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『プリズム』

『プリズム』7*呼び出しー21

ようやくRが終わります。が、前半くらいまで前回の続きなので、18才未満の方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。


















































沈みかけた意識が、その声に突き刺されて秒速で覚醒する。
自分の事も忘れて必死に声の方へ視点を合わせて・・見たのは。

「―――っ、進藤!」

体を捩じるようにして目に入ったのは、少女を背後から抱きかかえて処女を散らす進藤の姿だった。

苑田の声にこちらを向き、ニヤリと嗤って見せつけるように抽送を繰り返す。
「ぃや・・・いやあ・・・っ」
両手をつながれたきりの少女は何も隠せずただ涙を流すだけ。

「やめ・・・・んあっ!あ・ぁっ・・、あぅっ」
「こいつ・・、よそ見すんじゃねえ!」
気を逸らした苑田に腹を立てたヒキガエルが音を立てて肌を打ちつけ、さらに戒められている雄を力任せにぐいと握る。
「――――・・ひ !!」
階段を踏み外した時のように、ショックでいきなり落ちた気がした。声も出せず、唇だけが開く。そして、
「くあ・・・!」
苑田の後孔が男のモノを食い締め濁慾の粘液を絞りださせ、野太い声で逐情させた。

「・・・ちっ。変な気、起こしゃがって。」
イかされたのが不満だったのか、気を失った苑田の中で己の雄を擦り続けていたヒキガエルだったが、ようやくずるりと引き抜き唾を吐く。
「せっかく口できれいにさせてやろうと思っていたのによ。」
ブツブツ言いながら着物の一端で雄を拭う。と、
「楽しんだみたいだな。」
声をかける男がいた。


振り向く脂男に口角を上げて笑うのは、短髪で目つきの鋭い男だ。
「へっ、あんたもヤるのか?」
「いや、俺はあんたの接待を任されたんだ。とりあえず下りて何か食ってこいよ。腹減ってるんだろ?」
「そういやそうだな・・。わかった。」
促されて立ちあがり、
「そいつ、いいケツしてやがる。またヤらせろよな。」
ぐふふ・・・、と笑って、よたよたとステージを下りる階段へ向かった。

「‘入れ札’で決まったあんたに二度目があるなら、俺は呼ばれないさ。せいぜい最後の食事を楽しむんだな。」
口の中で答え、失神して動かない苑田を見おろす。
「やれやれ、可哀そうに。」
片膝をついて雄に巻かれた紫の紐を解けば、トロリと白い蜜が、まるで涙のように溢れ落ち、股間をズクンと刺激する。
「・・・・・マジかよ・・。」
女にしか欲がない、と思っていた自分の反応に少し驚く男。
改めて見回せば、紅い痣こそ少ないが、情交の痕を色濃く残した肌が薄桜の色をのせ、開いた唇までもが誘いをかけてくる。得体の知れない感覚が、ゾクリと背中を駆け抜けた。

ぱん、と自分の頬を両手で叩いてその気分を追い払い、盆に残っている手拭いを湯で濡らす。
涙と汗と、唾液の跡が残る顔から拭いていると、
「・・ん・・・・」
強かったのか、苑田が意識を取り戻した。
「・・気がついたか?」
重たげに瞼を持ちあげ、瞬きして男を見る。
「・・・・俺は・・?あなた・は?」
「俺は高松。あんたは気絶してたんだ。奴はもういない。」
自分で拭くか?と手拭いを差し出すが、首を振る力もないほど疲弊した苑田はやっと笑みを浮かべるだけだ。
察してくれたのか、我慢しろよ、と言って、高松はまた拭きだした。

「あの・・・・娘は?」
高松の手が雄に触れ、小さく息を呑んだあと気を紛らわそうと話しかける。
「ああ、無事に終わった。」
「無事・・・?あん・・なことを、されて?」
憤りを見せたのへ、手を動かしながら男は笑った。
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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その14

 見上げる


今日車で移動中、開けた窓から見上げると、本当に真夏の空で、ムクムクとした白い雲がのんびり移動していました。
毎日見ているのに、何だか久しぶりに空を’見上げた’気分になって、路肩に止めて少しだけぼーっと上を向いて・・・。心がふわっと軽くなったようでした。


上を向くのってなぜか心も体も前向きになるんですよね。。
目で見えるもの、そうでないものも胸に落ちてくるからでしょうか?  そうそう、天体ショーもワクワクしながら見上げてますね。


中国などでは、’福’という文字を逆さまにして額に入れて飾ったりするそう。
私も初めて見た時、「えー、これ、さかさま。」 と思ったのですが、実はこれ、縁起担ぎ。’福は空から降って来る’と言う意味なんだそうです。「倒福(dào fú)」と読む(発音は・・分かりませんけど)。

それなら、開いた傘を逆さまに持って歩けばたくさん拾える??・・かも。



話は変わりますが、私の町は明日花火大会があります。8月第1土曜日。あしたですねー。

本来は虫送り(。農作物の害虫を駆逐し、その年の 豊作を祈願する目的で行われる。 春から夏にかけての頃(おもに初夏)、夜間たいまつを たいて行う。)がメインで、おおかがり火(だいたい45m)輪踊りだけだったんですが、スポンサーがついて花火をするようになったらそちら目当てに見物客がた―くさん。

うれしいやら困るやら。

見るだけならいいのですが、ずっと参加している方の身なのでちょっと複雑です。


まあ、これも見上げるもの。   頑張って行ってきます。




『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会い-2

姉の交際相手が来る。

「姉貴がそこまで付き合いしてる相手がいるなんてなあ。」
父さんの不機嫌に付き合いきれなくて部屋へ上がり、ベッドに寝転がった。
気になって課題も進まない。 どんな男性なんだろう?
俺より四つ年上の姉は社会人で働いているから、当然同じ会社の人なんだろうと思ってい
たら、大学の先輩なんだと言う。
ボランティア活動をしている時に知り合ったとか。

以前、和叔父さんに話していた時の姉曰く、
「何かに取り組んでいる時の章雄さんは、かっこいいのよ。」
だそうだけど。

「姉さん、面食いだったけどなー。」
俺もどうせなら自慢できる人が姉貴の相手だったらいいなと勝手に想っているうちに、玄
関のチャイムが鳴った。

来た。

飛び起きて耳を済ませれば母さんと姉貴が何か言ってるのが聞こえる。そして足音が廊下
を移動していく。
「どうしよう、下りていいのかな・・・」
こんな時のタイミングが分からない。ウロウロしていたら、
「智―、下りてらっしゃい。」
と、母さんが呼んだ。


「はー・・、今いく。」
あんまり急いでも‘待ちかまえていた’みたいでなんだし。急ぐ気持ちと足がばらばらに
なって、階段をどたどた音を立てて下りてしまった。

「もー、大きな音で下りてこないでよ、智ってば。・・・恥ずかしいでしょ。」
「べっ・・べつにいいだろ。」
部屋に入るなり姉貴に言われカチンときたけど、
「まあまあ。智くんは今日何があるのか知らなかったんだし、いいじゃないか。」
和叔父さんが俺を助けてくれてほっとしてその隣へ座る。

俺、和叔父さん、父さん。その向かいに姉貴・・・、姉さんと、章雄・さん。


初めて見た姉貴の交際相手。
(へぇ・・、意外)

イケメンじゃ、なかった。てっきりTVに出てる系のイケメン男だろうと思っていたのに。
(あ、でも)
話は分かりやすいし、俺が言ったら失礼だろうけど考え方がしっかりしてる。それに、笑
うと人懐こい笑顔になって安心できるってのかな?そんな感じ。

姉さん、やるじゃん。

父さんも最後には不機嫌じゃなくなっていた。

『プリズム』

『プリズム』7*呼び出しー22

高松さんと会話・・からの続きです。微妙なのですが・・・まあ大丈夫だろうとR無しにしました。




「それでもあんたはあの子を救ってやったんだ。普通に破瓜なんて上々さ。」
「上々・・・?」
掠れた声で詰問すると、
「ああそうさ。最初は蛇と入浴させられるはずだったたろ?おまえさんが必死に止めたから人間相手だ。しかも見ている野次馬が少ない。もうショーじゃなくなっていたからな。
それともうひとつ。」
見あげるしかない苑田に、
「あの子は億の単位の借金のかたがわりをするためにここへ来たのさ。父親の借金だ。あの子一人で家族と周りの人間が助かった・・、って訳だ。」
優しくなった口調で続けた。

「でも・・・・」
俺は助けてやりたかった、と表情で続ける。高松はふっと笑った。
「香川がほれ込むわけだ。こんな時でも他人のことを考えるなんてな。・・・ああ、あいつと俺の関係か?
ダチ(友達)というか、まァそんなもんだ。
 実を言えば、今夜はおまえさんが来るって聞きつけたんで変わってもらったのさ。(香川から)話だけはきいていたからな。」
体を拭き終え、タコのある手で苑田の頭をくしゃっとかきまぜじゃあな、と立ち上がる。

「もうよろしくて?」
高松の後ろで聞いた覚えのある女の声がした。

「これはこれは。 彼氏を放って来ましたか?佳奈子さま。」
―――― かなこ。進藤が辟易しながらも相手をしていた女だ。
(この時点で、苑田が知っているのは‘かなこ’と呼ばれていることだけなので、苑田視点ではひらがなです)
「良積さんはお帰りになってしまいましたわ。ですから‘これ’に用がありますの。」
扇子で苑田を指さす。
「こちらの用は済みました。‘景品’の持ち出しは禁止のはずですが、どうするんですか?」
それとなく苑田を庇う高松に、
「持ち帰りなどしません。用事が済めば戻します。」
どきなさい、と苛立った声を投げ、付いてきていた後ろの二人に、
「きれいにしてから連れて来なさい。」
言い捨ててくるりと背を向けた。
「・・・・・おっかないねえ。あんた、(あの女に)何したんだ?」
目で佳奈子を示して問いかける高松。
「・・・・こっちが聞きたい・・・・」
佳奈子の命令に従い、横たわった体を引き起こして歩き出した二人の間で答えながら、見当もつかず首を傾げる苑田だった。


事務的に洗われ、元の服へ着替えさせられて連れてこられたのは、佳奈子が宿泊している部屋だった。

「‘景品’のくせに」
まともに立っていられない苑田の両脇を男達に支えさせ、佳奈子は扇子の先で顎を持ちあげると怒りをぶつけた。
「おまえが良積さんを呼び捨てにするから、あの人は帰ってしまったのよ。」
びしっ、と扇子で苑田の頬を張る。もう一度。
「良積さんに不快な思いをさせて!」
余程執着しているのだろう、柳眉を逆立てている。まだ続けようとしたが、
「佳奈子さま、それ以上なされては扇子が痛みます。」
と、お付きらしい年輩の男に諌められ、苑田の頬が切れ、血が滲んだのを見てようやく気が済んだのか
「もう、いいわ。」
肩で息を吐くと、顔を見るのも嫌だと向こうを向いて合図した。


邪険に廊下に出され、放り出されるところへ通りかかったのはテイ女。
「もし。ここでは邪魔になります。せめて控えの間へ運びなさい。」
命令になれた声音に男たちは従うほかなく、苑田は控えの間に持って行かれる。
どさっと投げ落とされ、クッションの山にうつ伏せに沈み込んだ思い体を持て余しつつ、やっと誰も注目しない場所に来たことを感じる。

(このまま死んでもいいかな)
そう思うほどだった。しかし、
「埋もれて死ぬ気か」
腕と肩を引かれ、身体をひっくり返される。
「全く。理解らない奴だなおまえは。」
窓からの逆光で顔が見えにくかった。声で男だと知れたけど、知り合いがいる場所ではない。それなのに、
「おい、悪いが何か適当に見繕って持って来てくれないか?」
彼は誰かに声をかけ、そばに腰を据えて世話を焼きだした。

『プリズム』

『プリズム』7*呼び出しー23

 苑田、手に入れました・・・。



「いま、食い物を頼んだ。少しは腹に入れろ。でないと帰れなくなる。」
「・・・あん、たは・・・・」
間近に顔が見え、自分の顔に白い飛沫をかけた男だ、と気付き複雑な気持ちになるが、
「よくあのヒキガエルの相手をしたな。むら様がまっ先に’入れ札’に参加していたぞ。」
真顔で言われ、苦笑いした。
「―――― 好みじゃないぞ。」
「それくらいは分かる。」

「あの・・・・」
「ああ、済まない。」
横から、食欲を起こさせる匂いと女性の声がした。こちらにも聞き覚えがある。
「・・・・りん・さん・・?」
「・・・・・・」
泣いたあとの、赤い目をした彼女が、今度は湯気の立つ食器を盆に乗せてそこにいた。
苑田の顔を見て、また泣きそうになる。
「傷の、手当てを。」
何か探してきます、と盆を’影‘に押し付け離れていく。りんの言葉に’影‘も苑田の顔の傷を見て眉を寄せた。
「―― 佳奈子さまがやったのか?」
「よく、知ってるな。」
「遠目に連れていかれるのが見えた。あの女も妙な女だ。‘入れ札’を言いだしたくせにおまえにそんなことをするとはな。」
「‘入れ札’?」
男の言い方も気になったが、変わった単語も気になった。
「おまえは知らない方がいい。高松様が呼ばれていたから、あのヒキガエルの処分が決まったんだろうさ。」
苑田の手に温かなうどんの椀を持たせながら、酷く冷たい男の言葉に鳥肌が立つ。
「食えよ。もうじきここはお開きになる。そうなったらおまえも追い出されるだろう。歩けるくらいになっておかないと、不審者扱いで警察に通報されるぞ。」
「本当です。
お疲れなのは分かっていますが、せめて汁だけでも飲んでください。」
りんも口添えし、そばに座る。
「・・・・ありがとう」
厚意に答え、一口すする。
口に入れると空腹に気付いた。顔の傷が痛み、ゆっくりしか食べられなかったが、全て腹に納まる。
「・・・うまかった・・。」
差し出した空の椀を受け取り、笑顔を見せたりんが、
「じっとしていてくださいね。」
濡れタオルで頬に残った血の跡を拭きとり、傷に薬を塗り込んでいく。

「・・・聞いてもいいか?」
「何だ?」
視線を向けられた’影‘が、名前を呼ばれ出ていく仲間たちを気にしながら答える。
「かなこ―――。あの女のなまえを、知っているか?」
「ああ。」
「教えてくれ。」
ぎょっとして、りんまで手を止めた。
「・・・・・・恐ろしい事を言うな。俺たちは主人に従っているんだ。聞かれて答えると思うか?」
苑田を睨みつける。
「だがあんたは’あの女‘と言っていた。」
「駄目なものはダメなんだ。」
次いで視線を向けられたりんも、
「私たちに許されているのは、主人が・・、しづ様が呼びかけている名前を、同じようにお呼びすることだけなんです。」
「そうか・・・。」
悪かった、と呟くのに、でも、と小さく続け、苑田の手を取った。
手の平に指で一文字書く。顔を見た。
苑田は頷き、声を出さずに待つ。’影‘も黙ってそのやり取りを見ている。

一文字。また一文字。
途中、首を傾げた苑田に、もう一度、と同じ文字を書く。 全部で六文字、書いた。
書き終わった手を苑田が取り、手の平に指を乗せる。一文字、書いた。
(さ)
りんが自分の手の平に指を当て、丸を作る。残り七文字、全て丸がついた。
西園寺 佳奈子。 ―――――― さいおんじ かなこ。進藤に秋波を送り続けている女の名前。

苑田の目が、初めて猟犬の目になった。



『プリズム』

『プリズム』8*カクテル・・雪国


 ようやく帰りついたビジネスホテルで、服も脱がずにベッドへ倒れ込み丸一日寝込んだ。
翌日、まともに歩けるまで回復し、近くの食堂で腹を満たしてもう一度部屋へ戻る。熱いシャワーを浴びながら、やっと、『終わった』と思う。
そして呟く。
「西園寺 佳奈子―――。」
手に入れたのは、進藤へ放つことが出来る矢。 少なくとも牽制にはなるだろう。
そう思った時体を洗う手が止まった。牽制? 何の?

(崇)

馬鹿な。・・・自分のためだ。これ以上堕ちないための。
だが、一昨日の夜、抱かれていた時に心で縋ったのは、名前を呼び合うようになった後輩の面影だった。
「違う・・!」
声に出して否定して、胸が絞られるように痛む。

「新井 崇・・・・」
名前を口にして、どき、と跳ねた心臓に焦る。そんな自分の感情に狼狽えた。そんなはずはない。男相手に、同性に好意以上の気持ちを持つなんて。
好きに・・なる、なんて。
「・・違う。あいつが・・、崇が隆裕に似てるからだ。」
鏡に映る自分に、説得力の無い言い訳をしていた。

自分を持て余していたから、ドアから差し込まれた新聞もろくに見ずチェックアウトした。
とある男性が、溺死した記事も知らずに。

==死因は事故死。泥酔して川で用を足そうとし、誤って落ちたらしく局部の露出があったという。==


完全週休二日制の社は土曜日の午後になると人影もまばらで、苑田に注意を払う者もいない。戻ってくるなり溜まっていた仕事を片付け、飲みに行こうかと思い立ったのは、二十一時を過ぎた頃だった。


「いらっしゃいませ・・・。」
入って来た苑田を見て、マスターが眉をひそめる。
「ここは、いつ来ても、静かだねー」
飲んできたのだろう、酔った姿で現れてカウンターに座る。

「マスター、お酒。」
「酔い覚ましのジュースの方がいいんじゃないですか?」
「酒がいいんだ。くれないなら、ほかへ、行く」
拗ねた言い方に、本人では判らないフェロモンが溢れていて、他の店で飲んだら狙われそうだ。
「・・・・いつもの、ですね。」
シングルを作って前に置けばすぐ手が伸びて、タン、と空のグラスが置かれる。
「ペース、早いですよ」
「いいんだ。・・・明日は休みなんだから。 おかわり。」
「苑田さん・・。」
珍しく悪酔いしている。もしかしたらここで寝落ちしそうだと覚悟して聞こえないようにため息をつく。
二杯目も空になった時、ひとり、入って来た。

「いらっしゃ・・・・、やあ、新井さん。」
「今晩は。」
マスターが新井を見て営業ではない笑顔になる。そのそばで、今にもカウンターに突っ伏しそうだった苑田が、ぎく、と固まった。
「あ・・、苑田さんも来てたんですか?」
嬉しそうな声を出して横に座る新井を、見られない。

「何にします?」
「カクテル、お願いします。えー・・っと、」
メモを取り出す。
「‘雪国’っていうカクテルなんですけど。」
「涼しそうな名前ですね。」
そのメモを手渡された子湖塚が、ちょっと待っててくださいね、とレシピの酒を取りに行く。

## カクテル・雪国
1.カクテルグラスの縁をレモンの切り口で濡らし、砂糖を薄く引いた皿に伏せスノースタイルを作る。
2.ウォッカ30ml
  コアントロー15ml
  ライムジュース15ml  をシェイク

 できあがり。飲んで甘かったら、ライムとコアントローを減らし、ウォッ  
 カを増やす。


材料を取ってくるとメモを返し、目の前で作っていく。
「はい、どうぞ。」
「わ。ありがとうございます。」
嬉しそうに、目を輝かせてマスターの手元を見ていた新井。それを横目で見ながら、苑田は声をかけられなかった。



おそらく仕事に励んでいただろう新井と、結局身体を開き、抱かれていた自分。意識した途端、居たたまれなくなったのだ。

(こんな体で、崇に会いたくなかった)

早く帰りたかった。



『プリズム』

『プリズム』8*カクテル・・雪国ー2

「新井さん、これも。」
「二つ?え・・これ・・・」
「こちらは甘さ控えめ。・・・・に」
苑田さんに見えないように指差すから、俺もそっと頷いた。マスター、にこっと笑って離れていく。
「・・・範裕さん、一緒に飲みませんか?」
横に座った時から黙ったままの前に甘さ控えめ、のグラスを置く。ビクッと全身を震わせて、
「今日は休みだった。・・何でここに来るんだ?」
俺を見ず、棘のある声を出す範裕さん。どうしたんだろう?
「あー、・・ネット見てて、変わった名前のカクテル見つけたんで、マスターに作ってもらえたらな、って来たんです。これ、’雪国‘っていう名前なんですよ。」
横顔に話しかける。照明が落としてあるからよくわからないけど、疲れてるみたいだ。
「・・・範裕さん」
「何だ?」
「会社で見かけなかったですけど、出張とかだったんですか?」
「・・! ・・あァ、・・・京都へ・・・」
「へぇー。京都って・・、ああそうか、向こうの方が高価そうな文具がありそうですもんね。」
「まあ・な・・」
「そういえば、進藤部長も京都へ出張だったみたいですけど、会ったりしたんですか?」
カタン!とグラスの倒れる音がして、中身がテーブルに広がる。
「あ」
「大丈夫ですか?」
「・・っ、触るな」
倒れたグラスを取ろうと手を伸ばしたら、なぜかその手を払われた。
「・・範裕さん?」
「・・・・悪い・・」
少し赤い顔で、でも低い声で言うと、
「マスター、ごめん。こぼした」
拭くもの貸して、と呼びかける。
「酔っているんでしょう?もう止めといたら・・・」
「おかわり。同じの欲しい。」
テーブルを拭き、おしぼりを出すマスターに絡むように言っている。
こんな範裕さん・・、初めて見る。

「・・・分かりました。」
しょうがないな、と言わんばかりに肩を竦め、マスターはもう一度‘雪国’を作ってくれた。
すぐ手を伸ばした範裕さん。くい、と呷って、はァ・・、とため息をつく。
「・・・ごめん、崇・・・」
こっちを見てはくれないけど。
「いえ・・・。でも、本当にどうしたんですか?・・・・恋人と、ケンカした、とか」
口にして、どき、となる。・・なんで、だ?
「恋人?・・・・いないよ、そんな人は。」
「え?だっ・・てこの間は直通、みたいな電話が」
「・・あれは、違う。 別の話だ。」
強く否定され、ほ・・っとする。 あれ?

グラスが空になり、今度はハイボールを頼んでゆっくり飲みながら、
「・・じゃあ、範裕さん、・・・好きな人とかは、いるんですか?」
妙に気になって、思い切って聞いてみる。
「ああ。いる。」
間をおかず答えが返って来て、ズキンと胸が痛んだ。
「・・・・どんな、女性(ひと)、ですか」
「俺とは真逆さ。明るくて、正攻法が似合う。俺のような後ろ暗いやり方じゃなくても、ちゃんと成果を上げてくる。
あいつがいると、場が和むんだ・・・。」
そういって苑田さんは、面影を追うような目をしながら飲みほしたグラスを振ってマスターに合図し、まだ何か飲もうとする。
「範裕さん、飲みすぎです。」
俺はグラスを持つ手をおさえた。俺が見ても分かるくらいだ。
「いいじゃない・か。飲ませろ」
「だめです。」
こっちを向いて文句を言おうとした範裕さんの体がぐらりと揺れる。咄嗟に支えていた。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その15

  お盆とお休み

7月・8月はお盆です。
こちら、私の居住地ではほぼ旧盆。会社なども8月中旬にお休みが多いです。

お盆にはお墓参り。旧暦7月15日 前後で行われる、先祖や亡くなった人たちの霊を祀る行事ですからね。

面白い・・と言っては不謹慎ですが、地域地域によってお供えするものが違っています。・・・不思議。
車で30分くらいしか離れていないのにあちらとこちらでは飾り物(といえばいいのかな?)も違っていたり。
いつ頃からかスーパーでも売っているので、初めて見た時は、
「え?こんなのお墓に持って行くの?」
と驚いた記憶が(お墓に、四角い提灯みたいなものをぶら下げてます。ただし金沢のみ。キリコと言います)。

みなさまのところは、ご実家は、いかがですか?


さて、お盆休み・・・ですが、地域の盆踊り&実家に帰省、のため、14日(水)~17日(土)まで頂こうと思っています。少し長めですが、どうぞご了承ください。

実家にはPC無いんです・・・。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー3

 智パパ、早くも花嫁の父の心境・・・?


「それでは、失礼します。今日は招待いただいて本当にありがとうございました。」
フルネーム、加田浦 章雄(かたうら ふみお)さんは、昼食を一緒に食べて二時前には
帰っていった。



「礼儀正しい人だったわね。」
「そうでしょ。あ、智そのカップここに纏めて。」
「はーい」
俺を助手に使って、母さんと姉貴は使った食器を片づけながら喋っている。
「大学入って最初のボランティアで知り合ったんだっけ?あね・・姉さん。」
「ええ、そうよ。大学の構内と周囲の道路の清掃。」
言って、思い出す顔になった。
「ズルしてたら怒られて。腹が立ったけど言い返せなくってね。・・・・・それから気にな
り始めたのかなあ?」
「え?姉さんを怒らせたの?・・・勇気あるなぁ。」
「なにそれ?まるで私が恐いみたいじゃない」
「違うの?」
「智!」
「二人とも、口より手を動かして。和弘さんにお茶も出したいんだから。」
「「はーい。」」

そうだ、和叔父さん、まだ居るんだった。
父さんの不機嫌はだいぶ直ったけど、章雄さんが帰ってから何だかぶつぶつ。それに付き
合ってまだ昼間なのにビールを飲んでる。
あーあ。


食器がだいたい片付け終わったあたりで、母さんが、
「智、父さんたちにこれ、持って行って。」
「あ・うん。俺でいいの?」
「彩香に持って行かせたらお父さんきっと絡むから。」
それもそっか。
「分かった。」

「父さん、和叔父さん。お・・・」

「・・・だから、俺は我慢してたんだ」
「うん、兄さん。」
「彩香が‘彼’を連れてくるより先に、見合いさせとけばよかった・・・・」
「でも兄さん、しっかりしていそうだよ、・・・章雄君て。」
「・・それくらい、わかってるさ。彩香は・・、俺の、娘だぞ。」
「うん。・・兄さんの自慢の‘彩香ちゃん’だもんね。」


父さん、できあがっちゃってる。それに何だかクドクド言ってるし。和叔父さん、大丈夫
かなあ?

「あ、智くん、それ、お茶?」
部屋の前に立ち止ったのを見付けた和叔父さんが聞いてくれる。
「うん。母さんが持って行けって。」
「いらん。・・今日は飲むんだ。和弘、付き合ってくれるだろ?」
「それはいいけど。兄さんまだ飲むの?」
「家で飲むんだからいいじゃないか。
智。茶なんぞいいからビール持って来い」

えー?
父さん、あんまり強くなくって二日酔いひどいほうなんじゃなかったっけ?それに、家に
ビールってそんなに置いてないと思ったけど。

首を傾げた俺に、
「智!」
父さんが癇癪を起こす。
「兄さん。大声出さなくったって。僕が聞いてくるから、智くん、ちょっとだけここにい
てくれる?」
ビクッとした俺にそう言って和叔父さんが立ちあがる。
「う・うん・・。」
仕方なく座ったけど、話すことが無い。

『プリズム』

『プリズム』8*カクテル・・雪国ー3

 新井くんが落とした定期、誰が拾ったのかが分かります。


「・・・・・っ・・と」
「ほら。もう、お終いにしましょう?終電もなくなっちゃいますよ。」
腕時計を見る。
「・・・・ああ、そうか。おまえの方が遠いんだっけ。なら、さっさと行ったほうがいい。
今度は定期、落とすなよ。」
「・・・・・どうして、知ってるんですか?」
最後の一言に、驚きで目を瞠ると、予想外の一言が返ってくる。
「前、会社で落としたろ?」
「はい・・・・、って、あれ、届けてくれたの、範裕さん?!」
「まぁな。クレジット(機能)付いてるかまでは分からなかったけど、使われたらイタイだろうと思ったし。」
「それじゃ、なおさら放って帰れません。せめて送るぐらいさせてください。」
「いいって。俺は歩いてでも帰れる。」
「範裕さん・・・」
「飲みたいんだ」
酔って、子供のようにぐずる範裕さんを見るのも初めてで途方に暮れる。そこへ、
「タクシー、来ましたよ。」
マスターが声をかけてきた。
「今日はもうそれくらいにした方が。新井さんも困ってますよ。」
「何だよ子湖塚、おまえまで崇の味方をするのか?」
今度はマスターにも噛みついている。でも、
「明日後悔するんですから、帰りなさい。それとも俺が送りましょうか?」
思わせぶりに返され、
「。。分かった、よ。帰りゃいいんだろ。・・崇、行くぞ。」
渋々腰を上げた。
「あ・あの・・」
そのままドアに向かう範裕さんと、代金、を気にしておろおろする俺に、
「あ、いつものことだし大丈夫。早く行かないとい置いていかれるよ。」
「は・はい、すみません。  それじゃ。」
マスターが笑顔で言ってくれたから、ぺこりと頭を下げ、早足の範裕さんの後を追う。
「範裕さん、待ってください」


タクシーがマンションに着く。
「範裕さん、着きましたよ。」
途中からウトウトしはじめた範裕さんの肩を揺する。
「ん・・・」
「ほら、起きてください」
「大じょ・・・ぶ、起きる・・・」
ようやく外へ出るけど何だか心配で俺も降りようと思ったら、
「お客さん、4230円」
「あっはい、・・・ちょっと、待って・・」
もたもたしている間に、すっと一万円札が出される。範裕さん、だ。開いたままのドアからのぞき込みながら、
「すまん、そいつ駅まで送ってやってくれ。まだ電車、あるはずだから。」
酔っているとは思えないはっきりした口調で運転手に話しかけ、足りない分は払えよ、と俺に続けて言ってすい、と背を向けた。口を出す間もなくドアが閉まり、タクシーが走りだす。
思わず振り返ると、範裕さんが、見送るように立っている。けどそれも右折したら見えなくなった。


「全く。何で進藤の後に、崇に会わなきゃならないんだ・・・・」

タクシーが消えるまで見送っていた苑田が声にする。
気分がジェットコースター状態で落ち着かない。おまけについうっかり、好きな人がいる、と洩らしてしまった。
「飲みすぎたな・・・・」
苦笑しながら部屋へ向かった。


範裕さんに、好きな人がいる ――――――。

俺は部屋に戻ってもその事で頭がいっぱいだった。
そんなの、当然じゃないか。範裕さんは俺から見たってかっこいいんだ。そりゃあ変な噂もあるけど、女子にだって人気があるし、仕事出来る人だし・・。

「でも、・・・・俺に、キス・・・」
言って顔が熱くなる。
範裕さんの唇は俺より薄くて、でも柔らかくて。
「だ―――ッ! 何、考えてんだ。範裕さんは男で俺も男なの!そんなこと・・・」

シャワー、浴びよう!
頭をぶんぶん振って変な事を追いだす。
風呂場でコックを捻ると水が出て冷たい。でも、温かくなるまで待てなかった。

『プリズム』

『プリズム』8.5*カクテル・・雪国と、わがまま台風

 切りのいいところで区切ったので、少々変わったタイトルになりました。


濡れた体を拭きながら冷蔵庫を開け、水を飲む。顔を動かした拍子にソファーが目に入り、範裕さんが寝ていた事を思い出してしまう。
「なんで俺のこと、相手してくれるんだろ・・・・」
定期、は偶然だったけど。
飲み過ぎた時、送ってくれて、焼き鳥屋でも助けてくれて、・・・『頑張ったな』って抱きしめてくれて。

もやもやしたものが胸の中に広がっていく。声や、手の感触が甦ってくる。
「範裕さん・・・・」
呟くと、腰の奥がじん、と痺れる。傘の中にいた範裕さんを思い出した時と同じ感覚が湧きあがってくる。
は、と息がこぼれ、下半身に熱が溜まりだす。手が、伸び・・・、
携帯の着信音に体が強張った。


「・・はい・・。」
― 崇?」
「・・・・(嘘・だろ)」
― 崇、聞こえてるか?」
「っはい、範裕さん。聞こえてますっ」
向こうでほっとする気配。
― 今日は、・・・悪かったな。」
「あ、いえ、俺の方こそ・・・・・、変なこと、聞いちゃって」
― それは、いい。・・じゃあな。」
「は・はい。おやすみなさい。」

携帯は切ったけど眠気が飛んで眠れない。ちょっと掠れた範裕さんの声を聞いて、完勃ちしてしまった。



日曜でよかった。
目が覚めた時、本当にそう思った。
昨夜は結局、範裕さんのあれもこれも思い出して、二回も抜いてしまったからだ。
まだどこかぼうっとしている頭で起きだし、まず洗濯機を回す。
「何やってんだろ―――――― 俺。」
出掛ける気も起きず、何かをする気にもなれない。 それでも腹は減って、
食料補給の買い出しだけは行かないといけなくなった。


「・・・そうか、日曜だったっけ・・・・」
閉めそこなったカーテンの隙間から差し込む光で目が覚め、寝すぎたのに気付く。頭が鈍く痛い。・・・飲みすぎた。
まさか子湖塚のバーで崇に会うなんて考えてもいなかったから。
「崇・・、どうしてるだろう・・・・・」
ため息のあと声が出る。素っ気なくしてしまった。ろくに顔も見ずに話をして、帰してしまった。

「ごめん・・・・」

両腕で顔を覆う。あの時はあれが精一杯だった。
・・・おそらく崇は性の経験が少ないだろう。それも『健全』な男女の営みのはず。
進藤の道具になり、信じられない行為を何度もしてきた自分は、いつの間にかその方面を嗅ぎ分けられるようになっている。そんな俺が、崇を、
「好きになってる・・?馬鹿な事を。」
どうにもならないのに。俺はもう、、堕ちている。

涙がこぼれそうになって、ぎゅっと目を瞑った。




月曜。
仕事に身の入らない俺に、台風がやって来た。

「はい、名賀都商事。・・え?新井・ですか?」
業務が始まってすぐ電話が鳴り、俺が名指しされる。
「はい、代わりました。新井で・・・」
回線を回してもらい、出た途端。
― ちょっと!あんた一体なにやってんのッ!」
女の人の声が怒鳴りつけてくる。この声は・・、『元や』さんの。
― あ・あの・・」
― うちのイベント潰す気?!あさってまでに記念の文具セット1000・用意しといてって言ったじゃない!」
― え?」
あれは、来月じゃ・・・。
― とにかくそっちの責任なんだから!何とかしなさいよッ!」
ガチャ、と切られる。

う・そだろ。。だって、打ち合わせもちゃんとしてあって、元や・さんも了承してくれて。

「新井?どうした?」
中島主任に声をかけられ、ハッと我に返る。受話器を持ったまま、突っ立っていたらしい。
「あ・あの、ちょっと、元や、さんまで行って来ます!」
とにかく行って、話を聞かないと。
急いで鞄を掴んだ。

『プリズム』

『プリズム』9*わがまま台風

新井、初めての難問です。


「すいませんっ、名賀都・・・・」
「持ってきたのッッ!」
部屋のドアを開けた途端思わず体が縮む。この声はさっきの電話でも喋って(怒鳴って?)いた常務の小谷聖美(こたに きよみ)さん。

元や・さんは、家族で経営している会社で、聖美さんは社長の娘さんだ。ご主人も常務をしているが経営に関わっているからなのか、俺はほとんど会ったことが無い。

「い・いえ、確認を・・・」
「確認なんてどうでもいいでしょ、私が言ってるんだから!分かったらさっさと用意しなさい!」
聞いてももらえず、部屋を追い出される。


「どうしよう・・・・」
手帳や、常備しているノートパソコンを見直してみても、元やさんとの契約は来月と明記されていて以後の変更は無い。
でも、こことのつながりは切れない。まして苑田さんが新規開拓したところ(会社)だから、落とすわけにはいかなかった。
「とにかく何とかしないと。」
自分に喝を入れ、ファストフードの店に入る。コーヒーを飲みながら企画を4読み直した。

来月、元やさんは創業五〇周年になる。その記念パーティの引き出物でクリアファイルなどの文具セットを、うち(名賀都商事)で用意して欲しい、と発注があったのだ。

「クリアファイル・ボールペン・シール付き卓上メモ、か。今からじゃ全部に社名入りの物を作るの、無理だろうな・・。あ、でも、印刷した袋に入れたり、シール作って貼るのなら大丈夫かもしれないし・・・・」
後は、社に戻って在庫を確かめて、やるっきゃない。


戻ってすぐ、中島主任のところへ行った。
「どうした?目が据わってるぞ。」
「主任、実は・・・」
はじめ、からかい半分だった主任だけど、さっきの元やさんとのやり取りと、自分で考えた案を話し、
「今から始めたいんで、どこか場所を借りたいんです。」
「わかった。やれるだけやってみろ。会議室ひとつ借りてやる。」
行けるようなら応援してやる、と肩を叩かれ、勇んで準備に取りかかった。

「はあ~~っ、やっと半分。。。」
倉庫を走り回って文具を揃え、直接契約している印刷所に頼みこんで袋やシールを作ってもらう。会議室に運び込んでセッティングし、シール貼りと袋詰めを始めた。
単調だけど気を使う作業が続き、気がついたら夜になっていた。

話を聞きつけたらしい同僚が時おり来ては喋ったり、差し入れをしてくれ、気が紛れることもあったが、この時間ではほとんどが帰って誰も来ない。
肩も指も痛いし、目もしばしばしている。
「けど、やんないとなー。」
一息入れて体をほぐそうと立ち上がり、大きく伸びをする。伸びきった時に、いきなりドアが開いた。
「新井、遅くなった。手伝い・・・・」
な・中島主任・・・・、苑田さんまで?!
「へこんでると思ったが・・。それなら大丈夫そうだな。」
慌てて手足をばたばたさせる俺に、主任が笑いながらテーブルにコンビニ袋を置く。
「めし食え。昼から食ってないんだろ?腹に何か入れないと持たないぞ。
その間、俺たちがやっててやる。なあ、苑田。」
「ええ。」
苑田さんはいつもと変わらない様子で返事して、ホッとしたけど、
「でも、のりひ・・・、苑田、さん、いいんですか?」
課が違う事を気にして聞いた。
「就業時間は終わったし、タイムカードも押してきた。自由時間に何をしようといいはずさ。」
ふふっと笑う。
その笑顔だけで元気が出るから、俺ってゲンキン。

『プリズム』

『プリズム』9*わがまま台風ー2

皆さんが思ったこと、中島主任も思ってました・・・。


「・・・・新井、これ、元やさんのなんだって?」
「・・っは、はい。来月の注文だったはずなんですけど、明後日だから、って言われて。」
「担当の常務は、まだ聖美さん?」
「はい、そうです。」
作業をしている机から離れた場所で、差し入れ弁当(三つもあった!)を食べながら苑田さんに聞かれるまま答えていた俺に、
「あの人、我が儘だけどそんなこと言うような感じじゃなかったけどなあ?」
首を傾げ、不思議そうに言う。
「案外、夫婦ゲンカのとばっちりでももらったんじゃないか?新井。それとも思い込んで気付かないとか。」
中島主任も話に混ざる。
「そう、ですかねえ・・・?」
苑田さん、納得いかなそうだったけど、手は休まず俺の作ったセットを見本に次々作っていく。

「・・・なんか、家族総出で内職してるみたいだな・・・。」

喉が渇いたの、ペットボトルに口をつけながら、ふと主任がもらした一言に、
ちょうど飲みこもうとしていた俺は、喉をつまらせてしまう。
「・・・ぐ・・ふっ・・!」
「新井?」
「おい?」
派手に咳きこむ俺に、範ひ・・・苑田さんが急いで席を立ち、背中を叩いてくれる。
「・・ごほっ・・。・・・っだ、大丈夫・・です・・・っ」
「ほら、これ飲んで。」
差し出されたお茶のペットボトルをごくごくと半分も飲んで、
「・・・はーっ、・・・・、主任~、ひどいじゃないですか・・・・。」
言って、またけほっと咳きこむが、さっきよりはずいぶんいい。
「ははっ、悪いわるい。何だか苑田がやってるのを見てたらそんな気になってな。」
「俺を?中島さんの方こそ小遣い稼ぎに時々やってるんじゃないですか?」
「こいつ」
あはは・・・、と笑い合って、二人とも肩をほぐしている。
ふと時計を見た苑田さんが、
「でも、帰らなくていいんですか?確か今日、記念日でしたよね。」
主任に聞いた。
「え?主任、何か予定あったんですか?」
「大したことじゃない。気にするな。」
小さく舌打ちして言うと、主任は苑田さんを軽く睨んだ。それに肩を竦め、
「奥さん、待ってますよ?」
続ける。
「奥さん・・て・・・。主任、それなら早く帰ってあげてください。俺なら大丈夫ですから。」
知ったからには主任には手伝ってもらう訳にはいかない。
「苑田」
「俺が文句言われるんです。元やさんのトラブルなら他人ごとじゃないですし、先輩の方がケンカにでもなったら大変ですから、どうぞ。」

さっきより静かになった部屋は、髪の音とセットした文具を袋の中に入れる音が大きめに聞こえる。

主任は、帰った。

「何で詩織がおまえの携番知ってるんだ」
なんてぼやきながら。
主任が帰ってから、苑田さんが、今日は結婚記念日なんだ・・ッて教えてくれた。
そうか、だから主任、何だか照れくさそうに帰っていったんだ。
「でも・・、主任の奥さん、何で・・苑・・・範裕さんの番号、知ってるんですか?」
腹ごしらえが済んで(さすがに三つは食べ切れず、一つ残った)、セット作りを再開した俺も疑問に思ったから聞いてみると、
「ああ、詩織さん――中島さんのおくさん、一度会社に来たことあって、その時対応したんだ。気さくな女性(ひと)で、仲良くなってね。番号交換した。」
「そうですか・・・。」
せつめいしてもらったけど、何となく気が晴れない。
話しかけようと顔を上げると、範裕さんと目があって、なぜか顔が赤くなり目を逸らしてしまう。

『プリズム』

『プリズム』9*わがまま台風ー3

 新井くん、気を引き締めないと事件が起きるよ。



バーから帰ってからのことなんて、苑田さんは知らないのに。
(落ち着け。変な奴だと思われるだろ)
今はセット作りに集中しないと。自分に言い聞かせながら作業する。

「新井」
「・・っ、はいっ」
「・・・・コーヒーでも、飲むか?」
「・・じゃっ、俺、買ってきますっ。」
椅子を蹴る勢いで立ち上がり、部屋を出る。早足で自販機の前まで行き、はああ、と息を吐いた。
「どうしちゃったんだ・・・、俺」


もっと話をしたかったのに黙々と手を動かし、結局全部終わってしまった。
最後の一つを袋に入れる。
「何とか間に合ったな。」
「はい・・。ありがとうございました。」
時計を見れば十一時を過ぎていた。
「明日チェックし直して持って行けば、間に合うだろう。」
「はい。」
何とか電車も間に合いそうだ。並んで駅に向かう途中、
「土曜日は・・・、悪かったな。」
そ・・範裕さんがポツンと呟いた。
「いえ・・、俺のほうこそ・・・・」
そこから先が続かない。聞けばいいのに・・、『範裕さんの好きな人って誰ですか?』。  でも、聞きたくない。

「崇・・・」
「あ、今日は、本当にすいませんでした。すごく、助かりました。
範裕さんの開拓した元やさん、切られないように頑張りますから。」
言いかけたのを遮って、まくしたてるように言って頭を下げ、改札へ走りだす。何の話をされるのか分からなくて、聞くのが恐かった。
だから。

範裕さんがため息をついていたのも、悲しそうな顔をしていたのも、気付かなかった。


翌日。
連絡を入れるより直接持って行った方がいいだろうと、昨日作った袋詰めを丁寧に段ボール箱に入れる。かさばっているので二箱になり、駐車場まで持って行くのに誰か頼もうとドアノブに手を伸ばした時、
「新井、元やの仕事、失敗(しくじり)したそうだな。」
ドアが開いて、姿を見せたのは・・、

進藤部長!

「あ・あの・・それは」
「まあいい。出社してから、何とかなりそうだと中島から連絡と報告が入った。それで持って行くのはこの箱か?」
「はい、そうです。」
「車に積み込むの、手伝ってやる。」
「ありがとうございます。」

「それで?どれだけあるんだ?」
駐車場に向かう途中、進藤部長が聞いて来た。
「はい、1000セットです。」
「数え間違いはないだろうな。」
「はい。主任と、苑田さんにも確認してもらいましたから。」
「苑田?」
名前を聞いて、部長の声音が変わる。
「あいつにも確認させたのか?」
立ち止まって聞かれ
「・・すいません。でも、元やさんは苑田さんが開拓したところで、課は違うけど他人事じゃないから、って。」
「ほう・・。あいつがね。」
部長の様子が、変だ。
「あの、やっぱり頼んだの、よくなかったですか?」
苑田さんに迷惑がかかったらどうしようと思って急いで問いかけたら、
「いや。元やのことが、初耳だっただけだ。」
歩きだした部長の横顔が笑っていて、なぜかぞくっと背筋が冷えた。


「こんにちは。名賀都商事です。記念パーティの文具セットお届けに・・・・」
いつものように商務の聖美さんの部屋のドアをノックして開けた。
開けて驚く。部屋の中で、慌てて離れる男女がいた。女性はもちろん聖美さんで、男性は・・・。
「いきなり開けるなんて失礼じゃないか。」
尖った声でこっちを見たのは、確か一度会った事のある、
「浜崎文具の・・・」
「あんた・・・・、名賀都商事の」
クセのあるイケメン男が、どこか小馬鹿にした言い方をする。

『プリズム』

『プリズム』9*わがまま台風ー4

 清美常務さん、結婚してるんですが、箱入り我が儘お嬢さんのままです。


「な・何しに来たのよ、今頃。」
髪を撫でつけながら赤い顔で聖美さんが続ける。石清水はその横に、貼りつくように立って俺を見ている。何だか嫌な雰囲気だったけど、
「昨日お話の文具のセット、何とかなったのでお持ちしたんですけど・・・」
見本に、と持ってきた封筒を出そうとしたら、
「ああ、それなら内が注文受けたし必要ないから、持って帰んなよ。ねえ、聖美さん?」
馴れ馴れしい話し方で割って入って来る。さすがに腹が立って、
「今お話ししているのは元や・さんの常務とであなたとじゃありません、浜崎文具さん。」
と返すと、ムッと押し黙る。
「い・石清水さん」
聖美さんが俺をちらちら見ながら機嫌を取るような声をかけ、
「と、ともかく、持って来たんなら見せて、もらわないと。」
すぐそばの応接セットのテーブルの上に出して見せてくれ、と言った。

「品物はまあまあだけど、シール貼ってあるだけとかじゃない。ダメよ。こんなの出せないわ。」
ソファに座り、袋の中身を出して確かめたあと、聖美常務さんは見本に持ってきたものをバサッとテーブルに放り出す。
「それは・・・、すみません。でも」
「第一、 急いで持ってきたようだけど、ちゃんと数あるの?」
「あります。」
それは三人で確かめたんだ。自信ある。
「へえ?何ならここで数えてごらんよ。」
石清水の横やりにカチンときたが、そこまで言うなら、と、全部運びこんで数えだす。
「・・・・・・、991、992、993、994、995、996・・・」

え?  足りない・・・・?

「どうしたんだよ?あったのか?」
意味ありげに揶揄する石清水は無視して、もう一度数え直す。けど。
「・・なんで996・・・」

「ないの?」
聖美さんはうれしそうだ。
「数、あったの?なかったの?・・・返事くらいしなさいよ。」
「・・・は・い・・。不足して・・、いました」
悔しいけど事実は変わらない。四部、足りなかった。
「それじゃやっぱりだめね。石清水さん、あなたの方にお願いするわ。」
「はい。ありがとうございます、聖美さん。」
勝ち誇ったようにこっちを横目で見ながら、大げさに頭を下げる石清水に、何も言えずぎゅっと手を握りしめる。でも次の瞬間、
「そんなこと・・・!」
叫ぶように声を出していた。
石清水が、
「ねぇ聖美さん、こいつ、きっとまたミスするよ?今のうちに切っちゃえば?」
と言ったかだ。

それを決めるのはおまえじゃない。

そう言おうとした。けど、
「そうね・・・。それもいいかも。」
ソファの横に立っている石清水へ笑いかけながら見あげて答えている。
さっきも感じた、嫌な空気が二人の間に流れる。
「さっきだって、ノックしただけでドアを開けたし、その方が安全だよ?」

ここは会社だ。見られて困る事をする部屋じゃない。それにいままでずっと鍵もかかって無かったんだ。

胸の中で反駁した俺に、
「石清水さんがそう言うなら・・・・」
いつもと違う、甘ったるい声で聖美さんが同意しかける。
「待ってください!それって、今までの契約も打ち切る、ってことですか?」
「ふん。納期は間違える、数も間違えて持って来る、ってやつが偉そうに言うな。」
また割り込む石清水。今は無視だ。
「聖美常務さん、本当にそんなこと・・・・」
「何よ!謝りもしないでおおきな口叩かないで!私は常務で偉いの!あなたなんか契約打ち切りよっ!」
自分で言った事に興奮したのか立ち上がる。

「まぁ、聖美さん。そんなに怒らなくたって。こいつだって一応頑張ってやってきたみたいじゃないですか。」
何を考えたのか、石清水が聖美さんを宥めだした。
「石清水さん・・。優しいのね。」
聖美さんがうっとり見る。
「いえいえ、それほどでも。
取りあえずあいつ・・、じゃない、彼に謝ってもらって、それから考えてもいいんじゃないですか?」

謝る?

「『謝る』って、何を?」
「まず、ノックしただけですぐに部屋のドアを開けたこと。それから、ちゃちい記念品セットを持ってきたこと。しかも数を数えもしないで。あとは・・・」
「それだけあれば十分よ。」
俺を見て、
「今の聞いていたわね?謝りなさい。」
高飛車に言う。
息が詰まるかと思った。まるで言いがかりだ。


雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その16

  ダイレクトメール。

家のポストだけでなく、PCにも時々入ってきます。折り込みチラシ的に。
そして、こんなものまで。


**今週末は何してますか?連休なので時間あれば…
ゆかり [☆☆@candy.upper.jp] ←あ、一部書き換えてます。


お疲れ様です。ゆかりです。
今度の連休はカレンダー通りにお休みですか?
1時間でも空いてる時間あるならお茶しませんか?
手帳を開いても真っ白なスケジュールを見て溜息ついています…
お返事聞かせてくださいね。

PS,会う際はそちらの最寄の駅などまで私が行きますよ。

o。..:*:..。o☆o。..
ゆかり  **


最初は、誰だろう?と思いました。
’ゆかり’さん、て知り合いいたっけ?・・・・すぐ気が付きましたケド。苦笑。
アドレスを検索したら巷で噂の出会い系だったんですねー。

画面を見ながら、「ワタシ、主腐なんだけどな~。それでもいいのかな~。」
とメールを削除。


男でも女でも通る名前だからなのか、男の人からでも似たようなメールが来ます。
ブログ村に入り浸る前は、結構アンケートに応募していたのでどっかの変なサイトにアドレスだけ引っかかってるのかしら?
アドレス変えたらもう来ない?


経験した方、いらっしゃいますかーー?

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー4

  綾香お姉さんの彼が帰って、微妙に不機嫌なお父さんに付き合わされる智くん。


「・・・大学は、どうだ・・?」

唐突に聞かれ、焦った。話の流れからして、てっきり加田浦さん・のこと聞かれると思っ
てたから

「・・普通だよ。一緒に入った内海とは学部で違ったけどよく会うし、和泉や涼二も・・・」
「いずみ?女の子と一緒にいるのか?」
「違うって。男だよ。矢仲 和泉(やなか いずみ)。」
父さんの勘違いに苦笑しながら訂正する。
ま、確かに女顔なんだけど、中身はしっかり男だし。

「まだ彼女はいないのか?」

う・・、そう来るか。

「・・いない。だからこの休みも頑張って花火行ったり海行ったりしてる。」
まあ、父さんだから言える話をする。

「智・・・」
「智くん、まだ彼女いないの?」
「え?・・わ、和叔父さん、それ、大声で言わないで」
父さんの声に和叔父さんの声が重なってびっくりして、でも母さんには聞かれたくないか
ら手を振って遮る。
「智くんならもうとっくに付き合ってる子がいると思ったのに。」
和叔父さんが持ってるお盆の上に洋酒と氷、グラスが乗っている。
「ビールじゃなくて、こっちがいいだろうって用意してもらった。智くんも飲めたよね?」
「う、うん・・。でも、それ、ウイスキー?」
「大丈夫。①フィンガーから始めていけばいいんだから。」
言いながら和叔父さんは慣れた様子でグラスに氷とお酒を入れていく。その、しなやかに
動く指先を見ながら、聞いてみる。
「『①フィンガー』・・って、何?」
「ああ、グラスに入れたウイスキーの量のことだよ。大体指一本分で、日本では三〇mlく
らい。・・・こんな感じ。」
俺の分、と置いてくれたのと、父さんや和叔父さんのグラスの琥珀色の液体の量が明らか
に違う。
「・・ああ、僕と兄さんのは②フィンガー。指・二本分。」
「ふぅん・・」
手を伸ばした俺に、和叔父さんは、
「あ。飲む時はゆっくり、ね。」
「なんで?」
「智くん、初めてみたいだし。」
子供扱いのようで(事実そうなんだけど)ムッとしてしまって・・、

「おい、止めとけ」
「智くんっ」

「っつ・・く・ふっ、ごほ・・っ、・・っ、むふっ、・・けほ・・っ」
父さんと和叔父さんの制止も聞かず、ぐい、と呷ったら喉が焼けて、カッと熱くなる。
噎せかえっていると、
「だから言ったじゃないか・・・・」
父さんは呆れ顔。和叔父さんは、
「智くん、お水。・・・・ごめん、言い方が悪かった。」
座っている場所から移動して、俺の最中をさすったり水の入ったコップを置いてくれたり
してくれる。
「う・ん・・。ありがと。・・・っ」
「智、口開けろ。」
父さんの声に、へ? とついそっちを見れば、空いた口に氷が押し込まれた。

「・・・・(冷た)っい・・へ(て)、ほうは(父さん)・・」
大きめの塊りにまともに話せない。
「ごくごく飲んだらまた噎せる。しばらくしゃぶってろ。
和弘も覚えとけ、いつか役に立つぞ。」

これは、心配してる、ことになるんだろうか?
父さんの顔を斜めに見ながら大人しく氷を舐める。

和叔父さんはそのまま俺の横に座って、
「けど兄さん、智くんがいつか彼女を連れて来た時とか、彼女の家に行った時、その子の
お父さんは兄さんと同じ気持ちを味わうんだよ?
先に経験出来て良かったんじゃない?ねえ、智くん」

俺に、彼女・・・。

「今んろこ彼女なんていらいから、全然実感らいけど・・」
氷を転がしながら喋ると変な言葉になるけど、意味は伝わる。
「ははっ、そんなこと言ったって恋に落ちるのは一瞬だ。・・・・もちろん、そうじゃない
ことだってあるけど」
なんだか寂しそうな顔をしてそう言うと、ちらっと父さんを見た。
「む・・。そりゃあ、そうだが・・・」
まだ納得できない父さんに、
「第一兄さんとっくにしたじゃないか、枝里子さんのところへ挨拶に行った時。」
何を思い出したのか、和叔父さん、母さんの名前を出して面白そうな顔をした。

『プリズム』

『プリズム』9*わがまま台風ー5

清美常務さんの我が儘も、だんな様には通用しない、ようです。


何も言わないでいると、聖美常務さんの顎がツンと上がる。
「謝る事も出来ないの?そんなんじゃやっぱり駄目ね。こっちは謝ったら考えてあげる、って言ってあげてるのよ。どうなの?」
・・・・・我慢だ。
自分にそう言い聞かせた。こんなことで今までの契約全部を反故にする訳にはいかない。
「あ・・あの、記念品の件、不手際があったこと、申し訳ありませんでした。それと、」
唾を呑む。
「それと、確かめもせずドアを開けてしまって・・・、済みませんでした。」
頭を下げた。

「・・・・・・どうする?聖美さん。」
「そう、ね・・」
さげた頭の上で声が交わされ、話が続く前にドアの開く音がする。
「聖美、明日の打ち合わせ・・・」
男の人の声だ。
「伸彦さん、・・ど・どうしたの?」
聖美さんの焦った声。
「君、どうしたんだ?・・・・聖美?」
頭を下げ、謝った姿のままの俺を見、聖美さんに問いかけている。
「あ、こ。これは、ちょっと・・・」
「謝ってるんですよ、こいつ。変な仕事して。」
石清水が聖美さんに加勢するように口を挟んだ。

黙ってしまった‘伸彦さん’に、聖美さんが慌てる。
「も・もういいわ。名賀都商事さん。頭上げて。」
言われて姿勢を直すとちょうど正面にその人がいる。目があったので、今度は挨拶に頭を下げた。
「初めまして。」
「こちらこそ初めまして。常務をしている小谷伸彦です。名賀都商事さん、ですか?」
「あ、そうです。名賀都商事の新井と言います。」
名刺を出して渡そうとすると、
「伸彦さん、その人もう来ないから名刺なんていらないわよ。」
聖美さんが手を伸ばして俺の名刺を取りあげようとする。
「聖美。」
ひと言で聖美さんを止めた伸彦さんは、俺の名刺を丁寧に受け取って、自分の名刺を出してくれた。
「ありがとうございます。」
名前を確認するために一度読んでから名刺入れにしまう俺を見ながら、
「名賀都商事さんがどうかしたのか?」
聖美さんと石清水に目をやる。
「そうよ、この人ってばちゃちな記念品持って来るし、数は足りないし、断りもしないで部屋に入って来るのよ。だから焦っちゃって。」
肩をそびやかすように言う聖美さんに、
「そうですよ。なんで、これからは俺が担当になるって話してたんです、常務。」
すかさず乗っかっていう石清水。聖美さん、さらに、
「謝ったら考える、って言ったら本当に頭下げちゃって。そこへ伸彦さんが来たって訳。もういいでしょ。
あなたも帰って。」
俺に、‘しっしっ’といいたげに手を振る。それに構わず話を続ける話を続ける伸彦さん。
「それじゃあ来月の記念品を最後に契約を打ち切るのかい?」
「そうよ。だから石清水さんに来てもらって・・・」
「はい、そうです。よろしくお願いしますっ。」
ごく軽く頭を下げ、にか、と笑う石清水に、伸彦さんは眉を寄せ、
「君は名刺も持っていないのか。」
きつい言葉。
「あ・・っ、いえ」
今気付いたようにポケットに手を入れ、ごそごそやって無造作に名刺を出す。
「浜崎文具の石清水です。よろしく。」
片手で差し出す。
「どうも。」
小谷・・、伸彦常務も同じく片手で受け取ると、さっさとポケットにしまう。
「それで君も記念品に関わるのかい?見本とか持って来てるのか?」
「あ・や・・それは。来月だって言われてますんで・・」
「待ってください。明日じゃ、無いんですか?」
さっきから聞いていて、我慢できず口を挟んでいた。

『プリズム』

『プリズム』9*わがまま台風ー6

石清水、、アナタは足りないところが多すぎる。


石清水が、『しまった』と言う顔をする。

伸彦常務さん、気付いてないような顔をして、
「明日は打ち合わせがあるけど、記念パーティは来月で、変更は無いよ、新井くん。・・・それで、そこにあるのが見本?」
テーブルの上の封筒に目を落とす。
「はい、そうです。・・・・あの、すみません、数が不足していて・・・。」
中身を確かめる伸彦常務に話しかけると、
「これは、いつ作ったんだ?」
「はい、一昨日、話をきいて、昨日」
「昨日?」
「そうです。」
「ふぅん・・」
「伸彦さん。出来あいにシール貼っただけで誤魔化そうとするなんてせこいじゃない。そう思わない?」
聖美さんが巻き返そうと言ってきたけど、
「僕の部屋でゆっくり聞きたいな。新井くん、来てくれないか。」
さり気なく流してしまう。

「構いませんが・・・」
躊躇する俺に目線で問いかけられ、
「全部持って来たんです。ここに置いておいていいでしょうか?」
「全部?」
「はい。・・・その、996部、ですけど・・」
「じゃあ、それも運んで来てもらおうか。ああ君、手伝って。」
有無を言わせず石清水に手伝わせ、二人で伸彦常務さんに付いて部屋を出た。


「ありがとう。そこに置いてくれないか?」
「・・っは、は・い・・・っ」
階段を上がって、一階上にある伸彦常務の部屋まで荷物を持たされた石清水、肩で息をしながらドサッと投げ出すように床に置く。
「君。それはうちの会社で使う物だ。乱暴に扱わないでくれないか。」
「・・は・・?けどこれ、ウチの商品じゃないっすよ。」
見咎めた言葉に言い返し、さらには靴先で箱を蹴飛ばした石清水に俺が言うより早く、
「それはうちの社名が入っている物だ。君は取引先の品物を足で扱うのか!」
伸彦常務が一喝する。
「・・・っ、すいません・・。けど、俺だって自分の会社の物は足でなんか扱いませんよ。」
不貞腐れて謝るけど口だけだ。
「そうか?だが君は新井くんのように見本を持って来ていないみたいだが。」
「そんなの、チョイチョイ・・っじゃないですか。」
伸彦常務の顔から優しさが消え、目が険しくなる。相当怒っているみたいだ。思わず後ろに下がる俺。石清水はまだわからないようで、さらに続ける。
「聖美さんがOK出せばすぐ・・・」
「君!聖美は常務で私の妻だ。そのような呼び方ができる相手ではないことくらい理解できないのか!」
・・・落雷が直撃したかと思った。

さすがの石清水も硬直している。

「万に一つ肩書きを外した呼び方を許したとしても、あくまでプライベートで行うべきだ。それ以前に、既婚女性に対して周囲に誤解をあたえる言動は慎まなければならない。
君の会社はそんな事も教育されていない会社なのか?それでは取引など出来ない。
帰りたまえ。」
威厳さえ感じられる最後の一言に、つい俺まで足を動かしそうになってしまった。


「さて、まずはひと息入れよう。」
何も言えず、ロボットのように手足を動かして石清水が出ていったあと、伸彦常務は深呼吸をひとつして肩を大きく回す。そして、
「酒井さん、コーヒー二つ、お願いします。」
「はい、わかりました。」
机のインターフォンで頼むと、部屋にある応接用のソファに俺を促した。
「どうぞ。新井くん。話を聞かせてほしい。」

『プリズム』

『プリズム』9*わがまま台風ー7

 今度は新井くんに厳しい指摘が入ります。

コーヒーが来るまでのあいだ落ち着かず、見るともなく部屋を見回す。
女性らしく華やかな印象の聖美常務さんの部屋と違い、二つほど絵がかけられているくらいで装飾はほとんどなく、かわりに一面の壁が本棚になっている。
落ち着いた雰囲気があって、仕事の話に集中できそうな気がした。

「失礼します。」
ノックの音がして、コーヒーが運ばれてくる。
「ありがとう。しばらく新井くんと話をしているから。」
「わかりました。ごゆっくり。」
酒井さん、俺にも笑いかけて出ていった。


「どうぞ。」
「いただきます。」
カップを口元に近付けると、いい匂いがする。
「・・・・おいしい・・・です。」
「そうだろう?これは、モカ・マタリ、と言うんだ。」
伸彦常務、嬉しそうに言って銘柄を教えてくれた。
味わって飲んだあと、姿勢をあらためる。俺も空になったカップを置いて背筋を伸ばした。

「まず、ここまでの流れを説明してくれないか。」
「はい。」
一昨日の電話から始まったことを出来るだけ簡潔に話しする。
「・・・なるほど。それでこれを持って来たんだね?」
「はい。そうです。」
机に乗せた見本をトンと指先で叩く。
「これを1000部作ったのか。大変だったね。一日でよくここまでしたものだ。」
感心したように言ってくれた、が、
「だが、聖美が言ったように、確かに記念品として配るには稚拙な品物だ。このまま使う訳にはいかない。
君も、おかしいと思ったなら何故彼女以外の人間に確認を取ってみなかったんだ?」
問い詰められ、
「そんな軽率なことではこちらも取引相手として不安になる。取引の縮小や、停止も考慮しなければならない。」
言い切られてしまう。

「それはっ・・、すみませんでした!ですが、停止は、待ってください。軽率だったのは、お・・、自分だけですから!」
そうだ。担当者は聖美常務さんだけじゃなかった。ほかの人たちへの確認を怠ったのを指摘されれば、どうしようもない。
「社に戻って報告して、担当、替えてもらいます。縮小でもかまいませんから、取引停止だけは・・・・」
謝って、頼んで、何とか継続してもらえるよう必死になる。
ここは、苑田さんが始めた所なんだ。

「・・・・分かってくれればいい。」
「え・・・・?」
何を言われたのか、すぐ理解出来なかった。
「座りなさい、新井くん。」
「あ、は・・い・・・」
いつ立ち上がったんだろう?
座りなおした俺に、
「君の熱心さはよくわかった。私も少しナーバスになって言葉が過ぎてしまったようだ。」
伸彦常務の頬が緩む。
「停止も縮小もしない。安心してくれ。急な変更にも、ここまで対応しようとしてくれる相手先はそうは無い。
これからも頼むよ。」
「・・・・ありがとう・・ございます・・」
なかば呆然としながら頭を下げ、大きくため息をつく。
気が抜けて、二人で声を上げて笑ってしまった。


「・・ええ?それじゃあ、伸彦常務さんが、社長になるんですか?」
「ああ。役員には明日、社の内外には記念パーティの時に発表する予定なんだ。」
「わあ、おめでとうございます。」
「ふふ、ありがとう。」
すっかり打ち解けた伸彦常務と俺は、コーヒーをおかわりして話をしていた。
これはまだオフレコなんだけど、と社長交代・・を打ち明けてくれたあと、
「それと、記念品だけど、出来れば何か一工夫して欲しい。」
話を戻す。
「一工夫・・ですか?」
「そう。袋の文字を義父・・現社長に書いてもらう、というのはいいアイディアだと思う。その他に何か、もう一つ欲しいんだ。」
上手く言えないな・・・、と呟くのへ、俺も、うーん、と唸ってしまう。
なにか、もう一工夫・・・。

「・・思い浮かばないな・・。」
「そう、ですね・・・。」
しかたない。何か思いついたら知らせてくれると嬉しい、とひとまず打ち切って、
「あとはあれの使い道だけど」
目で段ボール箱を示す。
「あ、あれは確かめなかった俺のミスですから、持って帰ります。」
「だが」
「納入予定の数、じゃ、ないですし。」
自分で言っても、どうして4部足りないのか不思議でしょうがない。けど伸彦常務、首を横に振って、
「いや、元をただせば聖美の我が儘だ。君も相当無理をしたんだろう?促販物として使わせてもらう。」
「・・・いいんですか?」
「もちろん。探せば配る先はいくらでもある。そう言う意味では慌てなくていいから助かるな。」
くすっと笑った。

『プリズム』

『プリズム』9*わがまま台風ー8

 さあ、気合、入れなおして。


「ただ今戻りました。」
「新井。」
「はっい、部長。」
戻ったとたん、主任より先に部長に呼ばれた。机の前に立つと、
「元や、どうだったんだ?」
端的に聞かれる。
「あの・・、先方の・・思い違い、だったようです。記念パーティは来月で間違いなく、記念品用のセットはそれに間に合うように納めればいい、とのことでした。」
「今日持って行ったのは無駄になったのか?」
「いえ。促販物として使ってもらえる事になって。請求書出してもいい、とOKもらえたのでこれから作成するつもりです。」
「そう・・か。」
部長も心配してくれてたんだろうか、体の力を抜いて背もたれに寄りかかった。
「あの」
「ああ、よくやったな。売り上げに結び付くのはいいことだ。これからも頑張れ。」
「はいっ。ありがとうございます。」
荷物、運ぶのも手伝ってくれたし、気にしてくれてたんだ、と思いながら席に戻る。

目まぐるしかったなー。

ホッとしていたし遠かったから、進藤部長が舌打ちしてスマホを取り出し、メールしていた事は分からなかった。


「記念品に、もう一工夫・・・か。」
元やさんのあれやこれやを主任と相談しながら(「夜、バーで奢ってやる」と耳打ちされる。やった!)、書類に仕上げていく。
気付けば昼を過ぎていて、外回りもあるからとついでに食べに出る。
質より量の丼を平らげひと息ついたら、伸彦常務と話していた言葉がまた、こぼれ出た。

せっかく親しくなれた伸彦常務・・さん、に、応えたいと思っている自分がいる。
苑田さんとは違う厳しさを持った人だけど、それだけじゃない。俺の仕事を認めてもくれた。 それが、とても嬉しかった。
「なんかないかなあ・・・・」



その頃、進藤は石清水を詰問していた。スマホの画面を指が苛立たしく移動する。
::石清水。新井は無傷で戻ってきたぞ。どういう事だ?
::途中までは上手く行ってたんです。聖美さんがクビだ・って言ってくれたんですが
::なぜそのまま追い出さなかった
::追い出そうとしたら、別の常務が入って来て、あいつを記念品ごと持って行っちまったんです。俺まで荷物持ちさせられて・・。散々だったんですよ?
::その常務に取り入ることは出来たのか?
::無理ですよ。俺は見本なんて持ってなかったし。また聖美さんに頼んで食い込みますから。

この返事が来た時点で怒りがこみ上げ、危うくスマホを叩きつけるところだ
った。
「馬鹿め。あいつを追い出せなかったらおまえの方がはじき出されるんだ。
そんなことにも気付けないのか。」
低く毒づき、苦虫をかみつぶした表情になる進藤。
「・・・運のいい奴だ・・」
主のいない新井の席をねめつけた。


あれから五日ほど経ち、今度は伸彦常務にアポイントを取って元やに行った。

「こんにちは。」
「やあ、相変わらず元気そうだ。」
挨拶のあと話を聞くと、役員会は少々揉めたらしい。けど現社長が押しきり、
次期社長への交代は覆らなかった。伸彦常務さんは予定通り来月社長になる。
「あの・・、聖美常務さんは・・?」
実子でもある聖美常務さんを推す人もいたことを聞かされたから、気になっ
たけど、
「聖美は経営より外交の方が好きだからね。」
社長夫人の方が着飾れるし。
にっこり笑って教えてくれたんだけど、それって・・・?意味が分からない。
(経営や数字は苦手、社長夫人サークルは大好き。ってことでしょう。お嬢
奥様は。)

「それで、今日の用件は?」
「はい。以前話していた’ひと工夫‘の件で。」
「ああ。何か思いついたのかい?」
「そうです。」
・・緊張して来た。笑われないといいけど。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その17

 おいなりさん

コンビニでもよく見かける、油揚げのおいなりさん
私、結構好きなんです。

色んな種類がありますよね?
形も、三角だったり、俵型だったり。中身だってご飯とか、もち米混ざっていたとか、寿司飯。具入り、白ゴマ降ってあったもののありました。
三角は狐の耳、俵はそのまんま、の形を意味しているそう。

そして。
狐の好物。実験したら、本当に油揚げは好物だったとか。 油で揚げてあるからなんだとか。でも1番はね・ず・み・の油揚げですって。


あ、迫力なら、石川県加賀市・守岡屋さんの’焼きいなり’。やや濃いめの味付けで、大きさはサンドイッチ並み!一つでお腹いっぱいになります。
moriokaya.jp/  で、行けますかねー?


皆さんは、どんなおいなりさんがお好みですか?

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー5

 お父さん、そんなこと・・・。


「何だよ」
「忘れてるんだ?兄さん。僕、あの時思わず兄さん殴りそうになったんだけど?」
智くんに話しちゃおうかな、なんて続けるから、
「俺、聞きたい」
体ごと和叔父さんに向き直る。
「だめだ話すな、和弘。」
忘れてはいるけど、ヤバそうな話だと父さんが和叔父さんに待ったをかける。
そこへ、
「はい、おまちどうさま。和弘さんのリクエスト・・・・、あら?
どうかした?」
母さんが得意の煮物とかを持って入って来た。俺たちの視線を浴びてキョトンとする。
「なんでもない。和弘、おまえが頼んだんだから、それ、受け取れ。」
「はいはい。ありがとう枝里子さん。」
「だーめ。何の話してたの?」
お盆を持ちあげて母さんが聞く。だから、
「父さんが母さんの所へ挨拶に言った話。」
「智!余計なこと言うな!」
「まあ、あの時の?」
母さん、すぐ思い出したみたいだ。
「ふふっ、あの時和弘さんがいてくれて、本当によかったわよね、お父さん。」
と、父さんに意味ありげに笑いかけ、智には早いけど聞いておけば、と可笑しそうな、面
白そうな顔で続けると、
「じゃ、ごゆっくり。」
頭上に音符が踊っていそうな機嫌良さで和叔父さんにお盆を渡し、楽しそうに出ていった。

「枝里子も覚えてるのか・・・」
「そうみたいだね。じゃあ、思い出すためにも聞いてもらおう。」
少しばかりショックな父さんに和叔父さんが追い打ちをかける。
「おまえ・・・、楽しそうだな。」
父さん、自分で琥珀色の瓶を取りあげ、氷と一緒に継ぎ足している。

「たまにはいいじゃない?

・・兄さん、枝里子さんの家に挨拶に行く時、僕も連れていったよね。緊張して何言うか
分からないからって。」
和叔父さん、そう言ってウイスキーを一口飲む。
ちらりと見えた喉仏が上下するのが、何だか色っぽい。
「ああ。」
「部屋に通されて、何度も練習していた事を言おうとして、」
意味ありげに区切ると、箸を取って、煮物を小皿に取り分けた。冬瓜と豚の角煮、ゴーヤ
のきんぴら風。

「何があったの?」
好奇心ではち切れそうになってる俺が待てずに催促する。
「普通に。ドラマなんかでも言ってる、『お嬢さんをください。必ず幸せにします』だよ。」
「・・・なんだ、そんな事か。」
「ただ言い方がね・・・」
「言い方?」
「そう。『私が幸せになるために、枝里子さんがぜってい必要なんです。必ず幸せになりますからもらってくださ・・・』」
「あ!お・・・思い出した!和弘、そっから先、言うな!」
父さんがまっ赤になって和叔父さんの言葉を邪魔して大声を出す。
「はいはい。わかったよ、兄さん。」
「えー、なんで?まだちょっとじゃないか。和叔父さん、全部教えてよ。」
「兄さんの話だから、許可が無いとね。」
和叔父さんは父さんの言う事全部聞くから。当然父さんは俺の要求を却下。
「だめだ!おまえはもうあっちへいけ。」
「・・・・父さんの横暴。」

いいよもう。母さんに聞こう。

そう思って立ち上がる。あれ?でも、父さん章雄さんのこと何も言わなかった。
忘れてる?
ちらっと和叔父さんを見たら、ふっ・・って笑って小さく頷く。和叔父さん、もしかして
父さんの気を紛らわすのに話をしたのかもしれない。

「でも、聞きたかったなぁ・・」




プロフィール

ますみ

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