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『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#きっかけー4

今回でRはひとまず終わりです。 ですが、18才未満や苦手な方はご遠慮くださいね。  大丈夫な方はスクロールして、どうぞ。



































―おまえを、どこかに閉じ込めておきたい。でも、それもできない。俺は、おまえを止められないんだ。

泣き言まで聞こえてきた。。さっきまでの強気で傲慢な態度、どこへやっちゃったんだろ。

―ん・・・・

年下が、気付いた。絶対に気付かれてないのに息を潜めてしまう。

― ――――――。

年上が、相手の名前を呼んだようだった。くぐもった声で聞き取れない。

―あ・・、――――――。・・・おれ、ほんと・・・・、信じて

年下の、掠れて応える声が、縋るようだ。

―あんたのとこしか、居るとこない・・・・んだ。
―・・わかった。
―ほんと・・・に?

キスで答えたみたい。

―ん・・・ふ・・ぁ、あ・ん・・・・
―悪かった

年上の声が優しい。

―・・・・いいけど。・・・でも、どうして?何かあった?
―別・に。何もない

年上の声が狼狽えた、ようだ。

―俺に隠し事しないって、言ってくれたよね。
―だから、何も、ない
―じゃ、誰かに会ったの?
―・・・・・・・
―そうなんだ。

確定。って聞こえる。

―俺を知ってるやつなんだね?

無言。やーな間。探り合いをしてそう。

―ガイ?
―ちっ・違っ、会社の・・・・っ

口を滑らせた年上が慌ててる。

―会社の?
―・・・・・・・
―答えてくれないなら、行くよ

行くって、どこ?思わず身を乗り出す。

―だめだ
―自分で探す。慎志(しんじ)の会社くらいすぐわかる
―だめだ、来るな。・・・・・おまえに来られたら、困る

あっ・・・、その言いかた、傷つく。

― !・・・・・
―あ・・・

あーあ。

―ち・違うんだ、稜(りょう)。

年上さん、焦ってる焦ってる。当然だよね。

―俺、目立つもんね。慎志だって外で会ったらそばに来たくないんだ・・。
―違う。そうじゃなくって・・・、おまえに色目を使うやつを見たら、ムカつくし、触られでもしたら、そいつ、殴りたくなるから・・・

いきなり、聞こえなくなった。でも、これって、ノロケじゃん?

―手で押さえないでよ。続き、聞かせて?

年下、りょうくん、声が弾んでるよ。

―だから・・・・、会社には、来ないでくれ。頼む。
―じゃ・・・、誰?

少しの沈黙。あれだと、年上のしんじさん、負けるな。

―会社・・・の・・・、取引先
―取引先?
―俺を・・・・・、はじめておまえのいる店に連れてってくれた、人だ。



何だか話がシリアスになって来て、俺は録音を止めた。ここから先は立ち入らない方がいいと思ったんだ。
他人の情事をこっそり聞いているだけでもよくない事なんだから、本当は。
「かーえろ、っと。」
機材をバッグにしまい、自転車に乗る。
「あ」
ポツン、と顔に水滴が。雨が本格的になる前に部屋に戻れ、ホッとした。

「結構たまっちゃったなー。どうしょう、これ。」
シャワーを浴び、小腹を満たして今日の録音を落としこむ。
PCの中に収めた秘密ファイル。パスをかけて隠してあるけど、中身は男女の分も合わせ
るともう5つになる。
「でも・・、止めらんないし。また、行っちゃうだろうし、な・・・」
見つかったら大事なんで、ちゃんと隠して閉じてから、ごろんと横になった。

「あーああ、俺も誰か欲しいな―・・・、この際、ヤれるんなら男だっ・・て?」
え? 俺、今なんて?
思わず口を手で覆い、あたりを見回す。一人で、自分の部屋に居るのに。

「俺・・、聞きすぎて毒されちゃった?」

そんなはずは無い。ちゃんとグラビアで興奮するし、抜けるし、’彼女’が欲しいんで。
でも・・。


変な事で悶々として、よく眠れなかった。


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『プリズム』

『プリズム』5*ライバルと過去ー5

苑田の回想が入ります・・。そしてここからRも。ハードな場面も出てくるかと思いますので、18歳未満や苦手な方はご遠慮ください。 大丈夫な方は、スクロールしてどうぞ。
























~~子湖塚の店を少し離れたところでリダイヤルする。プライベートの携帯は持たされている物で、出るのはもちろん進藤だ。
::俺を待たせるとは度胸がついたもんだな、苑田。」
::・・・・今日は、何だ?」
::おまえを呼ぶ用は一つしかないだろうが。相手が待ってるんだ、すぐ来い」
::―――― 場所は?」
ここからそう遠くないところの名前を言われ、タクシーを探すために大通りへ歩きだす。
(初めて進藤と会話を交わした時は、こんな風になると思ってなかった・・・。)

なぜ隆裕の相手の親戚と、しかも会社の同期で出会わなければいけなかったのか。
重いため息がもれた。



☆ ☆ ☆



「済まないな、苑田。付き合わせて。恩に着るよ。」
進藤がそう言って自分の接待に俺を連れ出したのは、まだ二人とも同じ営業一課にいた頃だった。
もう、四・五年前の話だ。



☆ ☆ ☆



「どういう事だ、進藤。こいつをさっさと外せ。」
「意外に似合ってるじゃないか、苑田。」
身動きできない俺を前にあいつはそう言って、見たことの無い卑しい笑いを浮かべると、ベルトに手をかける。
「何をする」
「決まってるじゃないか。営業してもらうのさ、俺のためにな。」

着ている背広の両袖と背中に鉄パイプが通され、動くことの出来ない俺に聞かせるように、わざと音を立ててベルトと釦(ボタン)を外し、ファスナーを下ろす。その上でスラックスを押し下げると手を放した。
「・・っ」
足下(あしもと)に落ちて絡まるボトムと晒される下半身に、頬が羞恥で染まる。


目を固く閉じ、顔をそむけることしか出来ない苑田に、耳を疑う会話が聞こえた。
「ほう。これが君の」
「はい。お気に召していただけましたか?」
「なかなか良さそうだが、味はどうかな?」
「さあ、それは。今回初物をご用意したので。」
「初物?」
「ええ。いかがです?」
進藤の言葉の意味はほとんど理解できない苑田だったが、話していた男二人には通じたらしい。喉を鳴らした。
「本当だろうね?」
「本当ですとも。こちらも今回はそれだけ配慮していただきたいですからね。」
押しの強い言葉には答えず、男の一人が無言で手を伸ばし、苑田の、まだ何の反応もしていない雄を下着ごと握る。

「んあっ」
いきなり急所を握られ、たまらず声が上がり痛みに目が開いた。
「いい声だ。」
そのまま平然と嬲り続ける男を睨みつけても効果はない。
「はっ、放せっ・・・・、くぅ」
体をひねって腰を引こうとすると力を入れられ、痛みに動けなくなる。
「河中さん、そこまでにしてください。商談(はなし)が先です。でなければこれは無しです。」
進藤が焦らすように相手の腕を掴んで引き離した。
「む・・。まあ、よかろう。楽しみは取っておくほうがいいからな。それで、条件は?」
「では、こちらへ。」

進藤が二人を連れ移動する。体の力が抜け、やっとまともに息が吐けるようになった。
(一体これは、何だ?・・・どうしてこんな事に・・・・・)

まだ酒が残っているのか意識を集中できない。それでも記憶を辿ると、
進藤に拝むようにされて彼の接待に付き合い、ここまで来たことを思い出した。来てみれば、自分の知らない分野の話、彼の取引相手が時おり自分を視線で舐めなわす不快さに居心地の悪い思いをする。自然、酒を飲むピッチが早くなった。進藤に、
「飲みすぎるなよ。」
と言われた事までは覚えているが・・・。
(あのあと、俺は・・・?)
記憶が、ない。気付けば、まるで洗濯物みたいにぶら下げられ、進藤の取引の材料にされようとしている。何とか逃げ出せないものかと見回し、あたりの様子が分かるにつれ、不快感がこみ上げてきた。

 正面には大きな鏡が自分を映しだし、両脇にはテーブルとソファーがいくつか並んでいる。しかもソファーにはすでに人が座っているのだ。唇を噛んで視線を下に落とせば、足元は一段低くなり円形のタイル張りになっている。そして目に止まったのは、排水口だった。

『プリズム』

『プリズム』5*ライバルと過去ー6

今日もRです。くれぐれも18才未満、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方はスクロールして、どうぞ。


























「進藤はどうした?まだ始めない気か?」
ソファーに座っていた一人が手を上げ給仕を呼ぶ。酒を頼むついでのようにそう聞くのが耳に入る。
(俺は、見世物じゃない。)
悔しくて声の主を探せば男が一人立ち上がりこちらへ来るのが見えた。体格のいい、見栄えのする体はまるで肉食獣が近づいてくるようだが、キッと見返せば面白そうな顔をして口角を上げて笑う。
目の前に立ち、無造作に顎を捕えて直視してきた。射抜く視線に怯まずいると、
「香川さん。手を出されては困ります。それとも仲間に入りますか?」
進藤の声が。商談がすんだようだ。顔を動かせないので目だけで見れば、機嫌がいい。うまくいったのだろう。さっきの二人もいた。
「ふん。仲間にはいれば見返りを寄こせと言うんだろう?」
「よくご存じで。
なにしろこれはようやく連れてきたものなので、高く売るに越した事はありませんからね。」
「商売熱心なことだ。」
香川と呼ばれた男は面白くなさそうに呟くともう一度俺に視線を戻したあと手を放し、席に戻っていく。
「苑田、喜べよ。おまえのお陰で商談は成立だ。」
入れ替わって前に立った進藤が言った。
「・・・それなら俺の役目はもう終っただろう?帰らせてくれ。」
「帰る?・・はは、本気で言ってるのか?おまえの役目はまだ残ってるんだ。大事な接待の仕事がな。」
「接待?」
「そうとも。おまえに似合いの’接待‘が。せいぜい可愛がってもらえ。」
侮蔑の視線を投げ、
「ではどうぞご自由に。時間が来たら戻ります。」
俺の背中側に立っている二人に阿る(おもねる)口調で頭を軽く下げると部屋を出て行こうとする。
「進藤!」
「お・・っと。君の相手は我々だ。」
「そうそう。楽しませてくれよ?進藤くんはずい分無茶を言ってきたからねえ。」
河中と、もう一人が前へ回ってきて含み笑いながらにやつく。

そして、俺にとって忌まわしい夜が、始まった。




「ネクタイはこのままの方がいいだろう。」
「シャツの釦(ボタン)は?外しますか?」
「ああ。」
苑田を上から下まで眺め回した二人はいちいち口に出して、目を閉じた苑田に聞かせながら実行する。
乾いた指先が肌に触れ、悪寒が走った。
「可愛い反応だね、苑田くん?だが・・、じきに悦くなる。」
身震いしたのを感じ取った河中がそう言ってシャツをはだける。
「うん。こういうのも好みだ。」
白のY字タンクトップに舌なめずりし、布地の上から撫で回す。本気で鳥肌が立ったが、河中は気にする様子もない。
「男の胸とはいえ、こうすると感じるんだよ。」
言いながらシャツを捲りあげ、晒された胸の粒を、く、と爪で挟む。
「いっ・・・」
痛みしか感じなかったが、指の腹で押し回され、弾かれるうちに快感がもたらされてくる。
「・・・・ん・・ぅ・・ぁ」
押さえきれずもれた声を聞きとられ、
「初めてなのに、もういい声で鳴くんだな。」
粘りつくような声で揶揄される。恥ずかしさで全身が熱くなった。
「では、私も始めさせてもらおうか。」
いつの間にか背後に回っていたもう一人が、ぐい、と後ろから下着を引き下ろす。
「やめろっ」
言葉だけでしか抵抗できないがせめてもの意地で拒む。
「フフ・・・。いいね。やりがいがある。」
剥き出しになった臀部をピシャリと叩き、その男は何かを塗った手で苑田の双丘を撫でさすった。











『プリズム』

『プリズム』5*ライバルと過去ー7

R続いています。れぐれも18才未満、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方はスクロールして、どうぞ。
























這い回る感触に呻(うめ)きそうになり奥歯を噛む。すると、
「こっちもよくしてやらないと楽しみが減るからな。」
前に立つ河中が同じように下着を下ろそうとする。
「やめっ・・・・あ・ぅ」
わざと、硬くなりだした雄に引っ掛けながら力を入れる。そうやって性器まで弄(もてあそ)ばれることに何もできないまま、布地が外れた瞬間苑田の雄は上へ撥ねあがり、下腹に当たって小さく粘つく水音を立てる。くく、と河中は喉の奥で哂(わら)った。
「元気じゃないか。汗までかいてる。拭いてやらないといかん。」
ぐっと握り、鈴口から溢れる透明な滴を塗りこめるように親指でぐるぐる擦りだす。
「うっ・・ぁァ・・・よ・せっ・・・、や・・」
今まで知らなかった快感が押し寄せ、拒絶の言葉に嬌声が混じるのを止められない。前に気を取られている隙に、後ろの男が秘部をなぞり襞を押し広げながら柔らかな肉ごと揉みだした。
「嫌だ・・・、やめろ・・・っ」
しかし、滑った指先がくうっと押し入ってくる。
「う・・・く・・・」
侵入してくる異物に嫌悪と圧迫感がこみ上げ、声が軋(きし)む。
「まずは一本。なに、すぐ慣れる。そういうクスリも使ってるからね。」
(クスリ?)
苑田がその意味を考える間もなく、
「ここにも塗ってあげよう。」
河中が言って、ねっとりした液体を勃ちあがった雄に垂らしかけた。
効果はすぐ出て、そこがジワリと熱を帯びる。

(な・・・・?!)

「速効性だ、もう効いてきたろう?」
男の手が前を緩く扱いた。
「うああっ」
段違いの刺激に、ビク、と体が跳ねた。
「ほう、いいな。」
手が、さらに快感を引き出そうと動きをつけると、
「あぁ・・、嫌・だ・・・・やあっ」
拘束している鉄パイプを握りしめ、首を横に振っても、抗う声が高くなってしまう。
後ろに入れられていた指が、ぐりっと捩られた。
「ああぁぁぁ・・・」
「お」
後孔の内側から電流のように快感が走り抜け、射精感がこみ上げる。一段と張り詰めたそこを河中に気付かれ、ぎゅっと力を入れられ、ひとたまりもなかった。
「あ・あァッ」
察知して素早く避けた男の横を白濁が飛んでいく。体の力が抜け、荒い呼吸を繰り返す苑田を見ながら、
「元気がいい。やはり若いな。が、これでしばらく保つ。」
河中が先端に白蜜を残したやわらかな中芯を摘まむ。
「・・っ、やめ・・・・」
達したばかりのそこへの刺激は痛みをともなう快感で、目の裏に火花が散る。だが、後ろの指は苑田に意識を飛ばすことを許さなかった。

「ああっ・・・、あ・・あっ・・・・」
いつの間に増やされたのか、三本の指が内壁を擦りあげ、蠢き、伸縮する。

「いああっ」
「ここか。ふ・・、もっと楽しませてあげよう。」
体をびくんと反応させたある一点を探しあてた指が、そこを執拗に抉(えぐ)りはじめた。
「や・・・っ・・、アアッ、・・あっ・・ぁ」
痙攣を起こしたのかと思うほど何度もびくつかせる苑田に、河中たちだけでなく、周囲からも唾を呑む音がする。
(見られている・・)
幾つも聞こえるその音に、いやでも人の目を意識させられ羞恥と屈辱で全身が焦げるかと思う。

追い打ちをかけて、河中が、
「ほう。また勃ってきた。」
にやにやしながら苑田の雄を扱きだす。聞こえたのか、後ろを嬲るのに熱心だった男が声をかけた。
「そうか?・・では今度は私にヤらせてくれ。欲しいしな。」
「はい。ご存分に。」
敬語を使いながら河中が離れ、タイル張りの外へ出る。
正面間近から見られる事だけは免れほっとした苑田だったが、後ろの男が手を伸ばし探りながらぐいと二度目の硬さを示す雄を握り、その痛みに声が出てしまう。
「う・・っ、くぁぁ・・・ッ」
「うん、良い鳴き声だ。もっと聞かせてくれ。」
喘ぎながら目を開ければ自分のあられもない姿が真向かいに映し出され、咄嗟(とっさ)に下を向けばタイルに飛んだ己の証と、見ず知らずの男に絶頂へ追いやられているモノが嫌でも見えて、また固く目を閉じる。
容赦なくスライドされ、鈴口を指先で押しあけられる刺激に、堪えることができなかった。
「い・・・あっ・・ぁ・・・、ゃめっ・・・、ぁあ――――っ」
二度目の放出は男の手の中で、吐き出した精のほとんどを持っていかれる。何故なのかという疑問さえ起らない。だが、答はすぐに分かる。
下着がさらに下ろされ、滑りが狭間と綻んだ窄まりに塗りつけられたのだ。

「河中くん、お先に。」
「どうぞ、常務。」





『プリズム』

『プリズム』5*ライバルと過去ー8

 今日もまたRです・・・。18才未満、および苦手な方、必ずご遠慮ください。
  大丈夫な方のみスクロールして、どうぞ。































ぐい、と腰を後ろに引かされ、ようやく事態を察した苑田が抵抗しようとした。 しかし。
「ひっ・・・・」
体に力を入れる前に指とは質量の違うものがずぐっと押し入ってくる。
「・・・・っ、まだ、きつい・・な」
「それはそれは。さすが、初物だけありますな。」
揉み手でもしていそうな河中の声は、苑田に聞こえなかった。

「ぃ・・っう・・・・、ゃ・・」
冷や汗が背中を伝い、痛みに舌まで強張る。
「・・・・、河中くん・・、済まんが・・・・」
「・・分かりました。」
張り出した部分が通過できず顔を赤くした常務が声をかけ、頷いた河中が再び前へ回り、汗の浮いた顔を覗き見た。
「いいね。そんな表情もそそるよ?」
ニヤリと嗤い手にクスリをつけると、萎えた雄に添えてそろりと撫であげる。

「はア・・ッ」
雷に打たれたかと思うほどの快感が苑田の体をいちだんと大きく跳ねさせ、その隙を狙い、肉棒がさらに奥へ打ち込まれる。
「ひ・・っ、やぁぁ・・・っ」
喉を晒して耐えるが、肌は淡く色づいている。
「ふん・・っ。い・いぞ・・、締まりが・・・・」
「・・う・・・んぅ・・っ、・・・ッアッ・・・アァぁっ」
無理やり拓かされる男を、周囲が興奮とともに見つめている。
「・・・、入・・った、ぞ・・。」
二つの荒い息の中、苑田を貫く男が征服者の声を上げた。ふうう、と二度ほど方を上下させて、律動を刻みはじめた。
「くっ・・、ん・・・・っ、・・そらっ」
「・・・いっ・・・や・ぁ・・・っ、・・・・あぅ」
内壁をごつごつと往復するモノの擦れる感覚に、眉を寄せ苦痛の声を上げていたが、ある一点を突き上げられ、
「あんん・・っ」
濡れ声に変わる。
「ほ・う・・。・・ここかっ」
「ぁ・・・、はあァッ。・・・・うあ・・っ、や・・い・・・っ」
「いい・・・、いい・ぞ・・っ。もっと・・・・鳴けっ」
「・・・っやぁ・・・っ。・・・・あ・あ・・・、・・・も・・・もぅ・・」
犯される苑田の体から溢れるフェロモンに河中も、
「何とも・・。君は汗の匂いまでこっちを発情させてくれるね・・」
酔ったように顔を赤くして、雄芯だけでなく二つのふぐり(陰のう)*まで揉みしだく。

ひう・・っ、と苑田の細い悲鳴が上がり、全身が強張る。絶頂がすぐそこに来ているのだろう。
「常務?」
河中が伺いを立てると、
「む・・、あと、ちょっと・・だ・・・」
「分かりました。」
返事を聞いて、指で輪を作り弾けようとした雄を戒める。
「アアッッ」
あと僅か、のところで堰きとめられ、身悶えたその力と刺激が後ろの男にかかり・・。
「うお・・・っ」
「んぁああ・・―――ッ」
体奥で吐き出された欲望に苑田もまた達していた。が、戒められたままの状態では快感が残されたままだ。
「苦しいか?」
河中が喘ぐ苑田の耳を舐めながら囁く。
「出させて欲しいなら、『達かせてください』と言え。」
その、上から目線の強要に、涙をこぼし閉ざされていた瞼が薄く開き、河中を見た。
「言え。『お願いします。イかせてください』だ。」
獲物をいたぶる喜びの顔をする河中。
「・・・・・だ・・・」
「何?」
「・・い・・・や・だ・・」
後ろの男がズル、と、放出し柔らかくなったモノを引き出した。卑しい笑いで苑田のひくつく窄まりを指で突つく。
「「あ・・はぅ・・・・」
肌が粟立ち、襞を弄られる感覚に声がもれる。つられて雄の先からとろりと白蜜が零れ落ちたが、体に籠もるせめぎは変わらない。
「ふう・・。中が動いてよく締まる。久しぶりに突っ込む愉しみを味わったよ。君も試してみるといい。」
「はい。・・ありがとうございます、常務。」
しおらしく礼を言った河中だったが、苑田へは歯をむき出すようにして笑い、
「言いたくないならそれでもいいさ」
少し体を動かして、身繕いして離れた常務のあとに立つ。
予告もなしに蹂躙され綻ぶ蕾に指を突き入れた。
「あ・・ああっ・・・」
侵入に、思わず指を締めつけるが、河中は容赦なく掻き回し引き抜く。 パタパタっと音を立てて残滓がタイルへ零れ落ちるのを見て、
「ずい分飲み込んだな。・・それに、確かに具合は良さそうだ。」
だが常務の後だ、着けておくか。後半は苑田だけに聞こえる言葉で呟き、意外なほどあっさりと指の戒めを外してしまった。

「あ・・?」
解放され、戸惑う苑田。が、背後で動く気配のあとすぐ腰を鷲掴みされ、再び硬い楔を打ち込まれた。

「やっあ・・・!・・あ・ぁ・・、くぅっ・・・、んっ、あ・・っ、あァッ」
先ほどとは違い激しく揺さぶられ、内側も強引に擦られ再び悦楽へ引き摺りあげられる。
河中はそれから意地の悪い責めを始めた。
動くのを、やめたのだ。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その6

時々思う事があります。
私の考えはどこまで’普通’なんだろう、と。

個人的な事を言えば、サウスポー。 
昔は矯正しなきゃいけないものだという感じでした。「ぎっちょはダメ」みたいな?でも今は「ふうん、あなた左利きなの?」と言われるくらい。

大きく見れば「男のくせに」 「女なのに」 、職業とか好みで言われますよね?最近は目くじら立てる人も少なくなりましたが。


国によって時代によって、お天気でも変わっていく’普通’。

いつごろかは忘れましたが、わたしのなかでは、普通って横断歩道みたいなものかなあ・・、になっています。
端っこを歩いても、白い線の上だけを渡っていっても、その中に居ればみ―んな普通。

でも。
その線の外に出たら?
どうなっていくんだろう・・・。知りたい。知りたくない。どうにかなる?誰かの、何かのセイにして爆発する?
それとも戻ってこられる?

考えが煮詰まって焼け焦げが出来ます。 結果は出ずじまい。
ため息ついちゃいました。


今日はなんだか取りとめ無かったですね・・・。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#叔父さんと友人たち

「智、昨夜、何かしてたのか?」

朝からの講義を取っていた俺は、早くも二コマ目で眠気に襲われた。無事に起きていられ
たのは横に居た内海のお陰だ。
「んー・・、ちょっとね。」
「自主制作で音録りにでも励んでいたとか?」
「ばっ・・、変な言い方するな、内海」
「いってーな。本で叩くなよ。で?出来たのか? おまえの作るのってユニークで俺楽し
みにしてんだぜ。」
「・・サンキュ。も―ちょっとしたら完成するとおもうから、そしたら」
「また飲もう、って?」
「まーな。」
内海と話すのは楽しい。俺と違う感性が刺激になってそれが色々発展するんだ。


昼休み、午後からの講義を受ける涼二、和泉と合流し学食でだべる。二人は理工系だから
時々会話がマニアックになってついて行けないけど聞いてる分には面白くて退屈しない。



今日のバイトは22時まで。時間になり交替して店の外へ。スマホを取り出せば、着信二
件とメール。名前は・・、
「和弘叔父さんだ」
父さんの八つ下の弟で、俺とは一回りと少し年が離れている。(智は父親が二七才の時
の子供)そのせい、だけでもないけど親より話しやすくて会えるとよく喋っているんだ。
「何だろ?えーと、・・・・わ、こっち来てるんだ。連絡欲しい、って? うん、するする」
すぐに送信すると、着信音が鳴る。

「おじさん?」
::ひさしぶり。元気そうだね」
::うん。今日は何?出張?」
::ああ。明日で終わりそうなんだ。智の都合がよかったらお昼を一緒にどうかなと
  思って」
::うっそ。すげーうれしい。じゃ、どこで待ち合わせする?」
::東京駅を見たいと思っているんだけど、いいかい?」
::オッケー。あ、時間」
::12時半、で、どう?」
::りょーかい。じゃあ明日。おやすみなさい。」
::おやすみ。」

叔父さんは福祉用具系の会社に勤めている。以前入院したことがあって、それから福祉に
興味が出てその方面に進んだらしい。
「使ってくれる人が、人生に前向きになる手伝いが出来る。そう思ってやってるんだよ。」
と話してくれる時目がキラキラしていて、やり甲斐があるんだろうなあ、って見ていた。

東京駅は最近、復原何とか・・で、昔の完成形になったらしい。
最初、ポスターだかネットだかで‘東京駅・復原・・’って見た時、
「字、間違ってるよ」って思っていたら解説が出ていて、

建造物の分野で、失われた建物を当時のように再現すること、あるいは推測に基づく場合を「復元」。
一方、改修等で形が変わっていたものを当初の姿に戻すこと、あるいは旧部材(部分品や材料)や文献等が残っており、根拠が確かな場合を「復原」と使いわけることがある

ってなっていた。
つまり、増築とか改築してたらしいのを、元の形に戻したから、‘復原’の字が使われているんだ。
日本語ってムズカシイ。

確かに今の東京駅はカッコよくって、ただ見に行くだけでもうきうきだ。
それに、叔父さんのスーツ姿も見られる。家に来る時は大概ジャンパーとかのラフな服装
だからそれも密かな楽しみだったりする。
「さあてっと。電話でんわ。」
待ち合わせは駅舎を出た丸の内側。赤レンガの、見応えのある方だ。平日でも人が多いか
ら、どうしたって携帯で連絡入れないと・・・、

「智!」

え?叔父さん?
名前を呼ばれ、慌てて周囲を見回せば、手を上げ大きく振っているビジネスマンが。
「ここ。早かったんだね。迷わな・・・」
「・・叔父さん。目立つよ」
俺よりずっと年上なのに、子供みたいに手を振ったりするもんだからちょっと恥ずかしい。
駆け寄ってそう言ったら、
「これだけ人がいるんだから目立たないと分からないだろう?それに僕は今日はスーツだ
し。ほかの人に紛れて智が見つけにくいかな、と思ったんだ。」
嬉しそうに笑ってくれる。その笑顔に心臓がキュンとした。

『プリズム』

『プリズム』5*ライバルと過去ー9

月曜からR付きですみません。何とか終わらせました・・・・。その分長めです。18才未満、および苦手な方、必ずご遠慮ください。大丈夫な方のみ、スクロールでどうぞ。

























はあ、はあ、と肩で喘ぐ桜色の首筋に噛みつき歯型をつけ。
「んんっ・・・」
違う場所からの刺激に小さく震える苑田を見て、腰を動かす。
「んはっ・・、・・・あ・・」
止まる。
「・・っ、・・・」
頭を振って声も出せず悶える体へ、
「言え。」
さっきの言葉を言わせようとする。答が戻らないことに苛立ち、足元に丸く固まっているスラックスを踏んで片足を抜きださせるとそのまま持ちあげ、ストロークとグラインドを繰り返した。
「ぁあっ・・、あっ・・・・あ・あ・・・っ・・、は・んぅ・・っ」
「言えば・・、楽にして、やるぞ?」
そしてまたぎりぎりまで追い詰め、止まる。
YESもNOも言わず耐える苑田のかわりに、硬くなるだけの屹立が涙のように滴をこぼし続け、揺さぶられるたびに付く下腹と、内腿まで濡らしている。
「強情な」
舌打ちした河中がもう片方の手で胸の尖りをぎゅっとつねった。
「いんんっ・・・、ぅ・・っ・・、・・・・、」
掠れた声で、壮絶な色香を放ちながら責めを受ける苑田に、声もなく見入る何人もが自分の股間に手を伸ばし慰めはじめている。

「・・・・なんてやつだ・・。」
おそらくこの場でただ一人姿勢を変えていない香川が、興奮を抑えきれない声で呟く。

「言わないか!」
焦れた河中がぐいい、と突き上げ、
「―――― っっ・・・・」
苑田は声も出せず、薄白い白濁を半ば滴らせながら吐精しがくりと首を折って意識を手放した。瞬間、きつく締めあげられ、河中も逐情し、果てる。
「・・・・・・、くそう、言わずに気を失ったか・・・」
思い通りに出来なかった不満を口にしたが満足はしたようで、引き出された雄は大量の精を薄い膜の中へ放っていた。

長い息を吐いて後始末し、苑田のYシャツで手を拭った河中のそばへ、
「いかがでしたか?初物は。満足・・していただけたようで。」
歩み寄り、声をかける、進藤。
「強情な奴だが、いいな。」
「ではいずれ次の機会を設けますから、そのときにまた。」
「ほう・・。次もあるのか?」
「もちろんです。長いおつきあいを願いたいですからね、我が社が一番で。」
ご希望もお聞きします。と耳打ちした進藤は、氷の目で苑田を見おろした。


進藤が接待した二人を送り出し戻ってくるまで、二人掛かりで辱められ吐精と挿入で下半身を汚したまま動けない苑田を、さらに見物客の何人かが嬲っていく。

*「おまえが枕営業しているらしい、って噂は、本当だったんだな。」

ほとんどの客が帰り、静かになった室内に勝ち誇った様子の進藤の声が響く。蔑む目が苑田を見ている。
「進藤・・・・。おまえ・は」
疲れ切った体でようやく顔を上げた苑田。
「俺を・・・、嵌めたの、か?」
「おまえが勝手について来たんだぞ?野郎二人も相手にしてヨガるなんざみていられなかったぜ。」
問い詰めにフンと鼻で嘲笑い、嘯く(うそぶく)。
「ま、おかげで俺は大口の契約成立だ。ったく、強引に付いてこられた時はどうなるかと思ったが、イイ思いもできてことだろうし貸し借り無しにしておいてやる。
そんなに飢えてるならまた呼んでやるから感謝しろ?・・・・何だ、その目は」
あまりの勝手な解釈に怒りを込めて睨みあげていれば、それがカンにさわったのか顔色を変え、近くのテーブルにあったピッチャーを手に取るなり苑田の顔に浴びせかけた。
「・・!」
「ははは、いいザマだ。時間が来るまでそうしているがいい。」
外へ出たら気をつけろ。そのまま帰れはしないだろうからな。背中越しに最後の一言を投げ、進藤は靴の汚れを床になすりつけると部屋を出て行く。



「ずいぶんやられたな。」
ゆったりした足取りで近付いてきたのは、最初に苑田に触れた香川と呼ばれた男だ。
「服はもう使えないだろう」
言いながらハンカチを取り出し顔を拭く。優しく顔の輪郭をなぞられ、目を開けられるようになって下を見れば、スラックスは下着ごと脱がし捨てられ、踏まれ・・汚れていた。

「あんたも・・・、俺をヤりたいのか・・・」

俯いたまま投げやりになる苑田の顎を指先が捕え持ちあげていく。上を向かされ視線が合うと、誇りを失くしていない苑田の瞳の色に、香川は口角を上げて笑う。
「いい目だ。」
そして片手を上げどこかへ合図する。ガチャン・・、と機械音がして、苑田の服を貫き拘束していた鉄パイプが引き抜かれていった。






*「おまえが枕営業しているらしい、って噂は、本当だったんだな。」
進藤のこのセリフですが、この時点では事実無根、全くの嘘です。 ですが、進藤は苑田を罠にはめるため、この接待の少し前から自分で、
「そう言えば・・・、苑田、営業先の担当とか誰かに、色目使われて困ってる、って言ってたなぁ。」
などと、聞いた方が疑惑を持つように言っていました。

苑田が気付いた時には噂が広がっていて、本人も否定出来なく(もう進藤の取引材料に)なっていたんです。

悪い奴。

『プリズム』

『プリズム』5*ライバルと過去-10

ハードなRは終わりました。が、少ーしだけ緩くRが入りますので、15歳未満の方、お好きでない方はご遠慮ください。大丈夫な皆さま、スクロールしてどうぞ。





















立っている体力もない体を香川に抱き支えられ、そのまま担ぎあげられる。
「はな・・せ・・・・」
「立てないもん(者)がでかい口をたたくな。」
抵抗しようとしたが拳を握れず、平手で弱く背中を叩くことしか出来ない。

連れていかれたのは、ホテルらしい一室。広いバスルームの浴漕に座らされ、身につけている服を上着から順に手際よく脱がされていく。それらを手に持ち一度浴室を出た香川は、全裸になってくるとシャワーのコックを捻った。

「何を・・?」
「少し沁みるが我慢しろ。汚れを落とす。」

なりゆきに思考が追い付かずぼんやり見上げ、身体の傷に目が止まる。無駄の無い体つきにあるのは、右の肩近くにある傷と、左のあばら下から臍に向かって直線に伸びる、二つの傷だ。
 不思議に恐怖や不安は起きなかった。この男に似合う傷だと思う。

「俺の傷を見て驚かなかったな。 なぜだ?」
視線を外さずにいたら気付いて聞いてきたので、思ったままを口にする。
「なぜ、と言われても・・。ただ、似合う傷だと思っただけだ。」
驚いた表情を走らせ、喉の奥で笑った香川は、
「気に入った。」
顔を近付け、唇を押し当てた。
「・・契約の印だ。俺のアドレスを教えておく。必要になったらいつで使え。」




裏社会にも伝手があるらしい香川と言う男に、どういう訳か気に入られた。
しばらくはアドレスを見ることさえ無かったかったが、ある時、仕事で知らずにブラック系の会社と取引してしまい、思い悩んだ挙句連絡を取った。
彼のお陰で穏便に契約解消でき、以来、体を重ねることもなく付かず離れずの関係が続いている。



 だが、進藤とは、変わってしまった。


あの夜、進藤は最初から俺を取引の道具にするため連れ出し、クスリを混ぜた酒を飲ませて晒しものにしたのだ。
翌日、軋む体を宥めながら出社し、彼をミーティングルームへ呼び出して問い詰めた。

「進藤。昨夜のあれは、どういう事だ?」
「どういう事?決まってるじゃないか。男に突っ込んで欲しくてうずうずしているおまえに機会を提供してやったんだ、感謝しろ。」
「・・俺は抱かれる趣味など無い。」
「ふん、それなら女を抱かせてやる。俺の取引先にはおまえのような男を欲しがっている暇なばばぁがうようよいて、いつでもOKらしいからな。」
「そんな事を言ってるんじゃない・・・・っ」
体に力を入れたせいで局部に痛みが走り、思わず唇を噛むと、

「いい気になるんじゃないぞ。ホモの弟のクセに。」

冷たい声が浴びせられた。
「忘れるな。おまえの変態兄が、俺の叔父をころし、叔父の家族をめちゃくちゃにしたんだ。*車で心中した時、叔父の下の子は、まだ小学生だったんだぞっ!」
言われて、自分の顔が青ざめていくのが分かる。
「小母はあれから必死で働いて子供たちを育てた。俺はまだ学生で何も手を貸すことが出来ず、それがどんなに悔しかったか・・・。
そんな事をおまえの兄は叔父一家にしでかしたんだ。わかってるのか?!」
「俺の両親だって知らなかったんだ、隆裕の相手が男で、家庭教師をしている子の父親だったなんて!それに・・、事故の後何度も謝りに行ったし、援助を申し出て・・・」
「夫や父親を亡くす原因になった相手からの援助?受け取ると思ったのか?お目出度いやつらだな」
「違う。せめてお詫びをと・・・」
「だったら、少しぐらい俺の役に立て」
進藤の目がギラリと光った。

「しん、藤?」
「それとも、こいつをネットに流してやろうか?」
進藤が取り出したのはUSBメモリ。
「ゆうべのおまえが全部入ってる。変態の弟はやっぱり変態だったとタイトルをつけてやれば喰いつく連中も大勢いるだろうさ。」
「・・・やめろ・・」

そんな事になったら、詳しい事情を知っている人がいないとはいえあれから世間に身を縮めるようにして生きてきた父は、さらに打ちのめされてしまう。
同居してくれている母の従姉(いとこ)の和美さんだって、何を言われるか。

「どうするんだ、‘枕営業の苑田’。」

「・・・・わかっ・・た・・・」


それからは、専用の携帯を持たされ、言いなりに何人もと寝た。
順調にランクを上げた進藤は現在(いま)、部長になっている。




*車で心中。・・・苑田の家族も、進藤や彼の亡くなった叔父の妻もそう思っています。真実を知っているのは、苑田の母親の従姉、和美さんです。明らかになるのはずっとずーっと後になります。苑田のお母さんが出てこないのは近々分かりますので、しばらく、お待ちください。

『プリズム』

『プリズム』6*焼き鳥屋と二人の実家

 新井くん目線に戻ります。

☆ ☆ ☆


‘傘持ち‘をしてから十日ほど経った金曜日。夕方になってやっと苑田さんを捕まえられた。
「苑田さん」
「ん?」
廊下で、背後からの呼びかけに肩越しに振り返り、俺を見て軽い疑問を浮かべる。
「どうした?」
「あの・・、ありがとうございました。」
「何の事だ?」
「浦野商事の事です。」
ああ、あれか。と思い出す顔になる。
「おかげで更新も無事に終わりました。」
「よかったな。」
優しく笑顔をつくられ、またドキッとする。苑田さんの笑顔は、いつも心臓で反応してしまう。

「それで、よかったらお礼に食事・・・」
「大した事はしていない。気にするな。」
「でも、本当に助かったんです、俺。主任に後で教えてもらって・・」
「だから、あれ(新規参入)は偶然だ。俺だっていつもタイミング良く情報が手に入る訳じゃない。」
じゃあな、と行こうとするのへ、
「苑田さん、焼き鳥、嫌いですか?」
引き止める。
「やきとり?」
「あ、嫌だったら焼き肉でも・・・」
くくっ、と笑われた。
「そんな顔して頼む事か?・・・分かったよ、付き合ってやる。鳥でも何でも食えるから。それで、いつだ?」
「今日は、大丈夫ですか?」
「ん、と・・、ああ、空いてる。」
「じゃあ、二〇時過ぎに社員通用口で待ち合わせてそれから、」
「二〇時、社員通用口だな」
復唱され、頷くと、OKと言って階段を降りて行った。



「ここです。」
「ほう、この店か。」
「知ってるんですか?」
がっかりする俺に、
「前を通ったことはある。入るのは初めてだ。」
答えて先に縄のれんをくぐる。

「いらっしゃい!」
「ぃらっしゃい~! あ、新井さん」
「こんちは。空いてますか?今日は二人なんだけど。」
「ああ。奥の方なら」
「ありがと。」

「常連なのか?」
さっきの会話で、苑田さんがそう聞いてくる。
「いえ、まだそこまでは。名前は覚えてもらったんですけど。」
奥に進みながら言う。
カウンターと、向かい合って座るテーブル席が五つほどの小さい店だけど、美味しいからいつでも賑やかだ。
席があったのは、カウンターだった。
「どうぞ」
「あ・ありがと、おやじさん。」
取り皿とおしぼりを出してくれたのは店の主人だ。

「ここんとこ見なかったと思ったら、今日はまたいい男と二人連れで。どうしたんだい?」
「うん、この人は苑田さん。会社の先輩で、俺、すっごく助けてもらったんだ。」
へえ、いい先輩じゃないか。と続いたのに苑田さんは、
「そんな大げさなもんじゃないですよ。おだて過ぎ。」
軽く俺を小突いて、親父さんに頭を下げる。
「少々早とちりするけど頑張ってるんで、新井のことこれからも宜しくお願いします。」
「はは、こっちこそ。苑田さんもいい人じゃないですか。まあ、ゆっくりしてってください。」
おやじさん、一遍で苑田さんを気に入ってくれたらしい。まだ話をしたそうだったけど、向こうから‘おやじさん、ちょっと’と声がかかり俺たちにニカッと笑ってから呼ばれた方へ移動した。

「今日は何にします?」
代わりに聞いたのは、若い男性。おやじさん・と雰囲気が似ていて多分親子なんだろう。
「うん、まずおススメから。その後また注文するし。それとビール。」
「分かりました。」

すぐ取り皿に乗せられた四・五本を、ビール片手に口に運ぶ。
「・・・うん、旨い。」
「よかった、気に入ってもらえて。ほんとはここに来るのちょっと不安だったんです。苑田さんの好みじゃなかったらどうしようって。」
自分の行きつけを誉めてもらって嬉しくなる。すぐ無くなった串のおかわりをもらい、本腰を入れて食べ出した時、

「そこは俺の席だぞ!」

店に罵声が響いた。

『プリズム』

『プリズム』6*焼き鳥屋と二人の実家ー2

 {罵声のヌシは、焼き鳥屋さんの・・・・です。


店内の人間が驚いて声の主を見る。
ずかずかと入って来た男は、カウンターの一番まで来ると立ちはだかる。驚いて振り返った俺の胸倉を掴んで、
「ここは俺の席だ!誰に断って座りやがった!」
酒臭い息と唾まで飛ばしながら喰ってかかって来た。どう見てもいちゃもんに近かったから俺も怒鳴り返そうとして息を吸いこんだ時。

「それは済みませんでした。」

いち早く苑田さんが反応した。すっと立ち上がり、頭をさげる。
「今日は二人だったのでつい、空いていたここに。こちらはもう終わりましたからどうぞ。」
気を抜かれた男が手の力を緩め、気付いた苑田さんが俺の腕を引いて立たせるともう一度、
「済みませんでした。」
頭を下げ、酔っぱらい男との間に入るようにして二つの席を空ける。
「お・おう・・。分かりゃいいんだ。」
いくぶん低くなった声で言って、そいつは椅子にどさっと腰を落とすと焼き鳥の乗った取り皿をかきよせ口に入れた。

あ、と気色ばむ俺を背中で押さえながら、
「では、失礼します。」
向きを変え、俺を押し出すように出入り口へ向かう。

「おやじさん、お代。」
キャッシャーの前で苑田さんが声をかけると、
「新井さん、そのださん、すいません迷惑かけて。」
レジに立ったのは息子さんらしい人だ。小声で、
「今日のお代はいりませんから。」
と出された札を押し返し、焼き鳥の串を何本も入れた袋を出してくる。
「いや、こっちこそ美味しかったよ。それにあれは俺たちが頼んだ分だ。」
「あいつの分、お客さんに払わせる訳には・・・」
「おい!もうないぞ!」
ひそひそと早口で交わされる会話に、男の声が割り込む。ダン、とジョッキをカウンターに叩きつける効果音つきだ。
「早く行った方がいい。ああいうのは無視すると大変だよ。」
苑田さんが促し、せっかくだからと袋だけは受け取って、
「ごちそうさま。」
大きめの声は、あの男にも聞こえるようにだろう。睨みつける俺の腕を掴んで引っ張りながら外へ出た。

角を曲がり、通りへ出て、ふう、と息を吐く苑田さんだったけど、
「どうして逃げるんですか?!悪いのはあいつなのに!」
俺は怒りが収まらない。
「相手は酔っぱらいだ。」
「叩きだして、警察に付きだせばよかったんです!」
剣幕に、通りがかる人が驚いてそそくさと通り過ぎていく。
「ケンカになったら、店にも、来ていた人達にも迷惑だろう?」
「でも」
「顔をちゃんと見たか?店の親父さんに似ていたぞ」
「でも!俺は悔しいんです!」
せっかく、初めて苑田さんを連れて行ったのに。苑田さんも、店の親父さんも気に入ってくれたのに。
少しトーンが下がった声で言ったら、苑田さんは目を丸くして聞いていたけど、
「おまえ、若いなあ」
そういってカラカラ笑う。
「苑田さんは、悔しくないんですか?」
「・・・昔はな。」
フッと寂しげに答えて、すぐ、
「悔しいのはああいうところで晴らすのが一番だ。行くぞ。」
気持ちを切り替えるように、ゲーセンを指さした。



「さーて着いた。入れよ。」
「・・すみません。お邪魔します。」

あれから、付き合ってくれた苑田さんと一緒にシューティングゲーム、太鼓叩き、カラオケまで行って発散した。くたびれてやっと気がすんだあげく腹が減ってラーメンを食べ、終電を逃がし、俺の部屋より近い苑田さんのマンションへ転がり込む事になってしまった。





次回は、苑田の部屋から、です。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その7

てんとう虫や~~い。

こちらは夏日や真夏日が続き、雨が半月くらい降っていません。みなさまのほうはいかがですか?



雨が降らないと水気が欲しくなるのは、人も植物も同じ。そして・・・アブラムシも。

玄関先に薔薇の鉢植えがあります。そこにアブラムシを見つけたのが5月中旬くらいでしょうか。
以来、毎日葉っぱを見たり、新芽をみたり。蕾にもいっぱい寄ってきます(泣)。
 一度殺虫剤をかけた事もありましたが、薔薇にダメージがあってからは地道に手や筆で取り除いて。

1匹残すとあっという間に増えてくる・・・。調べてみたらアブラムシ、雌だけでも卵を産むとか、ほとんどの植物の天敵とか、増えすぎたら羽が生えるアブラムシが出てきて飛んでいくとか・・・。

オソロシイ。

駆除方法は??
光るものが嫌い。牛乳を霧吹きでかける。木酸酢。  決定打は、天敵テントウ虫!
ですが、最近あまり見ないんですよ、テントウ虫を。
まさか虫とり網持って探すわけにもいかず・・。せっかく連れてきても飛んでいってしまったら、ねェ。

ああ、誰か飼育していませんかー。テントウ虫を。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#叔父さんと友人たちー2

{智くん、叔父さんと東京駅デート(?)です。


まずは腹ごしらえ、どこにしよう?二人で駅の案内を見ながら迷い、食後は地下街を覗き
歩き、あっというまに時間が過ぎる。

「今日は楽しかったよ、智。ありがとう。」
「そんなこと。俺の方こそ・・奢ってもらったし。」
「誘ったのは僕だから。・・・・また少しお父さんに似てきたね。」
帰り際、ホームで見送る俺に和弘叔父さんはそう言って、俺の顔をじっと見つめてから手
を伸ばしそっと頬を撫でた。
その仕草にドキドキする自分がいる。
「勉強は、しすぎるのもよくないよ。バイトもだけど。大学は最後の学生生活なんだから、
楽しんで過ごすんだよ?」
「うん、和叔父さん。・・叔父さんも気をつけて。」
「ああ・・・時々は電話で声を聞かせてくれ。」
「わかった。」


翌日、教室で内海に会う。

「お早う、内海。昨日は(代返)サンキュ」
「お早。どーいたしまして。あれ?智、なんかいい顔してんじゃん?なんかあった?」
「え?別に。・・・あ、仕上がったよ、いつもの。」
「ほんとか?じゃ、明日・・、ダメだ、俺バイト。涼二・・は聞かないと。」
「和泉はいつでも空いてるもんな。」
あいつは一人っ子で自宅通学。涼二は俺達みたいな下宿バイト生だ。
メール・電話でやり取りして結果、四日後集合になった。


「智、今度はどんなの作ったんだ?」
一番乗りの内海がそう聞きながら、『わざわざ遠回りして買ってきたんだぞ』と、とあるコ
ンビニにしかないらしいビールを冷蔵庫に入れる。
「珍しいビール?」
「外国ビール。名前は後でな。」
覗こうとしたけどニヤッと笑って、俺には見せないようにしてくれちゃって。
「それなら俺も、内海だけには見せないようにしちゃおうかな?」
「お、おい、それはないだろ?」
なあ、つまみつくるからさー、と情けない顔で下手に出てくる。
「じゃ、それで手を打ってやるよ。おまえの作るつまみ、美味いし。」
「やたっ。」
いそいそキッチンに立つ内海の背中を見送り、
「あ、そうだ。冷蔵庫に入ってるのも出しといて。」
思い出して声をかけた。
「あー?何かあるん?」
「うん。昨日久しぶりに叔父さんに会ってさ。土産もらったんだ。」
「ああ、聞いたことある。一六か七くらい年が離れてるんだったろ?その叔父さん。」
「一九。父さんと八つ違うんだ。」
「へー。じゃあ今・・、三十九?ばりばりの社会人ってやつか。」
「そ。カッコ好いんだ。」


内海のつまみは、大根と大葉の千切りに甘エビを入れ、オーロラソース和えにしたものだ
った。少しだけタバスコを効かせてあり味が締まっている。
そして叔父さんの土産物は、塩麹漬けの焼き肉セット。和泉が贅沢にもワインを持って来て、‘上映会’が始まった。

『プリズム』

『プリズム』6*焼き鳥屋と二人の実家ー3

「やれやれ、汗だくだ。」
「すいません、俺のせいで。」
「いいから、先にシャワー浴びてこい。・・・・っと、その前に。」
こっち来い、と苑田さんに手招きされたのは全身が映る大きな鏡の前。
「あの・・」
「動くなよ」
「はあ」
背中越しの苑田さんが別の部屋入り、戻ってくる。何やら肩に当てる気配の後、
「まあ何とかなるだろう。」
そう言って差し出されたのは真新しい着替え一式。
「苑田さん、これ・・・」
「俺の趣味だからおまえの感覚とは違うし、サイズも会わないと思うけど、一日くらいいいだろ?」
「一日って・・」
全然嫌じゃないけど、
「いいから。風呂はその先、右手のドアだ。」
押し切られ、着替えを持たされる。

{ここから少し(しばらく?)苑田目線です。


~~「ありがとうございました。」
そう言って出てきた新井は、思っていた以上に服が体に合っていた(同じサイズでもメーカーによって多少差がありますから)。
「何とかなってる。おかしくないな。」
すこしほっとして自分の着替えを持つ。
「俺も入ってくる。飲みたいならビール出してあるから」

髪を乾かし、部屋に戻ると新井が本棚の前にいる。どうやら本の題名(タイトル)を読んでいるらしい
「あ・・、ドラッガ―がある。・・・「最後の授業」?・・・うわ、洋書。えー、宗教史? なに、それ?・・・天文書。星座の本だ。あれ・・・、こんなとこに「レッドクリフ」のDVD見っけ。」

「こら」

「わっ!」

慌てて振り向く顔へ、冷えたビールを押し当てる。
「冷たっ・・」
「クローゼットを覗くよりはいいが、新井の好きなコミックは無いぞ。」
「あ・いえ・・、その」
「まあいい。」
何とも言えない表情に笑いがこぼれる。

テーブルにつき缶ビールを開け、コン、とあわせて喉に流し込む。
「今日はお疲れさん。」
「い・いえ、却って迷惑かけて・・、済みませんでした。」
恐縮する新井に、
「そうだな・・。もうあの店にも行けなくなった。ここにあるのが最後か。」
と一本つまむと、
「あ・・謝って、きます。苑田さんに迷惑かからないようにしますから、そんなこと言わずにまた一緒に行ってください!」
必死になって言い返してくる。その様子に、
「くくっ・・。冗談だ。次からメニュー制覇を目指そうな。」
すぐ撤回した。 新井の顔がぱっと明るくなる。
「よかったあ。俺、まだ行きつけの店って少ないんです。あそこ、気取らず行けるんで重宝してて。次も苑田さんと行けるの、楽しみです。」
一気に言うと、照れ隠しか、ビールを呷(あお)る。
逸らした喉の白さがやけに目に付いた。
(きっと痕がついたら目立つだろうな・・・・)
キスマークを想像し、なに馬鹿な事を、と打ち消す。

「苑田さん・・。苑田さんって、あんなにいっぱい本読んでるんですね。」
酔って、少し目が潤んでいる新井にドキッとして、返事がぎごちなくなる。
「あ・・、まあ、な。」
「何回も読んだ本、ありますよねー?」

ちょっと驚く。

「何でそう思う?」
「あー・・、その、目の高さにある本はよく読むものだ、って聞いた事あるんで」
「誰に?」
「おふくろです。苑田さんみたく本が好きで、・・・でも目茶苦茶なんです。」
思い出し笑いまでするから、聞きたくなった。
「例えばどんな?」
「恋愛物が多いですけど・・。古典っていうんですか、源氏物語とかあって。なんとかクイーンとか。ほかにSFやら幽霊が出てくるのやら魔法モノやら。」
「へええ。」
想像して笑う俺に口を尖らせて、
「そんなのが廊下にカバーもかけずにズラッと並んでたら、恥ずかしくって友達呼べないじゃないですか。おまけに、一人暮らし始めたら俺の部屋まで侵略してきて。」
帰るたんび本が増えてるんです、と不満をもらす。
「面白いお母さんだな一度会ってみたい。」
「苑田さん来たら、おふくろきっと喜びます。俺、一人っ子だから。」
「一人?上も下もいそうな感じだけど。」
「ああ、それは・・、親戚の子がいっぱいいてよく行ったり来たりしてるからだと思います。
どうかしましたか?」
「いや、話しやすいから、きょうだいいるのかと思っただけだ。」

そうか。新井は一人っ子か。

『プリズム』

『プリズム』6*焼き鳥屋と二人の実家ー4

「そうだ。・・・苑田さん、山って好きですか?」
「山?」
いきなり話題が変わる。酒飲みの話は大体こんなものだが、
「山っていいんですよー。空気も違うし、頂上着くと、達成感あって」
一緒に行きませんか~、行きましょーよ。と子供のおねだりよろしく続ける新井を微笑ましく見ながら思う。
(山、か。俺には縁の無い場所だ)
「そんな事を言うけど面白いのか?」
「はい、面白いです。・・途中、苦しかったり辛かった、り、・・っく、しますけど。・・特にな・かまなんかと・・、行くと、さいこ(最高)・・・で・・っす。」
しゃっくりしながら力を込めて言う。
「俺は・・、小学校の遠足で行ったくらいだ。」
「じゃ!今度行きましょ・・・・」
俺、案内しますから・・、と喋る続きがだんだん小さくなる。
「新井?」
ゆっくりテーブルに前のめりになり、見れば瞼も閉じて、寝落ちしていた。

「・・・・・。焼き鳥屋から数えてビール四本、か。まだまだだな。」

気持ち良さそうに寝息を立てているのを見て、自分の部屋へ帰らせる事は諦めた。幸いスーツは汚れていないし、Yシャツも洗っておけば乾くだろう。とにかくベッドまで移動させようと肩を入れ、声をかける。
「ほら。寝るならトイレくらい済ませてからにしろ。」
「ふぁ・・あい、  そのらさ・・・」
夢うつつになっている新井を何とかトイレまで連れて行き、用を済まさせる。
「・・っとに、酒も鍛えないと営業は、困るんだぞ。」
「・・・・い、・・すいませ・・」
「・・・っわ」
寝ぼけたまま謝ろうとした新井が頭を下げた拍子に支えていたバランスが崩れ、ベッドに縺れるように倒れ込んでしまう。

「あらい。どいてくれ。・・・・・重い。」
年下の男の全体重がかかって、身動きできない。これが床ならこぶか痣だ。ベッドでよかったと思いながらも呼吸が少々苦しい。

「んーー・・・」
「新井、たのむ。」
ポンポン、と背中を叩くと、ようやく意識がクリアになってきたらしく、もぞもぞ動きだす。
「あ・れ・・?そのだ、さん。なんでそんなとこに、いるんですか・・・?」
「おまえに押し倒されたんだ。重いからどいてくれ。」
「ぁい。ちょっ・・ろ、・・・って・・・」
酔っていて、頭も口も正常に回っていない新井が動いてくれるのを待つ。
不意に、目を大きく見開いた。

「なんだ?」
覗きこまれて問いかけると、
「そのださんて・・・、きれいですね・・・」
そんな、返事に困る事を言ってくる。
「目も・・、口も色っぽくて・・・」
「新井?なに・・・・!」
抵抗する間もなく唇が塞がれる。次(つ)いで抱きしめられそうになるのを両手で新井の体を押し上げるようにして、やっと阻止した。

「・・・・・。気がすんだか?」
ただ重ねるだけの口付けは不快ではなかった。
新井は色事に関してはほとんど経験が無いようで、息苦しくなったのかすぐ唇を離す。そして、
「その・・・さん、くちびる、やーらかい・・・」
うっとり言われ、恥ずかしくなる。
「よかったな。だけどおまえは重い。どいてくれないと息が出来なくなる。」
「へ?・・・あ」
やっと状況を理解してくれたらしい。のそのそと体を動かして離れてくれた。
深呼吸しながら横になったままでいると、
「そのださ・・・」
隣で寝転がり、今度は俺の背中に抱きついてくる。その、子供っぽい仕草になぜか、ぞく、とした。

「放せ。まだ片付けが残ってるんだ。」
情動を抑えて言う。
「・・・・い・・」
一文字だけ聞こえ、後は意味不明な音がむにゃむにゃと続く。仕方なくかぶさっている腕をどけ、起き上がった。
ふう、と息をつく。
片付けを終え、寝室に戻る。 新井はとっくに夢の中だ。
「幸せそうな顔して」

既視感(デジャヴ)があった。 昔、こんな風に笑っている寝顔を見た記憶が・・・・・。

(隆裕)

思い出した途端、胸が苦しくなる。

『プリズム』

『プリズム』6*焼き鳥屋さんと二人の実家ー5

 苑田のお兄さんの話が出てきます。




 年子の兄は、家庭教師のバイトで桐生 修(きりゅう おさむ)という男性と知り合い・・、恋に落ちた。
最初は、信じられなかった。 まさか、同性相手に恋愛感情を持つなんて。
しかも相手には家庭があったのだ。

気付いた時、初めて隆裕と激しい言い争いをした。

「・・・・分かってる。わかってるんだ、のり(兄・隆裕は弟・範裕をこう呼んでいた)。」
「分かってるんならどうして?相手は男じゃないか、たか!(弟は兄をこんな風に呼んでいました)・・・やめろよ、そんなの。遊ばれてるんだ。」
「違う!好きになったのは・・、俺のほうなんだ。
何度も間違いだって思った。離れようとした。でも、・・・だめだった。あの人が欲しい。他に、何も要らない。」
「俺や、家族もか?そして知られて、うしろ指指されてもか!?」

そこまで言った時、さすがに目を逸らした。けれど、俺をまっすぐに見て震える声で、
「・・そうだ・・・・」

「にいさん・・・」

どちらかと言えば物静かな兄の、初めてみせた激情だった。
程なく、隆裕は、家を出た。
そして。。桐生と同乗していた車で事故に遭い、二人とも死亡する。


俺以上に両親はショックを受けた。
息子が、道ならぬ恋をしたことも、何も言わず逝ってしまったことにも。
知らされたのは、事故死の連絡があり、駈けつけた霊安室で桐生の家族から彼の日記を投げつけるようにして見せられた、時だった。
「申し訳ありませんでした・・・・!」

その後も相手の家の玄関先で土下座までし、何度も謝っていた。
そして母は、息子の四十九日が済んだすぐあと心労で亡くなり、父まで倒れ入院した。

あとは壊れるだけの家族を支えてくれたのは、母の従姉だった伯母だ。
「死んだらみんな仏様、よ。楽しかったことだけ思い出してあげなさい。それが一番の供養なんだから。」
と、俺と父さんの背中を叩くように励ましてくれ、家に住み込んでくれたんだ。

「私は、静代さん(苑田母です)みたいに出来ないけど。」
いいながら、俺たちに手伝わせ、家事も、小さな庭の手入れもしてくれた。きっとあの時間が無かったら、今でも下ばかり向いて人の視線に怯えながら生きていただろう。



「ぅ・・ん・・・・」
新井が寝返りを打って、ハッと現実の時間に戻る。
「明日も仕事だ・・。」
自分に言って、シャワーを浴び、新井を起こさないようにベッドへ入る。
(今度実家に戻ったら、予備の寝具を持ってこよう)
眠りに落ちながら思った。~~


(日が変わり、新井くんの視点に戻ります)


翌日。
「・・・・何で、苑田さんが・・・?」
って言うか、俺はどうして苑田さんと一緒のベッドで寝てるんだ?
さっき夢うつつで、体の前にあった温かいものが心地よくてぎゅっと抱きしめていたら、

「・・・新井、抱き枕にしてもいいが、もう少し力を抜いてくれないか?」

苑田さんの声が聞こえて仰天した。
「あっ、はっ、はいッ!」
急に目が見え始めた、気がしてウロウロ見回せば、ここ・は・・・、間違いなく苑田さんの部屋で、一緒に、ベッドに寝ていた。俺は、いったい?

思い出せ・・、おもいだせ・・・。思い出・・・・した。
焼き鳥屋のあと、苑田さんのところに来たんだった!

「す・・すいませんっ。俺、また迷惑かけて・・・・」
「そうでもない。昨夜は大人しかったし、俺も寝ていて蹴飛ばされなかったしな。」
うーんと大きな伸びをしながら答える苑田さん。寝ぐせのついた髪のせいでいつもより若く見えて、
「そんなこと、思っちゃ悪いだろ」
と自分に突っ込んだ。

『プリズム』

『プリズム』6*焼き鳥屋と二人の実家ー6

 少―しだけ苑田の視点が入ります。~~から~~の間ですね




苑田さんはというと。
「どうした?朝から変な顔して。ああ、Yシャツ洗って乾かしてあるから先に支度しろ。」
俺を促す。


~~目覚めて話をすれば、当たり前だが隆裕とは全く違う性格。
ホッとしながらも、新井が自分の心に居場所を作ってしまった事に気付き、温かくなる気持と小さな怯えを感じていた。~~


洗面所を先に借り支度していると、ガラスの小瓶が目に止まる。
「苑田さーん、これ、何ですか?」
持っていくと朝食の用意をしていた苑田さんがこっちを向いて、
「ああ、それは髪油(ヘアオイル)だ。前に話した事あっただろ?」
「へえ、これが?」
そう言えば、エレベータの中で聞いたような。
「俺もつけてみていいですか?」
「ああ。」
蓋を開け、匂いを嗅いでみるとかすかに杏の匂いがして、
(苑田さんと同じ匂いだ)
髪に擦りつけながらくすぐったい気分になる。



 今朝の通勤ラッシュは嫌じゃなかった。
二人分の髪油のせいか、苑田さんと密着していたせいか、俺たちの周りだけいい匂いがしていたからだ。
「じゃ、仕事頑張れよ。」
「はい。苑田さんも。」
と別れても、前回より置いてけぼりの気持ちにならなかったのもそうだろう。ただ、すぐにメールが入り、
::一応新井の家に連絡しておいた。後で自分で電話しろ::
と書かれていたには、あちゃあ、となった。そうだ、外泊したんだ。
休憩時間に家にかけると留守電だったので、昼休み、母親の携帯にかけ直す。
― 崇?」
― あの、えーと・・、昨夜はごめん。」
― まったくもう。いきなり夜中近くに電話かけてこないでちょうだい。心配したでしょう?しかも先輩って人にか  けさせて。」
― あ、苑田さん、なんて言ってた?」
― 『私のせいで終電乗りそこなってしまったので、息子さん、一晩お借りします。』ですって。あなたと違って礼  儀正しい人ね。お礼も言いたいし、今度家に連れていらっしゃい。いいわね?」
― 分かったよ。」

電話を切ってから、
「あれ?外泊自体は何も言わなかったな、おふくろ。」
自問する。それは信用されてるのか? まあ、いいや。それより、
「苑田さんを家に連れてこい?なんでそうなる?」
そっちの方が疑問だ。
でも、ありがたく頂戴しよう。こんな事でもないと苑田さんに連絡できない。

― あ、苑田さん、新井です。今大丈夫ですか?」
― 俺も食事中。どうした?」
― あの、おふくろが、お礼したいって言って」
向こうでくすくす笑う声がする。
― そんな大げさな事してないのに」
― 『連れてらっしゃい。いいわね』って念押しされて・・。」

― ・・・・・・おまえの家、か。」

ぽつりと言われ、押しつけがましかったかと焦る。
― あの、断ってくれていいですから。」
― いや・・、いいのか?俺なんかが行って」
― もちろんです。おふくろの本棚見て、言ってやってくださいよ、俺の部屋まで使うなって。」
― くくっ。そうか、そんなこと言ってたな。」
少し間が空いて、
― じゃあ、お邪魔しようか。」
― はっ、はい!おふくろも俺も喜びます!」
今度はぷっと吹き出す声が。
― わかった。次の日曜、都合がいいか聞いておいてくれ。」
― はい。わかりました。」

何が吹き出すほど可笑しかったのか分からないけど、OKもらえて良かった。
早速おふくろにメールして、腹の虫が鳴って、急いで昼飯を食べた。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その8

 大きな満月を見よう!

次の満月は6/23(日)ですが、この日の満月、いつもとちょっと違うそう。
’スーパームーン’と呼ばれていて、普段よりも大きな満月が見られる(大きさが15%も違う)―――― のだとか。


それって、何?と思ったら、
スーパームーンとは、月が地球に最も近づいたタイミングで、満月または新月になること。あまり聞きなれない言葉ですが、天体観測では正式な用語でありません。


 月の軌道は完全な円ではなく、少しひしゃげた楕円軌道(正確には少し異なります)を描くため、地球に最も近づく地点(近地点)と最も遠ざかる地点(遠地点)が存在します。

月が地球に近づくと、当然普段よりも少し大きな月を眺めることができます。これが満月や新月のタイミングに重なると、スーパームーンとよばれているのです。

前回は2012年・5/6。  次回は2014年8月11日3時頃・・・ですって。



ま、理由はともかく、まあるく綺麗なお月さまは見ているだけで不思議な気持ちになれるもの。
たまに吸い込まれそうになるけど、それもまた良し。


月見酒とか出来たらいいなあ。


『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#叔父さんと友人たちー3

 今日は、’上映会’からです。




部屋の明かりを落とし、薄暗がりの中、そこだけ片付けてある壁に四人の視線が向けられ
る。インストロメンタルが流れ、ノートPCにつなげたプロジェクターからの映像が映し
だされた。
真っ黒だった画面がゆっくり明るくなり、人影が行きかう。駅の案内が聞こえ、視線を巡
らせるように画像が改札から外へ向かい、駅前広場にあるモニュメントで止まった。

音楽が変わり、画像に字幕が流れていく。


*** 駅前にある、動くモニュメントに、魅かれた。

理由が知りたくて、ぼうっと眺めていた。でも、見つけられない。
ある夜、雨が降っていて・・、気付いた。
DNAの構図に似た二重螺旋形の、回転するアルミの棒。雨に濡れて表面が光り、その
光が滴になって上へ昇っていく。
そして。先端まで行きついた光は、ふっ。と。飛び立つように次から次へと消えていく。

ああ、そうか。

これが、見たかったんだ。 ***

昼間と夜のシーン。そして雨の日の夜の映像が字幕とともに切り替わり、終わった。


「おまえさ、ちょっと趣味変わった?」
見終わって、開口一番内海が言いだす。
「は?何で?」
「うん・・、なんて言うか、今日のやつ、音の入れ方とか画面の切り方とか、前のと違っ
てる感じすんだよね。」
内海の鋭さに内心焦る。今回のはたまたま叔父さんにも見てもらって、色々聞いて修正し
た後のだから。
「うつみー、言い方変。それを言うなら成長した、だろ?」
「そうそう。男はいきなり成長することあるんだからさ。なァ、智。」
「ま・・まぁね・・」
「・・・そーかな・・?」
涼二と和泉の応援(?)のお陰か内海の追及は立ち消え、
「それよりさぁ・・、聞いてくれる?」
と、涼二の恋バナに話題が映った。


俺の作品と涼二の話で盛り上がり、終電を逃がした涼二に内海、酒を飲んでいては自転車
に乗れない、と、結局和泉まで泊まる事に。
「こんな時間なんだし、静かにしろよ。」
「りょーかい。」
「わかってるって。」
「智が追い出されないように気をつける・・・ぉわっ」
「和泉!」
トイレ、と立った拍子にふらついた和泉が、片付けようとしていた俺の方に倒れ込んでき
た。
咄嗟に受け止めたはいいが、俺も一緒に床に転がってしまう。
「・・痛ってー・・」
「・・あつつ・・。さ・とる、ごめ・・」
「智!大丈夫か?」
「和泉・・、平気?」
痛がる俺と和泉に、内海と涼二が慌てて声をかけてくる。
「俺は平気だけど・・。智?」
「俺も・・大丈夫そう。」
「立てるんならどいてやれよ和泉。智が重いだろ?」
「ひどいなあ内海。俺より智の心配?」
そう言いながらも和泉はゆっくり起きあがり、今度こそトイレに行く。
「智、ほんとに大丈夫か?」
「うん、ぶつけたりしてないから。それより片付けないとテーブルどかせないし、寝る場
所ない。」
「あ、そっか。」

『プリズム』

『プリズム』6*焼き鳥屋と二人の実家ー7

日曜。

「あっ、苑田さん。」
うれしくて、つい手を振って呼んでしまう。
「わざわざ来なくてもよかったのに。」
改札を出てきた苑田さんは、待っていた俺を見て笑う。

今日は私服で、三色ストライプのシャツ(トリコロールカラ-・ピンストラ
イプのデザインシャツです)、スラックスで、紙袋を提げている。お洒落だ
なあ。俺なんかポロシャツにGパン。

「まあ、いらっしゃい。」
笑顔になるおふくろへ、
「初めまして。先日は電話で失礼しました。苑田です。・・・これ、少しです
が。」
挨拶して紙袋を出す苑田さん。
「あらそんな。・・・では、いただきますね。どうぞ中へ。」
おふくろは遠慮せず受け取り、中身を見て、もう一度笑う。そして、廊下にズラッと並んだ本棚に目を向けている苑田さんに気付くと、
「崇が話したんですか?」
悪戯っぽく聞いた。
「はい。・・本当に多方面なんですね。」

ハードカバーから文庫本まで、それなりに高さと厚みを揃えた本がずらりと並んでいる。
「主人は、そのうち床が抜けるぞ、って言うんですけど。」
苑田さんも本が好きそうだ、と見てとったおふくろ、にこにこ続ける。
「崇も小さい頃はよく取り出して読んでたのに、今は見向きもしないで。苑田さん、お好きでしたら後で本の話でもしませんか?」
「はい、よろこんで。」
すっかり気に入られたのは、リビングに落ち着いて、出されたケーキ皿と紅茶カップのセットを見ても分かった。家で一番高価(たか)いものだったから。

そしておふくろは本当に苑田さんを一人占めして本の話を始めてしまい、そっちのけにされた俺は面白くない。

「なんだよ、俺だって苑田さんと話したいのに。」
キッチンでぼやいていると、デニムのエプロンをつけ、大工仕事の途中の父さんが入ってくる。
「どうした?崇。今日は人が来るって駅まで行ったんじゃないのか?」
「あ・・、父さん。何か作ってたの?」
「ああ。母さんに頼まれて脚立を作っていたんだが、サンドペーパーが無くなって。」
言いながらリビングを覗く。
「・・来てるじゃないか。あの人か。」
「そう。おふくろが一人占めしてるんだ。俺だって話したい事あるのに。」
つい口を尖らせると、ははは、と笑って、入っていった。

「母さん。こっちにも話をさせてくれ。」

「あ、はじめまして。苑田です。お言葉に甘えてお邪魔しています。」
「こちらこそいつも崇がお世話になっています。」
「・・あの、もしかして木工のお仕事されていましたか?」
「分かりますか?ちょっと、脚立を作ってまして。
ああそうだ、足りないものがあって今から買いに行くんですが、苑田さんもどうですか?」
立ち上がって挨拶する苑田さんを、父さんも気に入ったようで一緒に行こうと誘っている。
「あらお父さん、私が話をしてるのに。」
「母さんは食事の支度があるんじゃないかい?」
「え?・・まあ、こんな時間。苑田さん、お昼食べていくでしょう?」
「あ、いえ、そこまでは・・・」
「いいじゃないですか。他に予定でも?」
「ありませんが・・・」
「でしたらどうぞ。こんな時にしか買わない食材があるんです。」
「食べないともったいないですよ。」
二人掛かりで説得し、とうとう、
「・・・・ごちそうになります。」
苑田さんと昼食、になった。  やった!

メニューは、母さん得意のちらし寿し。確かにいつもより豪華で旨かった。デザートは苑田さんが持って来てくれた果物だ。
食事が終わる頃には苑田さんも寛いでいて、帰る頃には、
「また来てくださいね、範裕さん。」
「今度範裕くんが来たら、一緒にやってみたい物があるんだ。楽しみにしているよ。」
というぐあいに、苑田さんは名前で呼ばれていた。

『プリズム』

『プリズム』6*焼き鳥屋と二人の実家ー8

 区切りのいいところまでにしたので、ちょっと長めです。


午後もだいぶ過ぎてから、苑田さんは家を出た。もう少し一緒に居たい俺は、見送りがてら駅まで行く事に。

「いいご両親だな。」
「そうですか?」
「ああ。久しぶりによく喋った。楽しかったよ。」
ぶらぶら歩く手にはおふくろの料理が入った手提げがある。苑田さんも一人暮らしだと聞いて、
「残したらもったいないから。」
言って、日持ちのしそうな物とかを詰めて渡していたんだ。

「でも、悔しいです。俺より先に苑田さんの名前両親に呼ばれちゃって。」
本気で言うと、
「呼んでもいいぞ。ただし、プライベートで、だけだ。」
すんなり許可が下りた。 トクン、と胸が鳴る。
「あ、じゃあ・・。のり・裕、さん。」
「ああ。」
うわあ、どきどきする。
「今日はあんまり話せなかったんで、今度また来た時に俺とも話、してください、範裕さん。」
「そうだな。」
柔らかな笑顔を見せられて気分が上昇した。駅までもっと遠ければいい、なんて思ってしまう。

「そうだ、新井、駅前に本屋あったな?」
「はい。寄るんですか?」
「うん、ちょっと。」
本屋をぐるっと一周したあと、範裕さんは何冊か持ってレジに。
二つにした袋のうちの一つを渡される。
「これ、新井のお母さんに。」
「・・・・範裕さん、おふくろの本棚、増やす気ですか?」
ははっと笑って、
「オーバーだな。読み切りの本ばかりだ。シリーズ物じゃないから大丈夫。今日のお礼だと言ってくれ。」

うーん、ちょっと複雑。それに、

「範裕さん、俺のことは名前で呼んでくれないんですか?」
せっかく苑田さんを‘範裕さん’て呼べるようになったのに。
苑田さん、驚いた顔になって、
「新井を、名前で?」
「そうです。不公平です。」
膨れた俺に、遠慮がちな小さな声で、少し赤くなりながら、
「・・・・・・崇。」
呼んでくれた。
「はい」
即返事しニカッと笑う。範裕さんは吹き出し、
「おまえの顔・・、おかしい。」
と言われたけどにまにまするのは止められなかった。


☆ ☆ ☆


~~新井の家からの帰りがけ、苑田は伯母のいる我が家へ向かっていた。生垣越しに見つけた彼女へ声をかける。
「和美さん。」
「あら、お帰りなさい、範裕さん。
なんだか楽しそうね、どうしたの?」
「後輩の家にちょっと行って来たんです。・・これ、おすそ分け。」
まあまあ、と笑いながら苑田を家に招き入れた。

「いい後輩さんね。私たちももらっていいの?」
「ええ。」
今日の出来事を話しながら苑田は思い出し笑いをする。
「父さんは?」
「今日は、町内の付き合いで出掛けているわ。」
「出掛けてる?」
あんなに世間に対して小さくなっていた、父が?

「ひっぱり出してくださる方がいてね。」
伯母も嬉しそうだ。話してくれたところによると、定年退職した近所の人が、ちょくちょく父のところへ来てくれるらしい。
ほとんど趣味の無い父を巧みに連れ出し、一緒に遊んでくるのだと言う。
「この間は初めてゲームセンターに行ってきた、って、こんな物をお土産にくれたのよ。」
出してくれたのは、UFOキャッチャ―の景品だ。
「へえ。」
そうか、父も少しは明るくなったのか。

「ところで今日は何の用があったの?」
「あ、予備の寝具が欲しくなって。」
「予備?」
「ええ。見てきていいですか?」
「もちろんよ。遠慮なんかしないで。」

『プリズム』

『プリズム』7*呼び出し

和美さんと話していたキッチンを出て部屋へ向かう。
住む人が少なくなったとはいえ掃除がいきとどき、花が飾ってあったりするのを見ると、家の中が温かい気がする。

寝具は、隆裕の部屋にまとめて置かれていた。
一揃い選び、玄関に近い茶の間へ持っていき、宅配を頼む。
「でもどうしたの?来る早々布団だなんて。まさかベッドに穴でも開けた?」
「いいえ。後輩・・が、終電乗りそこなったんで俺のところへ泊めたんです。ただ、予備が無くて結局ベッドで・・」
伯母の発想に苦笑して理由(わけ)を話す。彼女は笑顔のまま、
「まああ、範裕さんも連れて歩く後輩さんが出来たのね。」
「厳密に言うとちがいますけど。」
崇、は、中島先輩の後輩だ。胸の内で呟くとなぜかチクリと痛みが走った。~~



あれから、苑田さんとよく会うようになったと思う。社内や、中島主任に教えてもらったバーで。
もっとも、連絡を入れるのはほとんど俺だ。主任から、俺の担当している会社のいくつかは苑田さんが担当していたり、開拓したものだ。と聞いてからは自分に言い訳せず連絡できるため、自分なりに気付いたことへの意見を聞いてはちょっとムダ話をする。
課が違うから一応気を使ってメール中心にしてあるけど、うれしい事に変わりはない。

「あれ?新井じゃないか」
「あ、北森。」

外回りで昼になり、食べていた店で北森と再会した。たまたま空いていた俺の前に座って注文をする。
「久しぶり。」
「そうだな。」

前に、苑田さんの‘枕営業’の話で気まずくなったけど、しこりにはなっていない。
ところが、こいつはまた苑田さんの話題を出してきた。
「そういえば部長、専務の娘と付き合ってるんだって。聞いたか?」
「ん。・・なんかそうらしい。」
進藤部長が専務のお嬢さんと交際していて、じき婚約するらしい・・。の噂は、しばらく前から公然の秘密となって職場に流れている。一課の誰かが女性と二人連れの部長を見撃したこともあり、信憑性は高い話だ。
「いいよなあ。あー俺もせめて部長に気に入られて出世コース、なんてなりたいけど二課じゃなあ。」
羨ましそうにぼやく。でも、高級文具を扱う二課の人間がギラギラしてたら、すぐ取引なくなりそうだ。

「あ、その幸せそうな部長と苑田さん、同期だったよな?」
「え?・・まあ、そう聞いたことあるけど、何で?」
いきなり出た名前にどきんと心臓が跳ねた。
「いや、同期つながりで思い出してさ。あの人、この頃雰囲気変わったんだ。」
「へ・えー・・」
「前はさァ、なんかこう‘近づくな’オーラ出してたんだけど、最近それが無くって話しかけやすいんだ。それに言ってた事あったろ?あの人すげえ記憶力よくってさ、こないだ分かんないとこ聞きに行ったらそっこー答えてくれて、しかもドンピシャ。あれ、助かったなー。」
「・・・・そんなに凄いのか?」

俺にはそんな風に教えてくれない。

「うん。・・・覚えてるってのもそうだけど、あれ、結びつける力がスゴイんだろうなー。俺じゃ思いつくことさえ出来ないもんな。」

一人感心している北森の前で、俺は何だか苛々していた。
俺の方が苑田さんに近いのに。名前を呼び合えるのに、北森にはすぐに答えを教えてやってる。

「そうか。良かったじゃないか。」
「新井?」
急に棘とげしだした俺に面食らう北森。
「おまえ、どうかした?」
「別に。」
残り半分の食事をかっ込んでいると、
「・・・・・もしかして、おまえの周りに居ないの?苑田さんみたいな(― 知恵袋みたいな―)人。」

(うるさいな。苑田さん、って連発するな。)

「なんだそっかー、それなら早く言えばいいのに。苑田さん、以前一課にいたこともあるらしいし、聞きに来ればいいじゃないか。」
眉間にしわを寄せて聞いている俺に、北森がどこか自慢げに言う。
「苑田さん、きっとおまえにも教えてくれるぞ。」

『プリズム』

『プリズム』7*呼び出しー2


いま、何て言った?

「教えてくれる?」
直接、聞きに行ける・・?
「そうだよ。時々、他の部署に呼ばれることだってあるみたいだし、俺たち隣同士だろ?大丈夫だって。」
えーっと、確か今日は外出なかったはずだから、社に戻ったら聞きに行けば?みたいなことを言われて決心した。
「分かった。今日は苑田さん会社だな。行ってみる。サンキュー北森。」
「お・おお。聞いてびっくりするなよ。」
マジ凄いんだから、と続けるのはほとんど耳に入らない。
機嫌が直った俺にほっとしたらしい北森は、俺より先に平らげて出ていった。
食事を終わらせ、メールを入れる。

::苑田さん、聞きたい事ができたので、後で行っていいですか?::
すこしして、返信がある。
::了解::
よし、これなら(社に)戻って直接聞きに行っても大丈夫だよな。


外回りが終わって戻ったのは一九時過ぎ。ただ行きたいから行く、のはさすがにできないから、聞きたかった事を箇条書きにしたメモを持って席を立つ。

二課は、どこかのんびりしている空気がある。高級文具を扱っているせいか、一課みたいにバタバタした感じが無い。
何となく気後れしたけど、PCに向かっている苑田さんを見つけ、近付いた。
初めて間近で見る仕事中の苑田さんは表情が引き締まり、見惚れてしまう。
「・・・・? 新井?」
そばで止まった足音に気付いたのか、顔を上げた苑田さんが俺を見て驚く。
「あの。教えて欲しい事があって・・・。苑田さん、他の課の人も教えてるって北森に聞いて、直接でもいいかと思って・・・」
あいつを言い訳にしながらそわそわする俺に苦笑した苑田さんは、
「俺で分かる事ならおしえてやる。どこだ?」
自分の仕事の手を休めて言ってくれた。

「はい。ここの・・、」
メモを見ながら聞いたけど、即答は、こない。
「・・・・なら、それをここと切り換えればどうだ?」
と、メールでのやり取りのまま、質問に質問が返ってくる。
(顔を見て、直接話せるんだから、これくらい・・・我慢、かな?)


何か見えたのか、ふと俺の後ろを見た苑田さんの肩が小さく跳ね、
「? 苑田さん?」
「もう、いいだろ?俺も仕事がある。」
いきなり会話を打ち切られた。
「え・・でも」
「こっちも途中なんだ。あとは自分で考えろ。」
体ごと向きを変えられ、態度で‘終わり’と告げられてしまった。
「・・・はい・・。ありがとう、ございました。」
そうだよな。苑田さんにだって仕事、あるもんな。
仕方なくお礼を言って自分の席に戻ろうとして、視線を感じる。見回すと自分の席へ戻る進藤部長が前を歩いていた。
今の視線、部長?



「はーーっ」
椅子に座った瞬間、脱力。
「・・・『そっこー教えてくれて、ドンピシャだった』・・か・・・・。」
北森の言葉を真似て、凹んだ。
(俺には一度もそんな風に教えてくれない・・・)
仲良くしてもらってる、と思っているのは俺だけなのかな。
メモへ追加の書き込みをしたのを読み返しながらぼんやりしていたら、メールの着信音。この音は、苑田さん。

::二十一時、料理屋・石元で待ってる::

石元、は、会社から一駅の場所にある中華料理屋だ。少し高いけど、値段以上に美味い店だと聞いたことがある。

「何で・・・?」
あんなに素っ気なかったのにご飯の誘い?   混乱した。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その9

 梅。

私は結婚してから、梅干し・を漬けるようになりました。もうそろそろ20回を超えそう・・・。
そのくせなかなか同じ味にはならない。。(あ・・、書いたら凹んできた。苦笑)
なので今回は梅の話を少々。



梅干しって、平安時代からあるもの、なんだそうですよ。 「三毒(食物・血液・水の毒)を断つ」としてその効用が知られていたとか。そして出てくるのは才女・・゜清少納言’サマ。

この方、自分の書いた 「枕草子」 で、こんな事を言ってました。

「にげなきもの………歯もなき女の梅食いて、酸がりたがる(似つかわしくないもの、それは歯もなくなったような老女が梅を食べて酸っぱそうにしている顔)」

つまり・・、「梅干しバアサン」という言葉の、元祖??!
まあ、鋭くシニカルな観察眼をお持ちだったからこその着眼点でしょうが・・・。
見られていたお祖母ちゃん、お気の毒・・・。



ですが、
’梅干しを見ただけでも出てくる、唾液に含まれる酵素には「若返りのホルモン」として知られるパロチンも含まれている’
とあると、毎日・・は無理でも、食べた方がいいかな―なんて気分にもなります。


お店にはもう梅もシソも焼酎も出回って、コーナーまでありますが、私は実家へ採りに行きます。今回は明後日・6/30 に。
漬けこむまでの作業は大変ですけど (書きだします?)、これも年中行事。
長靴、日よけ虫よけの長袖や、帽子を持って、行ってきま~す。




ちょっとだけ工程を。ただし我が家の場合です。

梅もぎ - 取りあえずコメのとぎ汁もしくは塩水付け - 甕に入れ、分量を合わせて塩を入れる(下漬け) - 水が上がってきたら揉んだシソを入れる(梅が赤くなります) - 何日かしてから天日干し(可能なら夜も) - 完成! 

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』#叔父さんと友人たちー4

翌朝、講義が午後からの内海に鍵を渡し、三人で部屋を出る。

「二日酔いなんて言ってたけど、あいつ絶対狙ってたぞ。泊まるの」
「そうか?」
「だって、午前中の講義取って無いじゃん。」
「智のとこが自分(内海)より学校に近いの分かってるからさ。」
朝バーガ―しながらそんな話をする。
「けど内海は勝手に覗いたりしないし汚さないし、安心できるんだ。」
なにせ内海は高校受験のための塾で知り合った同じ中学の同期生。クラスが違うからそれ
まで知らなかったやつ。だから一番付き合いがある。
「ふーん。信用してんだ。」

いったん家に戻る和泉は途中下車。涼二とも学内で別れ、本分の学業に精を出す。


「・・・っとに、資料って重たい。」
午後、図書室で本の山を横に置き、愚痴りながらレポートをまとめていると、
「iPad買って入れればいいだろ?ほら、鍵。」
後ろから内海が覗き込んでくる。
「あ、来たんだ。・・・お金も無いし、そんな器用な頭、持ってない。それにまだ新しい分
野だから探すの大変。」
「‘環境共生学’だったっけ?」
「そ。ものすごく平たくすると、自然を大事に・・、ってゆうの?そんな感じ。」
「・・江戸時代がそうだったって聞いたことある。」
横の席に座って、頬づえをつき俺を見る。アウトドア派でスポーツ好きな内海は筋肉質の
体に精悍、と言えそうな顔だち。けど笑うと子供みたいで女子によくモテる。
「内海は防災・・だよな?」
「ああ。おまえの取ってるのの隣くらいにある分野かな?デザインも入ってるけど。」
環境デザイン・環境防災科。
内海が取っているのはそこで、俺と重なる講義もある。去年はフィールドワークであちこ
ち行かされた。



「ところで、来週どうする?」
「また合コン?俺、苦手なんだけど。」
「残念。街コンさ。屋外。それならいいだろ?」
「う~~ん・・」
女の子は好きだけど苦手だ。扱いに気を付けないと一瞬で変わってしまう。
「女子が苦手、なんて言ってたら彼女出来ないぞ。」
「うるさいな。行くよ。」
「よーし、約束したからな。」

当日は夜の集合。イベントだから街の所々で休憩所があったり店を解放したりしている。

「こんばんは。」
「あ・・、こんばんは。」
内海と二人、ある店の店先で軽く腹ごしらえをしていたら、二人連れの女子が声をかけて
来た。流行りのひらひらしたスカートで足を強調したスタイルだ。
「今日私たち、初めてなんですー。お二人とも参加されているんですよね?一緒にどうで
すか?」
参加者バッヂを見つけて、ずいっと距離を詰められる。
「あ・あの・・」
目が泳ぐ俺と、
「ありがとう。連れが欲しいなって思ってたんだ。な?能見。
あ、食事済んだ?ここ、美味しそうだから入ろうと思ってたんだけど、どう?」
「「はい。」」

鮮やかに仕切る内海。すごい。
あっという間に店で食事、になってお喋りして。でも、彼女たちの話題について行けなく
なった俺はいつの間にか聞き役になっていた。

「楽しかったです。また、会ってくれますかぁ?」
ピンクのスカートの子が勢いづいて言ってくる。それに、
「うーん、会いたいけど、俺達、遠くから来てんだ。だから約束できなくて。ごめんね」
「あ、じゃあ、携番とか、メアドとか」
「それもごめん。出かけてくる前電池切れしちゃって。充電中なんだ。」
こんな可愛い子たちと会えるんだったら、持って来たんだけど。と、本当に済まなさそう
に内海が謝るからそれ以上は言えなくなったらしい。
「私たち、また来ますから、今度は絶対教えてください。」
「内海さんたちみたいな人となかなか会えないんですから。私たちの事、忘れないでくだ
さいね?」
「もちろん。今度会った時、ね。」
なんてやるもんだから、二人とも『きゃあ』なんて喜んじゃって。
まだまだくっついていたそうだったけど、友達を見つけたらしく手を振って行ってしまっ
た。

「はあ~、疲れた。」
「何だ智、まだ始まったばっかりだぜ?あと・・、一時間はゆうにある。」
「え?おまえそれ・・、充電・・」
時間を見るため取り出したのはスマホ。
「これ?無いと困るだろ?」
あっけらかん、と言われて脱力した。

プロフィール

ますみ

Author:ますみ
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