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『プリズム』

『プリズム』9*わがまま台風ー9

新井くんの思いつき、どんな評価を受けるでしょうか?そして想像してくださった方、当たりました?



前回とは違い、執務机を挟んで会話している。


「卓上メモなんですが、隅に、プリント入れたら、と思って。」
「プリント?」
「こんな感じです。」
A4サイズの用紙に、図解した案を書いたものを見てもらう。イメージ的には、パラパラ漫画に近い。
「・・ウチの商品をプリントして、‘こんな商品も扱っています’と添え書きをする・・・、ね。」
「はい。この大きさのメモなら、2センチ角くらいで、隅の方に入れられるんじゃないかと思ってます。」
「いい案だ、と思うが・・・。」
「駄目ですか?」
「コストは?」
「これくらいで、出来ると思います。」
見積もりを出す。伸彦常務、数字を見たまま・・・少し間を置いて、
「・・・本当に、これで、いいのかい?」
「ぎりぎりです。 でも、お祝いですから。」
「正直だな。」
顔が上がって、口元に笑みを見せながら
「後で商品のリストを渡す。担当者ともう一度検討してもらうが、基本これでお願いするよ。」
許可をくれた。
「はいっ。ありがとうございます。」
お礼をして、忘れないうちに、
「あの、もうひとつ・・・、これなんですが」
鞄の中に入れていた名刺のケースを二つ取り出す。

「それは?」
「俺からの・・お礼とお祝いです。よかったら、もらってください。」
そっと机の上に置いた。
「開けてもいいかい?」
「どうぞ。」
伸彦常務の名前を書いた一つめのケースを開け、一枚取り出す。淡いグリーンの名刺に、名前と肩書き。
「それ、透かしを入れてもらったんです。」
「透かし?」
椅子から立ち上がり、窓を向いてかざし。
「君が、考えついたのか?」
向こうを向いて名刺を眺めながら、笑いを含んだ声で聞かれる。
「半分は、そうです。・・・・・申し訳ないんですけど、最初、‘はじめや’って読めなくて会社名覚えるのに苦労したんで、思いつきました。」
’透かし‘は社名の上の余白にあって、はじめや・と入っている。
俺も、初めて資料をもらった時会社名に振り仮名が無かったら、もとや・と読んでいた。
主任と、苑田さんに感謝・・だ。

「初対面の人にも、いいかもしれない。ありがたく使わせてもらう。」
振り返り、机に戻って、
「こっちはどんなものかな?」
聖美常務さんの名前の方を開けて一枚取り出し、軽く目を見張る。
「・・驚いたな・・・。」

上品な薄紫色の地に、ローマ字でHAZIME-YA、名前の上にFirstLady、と書かれている。そして四隅は打ち抜き模様でレースのようになっている、名刺だ。

「聖美常務さんも、新しく名刺、作るだろうと思って、プライベートででも使ってもらえたらいいかな、と・・・」
無言の伸彦常務に、やめたほうがいいかも、と思って、
「あの、無理にとは言いませんし、俺はあんまりいい印象残ってないかもしれない・・・」
「いいや。」
ひとこと言うと、インターフォンに手を伸ばす。
「酒井さん、悪いが聖美を呼んできてくれないか?」
「はい?・・・わかりました。」

ほ・・本人?!

「伸彦常務、あの・・・」
焦ってみたけど、逃げ出すことも出来なくって。


「何の用?」
カッカッ、とヒールの音を響かせてから部屋へ入って来た聖美常務さんは、俺を見て嫌そうに眉を寄せたけど、
「名賀都商事さんから、お祝い。」
と伸彦常務が差し出した名刺を一目見て、
「お洒落な名刺。」
すぐ手に取った。
「あら、模様があるのね。すてき。これ、もらっていいの?」
「ああ。社長夫人になる君にも名刺は要るだろうから、と、彼が持って来てくれたんだ。頼めばまた作ってくれるそうだよ。」

はいい?

「そう。じゃ、色違いを頼んでおこうかしら。」
「あとで色見本を持って来てもらおうか?」
「ええ、パーティで配るのに、二色くらいは欲しいわ。名賀都商事さん、早目に来てね。」
たちまち機嫌良くなった聖美常務さんは、名刺をケースにしまうと、足取りも軽く持って行ってしまった。

「お祝いついでに営業までするなんて、やるもんだ。」
くっくと笑う伸彦常務。
「い・・今の・・、名刺の注文って・・・」
唖然とした俺がようやく回り始めた頭で聞くと、
「おや?聞いていたんだろう?聖美はあの名刺が気に入った。あれなら見せびらかしてまわるだろう。おそらく、他所からも追加で注文が増えると思うよ。」
「でも、、あの名刺、和紙で作ってますから、コストかかります・・・」
「大丈夫。女性はきれいなものが好きだから、欲しがる人は必ずいる。」
仕事につながってよかったね。
にっこり言われて、乗せられてしまって、いつの間にか‘営業’したことになってしまった。

狐につままれたみたいで、伸彦常務の前なのに頬を抓る。・・・・・痛い。

「あははは・・っ。君は面白いな、新井くん。長く付き合えそうだ。これからも頼むよ。」
「あ・・、はい・・。」
俺はこれからもまたドッキリさせられそうです、伸彦常・・、いえ、社長。

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『プリズム』

『プリズム』10*悪い事も良い事も

 出来事って、ドミノ倒しやビリヤードの球のように次々連鎖すること、ありますよね。
 新井くんの場合は?



なにはともあれ一仕事片付いてほっとするとともに達成感を味わう。
元やさんを出て、名刺の件をスマホと手帳に書き入れ、時間を確認した。
「浦野商事、気を付けないと。」
あそこは時間に煩い。初めて行った時の大雑把な時間指定はどこへやら、学校並みの厳しさだ。
遅れると沢口課長に嫌みを言われてしまう。


時間調整をして、受付まで行った時、
「あら?名賀都商事の新井さん?」
「あ、湯島さん。」
総務の湯島さんにばったり会った。
「いつもご苦労さま。」
「いえ、こちらこそいつもご注文いただきありがとうございます。」
挨拶を交わす。
「・・・・・。」

「あの、何か?」
「いいえ、今日は何の用だったのかなって。」
「在庫確認です、いつもの。」
湯島さんの眉が寄せられる。
「いつもより間隔が空いてない?・・・ウチ(浦野商事)から指定でもしたの?」
「そうです。」
考え込む湯島さんに付き合って(先に行くことが出来なくて)一緒に立ち止っていると、
「ちょっと来て欲しいんだけど。」
いきなり歩き出す。

行った先は、いつもの倉庫だ。
「調べたいことがあるから手伝って。」
「はい、いいですけど・・・。先に(総務の)部屋へ挨拶に行かないと。」
「私といるんだからいいじゃない。受付でも顔、見せたんでしょ?」

それはそうだけど。

「まずこれ。見てちょうだい。」
数の確認などに使っているテーブルの上にどさっと置かれたのは、封切り前の、コピー用紙の束。見ろって、いったい・・・・。
「開けていいから。見て。」
「はあ・・」
備え付けの鋏を取り、封を開ける。中身を少し引き出して。
「あれ?」
「どう?」
紙の手触りが違う。
「おっかしいな。」
外側の包みを確かめる。そこにある束は、どっちも同じ包装だ。
「違ってる、でしょ?」
「はい。」
確信を込めて聞かれた言葉に頷く。

「二・三日前なんだけど、コピーしてて、用紙が不足して、足したの。そしたら手触りが違っていた。気になって包装とか見比べたんだけど違いは無くて。課長も気のせいだって取り合わないの。外が同じだから。」
「おなじって・・。これ、触ったら分かります。違う物です。」
「開けて、直接触って比べないと分からないのよ。でもね、」
ここが重要、と、湯島さんは声を低くして、
「こんな風に違ったものが混ざるようになったの、最近なの。」
「最近?」
「そう。浜崎文具さんが来るようになってから。」
俺の疑問に頷いて断言する。
「・・・・。でも、搬入したのが浜崎文具さんかどうかは分からないです。」
「うん、私も確証は無いの。ただ妙なのは、あなたの来た日に前後して浜崎文具の品物も来てるってこと。」

え・・?

「まだあるの。こっちのクリアファイルなんだけど・・・、 !」
言いかけた湯島さん、『しっ』と指を口に当てた。
足音だ。話している声も近付いてくる。

「・・それで、まだ来てないんですか?」
あの声。湯島さんにも分かったらしい。目で問いかけると、
「沢口課長と浜崎文具さんね。」
声に出して追認してくれる。そしてなぜか携帯を取り出して何か操作し、棚の隅に置く。
「こっち。隠れるのよ。」
「けど」
「早く。」
手を引っ張られ、棚の奥、陰になっている場所に二人で張り付くようにして隠れる。ほとんど同時にドアが開いた。




『プリズム』

『プリズム』10*悪い事も良い事もー2

 壁に耳あり 障子に目あり。




「あれえ?電気、点いてますよ。」
石清水の声だ。
「また女子の誰かが点けっ放しにしたんだろう、全く。」
舌打ちして言いながら、沢口課長も入って来る。
「それで今日は?」
「ええ、ボールペンを。また一緒に置かせてください。」
「ああ、名賀都商事の場所に置くといい。数合わせを間違えるなよ。この間はひやひやしたぞ。」
「すいませんでしたねえ。」
「湯島って女が小賢しいんだ。あいつのお陰でやりにくくってしょうがない。」
「理由つけてさっさとクビにしちゃえばいいじゃないですか。そうすれば沢口さん、色々やりやすいでしょ?」
「だがあいつは頭いいから役には立つんだ。・・・・もう済んだか?名賀都の新井が来る前にやっとかないと文句つけられないんだぞ。」
「はいはい。・・・・終わりました。これで名賀都商事・・・じゃない、新井ってやつに文句言ってクレーム付けられますよ。頑張ってください。あ・・、それと、これ。」
「お・・・。済まんないつも。」
「いいえぇ、これくらい。こっちの方が便宜を図ってもらってるんですから。」
ごそごそ音を立てて何かやっていた二人は、幸いこちらに気付くことなく出ていった。

は――っ。
息を付けてやり取りを聞き入っていた俺は思わずため息が出て、それから湯島さんと密着していた事に気付いて慌てて離れる。
「す・すみません・・・俺」
「今度はボールペン、って言ってたわ・・」
俺より備品に関心のある湯島さんにちょっとがっかりしたけど、確かにそうだ。まして、
「名賀都商事の場所に置く・・、って」
「粗悪品を混ぜて問題にしようってことなんでしょう。」
何か手を打って証拠を掴まないと。

湯島さんの言葉にハッとして、
「あの、印しつけとかしてみたらどうでしょうか?」
言ってみる。
「今から?そうね・・・、でも、まず課長の所へ行っておかないと疑われたりしたら元も子もないわ。それに」
味方も作らないと。
呟いて、携帯を手に取りちょっと耳に当てて確認している。
「ここに一つ証拠が出来たけどもう少し集めておかないとギャフンと言わせられないわ。」
そうか、録音してたんだ。
「さ、こっちも行きましょ。そうそう、これ(録音)は、内緒ね。」
にこっと笑った湯島さんに促されて倉庫を出ながら、聞こえないようにため息をついた。

「こんにちは、名賀都商事です。」
ドアを開けて入ると早速、
「遅いじゃないか名賀都商事さん。時間通り来てもらわないと困るよ。」
沢口係長の嫌みが投げられた。
「あ、すみません課長。私がちょうど受付で会って、話し込んじゃったんです。」
俺の後ろからひょこっと顔を見せた湯島さんがさり気なくフォローしてくれる。
「課長に頼まれた用事、終わりました。」
報告すると何でもないように席に戻っていく。さっきのことはおくびにも出さない。
「う・・。そ、そうか。ま・あいい。在庫確認をしてきてくれ。」
「はい。」
やっぱり誰かに立ち会ってもらったほうがいいな、と
「あの、立ち会いの人は・・」
「あー、それなら私が行きますよォ。」
返事したのは湯島さんの隣の水木さん。彼女はいつも体を強調する服を着ている。席を立って俺の横へ来た。
「いいですよね?」
「はい。お願いします。」
返事したけど、水木さん?今、席を立つ時、湯島さんのこと、睨んでなかった?
「じゃあ課長、行って来ます」
新井さん、行きましょー。そう言って、俺の腕に胸を押し付けるようにして促すのがどうにも苦手で、出来るだけさりげなく腕を解いた。

『プリズム』

『プリズム』10*悪い事もいい事もー3

  新井くん、頭も使ってがんばりました。


「ねぇ新井さん、湯島さんのこと、どう思います?」
「湯島さん、ですか?」
倉庫で、水木さんは俺にくっつくようにしながら話しかけてきた。
「あの人って、なーんかお固い感じで、あたし達と話すことって少ないしィ、同じ部屋にいると、息詰まるんです。だから、新井さん来てくれて助かっちゃいました。」
仕事と関係ない話ばかりしてる。気を取られると数が分からなくなるから生返事してたけど、いつの間にか無口になっていた。
「新井さぁん、そんなの、ちょいちょいでいいじゃないですか。石清水さんみたいにお喋りしましょうよ。」
石清水?

「ね、ねえ水木さん。石清水・・さん、どんな確認のやり方してるの、かな?」
聞き捨てならないことを聞いたような気がして、手を止めて聞き返す。
俺が話に乗ったのがうれしいのか、
「簡単ですよー。あたしと一緒にここへ来て、ぱっと見て『あ、あるな。』で、お終い。その後は部屋に戻って、あたし達と楽し~くお喋りして帰るの。いっつもそうよ。」
面白い人なの、石清水さんって。

なんだってーー!
そんな奴なのか、あいつって!

何だか腹が立ってきた。絶対負けたくない。
「・・そうなのか・・・・。教えてくれて、ありがとう。」
顔が怒りそうになるのを何とかこらえて、水木さんにお礼を言うと、
「いいんですぅ、新井さんの役に立つなら。」
「・・って、わっ、水木さん、危ない、ですっ」
抱きつかれて、焦る。

「そうだ、コーヒー、持ってきますね。」
けろっとしている水木さん、石清水と一緒の時はいつもそうなのか、ごく自然に行ってしまった。
本当なら一緒にチェック入れるのに、一人にされてしまう。
けどこの隙に、とじぶんの納品している物品のケースや包装に印をつけていく。一見しても分からないように、包装を剥がしたりしたらすぐ分かるように・・と、考えながら作業していたら、
「お待たせしました―。  新井さん?」
夢中になってやっていて、戻って来た水木さんの声かけにビクッ、て全身が跳ねる。
「あ・・。ありがとう。こっちも、もう、終わるから。」
「はぁい。」
狼狽える俺を見ても何も思わないのか、水木さんは黙って終わるのを待っている。それはそれで可愛いと思うんだけど。

「数、ありました?」
「うん、だいたい次に来るまではありそうだけど、足りなくなりそうな物もあったから、早めに持って来るよ。」
「別に急がなくってもいいですよォ。石清水さんが持って来てくれますし。」
「え・・?」
せっかくだから、と、持って来てくれたコーヒーを作業用のスペースで飲み話していたら、
「どこのでも無くなったら持って来てあげるよ、って。ほら。」
自慢げに携帯を見せてくれる。確かにあいつの名前、番号とアドレスがあった。

だけど、そんなことしていいのか?

「どこのでも・・、って、今言ったよね?水木さん。」
「うん。うちの会社、新井さんの名賀都商事のほかに二つ業者が入ってるでしょ。そこの一つの備品が足りなくなって連絡しようとしたら、たまたま石清水さんが来てて、
『ああ、そんならうちのすぐ持ってきますよ』
って言って、ほんとにすぐ持って来てくれたの。
『水木さんのためならね』
なんて言ってくれてぇ。・・・あ、でも、湯島さんなんかに知られたら怒られちゃうから、秘密よ?」
「わかった。 そうだね。」
半分うわの空で返事してた。

そこまでするか?普通。それも、まるで水木さんが石清水に頼んでいるみたいにして・・・・。
湯島さんに話しておかなきゃ。大変な事になる。
沢口課長さんも石清水と怪しいし。



「は―――っっ・・・、くたびれた・・。」
今まで仕事した中で一番緊張したんじゃないか、ってくらい緊張して浦野商事から出てくる。
どっと疲れて、近くのコーヒーショップに入って、俺にしては珍しく砂糖を三本も入れてかき混ぜた、甘ったるいコーヒーをすする。
こんなに頭使ったの、受験か採用試験以来だ。
 浦野商事の倉庫であんなことがあったのに何食わぬ顔なんて出来ない俺なんだけど、水木さんのお陰・・で、沢口課長には気付かれなかった。


今回は、水木さん大活躍(??)でした。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その18

 小倉遊亀(おぐら ゆき) という女流画家さんをご存知ですか?
1895(明治28)年3月1日ー2000(平成12)年7月23日、105歳で亡くなった方。

最初にこの方の名前を知ったのは、新聞のコラムでした。
絵の話ではなく、介護の方面から入ったんです。 この方、年の差婚をして、お子さんは両もらい(養子さんが結婚。こちらでは、こんな言い方をします)。 仲は良かった模様です。
そしてその養子の息子さんが無くなり、一時危なかったそうですが、回復。その後亡くなるまで現役だった画家さん。

危なかった時期から亡くなる前までを、お孫さんの女性が書いた本
”小倉寛子著「小倉遊亀・天地の恵みを生きるーー百四歳の介護日誌」”
の一部が新聞コラムにあり、それに強く引かれたんです。

そして、「一枚の葉っぱ」

105歳で亡くなられるまで絵筆を取られた小倉遊亀(ゆき)さんが、一生の支えとした言葉があります。
それは遊亀さんがまだ日本画家として活躍される前に、師と仰いだ日本画家の大家、安田靫彦(ゆきひこ)さんから言われた言葉です。

《見た感じを逃さないように心掛けて行けば、その都度違う表現となって、いつの間にか一枚の葉っぱが手に入りますよ。そして、一枚の葉っぱが手に入ったら、宇宙全体が手に入ります》


本当に、亡くなる直前くらいまで毎朝起きたら絵筆をとっていたそうです。




いつか、こんな生き方もしてみたいなあ、と思いました。
なぜか繰り返し読みたくなる本の一冊です。
画集も・・、買っちゃいました。あはは。

私が持っている画集は、東山魁夷さんと、この方、小倉遊亀さん。あともう・・・二人くらいかな。



皆さま、どんな’絵’お好きですか?

『耳から始まる恋愛』

『耳からは始まる恋愛』*夏休みの出会いー6

 お父さんの昔話は、聞けるのでしょうか?


結局父さんは和叔父さんを付き合わせ、夕方まで飲んで、寝てしまった。和叔父さんは母
さんを手伝って寝入った父さんを布団に入れ、
「お邪魔しました。」
帰ろうとしたけど、
「あらいいでしょ。明日急ぎの用があるの?」
「いえ、そうじゃないですが」
「だったらご飯食べて、ゆっくりしていって。智もいるし。」
有無を言わせぬまま決めてしまった。

和叔父さんがそばにいる。
こんなに長い間一緒に居られるのはずい分久しぶりで、気分が浮き立っている自分がいる。

「智、和弘さんと一緒にお風呂入って。」
夕食後、片付けを手伝っていると母さんにそう言われた。
「一緒?」
「なぁに?恥かしい?」
「そっ、そんなんじゃないけど、さっ」
「あ、ついでに抜いて洗っておいて。 ご褒美に西瓜あげるし」
「はあ?・・・・分・か・り・ました。
言っておくけど西瓜じゃないからね。」

和叔父さんは仕事を少し持ちこんできていたらしい。食後、「部屋にいるから」とタブレッ
ト版を持って二階に上がっていた。

「和叔父さん、母さんがお風呂どうぞって。どうせだから一緒に入ってって言われたけど」

二階の部屋に入って聞く。


この部屋は、母さんが「残しておくから、いつでも来て」って言ってた、もともと和叔父
さんの部屋だ。
和叔父さん、大学に入ってからほとんど帰って来ないらしいけど、でも、この部屋にいる
と落ち着くって言ってた。


「風呂・・?ああ、もうそんな時間か。」
俺の声に和叔父さんが顔を上げる。
「何?それ」
「ん?これは、データだよ。購入されたお客さんたちの。あ、個人情報になるから見ない
こと。」
事故の記録なんかもあるからね、そう言ってすぐファイルにしまう。
俺も興味ないから、そのデータ、目の上を素通りしていった。・・・あとで、その中の一人
と関わりが出来るなんて、想像さえしなかった。

「でさ、一緒に入れって。」
「僕は構わないけど智くん、嫌かい?」
「ぜんっぜん。」

『プリズム』

『プリズム』10*悪い事も良い事もー4



「でもなぁ・・」
どうすればいいのかな。小さく言えば、俺の、つまり名賀都商事の被害がなければいい。
だけど。
見て見ぬ振りをするにはあんまりな石清水のやり方に、湯島さんに、何かしてあげたいと思っている自分を否定出来ない。
「苑田さんに・・、相談してみよっかな」
うん、そうしよう。
手に余る、・・俺が抱えるには大きすぎる問題に、範裕さんがポッと浮かぶ。

::の・・・
「あ、違った、苑田さん、だ。」
つい、範裕さん、と打ち込みそうになる。今は仕事だ。
::苑田さん、相談したい事があるんですが、今夜、時間ありますか?::
::今夜は難しい。明日なら::
::わかりました。・・・バーでもいいですか?::
::了解。遅くなるかもしれないが、行く。::
メールを読み終え、ほっとする。主任に相談する前に、範裕さんに聞いて欲しかった。

それからは気も軽くなって、仕事が捗ったくらいだった。



「こんばんは。」
バーのドアを開けそっと見回す。苑田さんは、まだ来ていない。
「いらっしゃい。・・・・今日は、お一人ですか?」
マスターがくすっと笑って声をかけてくれる。
「あの・・、後から苑田さんが。」
「そう。」
「それと・・、ちょっと相談事が」
「ああ、それじゃあ、あっちがいいですよ。」
教えてくれたのは出入り口そばのBOX席。
「あそこ、意外に目立たないし、ちょっと囲ってあるから話を聞かれないで済むんです。」
「ありがとうございます。」
頭を下げてその席に行ってみる。
ほんとだ。座ってみると、背中は通路を隔てている壁になっていて背後からの視線は無いし、正面は高めの仕切りで立ち上がるまで人がいるのかどうかも分からない。

「ご注文は?」
「え・・・、あっ!」
座りこんだ俺のところまで来たマスターに聞かれて、顔が赤くなった。
マスター、くすくす笑いながら、
「待ってるんなら、自分で作れる水割りとかがいいね?」
メニューを決めてくれて、何も言えず頷く俺を見て戻っていく。

うわあー、恥ずかしい。

お酒を飲む前から赤くなりながら、持って来てもらったセットとレシピを見比べつつ自分の分を作る。
苑田・・・、範裕さんが来る前に酔っぱらったら目も当てられないから、薄めに作ってちびちび飲む。
「・・と、忘れないうち。」
浦野商事の事、思い出しながら手帳に書き出していく。


「マスター」
ドアを開けるなり声を出した苑田さんに、マスターが合図してくれたらしい。
「すまんっ、遅く、なって・・・」
急いで来てくれたらしい苑田さんが息を切らしながら座ったのは、書いては消し、を五回以上したあとだった。

「いえ、俺もまだ混乱している所もあったし、どう説明すればいいのか判らなかったんで。」
考える時間があってよかったです。そう言うと、ほっとして笑顔を見せてくれた。

「それで、おまえはどうしたいんだ?新井。」
プライベートで二人でいても、仕事の相談だと知ると名字で呼ばれる。
浦野商事の話を全部聞き終わり、苑田さんが聞いた。
「それを相談したいんです。」
つい唇を尖らせながら膨れる。
「浜崎文具のやり方はデート商法に近い部分もあるが、先方の課長にまできわどい行為をしている、となると、余程証拠を固めないと大変だ。」
「だからそれは、さっきから・・・」
「聞いたよ、けど、状況証拠、的なものばかりだろう?言い逃れされたらそれきりだし、湯島さんと、その・・・みず・・」
「水木さん」
「・・・水木さん、が、逆に問題あり・・として解雇されるかもしれない。」
「そんな・・。黙って見過ごせ、って言うんですか?!」
「新井。落ち着け。」
声が高くなった俺を、苑田さんが諌める。


『プリズム』

『プリズム』10*悪い事も良い事もー5

 さあ、作戦会議の始まりです。。


「ボロが出そうな状況を作れば、何とかなるかもしれない。」
俺に作らせた水割りを飲んで、少しして、苑田さんが呟く。
「‘ボロが出る’?」
「(浦野商事)いつ行くんだ?」
「はい・・。明後日くらいに。」
「湯島さんに、‘模様の出る傘’のメールは?」
「は?」
以前話していた波枝部長の、模様が浮き出る傘・・の?
「メールしたのか?」
「は・い・・・」
唐突に変わった話題に付いていけず、返事だけする。
「それならアドレス残ってるな?」
「ありますけど・・」
スマホ貸せ、と急かされ、思考停止状態の俺はただ従う。

「水木さん、って娘(こ)、悪気はないようだけどちょっと不用心だな。」
「そうですね・・」
メールを打ち込みながら言う苑田さん。ふと指先を止めて何か思いついたようにまた文字を並べている。
「・・・・よし。あとは湯島さん次第だな。」
画面を待ちうけにして終了、と俺に戻される。
「何したんですか?苑田さん。」
「知らない方がいい。おまえ、誤魔化すの苦手だろ?」
内容を教えてくれないのが不満できいたけど、ニヤリと口角を上げさらっと言われ、言い返せない。

「だけど続くな、その石清水ってやつと。」
グラスを空けながら言う苑田さんにはっとした。そうだ。元やさんと浦野商事で、二つ・・・。
「気をつけて外回りしろよ。それに今回は、湯島さんに助けてもらってるんだ。彼女が気付かなかったら、責任、押し付けられたかもしれないんだからな。」
「・・・・はい。」
元やさんは偶然だったけど、今度は教えてもらったんだ。
「気をつけます・・・」
「声が小さい」
「気をつけますっ。」
「よし。」
俯きそうになった俺に、苑田さんがハッパをかけてくれる。相談して、良かった。

それからしばらく仕事の話や天気の話で盛り上がる。今年は、というか今年も異常気象で体調管理が大変、なんて話題になった時、メールの着信が鳴る。
「・・・湯島さんだ。」
「来たか。見せてくれ。」
二人で覗き込む画面は、
::了解しました。もし出来たら手伝っていただきたいのですが、次の来社          
  はいつぐらいになりますか?
  私は今自室なので電話でもいいです。連絡、待ってます。::

「んなこと言われても・・・」
俺の出したメールじゃないし・・。
横で苑田さんが、
「取りあえず電話だ。話が早くて済む。」
俺が話すから。言われてスマホを渡した。

― はい、湯島です。」
― こんばんは。苑田です。」
― ・・・苑田、さん?」
― うん。新井に相談されて。」
言いながら俺を手招きする。スマホを挟んで耳を寄せた。
― そうなんですか・・。あ、作戦ありがとうございます。私もあれでいいと思うんですけど・・・
― ちょっと待ってくれないか?新井にはまだ何も知らせていない。本当は巻き込んで欲しくないんだ。」
― ・・済みません。でも・・・」
― 分かってる。新井は逃げるようなことはしないけど、そちらの会社のゴタゴタだからね。」
― ・・・・はい。」
苑田さん、厳しい。
― あと、水木さんって娘(こ)だけど。」
― ええ。ふわふわしてて、苦手なんです。」
それを聞いて苑田さん、クスッと笑った。
― そう?分かりやすいよ。同僚だと思うから苦手なんで、新入社員だと思えばいい。でなければ年の離れた親戚の子、かな?素直な所がある子だから、湯島さんから話しかければすぐ仲良くなれるはず。特に今回は重要だから、しっかりつかまえて手綱握ったほうがいい。」
― 分かりました。やってみます。」
― 新井は明後日くらいに行く予定だけど。」
― もう少し時間が欲しいです。その翌日、駄目ですか?」
苑田さんが目で聞いてくる。頷いた。
― 大丈夫だって。」
― はい。それじゃ。・・・・あ、連絡は新井さんでいいんですよね?」
― 担当は新井だよ?俺は相談されただけ。」
今度は向こうで湯島さんが笑う。
― 分かりました。   おやすみなさい。」
― 英気を養ってください、湯島さん。」
また、笑う声が聞こえて、通話が切れる。

『プリズム』

『プリズム』10*悪い事も良い事もー6

バーのマスター、子湖塚さん。多才な人です。


息を詰めて聞いていたのか、通話が切れた途端ため息がでた。・・・今日、何回めだ?
「やれやれ、こっちが背中叩かれた気分だな。」
顔のそばで苑田さんが言う、その息に頬を撫でられた気分になってドキンとした。
「そ・・うですね」
「新井?」
覗きこまれ、至近距離で目が合う。苑田さんの瞳に俺が映りこんでいて、焦る。
「顔が赤い。待ってる間ずっと飲んでたのか?」
手が、頬に触れる。ひんやりした手の甲が肌を滑り・・、慌てた。
「なっ・・なんでもないですっ」
ばね仕掛けのように体が離れ、キョトンとした苑田さんが、吹きだして笑う。
「そんなに動けるんなら平気か。でももう酒は無しだ。」
水割りのセットとグラスをトレイに乗せカウンターに持って行き、しばらくマスターと話してまた何かトレイに乗せて戻って来る。

「ほら。こっちにしとけ。」
果汁入り炭酸。サワーに見えるから。そう言ってグラスを置き、ついでにサンドイッチも置かれた。
「俺は腹も減ったし食うけど、新井は?」
「食べます。」
ホットサンドと、普通のサンドイッチが大きめの皿に並んでいる。
「こんなのあるなんて、知りませんでした。」
「子湖塚、たまに作るんだ。材料次第の裏メニュー。気紛れだから、無い時もある。」
気に入られたら頼めば何かしら作ってくれるぞ。頑張ってみろ。と続けた苑田さんが、不意に手を伸ばしてきた。
「!?」
「どうしたらこんなとこに付くんだ?」
笑いをかみ殺しながら指先の卵の欠片を見せる。 ぺろ、と舐め取った仕草に、衝動的にその手を握っていた。

「崇・・?」
「・・・すいません。いっつも迷惑かけて、相談ばっかり、で。・・・俺、頑張ります。苑田さんくらい仕事が出来るように。」
いつか横に並べるように。

「・・・俺より、おまえの方が出来るようになるさ・・・・」
なぜか目を逸らしていうと、俺に掴まれていない手で一切れ取り、
「ほら、おまえの分。」
口元に差し出す。条件反射でパクリとやると、握った手がするりと抜けていった。


三日後。浦野商事に行く前、アポイントの確認するため、電話を入れる。

― はい、浦野商事。」
― あ・・、水木・さん?」
― はい、そうです・・・、って、新井さん?うわぁ、私に用ですかぁ?」
― い・いえ、今日は物品の補充に行く時間の確認を・・・」
― なあんだ、そうなんだ・・あ、ですか。じゃ、湯島さんと替わりますね。湯島さぁん。」
「はい、名賀都商事さんからね?今切り替えます。」
まる聞こえなんだけど。でも水木さん、湯島さんと仲良くなったみたいな雰囲気が聞いていて分かる。

― お待たせいたしました。補充品の話でしたね?」
― はい。」
― 少々おまちください。・・・沢口課長、名賀都商事の新井さん、アポイントの時間に来るそうです。」
― お、そうか。・・・何時だったっけ?」
― 二時半です。」
湯島さん、いつもなら保留にしてるのに。会話、全部聞こえてくる。
― そう・・・、ちょっと待て。・・・、時間、ずらせ。三時半にしろ。」
― ・・はい。三時半、ですね。  お待たせしました。時間変更お願いします。三時半、です。」
― あ、はい。では三時半に。」

電話を切ってから首をひねる。 いつもの湯島さんらしくないような・・・。

『プリズム』

『プリズム』10*悪い事も良い事もー7

 湯島さんの作戦は、成功するでしょうか・・。  


浦野商事の、変更になった時間。

「こんにちは。名賀都商事です。」
「ほら、噂の主が来たよ、水木さん。」
「えっ?」
補充品を持ってドアを開けると嫌な事に石清水がいる。話し相手をしていた水木さんが声を出して振り返り、何だか怒った顔をした。
「新井さん、ほんとなんですか?」
な・何が??
いきなり詰め寄られて狼狽える。
「私と湯島さんを二股かけてた、って石清水さんが言ってるんです。」

な・・・んだって!?


想像さえしていなかった言葉に固まる俺をちらっと見て鼻をふくらませた石清水。
「ひどいよねえ、水木さん。」
「そうです。私だけじゃなくって、湯島さんにまで・・・」
「ちょっと、待ってください。違います。第一湯島さんだって」
「はあん?よく二人で倉庫に行ってるそうじゃないか。どうせあそこでいちゃついてるんだろ?
水木さんが話してくれたぜ、こないだ一緒に倉庫行った時のこと」
「倉庫・・?」

「あ、湯島さん!」
「水木さん?・・どうしたの?」
用事で部屋を出ていたらしい湯島さんが入って来くる。水木さんが駆け寄るのにびっくりして俺と石清水を見比べた。

「こんちは、湯島さん。あい変らず美人ですね。課長は?」
岩清水の言葉で俺も気付く。部屋には水木さんしかいない。
「課長なら波枝部長の所です。・・浜崎文具さん、アポイントは無かったと思うんですけど、今日は?」
湯島さんの冷やかな声にもへらりとしたままの石清水。
「あー、課長に呼ばれたんですよ、俺。」
「それより湯島さん。新井さんてばヒドイんです。あたし達の事、ふた股かけてるんですよ!」
「ふたまた?」
話が見えない湯島さんの眉が寄る。水木さん、大きく頷いて、
「そうです。石清水さんが、教えてくれたんです。」
「石清水さん、が?」
流れが読めた、と言いそうな表情で湯島さんが石清水を見る。落ち着いた口調で、はっきり、
「新井さんはそんな事をする人じゃありません。あなたと違って。」
「なんだよ」
ムカッとした石清水が反論しかけて、ニヤッと唇を吊り上げるようにして笑い、
「こう言ってるけどね、水木さん、湯島さんはコイツと仲いいんだよ」
水木さんに向かってとんでもない嘘を言う。
「そんな・・・。新井さん、ひどい。あたしのコーヒー、美味しいって飲んでくれたのに。」

水木さん、どうしちゃったんだ・・・?
女性心理なんてまるで分からない俺はただ見守るだけだ。

「水木さん、あなた倉庫にコーヒー持っていってるの?」
初めて知らされた湯島さんが思わず聞き返す。水木さん、大きく頷いて、
「そうです。石清水さんが『ここでコーヒー飲んだら美味しいだろうなぁ。水木さん、頼んでいい?』って言ったから持って行ってあげたんです。『美味しいね』って喜んでくれて。それからはいつもコーヒー持って行って。
だから新井さんも・・」
頬を赤くしながら言う水木さん。

おかしい。
万が一にもこぼしたら、備品にかかったりしたら大変なのに、石清水はわざわざ倉庫に持ってこさせてる。

涙目になった水木さんに、湯島さんは優しく、
「水木さん。」
「はい・・」
「コーヒー、石清水さんが来た時はいつも、倉庫で飲んでたの?」
「はい。そして、『今度、デートしようね』って。だからあたし・・・・」
「みっ、水木さんっ」
慌てた石清水、急いで止めたけど、俺も湯島さんもばっちり聞いていて後の祭りだ。
「・・そうなの。そんなこと言ってくれたの、石清水さんが。」
よかったわね、と感情が高ぶったのかしゃくりあげるようにした水木さんに手を伸ばし、庇うように肩を抱いた湯島さん。
顔を上げ、不貞腐れてる石清水をきっ、と見ると、
「石清水さん、あなた水木さんだけじゃなく、受付の子にも、経理の子にも『デートしよう』って言ってるんですってね?」
恐い笑顔で言い放った。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その19

日光浴。

今年は、もう嫌っ!!ってくらいしましたが(外に出ると必然)。

私は日焼けしても赤くなるのみ。加えて汗かきなので、酷い時は日焼けした肌の下に汗が溜まって水ぶくれ。
むけると痛くって・・・。


ではなぜこの話題?
実は、骨の話なんです。 近所のお祖母ちゃまが(今年90歳。でも、「東京オリンピックまで生きてるぞ!」と宣った(のたまった)とか。昭和ヒトケタ、根性が違う・・・)、
’骨粗鬆症’で、転んで骨折したんです。
で、その時ふと、小さい時日光に当たらないとなる病気・くる病を思い出して。 記憶が不確かだったので調べ直したら、

** 夏なら木陰で30分、冬なら手や顔に1時間程度、日に当たるだけでじゅうぶんです。
 ビタミンDはカルシウムの吸収をよくするために、骨をつくるうえで欠かせない成分ですが、食事からだけではなく、日光浴により皮膚でもつくられます

 またガラスは紫外線をあまり通さないため、窓越しの日光浴ではあまり効果は望めません。一日中家の中にこもりきりの人は、食事からじゅうぶんなビタミンDをとらないと不足してしまいます。 **

でした。

それッくらいは当たってるよね?今年は猛暑日多かったから、半分でもよかったんじゃない?と自問自答。
でも、人間のカラダって、微妙なバランスで成り立ってるんだなあ、と改めて思った次第でした。


骨でさえ、牛乳だけじゃダメなのね・・・。バランスかぁ。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会い-7

 智くん、和叔父さんと、お風呂。ちょっとした発見が。


「ねー和叔父さん、さっきの話の続きなんだけど。」
俺は湯船に浸かりながら切り出す。
「さっきの話って?」
和叔父さん、シャワーでシャンプーを落としながら声だけで返事する。それを見ていて。

「・・細マッチョなんだ・・・」

「・・?何か言ったかい?」
「何か俺より筋肉付いてない?お腹なんてたるんでないし。」
和叔父さん、苦笑して、
「仕事上、しょっちゅう車椅子運んだり、時々お客さんの介助をしてるからじゃないか?
病気でもそうだけど、事故で体が不自由になった人たちは、‘自分が動けない。出来ていた
事ができない’ことを納得出来なくて荒れたりする。そういうひとたちと向き合う事、手
を貸すことが多いからね。」
「事故で不自由?」
「そう。交通事故や・・・、部活で」
「部活・・。」

確か和叔父さんも部活の事故だったんじゃ・・。

「智くん、交替。」
「あ、うん。」
ちょっと考えていた間に、洗い終わった和叔父さんが、声をかける。湯船を出て交替する
時肌が触れ、びくっとしてしまう。・・・なんでだ?
「あ、ごめん。」
「う・ううん。・・・和叔父さん?」
洗い場に二人で立ちんぼ。
「あ、うん・・・。智くん・・・、いや、」
迷うような顔を間近で見ちゃって、気になる。
「何?」
「・・やめておくよ。智くんは普通だから。」
「なんだよ、言ってよ和叔父さん。そんな言い方されると余計気になる。」
つい、腕を掴んだ。

「・・男の子が、いるんだ。僕のお客さんで。その子の車椅子の事で気になってる事があ
って。智くん、その子に体形が似てるんだよ。それで」
「それで?」
「手伝ってもらえたら・・、とか思ってしまったんだ。」
「え?」
「無理だよね・・。あ、気にしないで。」
和叔父さん、湯船につかりながら俺を見上げてごめんね、なんて笑うから、
「手伝いできるなら、するよ。」
思わず口走っていた。

『プリズム』

『プリズム』10*悪い事も良い事もー8

 そろそろ化けの皮がはがれます、石清水。


うっと詰まる石清水。
「うそ・・。ほんとですか?石清水さんっ!?」
聞いた水木さん、がばっと向きを変えて泣き顔で問い詰める。石清水はチッと舌打ちをしたが、
「やだなあ、水木さん、社交辞令だって。一番は水木さんだって・・・」
「何が、一番なんだね?」

ドアを開けながら聞いたのは・・・。
「波枝部長!」
俺がここで会うのは二回目だ。なぜ今日ここへ来たんだろう?
「い・石清水くん・・・、君は」
「沢口課長、まってくださいよ。今のは言葉のあやで」
入って来る波枝部長に後ずさる石清水が、その後ろに沢口課長を見つけ言い抜けようとする。
「そう言えば石清水さん、課長とも仲がいいんでしたよね?」
「ほう、そうなのか?沢口くん。」
「ゆ・湯島くん、何を、言ってるんだ・・、私はこの男とは何も・・・」
波枝部長にまで聞かれ、へどもどする沢口課長に、
「ええそうですよ。沢口課長は話の分かる人ですから。」
石清水が鼻を高くして自慢する。
「ち・・違います部長。私は・・・」
「こんな話もしているくらいですよね。」
いつの間に取りだしたのか、湯島さんの手には携帯があり、ピッと押された操作音の後から、

#「それで今日は?」
「ええ、ボールペンを。また一緒に置かせてください。」
「ああ。名賀都商事の場所に置くといい。数合わせを間違えるなよ?この間はひやひやしたぞ。」
「すいませんでしたねぇ。」
「湯島って女が小賢しいんだ。あいつのおかげでやりにくくってしょうがない。」
「さっさと馘首(クビ)にしちゃえばいいじゃないですか。そうすれば沢口さん、やりやすいでしょ?」
「だがあいつは頭がいいから役には立つんだ。・・・・・もう済んだか?名賀都の新井が来る前にやっとかないと文句つけられないんだぞ。」
「はいはい。終わりました。これで名賀都商事・・・じゃない、新井ってやつに文句言ってクレーム付けられますよ。頑張ってください。・・・・・あ、それとこれ。」
「お・・・。すまんないつも。」
「いいえぇ。これくらい。便宜を図ってもらってるんですから。」
ごそごそ、音がしばらく続く。 #

録音の再生が終わり、しんとした部屋の中で、
「わ・・・私じゃない。部長、違いますっ。あいつが・・・・、石清水が無理やり・・・」
真っ青になった沢口課長が、おろおろと波枝部長に訴える。
「沢口さん、あんた」
聞いた石清水が険しい顔で一歩前に出ると、
「石清水さん、課長と湯島さんの悪口言ってたんですか?」
水木さんが石清水に怒りを向ける。
「湯島さんはあたしのこと心配してくれて、食事に誘ってくれて話も聞いてくれるいい人なのに、石清水さん、悪口言うなんて・・・。もう電話もメールもしないでください!」
「ばっ馬鹿!」
ここでそんなこと言うな!と語気を荒げる石清水に、
「石清水くん、うちの女子社員にそんな事をしてるのか?」
波枝部長が詰問する。
「そ・それは・・・」
「それだけなの?水木さん。変なこと、されてない?」
湯島さん、本気で心配してる。水木さん、首を横に振った。
「されてません。ただ・・・・」
「ただ、何?」
「品物が足りなくなったら、石清水さんに注文するとすぐ持って来てくれるんです。その方が楽だからって。」

「やめろ!」

顔を真っ赤にした石清水の怒鳴り声に、水木さんが、ひっ、と悲鳴を上げて湯島さんの後ろに隠れる。

『プリズム』

『プリズム』10*悪い事も良い事も-9

 ちょっとはカッコいいところを見せてくれます、新井くん。 



俺も思わず飛び出し、湯島さんたちを庇った。石清水の顔が歪む。
「おまえだってその女(湯島さん)とデキてやがったくせに!」
「違うと言ったぞ。」
「そうです。新井さんは私に協力してくれただけです。下手な勘繰りはしないでください。私にはちゃんと婚約者がいるんですから。」
ええっ、と驚いて湯島さんを見たのは、俺と水木さんだけ。
「君!いい加減にしたまえ!」
波枝部長が石清水を一喝した。
「聞いていれば一体何だ。君はそんな営業をしているのか?うちの会社に来る人間にそんなものは必要ない。目障りだ。出て来たまえ。」
「ふん、こんなうざい会社、俺の方から願い下げだ。二度と来るか!」
悪行を暴露された石清水がドアを叩きつけて出ていく。


俺が大きく息を吐き出したのは、石清水が出ていって部屋が静かになりどれくらいかして、沢口課長がへなへな座りこんでからだった。
「・・・・・行っちゃいましたね・・・」
誰にともなく、気の抜けた声で俺が言うと、
「せいせいしました。石清水さん、あんな人だったなんて。」
水木さんが明るい声で応える。
切り替えの早い人だな、と思っていたら、
「ところで沢口くん、君は彼に色々便宜を図ってやっていたそうだね?」
波枝部長が沢口課長に質問した。
「いっ・・いえ、私は・・・」
「課長の君が、取引先に疑わしい行為を持ちかけるとは、思ってなかった。」
「部長!・・・私は、あの・・」
「残念だ。それなりに期待していたんだが。」
「・・・・ぶちょう・・・・」
「君の処遇は人事と話して決める。これ以上恥ずかしい事はしないでくれ。」
何も言えなくなった沢口課長は、項垂れてしまった。


「あのう・・」
「ああ、新井くん、だったね。こちらの揉め事に巻き込んで申し訳ななかった。」
「い・いえ」
「済まないが、今回の事は口外しないでもらえないか?」
「はい、それは。・・あの、それで、今日の補充の分を・・」
「ああ、置いていってくれ。」
ちょっと笑った波枝部長。そして、
「それはそうと湯島くん、婚約者だって?」
にこやかに湯島さんを見た。
「はい・・。もう少ししたら言うつもりだったんですが。」
恥ずかしそうに返事する湯島さん。
「わあ、おめでとうございます湯島さん!って顔、あかいですよ?」
「水木さん、からかわないで。」

水木さんにはついていけない・・・。
強く思った俺だった。



浦野商事を出てから、早速メールを入れる。
::苑田さん、浦野商事、なんとかなりました。::
::了解、仕事の続き、頑張れよ。::
「わかりましたー。」
リメールの文面に声を出して答える。ただ、出来ればちゃんと話して、主任にどう言えばいいのか教えてもらいたい。
「焼き鳥屋、行ってくれるかな?」
後で聞いてみよう。

『プリズム』

『プリズム』11*大島ビル

 ’石清水’作戦は失敗。進藤が、動き出します。


梅雨に入って、鬱陶しい日が続いている。結局篠田さんを誘う事が出来たのは翌週の月曜日。
焼き鳥屋に入ると目につくのは、俺と苑田さんがあの追っ払い男と揉めてから置かれるようになった派手な椅子。あいつ専用だ。

「目立つようにしときゃ、ごたごたしなくってすむからなぁ。」
親父さん、頭を掻きながらこぼしていた。あれからなんとなく聞こえてきた話では、あいつは親父さんの実子で長男、店を手伝っているのは再婚した相手の連れ子で二男(血はつながってないから‘次男’じゃないんだそうだ)だってこと。
苑田さんが想像してた通りで、その観察力に驚いてしまう。

それとも俺が鈍いのか?


「こんちはー」
「いらっしゃいー。お、新井さん。お連れさん、もう来てるよ。」
「新井、ここだ。」
のれんを分けて中へ入ると、親父さんに続けて範裕さんがテーブル席から呼んでくれた。

「すいません、誘ったのに遅れちゃって。」
「遅刻、ってほどじゃないだろ?」
席につけばまだ口を開けてないビールと焼き鳥の皿がある。
「クレームでも来たのか?」
「いえ、帰りがけに部長に呼ばれて。」
「進藤に?!」
「・・わっ」
正面に座り、ビールを注いでもらいながら遅れた訳を話すと、‘部長’に、びく、と反応した苑田さんが瓶を揺らして、こぼれる。
「あ・・、すまん」
「大丈夫です。少しですから。」
ほんとにちょっとシャツの袖口にかかっただけ、だったけど、そのあとしばらく苑田さん恐い顔で黙ってしまう。
 「あの・・・、そのださん?」
「・・・っ、なんだ?」
そーっと声をかけたらはっと気付いたみたいで瞬きして俺を見る。
「その・・、浦野商事、のことなんですけど」
「そ・うだったな・・。どんな風になったんだ?」
「はい。」
顛末を話し、主任に報告した方がいいのか聞いてみる。
「波枝部長は、『口外しないでくれ』と頼んだんだろう?」
「・・です。」
「なら、そうしておけばいい。中島さんに話すのはおまえの判断でいと思う。こちら側に被害は無かったんだから。」
苑田さんにしては珍しくさっさと切り上げ、それよりも、と、
「進藤と、何話してたんだ?」
気になる様子で聞いてきた。
「はぁ・・。あの、俺が担当している取引先の事で話が聞きたいから、今度時間を空けておけ、って。」

「・・・・それで?」
「外回りが多いのは知ってる、デスクPCに付箋貼っておくから時間合わせて来い。・・そう言われました。」
「・・・・・・・」
黙りこんでしまった。
周囲は賑やかなのに、俺と苑田さんの周りだけ、音が無い。
「・・・新井」
「はいっ」
「その、連絡が来たら、俺にも知らせろ。」
「苑田さん・・?」
「俺の開拓したところの話、おまえにもしてないだろ?」
「あ、はい・・・」
引き継ぐ時に、苑田さんは間に入っていない。
「どのあたりを進藤が聞きたいのかしらないが、俺もいた方が話が早く済む。」
「あ、じゃあメールで」
「電話しろ。いつでも構わないから。」
「え?でも」
「必ず、だ。いいな、崇。」
「はっ・・い」
強く念押しされて、逆らえない。
「ああそれから、進藤には言うなよ。」
「なぜですか?」
「課が違う、と文句言われたくない。」
そっか、前、部長もそんなことちらっと言ってた。

分かりました、と頷いて答え、やっと苑田さんの顔が穏やかになる。



進藤部長のことを気にしながら仕事をしていて、付箋が貼られているのに気付いたのは二日後だった。
“明日夜、21:00に大島ビル”。そしてQRコード。
見事に用件だけのメモで、他の人が見ても何だか分からない。
(明日ならまだ自慢があるな。)
そう思って、つい油断してしまった。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その20

 音。

日中、PCで記事やコメを描いていると、必ず外から合いの手が入ります。 鳥です。
人の耳で聞くと全然違うのに、一生懸命合わせようとしたり、張りあってみたり。
可愛いなあ、と思いながらキーを叩いています。


夜になると、途端に音が響くようになります。
私の家は、道路を挟んで目の前に小学校があり、校舎は向こう側。向かって左手には中学校で、やはり校舎は向こう側。
そのせいでしょうか、音がとても反響して聞こえてきます。

煩いのは夏ですね。
中学校の校庭の一角にあるバスケットゴール周辺で、零時近くまで遊んでいるボク達の声とボールの音。
本人たち、気付いてないでしょうけど、立派に安眠妨害。
でも、お向かいの家は向きや窓の違いでほとんど聞こえないらしく、話しをしても「そぉお?」という感じ。
・・・お巡りさんに言いつけちゃおうかな。

そしてお約束的な暴走車。
ヴォ――ッ。ブワ―――ッ、と走って行きます。
仕事中(多分)のトラックなら仕方ないけど、単に走りたいだけなら「鈴鹿にサーキット借りてやれ!」
と怒鳴りたくなることも。
たまーに、わざと道路の脇に立ってたらどんな反応するのかな?とか思いますが、蚊に刺されながら、通るまで
わざわざ待っている気が起こる訳もなく。

あ―五月蠅い。と思いながら文章作ってます。 



音が無くなるのは、冬。雪ってホント音を吸いこんで’しんしん’と降りますね。
自分の声も遠くまで届かない。



気が散るのはTVとダンナ様(笑)。時々CD聞きながら、もありますが、歌つきは駄目です。


このところ、こちらはお天気が良くて月もよく見えます。
外に出て、月の光を浴びながら虫の声を聞くと、 「ああ、日本人だなぁ。日本に生れてよかったなー。」
しみじみ思います。

皆さんの周りは、どんな音がありますか?

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー8

 和叔父さん、智くんの興味を引くもの、たくさん持ってます。


名前も知らないその子に、なぜか対抗意識が芽生える。俺より和叔父さんにたくさん会っ
てるかもしれなくて、口惜しい。

「でも、その子は片足を切断しなきゃならなくて・・・今は車椅子に慣れるのに必死なん
だ。」
あ、と手で口を押さえる。
「言っちゃいけないことだった。智くん、内緒だよ?」
「うん。・・・守秘義務、ってやつ?」
「そんなものかな。・・・さて、もう上がろう。湯あたりしそうだ。」
「あ、もうちょっとだけ待って。俺、まだ洗い終わってないし。」
「・・はいはい。」

それから和叔父さんはその話をしなくて、父さんの話も中途半端でもやもやしっ放し。
だから、
「母さーん、西瓜、二階で和叔父さんと食べる。」
二人分取り分けお盆に乗せた。


「和叔父さん、西瓜持ってきた。開けて。」
「智くん?」
部屋の中で動く気配がする。引き戸が開いて、
「・・ありがとう。」
「俺の分もあるし。入っていい?」
「しょうがないな。・・・聞きたいのかい?」
俺の顔を見て苦笑いする。
「だって、どっちも中途半端に聞かされたきりだよ?和叔父さん。」
せめてどっちか一つは最後まで聞かせて欲しい、お願い。と頼みこむ。
「・・・分かった。内緒に出来るね?」
「もちろん!」


「・・・それじゃあ、兄さんの話にしようか。」
「うん。・・・父さんの昔話なんて聞くの、初めてかも。」
「そんな嬉しそうな顔して。」
向かい合わせに座って体を乗り出すようにして言えば、こつんと頭を叩かれる。

『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー2

 進藤部長の裏の顔を知らない新井くん、出掛けてしまいます。


翌日の終業間際になって、目に入った付箋を見て思い出す。
そうだった。進藤部長に呼ばれていたんだ。’大島ビル‘って知らない名前だけど、QRコードがあるから・・・。
「出た。・・・ここから駅で六つ、か。仕事片付けて、ぎりぎりだ。」
苦手な報告書かきは、浦野商事が特にもたついて時間がかかり、書き終えたときには本当にぎりぎりな時間だった。

「主任、報告書上がりました。ちょっと・・・、用事があるのでお先に失礼します。」
「おお。気をつけて帰れよ。」
「はい。お疲れさまでした。」

急いで帰り支度し、駅に向かう途中で携帯を使っている人を見て、
「いっけな・・。苑田さん、電話しろ、って言ってたな。」
必ず。そう言っていた顔を思い出す。
した方が、いい、かな?・・・・しようか。
けど、かけた番号は留守電になっていた。呼ばれた時間と場所を言って、切る。
「声、聞きたかったけど、まぁいいか。」
俺だってトイレとかマナーモードにしてるし。 そう思って電車に乗った。


指定されたビルに着いたのは時間ちょうどだった。俺が一人で入るには気が引ける黒い外観のビルは、出入り口に人がいて何かチェックをしているようだ。
部長の姿も見えないし、どうしようかと迷っていたら、
「遅かったな新井。」
うしろから声をかけられた。
「あ、部長。」
「とにかく来い。中に席を取ってもらってある。」
「すみません。」
先に歩き出した部長の後について歩きだした。


「お客さん、おつり!」
「いらん!」
二人がビルの中へ消えたすぐ後タクシーが止まり、飛び出すように苑田が降りてくる。
(うっかりマナーモード切り替えを忘れていたら、連絡が入っていたなんて)唇を噛んで慌ただしく周囲を見回し新井の姿を探した苑田が、ビルの中、奥へ行こうとするスーツ姿の二人連れを捉える。
(新井!)
後ろ姿に見覚えがあった。

入りたくない黒いビル。その前で焦燥にかられながら立ち尽くす。チェックを受けなければ中へ入る事は出来ないのだ。かと言って・・・・。

「苑田?」
「香川さん?!」
不思議そうに名前を呼ぶ声に振り返り、思わず頼みこんでいた。
「お願いですっ、中へ、入れてください。」
「大島ビル?」
「そうです。新井を、見つけないと。」
「新井?誰だそれは」
「香川さん、お願いします。早くしないとあいつが・・・・」
「・・わかった。」
必死な様子の苑田にそれ以上は聞かず肩を抱く。

「いらっしゃいませ。・・・・香川さま?今日のご予定は伺っておりませんが」
「ああ、悪い。急に変更になってな、こいつとしけ込むことにしたんだ。部屋があれば、と思って来たんだが入れるか?」
「そうでしたか。・・少々お待ちください、確認いたします。」
香川が苑田の肩を抱き、いかにもな雰囲気を作りながら出入り口でチェックをしていた女性に話しかける。彼らにしても、上得意の香川を蔑ろにする訳もなく、
「空いている部屋がお取り出来ました。どうそ。あ、それからこれが臨時のカードです。お持ちください。」
「いつもすまんな。ありがとうよ。」
「・・・香川様」
カードを受けとり、彼女の頬を掠めるキスとウインクをした香川は、俯く苑田を隠すようにして通り過ぎる。
顔を赤くした受付嬢はほとんど苑田を見ずに、次の客を待つため向こうを向いた。

「・・・・ありがとうございます。」
「とにかく部屋へ行くぞ。訳を話せ。」
「はい・・・」
断れなかった。





『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー3

 ここからはしばらく苑田と香川の視点が交互に出てきます。
香川の視点は “ から ” の間です。


「じゃあ進藤は部下を連れてきたのか?」
「そうです。新井が何かされる前に、ここから出したいんです。」
「・・・・わかった。が、難しいぞ。どの部屋に入った分からんし出入りは全てあそこでチェックされる。進藤の目も誤魔化さないとならん。」
「見つけたら俺が代わります。あいつを連れ出してください。」
「苑田」
おまえが身代りに残れば何をされるか分からない、いいのか?と目で問う香川に、
「俺はいいんです。新井が・・・・崇が無事なら。」


“ツインルームのベッドサイド。向かい合って座る相手に、
「・・惚れたのか?」
問いかける。目を逸らした。
「わかりません・・・、自分の気持ちがどこにあるのか、どうしたいのか。それに俺は、同性に恋情を持つことを力いっぱい否定した・・・・」
激しく口論した兄を思い出す。
「だが、新井って奴は助けたいんだろう?」
「はい。崇は進藤と何の関係もない。ただ上司と部下なだけなんです。汚されたくない。」
それは、好きになった相手を毒牙から守りたい、って言う、紛れもない恋愛感情なんだけどな。
と胸に呟きながら、香川は目を細めて苑田を見た。

初めて、進藤に抗おうとしている。
ずっと隠されていた剛毅さが苑田の上に現われていた。

最初の出会いの中で香川を見上げた目の中にもあった。自分はその、堕ちても屈しない強さに魅かれて苑田に手を差し出したのだ。
「いい目をしている。」
口元に笑みを浮かべて立ち上がり引き寄せると、逆らわずに体を預けてくる。重ねた柔らかな唇は、少し熱を帯びていた。



「・・・・そうだ。聞きたいことがある。すぐ寄こしてくれ。」
備え付けのインターフォンで、食事と話を聞ける今日の担当を呼びだす。

「香川様。失礼いたします。」
ノックして部屋へ来た男に進藤を見かけたことを話すと、彼が案内したと言う。今日は商談に使うらしいということも聞き出せた。
苑田の肩がビクリと震える。それを目の隅で見た香川が、
「そうか。俺もあいつにちょっと話がしたかったんだが、仕事してるんなら仕方ない。
ああ、そう言えばあいつ、二人で来たようだったが?」
「ええ、連れの方はコーヒーを飲みながら部屋で待っている、はずです。今頃暑くて上着を脱いでいるかもしれません。」
さり気ない問いにニヤリと嗤って、すでに何か新井に仕掛けられている事を仄めかす。
「へえ?」
「今日は『初物』だから。・・・そう小耳に挟みました。」
「な・・・!」
「うるさいぞ、ノリ。」
怒りを見せて立ち上がるそのだを振り向いて制し、
「商談のエサに使おうって言うのか。あいつらしい。・・で、その『初物』見ること出来るか?」
「香川様・・。それは、ちょっと・・・」
さすがに尻ごみする相手に、
「商談に使うんならそれなりだろ?こいつとちょっと見比べてみたいんだ。」
ぬけぬけと言って苑田を顎で指した。

「そちらの方は?」
軽い言い方に乗せられた男が釣り込まれて尋ねる。ニヤリと笑って、
「今夜の相手さ。お固い職業みたいで普通の場所じゃ、ばれるから嫌だと言うんだ。ここなら秘密が漏れることはないからな。」
巧みにここで働く男のプライドを持ちあげ、
「そしたら進藤を見かけたって訳だ。たまには出しぬいてやりたい奴だからなぁ。」
それとなく彼を好いていない態度を見せる。

どうだ?

と折り畳んだ紙幣を胸ポケットに差し込みワルぶった顔をする香川に、男は同類を見つけたように表情を明るくし、
「かないませんね、香川様には・・・。私が洩らしたとは、言わないでくださいよ。」
耳を、と近付き、新井がいるだろう部屋を囁いて持ってきた軽食のセットを置き、出て行った。

『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー4

 救出劇、始まりました。新井くん、何してる?


“ 「食ったら行くぞ。」
「・・・食べるんですか?」
食事など、ここで働く人間を呼び出し進藤の様子を聞きだす口実だとばかり思っていた苑田が、聞き返す。
「当たり前だ。この先どうなるか分からない時は、腹ごしらえをしておかないとイザってときに後悔する。」
サンドイッチに手を伸ばしながらそう言い、苑田にも強制的に食べさせた。

コーヒーまで飲んだ後部屋を出る。
ここはドアにルームNOが無い。代わりにドアの一部がルームキーと同じ色になっていて、それを頼りに客は自分の部屋へ行く。
オートロック式だから、開けられるのは部屋の鍵か、中の人間だけだ。


「間に合うんでしょうか・・・」
「合わせるんだろ?」
こっちだ、と先に立つ香川は軽い調子で答えるがその顔は真剣だ。
(間に合わなかったら、殴り込みか?)
自身に問うと、それもいいか、と答えが返る。 面白くなりそうだ、と口角が上がった。

ビルを半周もしたあたり、あるドアの前で立ち止まり、コンコン、とノックする。
「はい。」
「すみません、ルームサービスです。」
「あ、今開けます。」
中からの声に苑田を見れば、頷く。
「はい、何・・・、あれ、苑田さん?」
「入れてくれ、新井。進藤は?」
「あ、部長は今出ていて・・・」
よかった、と呟き香川と一緒に部屋の中へ。
特に暑くもない部屋で、新井は、スーツの上着を脱ぎ、ネクタイまで外していた。よく見ればどこか気だるそうで動きがいつもより遅い。

不思議そうに香川を見、苑田を見た。
「・・どなたですか?」
「ああ、この人は、俺の・・・、知り合いだ。進藤・・部長に話があるっていうので来てもらった。」
「そうでしたか。済みません。部長は今席を外していて・・・」
「商談中、なんだろ?知ってる。・・・・・ふぅん、なるほどね・・・」
あからさまにじろじろ眺めればムッとした顔をする。
(ほとんどの客は釣れるな)
素直な反応に視線が綻んだ。苑田を見て笑う。
「進藤がこいつを連れてきたがる訳だ。おまえの心配もよく分かる。」 “



(何だこの人?ずい分苑田さんに馴れ馴れしいけど)
俺が負けずに睨むように見返していたら、
「新井」
ベッドのそばにある時計を見ていた苑田さんが俺を呼ぶ。
「はい?」
怒られるかと思ったけど、
「進藤、が、いつ戻って来るか知ってるか?」
意外な事を聞かれる。
「いいえ。特に時間を言って出掛けた訳ではないので・・・」
何だか熱くなってきて、そっと汗を拭う。 体が熱い。
苑田さんの知り合い、というこの男性(ひと)に緊張しているからだろうか。
「何か言っていたか?」
「『話が終わるまで待ってろ、呼びに来るから』って言われました。」
答えながら、苑田さんの唇に目が吸い寄せられた。いつもより、赤い?
話すたびに動くそこへ、キス、したくなってくる。

「なら、すぐ出た方がいい。・・・・香川さん。」
何故か急いでいる苑田さんに、ハッと我に返る。


“ 「ちょっと待て。様子を見る。」
苑田が‘新井’と言うぼぅやと話している間少し離れて待っていたが、声をかけられ、部屋のドアをそっと開く。
外の様子を窺えばエレベータの止まる音がして、出てきたのは。
「・・・香川さん?」
素早くドアを閉めた俺は、苑田へ、
「進藤だ。戻って来た。」
一言告げる。苑田の顔色も変わった。
「苑田さん?何かあったんですか?」
何も知らないぼうやの呑気さに舌打ちしたくなったが、素早く室内を見回す苑田と視線が絡んだ。

「香川さん、お願いします。」
「・・いいんだな?」
頷いた苑田の顎を取り、唇を押しあてる。そして、咄嗟の事に唖然とするぼうやを引っ張って、クローゼットに二人分の体を押し込んだ。



雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その21

年中行事

大人ばかりの家なので、学校や、いわゆる’お誕生日パーティ’などには縁が無いのですが、数えてみると結構多いんです。



年間通して・・、では。
元日の神社へのお参り。に始まり、互礼会(わざわざ集まって、新年の挨拶をする会。主に男性。)新年会、盆踊り、春秋のお祭りなどの季節行事。

卓球大会、綱引き大会、社会体育大会(町主催の運動会ですね)の運動系。

男性、女性別の、お経を唱えて法話(お坊さん、お坊さんのお母さん、奥さん――坊守・ぼうもりさん、とも言います――が仏教も絡めた講演をすること)を聞く、お寺関係。

他にも親睦会なんぞがあって、ならすと月1~2・で行事がやってきます。


参加する時はいいんですよ。ただ行って、お土産が出る時にはもらって「ご苦労さまでした」言って帰ればいいんですから。
大変なのは主催する側、もしくは準備する側に回った時。
どうやっても、何かしら言われる。ほとんど持ち回りの’お役目’だし、前の人がマメだったりすると。。。


でも、です。・・・・くたびれるけど、私は嫌いじゃない。
くどくど言う人、仕切りたがる人、逃げたがる人。色々な人。年齢差もあって。一緒にやっていくなかで、その人たちの知らなかった一面をみたり、気の合う人が見つかったたり。

メインで動かないといけないグループからは外れたので、楽になりましたが、少ーしサミシイ。


人間ってホント勝手です。笑。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー9

 一つの疑問が解決。


タブレットをテーブルの端に置き、西瓜をとる和叔父さん。。
「どこまで話したっけ?」
「母さんの家に行って、『お嫁さんにください』って言いかけたところ。」
ああ、と思い出して、笑みを浮かべる。

「『私が幸せになるために、枝里子さんがぜってい必要なんです。・・・』のあたりだった
っけ。」
「うん。その続き。」
和叔父さん、西瓜を食べるのをやめて、思い出すように遠い目になる。
「枝里子さんのお父さんは、枝里子さんをとても可愛がっていてね。つまり彼氏に対して
はとても厳しい人だったんだ。
その事も兄さんは聞かされていたから、もう緊張しきっていて。部屋に通される時も右足
と右手が一緒に出てたっけ。」
「ぷっ・・。ほんと?」
「案内してくれた枝里子さんのお母さんは、そんなとこも気に入ってくれたみたいだった
よ。にこにこ笑ってた。
部屋に入って座布団に座って。真正面にいる枝里子さんのお父さんを見た・・・その途端、
さっきの言葉をいい始めて」
言葉を切った和叔父さん。俺も思い出す。

『私が幸せになるために、枝里子さんがぜってい必要なんです。必ず幸せになりますからもらってくださ・・・』」

「・・変だよね?父さんが『お嫁さんにください』って言わなきゃいけないのに、もらってください、ってさ。まるで父さんが母さんの家に行くみたい。」
「婿養子?」
「うん」
「それは僕も思った。けど、後で聞いたら、兄さん、
『そんなこと言ってない』
って言うんだ。兄さんの頭の中では、今でも『枝里子さんをお嫁にください』なんだろう
ね。」
笑いながら、でもどっかさみしそうに続ける。
「和叔父さん?」
「・・あ、それからがまた、大変だったんだよ。」
「え?まだあるの?」
「うん。言い終わって、お辞儀したんだけど、勢い付きすぎて、座卓に頭をぶつけて」
「あたま?!」
「おでこだったかな?上に乗ってた茶碗が音を立てたくらいだから」
クスッと笑う。
俺はもう吹きだして大笑い。
「見たかった~~!」
「・・・・・・。枝里子さんのお父さん、もう呆気にとられてね。また、枝里子さんが我
慢できずに笑いだして、

『敬祐さんてばー。あんなに練習したのに!』

それを聞いたお父さん、毒気を抜かれて、言いたかったことも言えなくなって結婚、許し
たんだ。
以来、兄さん、枝里子さんの実家にもよく行くようになって仲良くしてる。」
智くんも知ってるね?そう言って話が終わった。

『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー5

 苑田の視点で始まります。~~ ですね。香川さん目線は、“ で始まります。
そしてもちろん新井くん目線も。紛らわしいかもしれませんが、よろしくお願いします。



~~ 二人が隠れたクローゼットが閉まるのと同時くらいに部屋のドアが開き、機嫌良く入って来た進藤が苑田を見て驚く。
「苑田!?・・・何故ここに」
言いながら新井を探して部屋を見回す進藤に、
「新井なら帰した。」
先回りする。
「何?」
「このビルにはもう居ない。・・・・進藤、新井に何をさせるつもりだった?」
「フッ、いい経験を積ませてやろうと思ったのさ。上司の親心だ。部下をどうしようと俺の勝手だろう?」
鋭い口調で迫る苑田を鼻で嗤い、進藤が傲慢に言い放つ。
「それよりおまえの方こそどうして来た?ついに自分の方からヤられる気になったか?」
今日おまえの出番は無いはずだったんだが、と、侮蔑に満ちた声で揶揄する。~~



「部長・・・」
部屋を見ることのできる隙間も無い、真っ暗なクローゼットの中で新井は、外の会話を聞きながら唇を噛んだ。
少々強引な所はあるが仕事の出来る上司、として尊敬もしていた進藤への思いが音を立てて崩れていく。
そして、進藤が苑田に対する、物言いに疑問が湧いてくる。
(どうして苑田さんをあんな風に言うんだ・・・・・)


~~ らちが明かないと思ったのか、進藤はベッドサイドにあるインターフォンに手を伸ばす。
「何をするつもりだ?」
「新井は、ここは初めてだ。迷子を捜してもらうのさ。」
「・・・進藤」
「うるさい」
フロントの番号を押そうとしたのへ、一つ息をして、
「佳奈子さんとは・・、あれから会ったのか?」
矢を放つ。
進藤は、ぎく、と体の動きを止め、顔だけを苑田に向けた。
「おまえ・・、どこでそれを」
「俺にも、目と耳はある。」
怒りと憎悪が混在する目で睨んだ進藤を、静かに見返す苑田。

「仕方ない。先方にはとにかく謝って勘弁してもらおう。ないよりマシだ。来い。」
時計を見た進藤はそう言うと、置きっぱなしにしてあった自分の鞄から何かを取り出し苑田に放る。
「新井に飲ませようと思っていた。おまえならこれくらいは必要だからな。・・・・飲んで、狂え。」
パシッと手に収めた苑田が見たのは、アンプルの三本セットになったものだ。黙って封を切り、全部空にした。アルコールも含まれていたらしく、熱く感じる液体が胃の中に落ちていくのを感じる。
進藤の低い笑い声が耳についた。


“ 「もういいだろう。出るぞ。」
香川が新井にそう声をかけたのは、部屋のドアが閉まる音を聞いてしばらく経ってからだった。
「はい。」
疑問の解決より行動、ここから出ることが先決だ、と返事をし、クローゼットのドアを押す。
しかし、中から開けることを想定していない扉は堅くなかなか開かない。
「お上品にやってるな。壊れても構わないんだ。」
香川が焦れてドアを蹴り上げ、新井も真似てようやく外へ出た。

「苑田さんは・・・」
「ちょっと待て。」
すぐにでも追いかけようとした新井の腕を、香川が掴んで止める。
「放してください!苑田さんを探さないと」
「どこへ?行った先も分からずうろつくと進藤に見つかるぞ。そうなったら苑田のしたことが無駄になる。少し頭を冷やせ。」
言いながらくず入れに近付き放られたアンプルをつまみ出す。
「じゃあどうしろって言うんですか!?だいたいあなたは苑田さんとどういう・・・」
「あいつを助けたいか?」
熱くなり、香川に食ってかかる新井に、アンプルに残った液体を舐めて眉をしかめたあと問いかけた。
「もちろんです。」
「あいつが、どんな姿になっていても?」
「え・・?」
「・・これは、クスリ入りのアンプルだ。三本も飲まされた苑田がどんな状態になっているか、俺にも分からん。」
見せられた新井の顔色が変わる。拳を握りしめた。が、
「恐らく色事の最中に割り込むことになる。覚悟しておけよ。」
思いもよらないことを聞かされ、目が点になる。
「いろごと・・?」
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