さらに、シャツを引き出し肌を晒した。まさか?
「こ・ここで・・は、ぅっ」
「テーブルの上だと食べ物になった気分か?」
口の端だけをあげて笑い、本当に歯を立ててくる。

「あ・・んぅ。・・・んぁっ、あぁっ」
じん、と痛みが走ったあとざらりとした感触。何か所も繰り返され、そこから疼きが全身
に広がって一点に集まっていく。
「だ・・・だめ、です・・」
自身の、硬くなっていく雄を感じる。だが、昌吾さんはまだ何も脱いでいない。
(汚してしまう、のに)


『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー9

こちらも本格的R(R18、か?)に入ります。お風呂から・・・。なので、年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫。な方はスクロールしてどうぞ。






































「昌吾さ・・っ、も、離し、っあ!」
力が抜けそうな腕で押し返そうとした、のに。
温かな場所に雄が含まれ、何かが絡みつく。腰が、撥ねた。
「・・・っぐ」
「・・っぁああ――ッ」
口の奥に屹立を押し込んでしまったらしくえづいた昌吾さん。その刺激に耐えきれず、逐情してしまう。
はあ、はぁ、と荒い息をしながらテーブルに手をつき体を起こす。と、昌吾さんが私の放
ったモノを飲み込み、顔をあげるところだった。
「・・・そんなによかったか?」
唇の端から伝う白い筋を指で拭いながら聞かれ、かあっと熱くなる。
「・・・知りませんっ」
悔し紛れに言ってみても効果はない。それどころか、
「本番はあっちだ。じっくり聞かせてもらう。」
おまえのイイ声を、と言われ、ただ、
「そんな声、出しません・・・」
しか言えない。
「とりあえず、風呂だな。」
逆らう気もなくなり、支えられながら浴室へ向かう。

さすがに男二人が入れるほど広くはないが、一人で入るには十分な大きさの湯船に昌吾さんから浸かってもらい手早く体を洗う。
「・・・なんです?」
ずっと見られていて恥ずかしくなり聞けば、
「いや、きれいに動くな、と思って。この体を独占して啼かせているのは俺だけだと・・・・っぷ」
「変なこと、言うからです。」
シャワーを浴びせ、わざと澄ました。
「・・くくっ、外じゃ‘表情が変わんない’なんて言われてるのに。」
俺の前だとよく変わる。笑って立ち上がる昌吾さんから、つい視線をそらした。
「どうした?」
浴槽は跨いで出てくるタイプで、存在を主張するそこをまともに見られないのに、わざと体をこちらに寄せてくる。
「・・あ」
逃げる前に両腕で捕まえられ背後に密着されてしまう。尻の狭間に熱を帯びた剛直が押しあてられぶるっと全身が震えた。

「石鹸、取れ」
「・・ボディソープ、です・・・ッ」
耳元の指示にささやかに抗うと、両方の胸元を摘ままれびくびくする。
「可愛くないそ。どっちでも同じだ。」
声と舌が耳に入り声が出てしまう。それに満足そうに低く笑い、早く、と急かした。

「あ・・、ぁ・あっ。や・・んっ、そ・・・、んあ」
「こっちは喜んで、嫌だも言わずよく呑み込んでるが。・・ほら」
「はあ・・ッ!」

タイルの壁についた両手を握りしめ、抜き差しされる指に翻弄されたあと、ずぐっと音が
立つほどぬかるんだそこへ昌吾さんのモノが突き入ってくる。
侵入してくる感覚に頭をのけ反らせていた。
「あ・ぁ・あ・・っ。ゃあっ、んう・・っ、そ・・こは」
「・・今日は、反応が・・はやいな・・っ」
腰を掴んで固定され、不規則に突きあげられもう限界が、来て・・。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー10

番外編?の昌吾さんと紫朗さん。今日でようやく終わります。 で、もちろんR18なので、年齢に達しない方、苦手な方はどうぞご遠慮ください。大丈夫!と言う方のみスクロールして、どうぞ。




























「ビールでいいか?」
「・・ください」
二度の放出で息が切れている。基から体力のある恋人は俺を支えてもよろける事さえなく、腰にタオルを巻いたまま缶のプルタブを開け一気に炭酸を流し込む。
ベッドに腰を下ろし、ゆっくりアルコールを含み飲む俺とずい分な差に、つい苦笑が漏れた。
「余裕だな、紫朗」
「・・そんなんじゃありませ・・・」
押し倒され、見あげる昌吾さんの顔に、さっきの言葉を思い出す。両腕を首に絡めて引き寄せ口付けて、
「ここなら、どれだけ声をあげてもいいんでしょう?」
誘う。

「ああ。俺が満足するまで聞かせろ。」
喉を鳴らしたあと獰猛な笑いを見せて言い、まるで貪るように愛撫を始めた。

「あ・・、ぁ・あっ。あぅ・・っ、んっ、しょ・・ご・・。昌吾さ・・、んはぁっ」
寝室の中は俺の声で溢れている。
シャワーを浴びたのが無駄になるほど汗ばみ、体が熱い。

「はぅっ・・、ん・・ぁ、・・・ご、さ・・、しょ」
力が抜けてシーツに落ちた手をもう一度伸ばし、名前を呼ぶ。
「ん」
気付いてくれて、倒した背中へしがみつく。
「あ・あぁ・・っ、しょ・・ご、さっ、・・・もぅ・・」
「もっと、か?・・今日、は・・、欲ばりだ・・・っ」
「違・・ぁ、ふっ。や・・、ひっ」
サオを握られ、鈴口からこぼれ続ける蜜を塗りこめるように指が押し擦る。悲鳴じみた声をあげ背中を撓らすと、
「く・・、紫朗、そんなに・・、締めるなっ」」
昌吾さんの動きが止まる。
けれどすぐ、律動が俺を揺さぶり、
「ぁあ・あっ。昌吾・・、しょ・ご、さ・・っ、も・・、く・・、ィく・・・」
「いい・・ぞ。い・け・・っ」
最後の追い込み、と腰を打ちつける音が立つ。
声にならない声に口を開け、昌吾さんの背中に爪を食いこませながら達し、昌吾さんもグンと嵩を増して、白い熱で俺の内側を濡らしていった。


『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごと

想像しか出来ない大学の学園祭。。知ったかぶりたくさんでお送りします(大汗)。どうぞ温かく見守ってください~~。



十月に入ると文化祭に向けて学内がざわめきはじめる。まあ、俺たちの学部は地味だから
内海たちのいる学部なんかと合同でひろく’環境‘をテーマにしたブースを作る事になった。

「おい、これは?」
「あ、そのパネルに貼って。」
準備に追われていた俺に内海が例の格好でやってきた。
「これ、本当にやるのか?智。」
「ああ。面白いだろ?」
「・・けどなあ」
「あら内海くん、それなの?・・・っ、似合う」
「ちぇっ、笑いながら言うなよ、久賀原。」
同じ学部の、数少ない女子の久賀原 貴美が内海を見て目を見張り、笑いをこらえながら感想を言う。

「明日が楽しみ。」


文化祭当日。
午後からが当番だった俺は早めに出て大学の最寄り駅で待ち合わせた。

「智。」
「あ、和叔父さん。」
「呼んでくれるなんて思わなかったよ。」
「だって、アイディアの半分は和叔父さんじゃないか。」
学校へ向かいながらそんな話をする。

「でさ、内海がまた似合うんだ。」
「そう?」
「うん。女子にも誉められてた。」
「それは楽しみだね。」


賑やかな学内をひやかしたりしながら俺たちのブースに。

「いらっしゃい。」
入ってすぐ内海を見た和叔父さんが、立ち止まってしまった。



『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー2

智くん、大好きな和叔父さんと学園祭を楽しんでます。





部屋は半分を現代に、残り半分を江戸時代に分けて‘環境’を色々な視点で見比べる展示にしている。
他に簡単なクイズもあって、全問正解者は武士の格好をした内海から葉脈だけにした木の葉の栞や景品をもらったり、写真を撮ったり。
内海はもう開き直って楽しんでいる。肩幅もあるし背もあるから着物が似合うんだよな。

「お疲れさん、内海。」
「おう、・・・・誰?」
「俺の叔父さん。和叔父さん、こいつ内海。塾友。」
俺の横にいる和叔父さんを見た内海が首を傾げたので、お互い初対面だったと紹介する。

「はじめまして、能見です。いつも智がお世話になっているようですね。」
「内海です。そんなことないですよ。仲良くやらせてもらってます。」
武士の格好の内海とジャケット、デニム姿の和叔父さんの握手は何だか不思議な感じだ。
「・・良く似合ってますね。」
「ありがとうございます。なんか着物着ると背筋伸びて。」
「あ、和叔父さん、展示見てってよ。
内海、後で。」

展示を見て、ちょうど昼時になったので、食べ物を出しているエリアへ。

「内海くん、だっけ?よく似合っていたね、あれが。」
オムそばを食べてる和叔父さんがまた言う。
「最初抵抗してたんだけど、じゃんけんで負けてさ。最後は俺と内海と女の子。三人で勝負したの」
あの時の内海の顔を思い出して笑ってしまう。
「あれ、じゃあ、じゃんけんで負けてたら智くんがあの恰好だったのかい?」
「・・・思い出させないでよー和叔父さん。俺じゃあ似合わないよ。」
「そんな事ないと思うけど」
何かついたのか唇を舐めながら話す、その口元に目が行く。
(なんかすげーエロくない?和叔父さん)
「智くん?・・・落ちるよ。」
「え?あっ」
フライドポテトを入れたカップが危うく手の中から滑り落ちそうになって慌てて持ち直す。
「あ・・っぶなかったー」
「無事だったポテト、僕にももらえる?」
「うん、どうぞ。」
「ありがと。」

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー3

あら?和弘叔父、待ち受けの優奈ちゃんを見て、どうかした?




ふと思い出す。

「浴衣なら着たよ、この間実家に帰った時。確か写メ撮ったと思うけど、見る?」
「見たい。」
ちょっと待ってとスマホを取り出しONにすると優奈ちゃんの待ち受け。
「この子は?」
身を乗り出していた和叔父さんが聞いた。
「優奈ちゃん。盆踊りの時ぶつかって、今は・・・彼女。」
「・・・・そう」
照れくさそうに説明する俺に和叔父さんは低い声で返事してくる。それに俺は気付かないでいた。


「あ、これこれ。大きくするね。」
画面いっぱいに和叔父さんの着物を着た俺が映る。和叔父さんじっと見て、
「・・・これ、僕の浴衣?」
「うんそう。母さんが出してくれたんだ。
あっ、そうだ、かき氷持ってた優奈ちゃんとぶつかって汚しちゃったんだ。
ごめん。」
「それはいいよ。
・・智くんにも似合うんだ。この色にして良かったな。」

あれ?

「ねえ、和叔父さん?」
「うん?」
「俺のこと、『くん』、て。」
「ああ」
「さっき、内海と話してる時はつけてなかったよ?」
「そのこと?」
和叔父さん、クスッと笑って、
「智くんは兄さんの子だから、身内だけの時はつけないと紛らわしくなるから。外の人には区別しなくてもいいんじゃないかと思ってね。」
嫌だった?と聞かれ、
「そんなことない。なんかちょっと嬉しかったけど。」
親とか友達以外に呼び捨てにされるのって、新鮮。和叔父さんの声だとさらにわくわくする。

だって和叔父さん、親戚の誰も呼び捨てにしてない。俺だけ。特別。
もっと呼んで欲しい、と思ってしまう。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー3

時代劇の格好は、内海くんだけではありませんでしたー。




「なあ、おまえの叔父さん、かっこいいな。」
時間になってブースへ行くと内海がそう言ってきた。昼はこの格好で食べに行き、ついで
に宣伝もしたと言う。


「だろー。頭もいいんだ。ここのアイディアも和叔父さんがヒントくれてさ。」
「・・ふーん。」
「あ・・、今の内緒な。和叔父さんが気にするんだ。余計な口出ししたかもしれないって。そうそう、内海よく似合ってた、ってさ。思わず立ち止ったって笑ってた。」
「んなことないけど。
『俺の出した案で上手く行ったんなら何か寄こせ』 なんて言うのとは大違いだ。」
「あー、柏田ね。でもあいつが探してきたんじゃないか?それ」

江戸時代と現代の比較・・、は和叔父さんのヒント。
「現在の状況だけじゃなく、過去の、例えば江戸時代の環境と比較して・・、と言うのも面白いと思うよ。」
俺が文化祭の事でぼやいていたらそう教えてくれて。ミーティングの時出したらとんとん拍子に決まった。
「それなら誰か、江戸時代のカッコ、させようぜ。」
これは柏田。面白がるのが好きで何かしら言いだす。今回は全員一致で賛成し、結果内海がこうしてる。

「俺はおまえのが見たかったな―。」
内海が言う。
「俺?だめだめ、おまえほど厚みがない。案山子に着物着せたみたいになるから。」
「そおかあ?柏田より似合うと思うけど」
「俺が何だってー?」
「っわ、いて、痛てっ、放せよ・・っ」
噂をすれば何とやら。柏田が交替しにやってきたところだった。
「俺だってイケてるんだよ。」
内海の両耳を引っ張ってるのは読み売りや、の扮装をした柏田。

「時代劇でさ、あの、『さあさあ皆の衆、鼠小僧がまたやってくれたよッ』とか言いながら号外みたいなの売ってるじゃん。あれ、やりたいんだよね、俺。」
と言っていた通りなりきっていて、ついでにブースの宣伝のビラ配りもしていた。
「写メだって撮られたんだぜ。」
「よかったな。」

1日目が終わりざっと片付けているとメールが来た。
「優奈ちゃん。・・・えー」
「智、どうかしたのか?」
「あ、別に。」
ようやく着替えた内海に答えながらちょっと落ち込む。メールは、

::能見さん、せっかく誘ってくれたのに、ごめんなさい。明日、親戚が来ることになって、行けなくなりました。」

だった。
(しょうがないか。来年もあるし)




プロフィール

ますみ

Author:ますみ
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