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『プリズム』

『プリズム』11*大島ビル-6

 新井くん、不本意ながら香川さんとコンビを組むことに。  そして苑田は・・・。


「何だ、知らずに来たのか?」
香川の方も呆れ顔になった。それでも、
「このビルは、上から下までそっち系のビルだ。キャバクラやクラブにおいそれと行けないお偉いさん達の遊び場なんだよ。秘密保持と保身が万全だから危ないモノだってあるし、平気で使う連中もいる。
進藤はここを商談にも使ってるんだ。」
そして苑田は、商談の材料にされる。と、彼にしては丁寧に説明してやった。新井の顔が怒りで赤くなる。

「部長は・・、そんな事に苑田さんを」
「苑田じゃない。おまえのはずだった。あいつはおまえの身代りになったんだ。」
「それならなおのこと行かないと」
また、足をドアに向ける。
「だから待てと言うんだ。準備も無しに行く気か?」
「準備?」
「そうだ。」
どかっとベッドに腰を落とす。
「もちろん探しに行くがその前にすることがある。・・・恐らく着替えが要るだろう。」
「着替え、ですか?」
「居場所をつきとめたら、なるだけ早く、穏便に連れ出さないとこっちも身動きとれなくなる。」
「は・あ・・・・」
「付いてくるなら俺の言う事聞けよ?」
ぐっと詰まる新井。けれど、俺についていかないとどうにもならない、のは理解出来たらしい。
「・・・・はい。」
悔しそうな返事につい、
「いい子だ」
「俺は子供じゃありませんっ。新井 崇、って名前があります!」
アツくなって答えてくる。
「新井、ね。・・俺は香川だ。」
ニヤッと笑ってやった。 “


香川さん、という男性(ひと)はどういう人なんだろう。
俺の知らない苑田さんや進藤部長、このビルの事も知っていて、平然と「助けに行く」と言う。
簡単なことじゃないだろう。部屋にはルームNOさえ無かった。
そして俺は香川さんに頼らなければ何もできない。その事実が口惜しい。
でも、拘ってる場合じゃ、ない。
(必ず苑田さんを探し出す。)
腹に力を入れた。


“ 新井の表情が変わった。
「気合が入ったみたいだな。」
忘れ物するなよ、この部屋には戻らないぞ。そう言ってから内線で俺の部屋へ着替えを用意させる。
「行こうか。」
進藤の借りた部屋を後にした。

いつも思うが、このビルは迷路のようだ。時おりパーティションで廊下さえ区切って利用する者の秘密を守る。
「あの・・・」
「何だ?」
「このビル、人がいるんですか?」
すれ違う人もなく、物音も聞えないように感じるんだろう、新井が聞いてくる。
「いる。大勢な。時間も時間だ、ほぼ満室になってるだろう。」
ちらりと腕時計で時間を確かめれば、もう二十二時を回っていた。早くに来た客なら盛り上がっている時間だ。現に押しころしきれない声がどこからともなく漏れてくる。
「でも、どこも静かで・・・」
「静か?おいおい、よく聞いてみろ。」
言われて意識を集中したのか、少しして『あっ』と声を上げて赤くなった。どうやら緊張していて今まで耳に入らなかったらしい。
(素直に育ったもんだ)
見られぬようにそっと笑みを浮かべた。 “


~~ 進藤は苑田を連れて入った部屋で、待っていた人物に頭を下げ、謝罪していた。
「・・・・今日は‘初物’と聞いていたんだが、違ったのか?」
「申し訳ありません、青野様。急用ができてしまって。これは使い古しですが、必ず満足していただけると思います。」
半身振り返り、苑田の腕を掴んで青野の前に引き出す。
掴まれ、びくりと体を震わせた苑田が、青野の視線を浴びて目を逸らしながら細く息を吐いた。
「ほう・・」
「飲ませてありますから反応が早いでしょう。すぐ楽しめます。如何ですか?」
「そう、だな。それなら・・。だが、契約のサインは済んでからだ。」
「・・・分かりました。」
冷たく苑田を一瞥し、頭を下げる。なにせ相手は株上場の噂のある会社社長。ここに食い込むことが出来れば、自分にとってさらに箔がつく。
「では、ごゆっくり。奥様ともお楽しみください。」
にこやかに笑うも、
(夫婦揃って変態か。ま、せいぜい遊ぶがいいさ。)
軽蔑を胸中に吐き捨てる。

「部屋へ戻るか」
夫婦の‘お楽しみ’がひと段落するまで時間が空く。一休みしようとドアを開けた。

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『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー7

同時進行的に進みます。そして新たな登場人物。


~~ 「奥様・・?」
進藤が出ていってから、苑田が疑問の声で呟く。
「‘今日は初物なので、奥さまとどうぞ’と誘われたんだ、進藤くんに。」
近付く男に思わず一歩下がる。が、
「・・っ」
その動きで肌に擦れる服にさえ感じてしまう。熱くなりはじめる体を自分で抱き支えるように腕を回せば、
「ぁ・・あっ」
その刺激でまたびくんと体が跳ねた。
「ふぅん。」
それを見た青野が唇を舐める。
「確かに反応が早いな。・・・・楽しめそうだ。」
「来るな・・・・っ、あ!」
不意に抱きすくめられ、もがく。
「放・・せっ。・・あ、あぁ」
「いい声だ。」
声ごと耳に吹き込まれ、
「ゃ・・ぁ、あう・・・っ、放し・・」
火がついてしまった苑田。抵抗しようにも体に力が入らない。
その時、部屋にある別のドアが開く音がした。苑田の背後からヒールの音と香水の匂いが近づいてくる。

「あら、あなた。もう始めてしまったの?」
男に抱きつく夫に驚くでもなく、逆に苑田に興味を示すのは、青野の妻、早苗だ。横顔を覗き、
「きれいな人ね。」
「ああ。感度もとてもいい。」
夫の言葉に、指を背中に立て、つう、と線を引くと、
「ひ・・・ぁっ」
スーツの背中が撓る。
「まあ」
「進藤くんが準備をしてきたようだ。’初物‘ではないけど」
「それでも、これなら楽しめそうですわ。」
情慾が浮かび出た瞳で、含み笑いをした。 ~~



“ 香川は、ふと足を止めた。向こうから二人連れが来る。
「あれは・・」
「どうかしたんですか?」
「新井、しばらく黙ってろよ。・・・・池畑さん、久しぶり。」
「おや、香川さん。お久しぶりです。これからお楽しみですか?」
声かけに立ち止った二人の片方が答える。
「まあね。池畑さんの方こそ。」
「いえ、今日は帰るんです。VIPルームは一杯だと言われまして。」
「ほかにまだ空きはあるでしょうに。」
「ははは・・。仕方ないです。私にはこの階が限度ですから。」
連れの、おそらく今夜の相手をちらりと見て、笑いながらも悔しそうだ。香川は、
「待ってください。聞いてみましょう。」
そばの壁に取りつけてある内線を取った。
「あ、いや、香川さん、あなたにそこまでしてもらうのは・・・」
「ここで会ったのも縁だと思ってください。・・・あ、香川だ。VIPの空きはあるか?ああ、ここは・・・」
「四階です。」
「四階は満室なんだ・・・・六階に?すぐ押さえてくれ。今から知り合いが行く。そう、俺の名前で良い。それと、誰か案内を寄こしてくれ。・・・・・内線15-3にいる。・・・・わかった。」
「・・・すみません、香川さん。でも、本当にいいんですか?」
恐縮しながらも池畑は嬉しそうだ。

このビルは階が上がるにつれ金額が上がっていく。池畑の財布事情と肩書きではここが限度なのだ。

「ええ、使ってください。でも、珍しいですね、あなたがVIPを取り損なうなんて。」
「いや、お恥ずかしい。仮押さえを横取りされましてね。あい変らず進藤くんは強引だ。」
「しんどう?」
後ろでやきもきしていた新井が声をあげる。

『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー8

緩くですが、途中、Rが付きます。年齢に達していない方、苦手な方はご遠慮くださいね。 大丈夫な方のみ、どうぞ。
香川・新井コンビは苑田のもとへ。そして苑田は青野夫妻の真ん中に。





“ 「ひとの話に割り込むな。・・進藤、ですか?」
新井を叱りつけながら、カマをかける。聞いてほしかったのか、池畑は口を滑らせた。
「ええ。そのうち痛い目をみるでしょうな。なんでも、新入りを連れてきたと聞いています。どこかのご夫婦を招待してもてなすんでしょう。ま、私には関係ない話ですが。・・・・・あ、来たようだ。」
香川の後ろの角から来た案内係に池畑の目が向けられる。
「では、私はこれで。」
「どうぞ楽しんできてください。・・そうだ、池畑さん。」
「はい?」
「どの部屋を取られてしまったんですか?」
「ああ、‘葡萄の部屋’です。」
「そうでしたか。」
「では。ありがとうございました、香川さん。」
頭を下げ、いそいそと歩き去る池畑たちを見送り、新井を振り返る。

「よく我慢したな。」
「『葡萄の部屋』ってどこですか?香川さん、知ってるんですか?」
「ああ、知ってる。」
今にも走りだしそうな猟犬を押さえている気分で香川は歩き出した。 “


~~ 「本当にきれいね・」
早苗は、ほう、と息を吐いた。
「ああ。見ごたえがある。これからが楽しみだ。」
青野が、一仕事終えた満足げな顔をする。二人の目の前にいるのは、ベッドに膝立ちで、両手を頭上から伸びたロープに縛られた・・苑田。
円形ベッドのシーツは、すでに波打つように乱れている。二人は、苑田の服を脱がしながら声を上げさせ、ベッドにあげて撫でまわし、何度も寸前まで追い上げたのだ。
ネクタイと靴下だけが残された体は上気して目は潤み、唇には紅がついている。

「はじめようか。」

粟生野の言葉に、喜んで苑田に体をすり寄せる早苗も、苑田を挟んで背後に回った青野も、一糸まとわぬ姿だ。
「や・あ・・っ。あ・・あ・・、う・んんっ、ん・ぁ・・・っく、ふ・・っ」
「いい声・・。聞かせて、もっと。」
苑田の前で、胸の粒を、マニキュアをきれいに塗った爪で弄り、感じて声を上げる場所に赤い痣を散らしていく早苗。
「君の声もきれいだよ。」
そういう青野は苑田の腰を掴み、背中を舌で舐め上げる。
「ああぁ・・・っ!や・・いや・だ・・・、あぅ」
「『いや』、では無いだろう?『イイ』と言わないと。」
「ひぁ・・、あ、っ・・・やめ・・・」
避けることも、払うこともできず身悶え、喉を反らしてあげる声が次第に高くなっていく。 ~~


“ 「ここだ。・・・やめとけ。」
香川が足を止めたのは、ドアの前の床に葡萄の絵が描かれた部屋。分かった途端香川を押しのけ、ドアノブを掴んで押し引きした新井の手を握る。
「でも、苑田さんは・・・!」
「(行為は)もう始まってるだろう。焦るな。元も子もなくなる。」
鍵は当然掛かっている。開けるのは造作ないが、中がどこまで進んでいるのか予想できないだけに慎重にならざるを得ない。
(この坊やもいるしな。)
苑田に託された以上、進藤に渡すことなく必ず外へ出さなくてはならない。
だが、こんな綱渡りは香川の血を熱くさせる。自然に頬が緩んでいた。
「鍵を開ける。そこをどけ。」
用心に新井を横に立たせ、周囲を警戒させながらドアを調べる。中の人間に呼ばれて出入りする者もいるせいか普通のキーロックになっている。これなら多分・・・。
内ポケットから手帳を取り出し、鉄製の薄いカードとピッキング仕様のブックマークを取り出す。ドアの隙間にカードを差し込み、下から上へ勢いよくスライドさせた。
カタッと音がする。ドアを引いたが、開かない。
(やっぱり二重か)
次に、鍵穴にピッキングを差し込み、ゆっくり操作して感触を確かめる。
ピィン・・、と小さな音がした。静かに道具を抜き、もう一度カードをスライドさせる。

カチャッ。

「・・・・。音を立てるなよ。」
ふう、吐息を吐いて使った物を手帳にしまい、新井を促した。



細く開けたドアから中の様子を覗き、からだを滑り込ませる。
床は葡萄色の絨毯が敷き詰められ足音が立たない。部屋を進むと、奥の、ドアの無い部屋の方から話し声が聞こえてくる。どうやらそこは寝室のようだ。
壁に張り付き様子を窺う香川を真似て、新井も耳を澄ませた。 “

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その21

温泉

いい響きですよね。
ゆったりまったり、気ままにお湯に浸かって・・・ほ~~。
温泉街をぶらぶらしたり、お土産屋さんをのぞいてみたり。 上げ膳据え膳。お布団も敷いてもらって。
浴衣に卓球。マッサージ。

あー、行きたいな。


わたしが行ったことがあるのは、ほぼ県内。湯布院とか、登別、草津、熱海、その他諸々。一度も行ったことなーい。いつもTVで見るだけ。
まあ、家の事情もありますが。 じゃあせめて’温泉の元’て入浴剤でも・・、と思いますが、家族に肌の弱い人がいるので却下。


地元の温泉は塩分を含んだものが多いので、他の温泉も知りたい、けど、一人ではなかなか。

私の町にも温泉、在ります。入場料200円。いつでも人がたくさんで、洗い場待ちをする事がよくあるんです。


一つ疑問。
女湯は、何で男湯より小さめ?

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー10

「そんな事があったんだ・・。」
「そうだよ。智くんが生まれるずっと前の話。 面白かった?」
「うん。父さん、その頃からあんま、変わんないね。」
「変わってない。だから・・・」
「和叔父さん?」
「・・何でもない。さて、僕はもうちょっと仕事の続きをする。智くんも課題、残ってるんだろう?」
「あー、思い出させないでよ、和叔父さん。」
俺のへたれ顔に吹き出して、
「頑張れ。・・手伝えないけど。」
学生の本分、しっかり。・・・・・って、励ましてくれてる?
そこまで言われたら仕方ない。やこらせー、と立ち上がり皮だけになった西瓜を持って、
「あ・・、思い出した。和叔父さんの手伝いなら出来る。」
‘手伝い’がキーワードになって風呂場での会話を思い出す。
「俺と似てる子、なんだろ?おれ、夏休み中ならOK。連絡して。」
「・・・分かった。」
和叔父さんが了解してくれたのが嬉しくて、タブレットを見はじめた顔がどんなかなんて、
・・・見なかった。



翌日、和叔父さんはあっさり帰っていった。
父さんは、二日酔い。いつもの梅干し茶を飲みながら頭抱えてる。俺はそれを横目で見な
がら、加田浦さんと、和叔父さんと、まだ知らない和叔父さんの’俺に似ている子‘で頭
の半分が一杯になっていた。
残りの半分は、もちろん自分のこと。課題をやっつけないと単位を落とすから、本腰入れ
なきゃならない。
それに、もっと重要で切実な・・・、せめてガールフレンドが欲しい!

「ってなると、やっぱり出掛けないと。」
課題の半分しか埋まってないパソコンのディスプレイに呟く。

「母さん。俺、帰る。」
夕方になって、母さんに切り出した。晩ご飯食べてから行こうとしたけど、
「そう?明日盆踊りあるわよ?女の子の浴衣、見てきたら?」
「は?何で?」
「ガールフレンド探してるんでしょ?同級生だって何人かいるはずだから行って来なさい。」
そうか、同級生・・。
「でもやっぱり‘出会い’が欲しいよな・・・」
「行くの?行かないの?」
「どっちがいい?」
「行きなさい。ほら、‘花代’」
「えー、それで俺?」
「そうよ。」
うふふ、と笑う母さん。

さし出されていたのは、白封筒に『花代』と書かれた、盆踊りの参加費?みたいなもの。
だいたい五千円が相場らしい。出さなくてもいいみたいなんだけど、持っていった家の名前と金額が貼りだされるから、どこの家も必ず持って行く。


『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー9

 今日は、香川さんと、新井くんの視点でお話が進みます。
そして、微妙にRがはいるので、年齢に達していない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方は、どうぞ。






“ 「・・・・、書類は君が持っているんだろう?・・・なんだ?私たちの部屋へ来るのか?・・・・そう言う事なら仕方ない。この部屋は?・・・・・・ああ、一晩使えるんだな。それならいい。分かった。」
青野は内線を切ると妻にこぼした。
「進藤くんは部屋に来るようだ。夫婦の部屋に来るとは無粋な男だ。」
「見られて困るものは無いんですから、いいじゃありませんか。」
「他人の領域に入り込もうとするのが不愉快なんだよ。」
「一度は来たかった大島ビルに招待されたんですし、少しは譲歩しておあげなさいよ。・・・それはそうと、彼は?」
「あのまま置いておけばいい。サインと確認のみだし、すぐに戻れるだろうから。」
「分かったわ。」
話が終わったらしく、中で動く気配がする。
「シャワーを浴びるわ。あなたは?」
「次に入るよ。」
部屋の奥に浴室があるようだ。
(一旦ここを出る、か。助かるがこっちはもう一度かくれんぼだ。どこか・・)
香川は今いる部屋を見回した。すると新井に思いが伝わったのか、同じことを考えたのかそっとある場所を指さす。
(やるじゃないか)
頷いて、移動した。 “


「行ってくるわ。大人しく待っていてね。」
俺と香川さんが見つからないように隠れた場所で息をひそめていると、女の人が誰かに声をかけている。 呻き声みたいな音が聞こえた。
「早苗、タイマーをセットするかい?」
「いいえ。スイッチは入っているのでしょ?しばらく休ませないとつまらないわ。」
「はいはい。仰せの通りに、奥さま。」
声が近づいてくる。緊張した。
(どうか見つかりませんように)


目の前をひと組の男女が通り過ぎる。
(さっき聞いた時、夫婦、って言ってた・・・。この人たち、夫婦なのに、どうして)
それとも、香川さんが話していたように、このビルに来る人たちはみんなそうなんだろううか。
ドアが閉まる音にハッと我に返る。
「新井、急げ」
「はっ、はい」
すでに寝室の中にいる香川さんが俺を呼び、時間がないことを思い出した。

部屋に入って、足が止まってしまった。
苑田さんは、いた。・・・・いたけど。
信じられない。ベッドに横たわっているのが苑田さんだ、なんて。

「苑田、しっかりしろ。」
香川さんが、苑田さんを助け起こそうと、大きな、丸いベッドに一足で乗る。
ベッドの真ん中あたりにいた、向こうを向いている苑田さんの体が、びくっ、と跳ねた。
「ぁ・・あっ!・・あうぅっ・・、・・ぅ・・っ!」
後ろ手に縛られ、汗に濡れた上半身にいくつも赤い痣を付けているけど、下はズボンを穿いている苑田さんが、くぐもった声を出す。
いきなり動いた苑田さんに驚いて、香川さんがベッドから降りた。すると、すぐ動かなくなる。でも、苑田さんの体から発した色香と喘ぎ声に、俺の全身がカッと熱くなり、腰の奥が、ズキン、と強く疼く。

(ば・馬鹿!何やってるんだ俺は!)
なぜか反応しはじめる体に狼狽し、心の中で大声を出して自分に怒った。

「苑田、俺が分かるか?」
後ろで動揺している俺に気付かず、香川さんがまた声をかけながらそっとベッドに腰をおろし、手を伸ばす。
香川さんの体重がベッドにかかると、苑田さんの体が反りかえる。
「う・・くうぅ・・っ、っあ!・・っ、・・・・ぁあっ・・!」
急いでベッドから離れる香川さん。そしてその場で考え込んでしまった。
苑田さんはまた動かなくなり、全身で呼吸をしている。
吐き出されるひと息ごとに、部屋の空気が変わっていくようで落ち着かない。苑田さん、いつもとかなり様子が違っていて、縛られているだけじゃなく、どこか苦しそうだった。

『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー10

 苑田、見つかりました。でも、様子が変。そして、緩いRが続きます。年齢に達してない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、少しさがって、どうぞ。










「香川さん、早く苑田さんを連れて出ましょう。でないと・・・」
「ちょっと待て。このままじゃ連れ出せない。」
「どうしてです?今しかチャンスが無いじゃないですか。香川さんが無理なら俺が背負います。」
動こうとしないのに苛々して、とにかく苑田さんを動かそうとベッドに手をついた。
「やめろ。乗るんじゃない。」
「は・放してください!苑田さんを助けるんだ。」
「だから、助けたいなら乗るな!」
香川さんが力ずくで俺をベッドから引きずりおろした。
その間、釣り上げられた魚のようにもがいていた苑田さんだったけど、俺がベッドから落ちた途端大きく肩を上下させる。喉がぜいぜいと鳴っていた。
それを見た香川さんは、俺の腕を掴んだまま顔が見える反対側へ回る。

「苑田、俺が分かるか?」
香川さんの声に、汗と涙、口枷を噛まされて飲み込めない唾液でくしゃくしゃになった顔の、目が、開けられる。

さっきから言葉を話せなかったのは、その(口枷の)せいだったんだ。

瞼を上げて見えた濡れた瞳。下半身を直撃する色が満ちていて、視線を向けられただけでもズボンの前が膨らみそうで、唾を呑む。

「俺だ。香川だ。・・・・分かるか?」
「・・・・・」
ゆっくり頭が動き、頷く。話の出来ない苑田さんに、
「ベッドに、上がらない方がいいか?」
俺に理解らない疑問を聞く。

頷いた。

「尻のやつは、ベッドにあがるとスイッチが入るんだな?」
泣きそうな目をしてまた首を縦に振る。
「尻のやつ・・って、・・・・スイッチ、・・って、何の事ですか?」
俺が痺れを切らして香川さんに問いかける声を聞きつけ、こっちを見た苑田さんの目が見開かれ、激しく首を横に振った。

「ぁ・・・う・・・・」
「範裕さん、どうしたんです?!」
つい名前で呼んだ俺に、苑田さんは必死に体を捩らせ向きを変えようとする。
「範裕さ・・・」
「坊や、止めとけ。」
ベッドに飛び乗ろうとしたのを香川さんが肩を掴んで引き止める。強い力で止められ、
「どうしてですか?範裕さんをあのままにしておくんですか!?」
噛みついていた。
「そうじゃない。・・・苑田はおまえに見られたくないんだ。だからここを動くな。」
「そんな・・。だって範ひ・、苑田さんは」
「苑田は俺が何とかする。おまえはここを動くな!」
言われて香川さんを睨みつけてしまう。
「・・・苑田を休ませる準備をしておけ。俺の部屋がまだ使える。」
カードキーを出された。 受け取れず、ぎゅっと拳を握って拒否する。
香川さんは、ひとつ息を吐いて、
「いいか?苑田はおまえにこんな姿を見られたくないんだ。その気持ちを汲んでやれ。部屋で待つんだ。・・・・わかったな?」
「・・・・・・」
何の力にもなれないのが悔しくて唇を噛んだ。が、香川さんが、正しい。説明を聞き、苑田さんを見やって、背中を向けた。
「・・・苑田さんを」
頼みます。言葉を押しだすように言って、歩きだした。

『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー11

新井くん、一時退場(笑)
引き続き、Rがあります。年齢に達していない方、苦手な方はご遠慮ください。 大丈夫な方、少しおりてどうぞ。













“ 新井が部屋を出ていってから、まったく・・、と香川が呟く。
「可愛い坊やだな、苑田。おまえを追いかけて必死だったぞ。」
苦笑しながら言う。やっと向こうを向いた苑田が首を横に振った。
「・・・分からないじゃないが手遅れだと思うぞ。あいつ、おまえにぞっこんだ。」
ここに来るまで、一人で部屋を出ていくまでを思い返し、温かな笑みを作る。
そして気持ちを切り替えた。
「時間もないし、急ぐぞ。
苑田、こっちに寄ってくれ。外せる物はずしてベッドにあがる。」
事務的な口調に苑田も従う。時おり口枷を噛んで体内の疼きを堪えながら、やっとベッドの端へ移動した。体の力を抜いてすべてを任せる。
香川がベルトの内側から折り畳みナイフを取り出し、まず足を、それから手と、口枷を切り離した。
縛られていた手足が自由になり、ぐったりと全身を弛緩させる。
「あがるぞ。」
香川の足がベッドに乗った。
途端、苑田がビクン、と跳ねる。てが、シーツを鷲掴んだ。
「う・・・っ、ぅあァっっ・・・」
「我慢しろ」
スラックスと下着を降ろし双丘を割り開くと、菊座から出ている玩具を掴み、引き抜いた。
「ああっん――・・ッ!」
ずる、と引き出されたのは、黒く丸い粒が団子状に連なるバイブで、くねくね動き回っている。
それを投げ捨て、力の入らない体を担ぎあげた。
(最初の時のようだな)
あの時はここまで関わるとは思わなかったが、と唇をほころばせ、新井を待たせている部屋へ向かった。 “




「お邪魔します。・・・・済みません、勝手を言って。」
青野たちの部屋へ入った進藤は、冷やかな空気を感じて内心舌打ちした。だが、表面はあくまで穏やかに、下手に謝る。
「そうだな。君が夫婦水入らずの部屋にまで来る無粋者だとは知らなかった。」
青野の不機嫌に、
「お詫びにこれを。お口にあえばと思いまして。」
急いで用意させたワインを差し出す。下調べしておいた好みの赤を見せれば、
ようやく渋面が和らいだ。
「こんな事は一度でたくさんだからな。」
「もちろんです。」
書類を出し、署名個所などを示しながら頭の別の部分で自分の部屋を思い出す。
(くそっ、一体誰があんな事を)

一休みしようと自室のドアを開け、唖然・・としたあとクローゼットを蹴飛ばしていた。

部屋の中は荒らされていなかったが、クローゼットだけが開いている。しかもよく見れば、どうやら中から開けられたようだった。
(まさか苑田が・・・)
どうしてここを嗅ぎ当てたのかそれも分からないが、新井をクローゼットへ隠し、入れ替わっている。
青野の接待を終わらせた後、必ず聞き出さなければ、と決めた。
 

『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー12

 香川サン、苑田と戻ってきました。 そしてまた緩くRが入ります。(R15くらい?)なので、年齢に足していない方、苦手な方はご遠慮ください。
大丈夫な方、少し下がってどうぞ。









「苑田さん」
ノックに応じて急いで部屋のドアを開け、苑田さんを担いで戻って来た香川さんを迎える。すぐ手を出してベッドへ下ろそうとしたけど、
「いや、このままじゃ苑田も辛いだろう。先に体を洗ってくる。」
浴室へ足を向けられてしまった。俺を、近付かせたくないみたいに。

バスローブでベッドに寝かされた苑田さんはすぐに眠ってしまった。
ベッドサイドの明かりで見る寝顔はやつれて見える。目が覚めるまでそばに居たかったけど、香川さんに合図され、隣の部屋へ移った。


濃いコーヒーを淹れてくれた香川さんと、向かい合ってソファ―に座る。話す言葉がなかったけど、ハタと思いだしてカップを置き、頭を下げた。
「あの・・・、ありがとうございました。」
「うん?」
「俺も、苑田さんまで助けてもらって。」
香川さんが驚いた顔になり、フ・・ッと笑う。
「気にするな。俺は偶然このビルの前を通りかかっただけだ。おまえを追いかけてきた苑田に会わなければ、それっきりだったんだ。」
本当に何でもないことのように言う。

「苑田さんは・・・。大丈夫でしょうか?」
「さあな。一通りは済んでいたようだが・・・・」
一通り?何の意味か分からず聞き返そうとした時、
「かがわ・・さん・・・・」
寝室との境のドアに縋るように立っていた苑田さんの、細い声が、俺より先に香川さんを呼んだ。
「苑田?」
「苑田さん?!」
さっ、と立って崩れ落ちかけた苑田さんを支える香川さんに、
「・・・抱いて、ください・・、香川さん・・・・」
震える声で背中に手を回す。
「どうした?苑田」
「体が・・・熱くて・・・・。お願い、です、抱いてくださ・い・・・・。だめ、なんです。・・もぅ」
うわ言のような呟きで香川さんに助けを求める苑田さんを正視できなくて、顔をそむけた。

俺が、見えてないみたいだ。

ジリジリ焼かれる苛立ちの感覚にぎゅっと両手を握り合わせる。

「ん・・・、んっ、・・・・んぁ・・、っふ・・・・ん・・、・・・ぅっ」
聞こえた声に思わず目を向ければ、二人が抱き合い、深く唇を重ねているのが頭の中まで飛び込んできた。

息が詰まる。


香川さんが俺をちらりと見た。
苛立ちが、殴りかかりたい衝動に変わり、歯を食いしばる。
「ぁ・・、香川さ・・・・、どぉして・・・・」
「ここでこれ以上は無理だ。」
話した口で静かに苑田さんに答え、横抱きにすると、ベッドへ戻しに行く。
「新井。来い。」
行きたくなどなかった。が、
「新井」
さっきより強い声で呼ばれ、逆らえず立ち上がった。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その22

 視察研修

今日は’視察研修、と言う名のお出かけをしてきました。
県内、日帰りです。



まず、「食べても大丈夫な」化粧品を作っている会社・ルバンシュへ。

食品成分(人参とか、オレンジ・トウモロコシ・わさび・ローズマリーなど)100%!の化粧品を作っている会社です。
だから、子供がホッペにチューしても、その手ですぐ料理しても大丈夫なのだとか。

そして興味深い話を聞きました。
一番元手がかからないのが石鹸。売る側にメリットがあるのはクリーム類。真剣に化粧品を考えているのか、が分かるのが日焼け止め。
なんだそうです。

日焼け止めってほかの化粧品に比べて数字があるじゃないですか。SPF50とか、PA++とか。
あれは法律で決められているから、ちゃんと研究・測定してやらなきゃいけない。ということは、お金がかかるんですって。

あと、紫外線は皮膚がんの原因となっているから、冬でも日焼け止めはつけたほうがいい、とか、北京は、紫外線に関しては過ごしやすい環境だ、とか・・・(空気中に障害物が多くて、人の肌に来る量が少ない)。


色々勉強になります。 私ですか?ハンドクリームと日焼け止め、買いました。えへ。



昼食はこのあたりで有名な予約制の和食。初・栗ご飯して、大満足。



最後は消防署で、起震車体験・煙の中の避難体験。署内見学。
固定電話だと場所の特定がすぐできるけど、携帯だと電波がどこに届くか判らないから手間取る、なんて話も聞きました。
隣りの県からの「助けて」なんかもあるようです。




知らない事をたくさん吸収してきた1日でした。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー11

 地元なだけに同級生とよく会います。


「よぉ、智。」
「あれ?石寺?」
翌日の、盆踊りの会場で、受付にいた石寺 成(いしじ みのる)と再会する。

「久しぶり。はいこれ。」
「お、サンキュ。まーな。おまえ、遠い大学行っちまうんだもん。」
「しょうがないだろ、あそこ(の大学)しか学部、無かったんだし。」
「いいけど。あ、みんな踊ってるぜ。」
「ふーん、じゃ、行ってみようかな。」

輪踊りの方へ行くと中央のやぐらの上で、
「あれ?丸開(まるかい)?」
マイクをもらって炭坑節を歌いだしたのは、同級生。
「あいつあんなに歌、上手かったっけ?」
「あ、能見君!久しぶりッ」
手を振ってこっちに来るピンクの浴衣姿は、
「未遊(みゆ)?」
こっちも同級生。そばへ来た未遊は、上から下まで俺を見て、
「能見くん、浴衣かっこいいね。」
「・・・ま、ね。」
着ているのは和叔父さんの浴衣。紺色の地に細い白糸が模様になっているやつ。自分で見てもまんざらでなかったから‘かっこいい’と言われるのがくすぐったいけど嬉しい。
「踊る?」
「えー?あんま覚えてないし。」
「大丈夫だって。行こ」
「わ・・うわ」
引っ張られて、輪の中へ。・・・炭坑節で、よかった。
どうにか手足を動かして思い出しながら前進。踊りが終わる頃には汗だくになっていた。

「はー、参った。」
やっと抜けだし、露店でかき氷を買う。
「えーっと、確かあっちに座れる所・・・」
「あっ、優奈!」
「え?」

どんっ。

「わ・・っ」
「きゃ」
「・・・・あーあ。」
辺りを見回した俺に二人連れの女の子の一人がぶつかり、間に挟まれたかき氷の容器が見事に潰れる。
「優奈ってば。だから気をつけなよって言ったのに」
「ご・・ごめんなさい!あの・・・」
「いや、俺はいいけど。・・・君のほうこそ、大丈夫?」
「私は、全然大丈夫ですから。・・・ほんとにごめんなさい」
「もう、早く行こうよ。花火、始まっちゃう。時間ないんだから」
「あ、待って。」
優奈って言う子も俺みたいに多分着物が濡れてるはず。咄嗟に引き止めて懐から手拭いを取り出す。

「これ。着物が濡れたままだと気持ち悪いだろ?使って。」
「でも・・」
「いいから。俺はもう帰るし」
「そんなこと・・・」
俺と、優奈ちゃんが押し問答になる。そこへ、
「優奈―、有加里(あかり)―、」
「あー、入江先輩!」

『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー13

 香川さんの決断は? 新井くんの行動は? どうなるんでしょう。
今日のRは前回より緩いですが年齢に達していな方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、少し下がってどうぞ。











香川さんは、苑田さんを寝かせたベッドの端に腰をおろし、ゆっくり肩を撫でていた。厳しい目で俺を見据え、
「おまえは、どう思っている?」
半端な答は許さない、とばかりに俺に聞く。
「どう、・・・って?」
「苑田はおそらくおまえを好いている。そして今、助けを求めている。おまえにこいつを助ける気があるか?」
「俺じゃない。香川さんに、でしょう?」
「違う。おまえにだ。」
続けて言いかけたが、言葉を切って苑田さんに優しく笑いかけ、香川さんの手を両手で持ち自分の胸に導こうとしていた苑田さんをやんわり止めさせると、頬に手を添えた。
「はやく・・・」
「もう少し待て。」
訴える苑田さんを宥める。  我慢も限界だった。
「俺、向こうにいますから」
「新井、まだ話は終わってないぞ。」
「何の話です?!」
「苑田を抱けるか?」

え?

「苑田はまだクスリが抜けきっていない。抱いてやらないと狂うかもしれん。」
「クスリ・・・・」
思い出した。アンプル3本。
「抱いて、達かせてやらないと元に戻れなくなる。できないなら俺がするぞ。
やるか?・・・やめるか?」

だ・・抱く?苑田さんを・・・?

動揺していた俺を決心させたのは、
「もぅ・・・、香川さん・・・っ、・・助けて・・・・」
苑田さんの声だった。
「します。俺が、苑田さんを助けます。」
「・・わかった。」
香川さん、うれしそうに、安心したように笑って、す、と立ち上がる。
「や・・・、行かないで・・」
潤んだ目で見上げ、子供のように香川さんの手を離さない苑田さんに、
「大丈夫だ。そばにいる。」
言い聞かせ、髪を撫で、俺に目配せした。
「今度は、あいつに助けてもらえ。」
「だれ・・・?」
「おまえを大切にしてくれるやつだ。」
どうして欲しいか言うんだぞ。苑田さんに言い置き、俺の肩をポンと叩いて出て行く。
「終わったら声かけろ。」
背中越しに言葉を残して。

苑田さんが、部屋を出る香川さんからゆっくり視線を動かして、俺を見る。サイドテーブルの明かりではよく見えないんだろう。不思議そうな表情だったけど、俺がベッドに近付き明かりの中に入って顔が見えたら、息を呑んだ。

「たかし・・・。どう・して」
信じられない、とばかりに肘をついて上半身を起こす。
「香川さんに、ビルの外に出してもらったんじゃ、なかったのか?」
「・・範裕さんをおいて逃げ出すなんて、できません。」
「馬鹿な。このビルにはまだ進藤だっている。見つかったら・・・・」
「だったら余計です。一緒に出られないなら俺も行きません。」
「駄目だ!何のために俺が・・・」
「アンプル3本。
香川さんが言っていました。範裕さんがどうなるか、俺にも判らない、と。
そんな事までして俺を助けてくれた範裕さんを、今度は俺が助ける番です。教えてください、どうすればいいのか。」
また一歩近づく。
「来るな。」
怯えたように合わせていた視線が外される。
「範裕さん」
向こう側へ逃げようとする範裕さんを追って急いでベットに上がり腕を掴む。びく、と、身体が震えた。
「触らないでくれ」
おまえが、汚れる。俯いて、そう呟くのが心に刺さって、俺はまだ何か言いかけた唇を・・・塞いでいた。

『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー14

 今日ははっきりRです。 R18になりましたので、年齢に満たない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方のみスクロールしてどうぞ。































熱をもった、柔らかな感触に駆り立てられ深く重ねる。驚いて離そうとする範裕さんと離したくない俺の揉み合いになり、シーツの上に共倒れてしまった。
「嫌だ・・。放せ、崇っ。・・・・香川さ・・・」
あの人を呼ぼうとする範裕さんにカッとなり、逃げようとする体を押さえつければ、乱れたバスローブからのぞく赤い痣に、自分の何かがプツッと切れる。
「ひぁあっ・・!や・・・たか・・しっ」
うつ伏せになっていた範裕さんのバスローブを剥ぐようにして背中を晒し、痣のある場所へ歯を立てた。他にいくつもあるのへ、噛みつく。
「あッ・・、ゃめ・・・、いっ・・・、ぁあっ、・・ぁっ」
初めは苦痛を訴えるだけだった声に、別の響きが混じりだす。
息が荒くなり、指を握り込んで耐えている肌が上気してくる。

感じてるんだ・・・・。

そう気付いて、胸が焼けるような気分になる。身体中に散らばる痣をつけたさっきの夫婦に、怒りと悔しさを覚えた。
俺の知らない範裕さんを知っている人が、あの人たち以外にもいることを認めたくない。
「くそ・・・・」
知らずに言葉をもらす。そして、
「・・・・ぁ・ああっ!や・・たかし・・っ、そこはっ・・!」
偶然、腰の窪みに手が滑った時、範裕さんが悲鳴のような声を上げた。

そこは、白い肌のままだった。誰も手をつけていない場所。 確かめたくて、そっと手を当てる。びくり・・、と全身に震えが走った。
「た・・崇・・・、そこは、嫌だ・・・。手を、どけ・て・・・っ」
指先で撫で回すと体を丸めるようにして反応し、大きく喘ぐ。 間違いない。ここは、範裕さんがもの凄く感じる場所なんだ。

「たかし・・・やめ・ろ」
「やめない」
やめられるもんか。
「いゃ・・・・あ・・っ」
多分、範裕さんも初めて知る場所なんだろう。声が狼狽えている。 逃げようとした腰を捉え、唇と舌を擦りつけると、
「あ・んんっ。やあ・・。ぁ・・・はァ・・あっ・・・。た・カ・・・崇ぃ・・・・」
泣くような高い声が上がる。
雄としての本能が直撃され、下着の奥で昂ぶって来たものが硬くなるのがわかった。・・・・範裕さんは?
「ひ・・・っ」
膝で体重を支えながら背中に圧し掛かるような姿勢の片手を、ベッドとひろさんの間に潜らせると、熱く脈打つ範裕さんの屹立に触れる。そ・・っと包み込むと息を吸う音がした。 そこはもうぬめっている。
「ぃ・・やだ。それは・・・嫌・・っ。・・・たかし、しないで・くれ。・・・っ、お願・・・・だから・・・・」
向こうを向いたままの懇願が、俺の中のなにかを揺り起こす。握った手をどけようと重ねられた手、ごと上下させ、湿った水音が耳に届くと唇を舐めていた。
「あ・・っぁ・あっ。・・・っ、くぅ・・・・」
さらに硬くなる雄を二つの手で扱かれて、堪え切れずに腰を揺らす範裕さん。
俺も、自分のモノが滴を溢れさせて下着の中を濡らしている。
(このままじゃ・・・・)
範裕さんより先に爆発しそうで、片手で、焦りながらファスナーを下ろし、自分の指なのに感じるのを奥歯を噛んで耐えながら、痛いほど張り詰めた雄をなんとか取り出した。

経験したことがないくらい勃ち上がったのが、範裕さんの揺れる双丘に当たる。
「た・・崇?」
無言で腰を密着させ、俺の状態を知らせた。
範裕さんの動きが止まり、強く‘嫌だ’と、首を横に振る。俺だってどうしたらいいのか・・。
けど、この熱を解放しないと暴走している心も体もとめられない。
「範裕さん・・・、痛いことなんかしない・から」
そう言うのが精一杯で、ただ手の動きを速める。
「あ・あっ・・・ゃ・・・だっ。こ・んなの・・っ、は・・っ・・・、も・・許し・・・・」
範裕さんも限界が近いのか、溢れる蜜がくちゅくちゅと音を立てるほど増えて股間を濡らしていた。

『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー15

きょうもR18です。年齢に達していない方苦手な方はどうぞご遠慮ください。大丈夫な方は、スクロールして、どうぞ。
































ただ、この先は。
俺に未知の世界に踏み込む勇気がある、のか?そうなったら、範裕さんとの関係は決定的に変わるだろう。
躊躇っていると、肉棒が、する、と、範裕さんの腿の間に滑って嵌まってしまった。
「・・・・っはぁ・・っ」
「ぅく・・・」
温かな足に挟まれ、先端が範裕さんの雄の根元に当たる。濡れそぼったアンダーヘアと嚢に擦れ、電流が走った。ぐんと体積が増す。
「あ・・・はァッ・・・」
喉を、背中を反らして嬌声を放ち、範裕さんの雄もびくびく応える。
「や・・、だめだ・・・っ。の・・り裕さん、力、抜いて・・・」
足をきつく閉じた範裕さんにぎゅっと締められ、その、刺激が。
「む・・無理・・・・出来な・・・っ、はゥッ」
抜こうとして、腰を引き。
「だ・・・」
目の裏で閃光がスパークした。胴震いが起きるほどの快感。すぐ後に、
「ぁ・・あァ―――・・・っ」
体を強張らせた範裕さんも手の中に熱塊を解き放った。




内線で呼び出され、葡萄の部屋へ駈けつけた進藤は青野の怒声に迎えられた。

「これは一体どういう事なんだ、進藤くん。君は私を馬鹿にする気なのか?!」
「そんなつもりは・・・」
「ならばこの状況を説明したまえ!」
荒々しい仕草で示された部屋へ入り、進藤は目を疑った。


苑田の姿がない。

あるのは、切り離された拘束具と玩具、だけ。


「バカな・・・三本飲ませたんだ。そう簡単に・・・・」
「言い訳かね?・・・もういい。契約書を返してもらおう。君との話は無かった。」
契約の破棄を言い渡す。
「青野さん、待ってください。それは」
慌てて振り向けば、青野だけでなく妻の早苗もすでに服を着ている。
「残念でしたわ。あの方と一晩過ごすのを楽しみにしていましたのに。」
彼女の声も冷やかで、取りつく島も無い状態だ。
「お待ちください。すぐ捕まえて・・・」
「不要です。私たちも時間を持て余ているのではありません。あなた、行きましょう。」
言い捨て、背中を向ける。
「待ってくれ」
彼女の腕を掴もうとして、青野に払われた。
「いい加減にしてくれ。付きあう気は無いと言ったんだ。これ以上言いがかりをつけるなら警察を呼ぶぞ。」
背広の内ポケットからI―phonを取り出す。

進藤が怯んだ。
騒がれて困るのは進藤自身だ。今までの信用が崩れるだけでなく、このビルへの立ち入りも禁止されてしまう。


「とんだ茶番になったな。」
妻を促し部屋を出ていく青野が残した言葉に、進藤は初めての屈辱を味わっていた。

「畜生!」
ギリッと歯ぎしりして壁を殴りつける。こんな失敗は今まで無かった。
「苑田の奴!どうやって逃げ出した!」
閉まった部屋のドアを蹴飛ばし僅かに怒りを静めると、内線を掴み取り怒鳴り声をあげる。
「フロント!ひとり・・・いや、二人逃げ出した!捕まえろ!」
「・・・・失礼ですが、どちら様でしょうか?」
応対に出た相手が、むっとした声で聞き返す。
「俺は進藤だ!仕事の餌に連れてきたのと邪魔をしに来た奴の二人が逃げたんだ、まだビルの中にいるはずだ。捕まえて連れて来い!」
「・・それは出来かねます。」
「何だと?」
「「このビルの中の出来事は対外秘になっております。進藤様もご存じのはず。それに、連れがあったのなら管理責任は進藤様にあって、私どもではございません。
どうしてもと仰るのでしたら手続きをいたしますので、料金をお支払いのうえ、ご利用ください。」
「金を取る、だと?」
「当然でございます。」
「わかった!もういい!」
進藤が会話を打ち切る前に通話も切れ、さらに怒りが増す。だがこれ以上打つ手は無かった。

「くそう・・・・、苑田め」
捩れた怒りは、苑田と、雲隠れした新井に向かっていった。


雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その23

 ぶっ飛びました。


昔、面白半分で競馬サイトにアクセス。削除が上手く出来ていないものがあるようで、今でも時々メールが入ってきます。
今日もそうでした。が。

締切は本日18時で御座います!  お時間にお気をつけ下さい! [info@XXXXX.jp]

この見出しはいいんです。 ここまでは、「ああ、また来たのね」で良かったんです。
次で目が点・・・。





 【 達 也 の 調 教 】 !!?


競馬の案内なのに。
kiri様のサイトにドンピシャの  名前!(ご存知ない方は、リンクのなかの、’kiriの【R18】BL小説置き場’へ足をお運びください。達也さん、がいます)

もー、目を疑いましたね。そして最後の方。



「達也の調教」の専任インフォメーションがお客様からのご質問に迅
  速且つ丁寧に対応させて頂きます。ご不明な点がございましたらお気
  軽にお問い合わせ下さい(24時間受け付け/ご返答は営業時間のみ)


吹き出して笑いました!
このメール、是非一部分でも、と思い、今回は私的・笑えるネタをあげさせていただきました。


知らない方。BLに興味のない方がいらしていたら・・、ごめんなさい。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー12

 おねーさま(センパイ)登場。


「あ、いたいた。何やって・・・、能見くん?」
「未遊?」
この子たちを探しに来たのは、同級生。
「何?どしたの?」
「いや、ちょっとぶつかって」
「入江先輩、知ってるんですかこの人?」
と、有加里ちゃん。
「まあね。」
「ちょうどいいや、未遊、優奈ちゃん?にこれ。きっと濡れてる。」
手拭いを差しだす。
「濡れてる?」
「うん、かき氷にぶつかったんだ。」
「・・・。わかった。借りる。ほら、行くよ二人とも。場所取り大変だったんだから。」
「はぁい。」
「でも、先輩・・・」
「いいって。能見くんなら知ってるし。」
じゃあね。
氷かかって濡れたんなら、ちゃんと拭く。未遊はそう言って優奈・・ちゃんの浴衣を拭き
ながら行ってしまった。

「優奈ちゃん、可愛かったな・・・」

ぶつかってビックリした顔。謝ってる時の仕草。浴衣からのぞいた・・項。
「あんな子、彼女に欲しいけど、あんなに可愛かったからもう彼氏居るんだろうな。」

・・・くしゅ。

「冷た。早く帰って着替えよ。」


帰って母さんに怒られた。
「せっかく和弘さんのを貸してあげたのに汚して帰って来るなんて。」
・・・不可抗力だったんだけど。
「さっさと脱いでシャワー浴びて。」
「へいへい」

風呂場から出て冷蔵庫を覗く俺に、母さんが声をかける。
「智、電話があったわよ、入江 未遊さん、から。またあとでかけるって言ってたわ。
・・・・もう彼女が出来たの?」
「違うよ、同級生。盆踊りの会場で会ったんだ。他に石寺とか、丸開とかもいたよ。」
答えながら、もしやと思う。

固定電話の前に座って鳴るのを待つ。    来た。
― もしもし」
「もしもし、あ、未遊?」
― 能見くん?よかった。携番聞いてなかったからこっちにかけたんだ。ちょっとドキドキした。」
「え?なんで」
― だって、能見くんのお母さんとなんて話すことないじゃない。」

あ、そうか。携帯でしか話さないもんな。出るのほとんど直接本人。


『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー16

 ちょっとだけRがあります。撫でる程度ですが(R15かな。)年齢に達していない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、少し下がって、どうぞ。











しばらく、動けなかった。
俺と範裕さんの二人で荒い呼吸を繰り返す。

息が落ち着いてきて、範裕さんの柔らかくなった雄を握ったままなのに気付いて慌てて放した。
(範裕さんの体もきれいにしないと)
そう思い、粘つく指を取りあえずバスローブで拭って、そうっと起き上がる。


「・・・・香川さん」
「終わったのか。」
向こうの部屋で、香川さんは背中を向けて座っていた。
俺の声に振り返り、ちょっと驚いた顔で、からかうように言う。
「何だ、服も脱がずに抱いたのか?」
言われてハッと目を落とせばスラックスのベルトさえ外していない。かあっと赤くなる。
「苑田が苦情を言わなかったならいいさ。それより」
立ち上がって、
「後始末のやり方くらい覚えといてやれ。」
擽ったそうな様子で寝室へ向かう。
「後始末・・・ですか?」
シーツを取り替える・・とかだろうか。でも、範裕さん、動けないほど疲れてるのに。
ついていきながら、香川さんの言葉に首をひねる。

「・・・苑田」
目を閉じ、ぐったりしている範裕さんの横へ手をついて呼び、
「辛くなる前に掻き出すぞ。」
俺の分からない事を言う。
「・・・・・・」
「うん?」
範裕さんの声が聞き取りにくかったのか、口元に耳を寄せ、赤くなりながら何か言っているのを聞いている。
くくっと喉の奥で笑い、
「それならいい。」
おかしそうに体を起こす香川さん。そして目元を笑わせたまま、
「苑田の体を拭く。手伝え。」
俺に合図した。


されるまま体をきれいにされた範裕さんを隣のベッドへ移し、俺もシャワーを浴びた。
香川さんが用意させた着替えの中から下着を出し、身につける。

寝場所をどうしようと迷っていたら、
「俺はこっちで寝るから、苑田と一緒に横になれ。」
さっさと決めた香川さんに寝室に追いやられ、恐るおそる範裕さんと並んで・・・同じベッドに入った。




進藤は、出入り口横の小部屋にいた。
強引に居座ったのだ。
(客は必ずここを通る。絶対見つけられるはずだ。)
苑田も新井も、まだ逃げだしていないはず。そう確信し、ガラスの向こう、出入りする人影の男たちに怒りのこもった目を凝らした。


ピピピピp・・・・。
目覚ましの音で、目が覚める。香川さんがセットしておいてくれたらしい。
いつの間にか爆睡していた。

「そろそろ起きろ。仕事、あるんだろ?」
香川さんの声。
「・・ふぁ・・、しごと・・・」
「ええ、今日も平日ですから。・・・・昨夜は、済みませんでした、香川さん。」
まだ覚醒しきっていない俺の横で、しっかりした声の範裕さんが答えている。
がばっと起き上がってみれば、もうネクタイを締めていて、
「のりひ・・・、苑田さん、身体はっ?」
「ひどい事をしたわけじゃないし、十分寝た。・・おまえも顔を洗って支度しろ。」
いつもの、完全に仕事モードの、苑田さん・だ。
「っはい!」
ベッドを勢いよく下りて洗面所、へ行く前に、
「おはようございます、香川さん。ありがとうございました。」
挨拶とお礼をいっぺんにして頭をさげた。
「・・礼を言われることはしてない。ま、元気が出たならいい。」
笑いをかみころしながら返してくれるのを聞きながら、顔を洗いに行った。


『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー17

 進藤の知らない出口がありました。




部屋に戻ったら、苑田さんと香川さんが話しあっている。
「・・・・進藤が出入り口をチェックしているらしい。」
「ほかに出口はあったでしょうか?」
「あるにはあるが・・・」
「あの・・、」
声をかけた俺に、
「そうだ。新井、おまえ高い所は大丈夫だな?」
香川さんから唐突に振られ、きょとんとしてしまう。それにかまわず、
「進藤が、おまえと苑田を探しているんだ。玄関でチェックしているそうだ。もう一つある出口から出るつもりだが、高所恐怖症じゃないな?」
「はい。大丈夫です。」
答えたら、
「よし。珍しい体験させてやる。」
悪戯っぽく笑われ、ドキッとして、面白そうだと少しだけわくわくした。



・・・香川さんっていったいどんな人なんだろう。
ビルの屋上で、引き出される機体を見ながら思う。


進藤部長に見つからずにこのビルを出るには、二つの方法があった。
一つは、従業員や業者が出入りしている通用口。ただそこは、俺たちが入って来た表の玄関よりチェックが厳しい。
もう一つは、屋上だ。
香川さんは、躊躇わなかった。 俺たちの会社に一番近いヘリポートまで、ここからヘリで移動することに決めたのだ。さすがに苑田さんは反対した。
「そんなにまでしてもらうことは、出来ません。」
「それなら進藤に見破られないように通り抜ける自信があるのか?」
おまえができても新井には無理だ、諦めろ。そう言われ、押し切られた。

ラッシュにはまだ早い時間。TVでしか見たことの無い風景を見おろしながら、爆音の中移動する。
レポーターがヘッドフォンを着けていたり、大声で喋ったりしている理由がよく分かる。プロペラの回転音がものすごい。
話すこともなかったから、到着するまで三人とも無言のままだった。

「楽しかったか?」
「はい。ヘリコプター、って初めて乗りました。」
香川さんに答えれば、
「子供みたいに窓から外を見ていたな。」
「ちょっ、苑田さん、子供は無いでしょう?」
到着したビルをエレベータで降りながら、二人にからかわれる。でも、苑田さんもずっと外を見ていたんだけどな・・。


ビルの一階にある店でコーヒーを飲み、気分をシャッキリさせる。
香川さんは、待たせていたヘリで帰って行った。
「さあ、俺たちも行こう。」
「はい。」

途中、ガラスに映った自分の姿に驚く。そうだ、今日は香川さんが選んでくれたこのスーツを一日着ていなきゃいけないんだったっけ。
(外回り、減らさなきゃ)
絶対何か言われるだろうから、社外へ出るのを減らすよう会社で考えよう。そう思いながら苑田さんを見れば、明るめのグレーのスーツが似合っている。
「いいなぁ。」
「どうした?」
思わず口から出た言葉を聞かれ、
「スーツです。苑田さんは似合うけど、俺は・・・」
「おまえも似合ってるよ。」
香川さんの見立て、いいんじゃないか。


『プリズム』

『プリズム』11*大島ビルー18

大島ビルから、お別れです。  長い夜でした。



苑田さんに誉めてもらったけど、自分の姿がガラスに映るたび、ちょっともやもやする。
「でも、苑田さん・・・・」
「お、苑田・・・と、新井か?」
聞こうとした声に被せるように割って入った声は。
「中島さん。・・おはようございます。」
「あ・・、お早うございます、主任。」
「へえ・・。新井おまえ、そんなスーツも持っていたのか。・・・うん、元気が出そうだ。」
「はあ」
自分では選んだんじゃありません、と喉まで出かかったセリフは、
「たまには冒険も必要だぞ、新井。外回りして、コメントもらってこい。」
のひと言で消えてしまう。
そんなあ・・・。


主任のおかげ(?)で、外回りを組まされ、一日せっせと出て歩く。どこも、
「新井くん・・・?」
と、びっくりした顔で俺の・・服を見る。七社ほど回って、
「・・それで、『なかなか良いんじゃない』と言ってくれたのが四社、『それはちょっと』と言われたのが二社、『う~~ん』とだけ言われたのが一社でした。」
ぶっきらぼうに’報告‘する。どきどきひやひやの一日で、精神的にくたびれた。なのに主任は、
「ご苦労さん。向こうの話題提供になってよかったじゃないか。しばらくしたらまたやってみろ。」
レポートを受け取りながらニヤリと笑う。
「じょ、冗談はよしてください主任。仕事以外に気を使って、へとへとなんですから。」
「ばか。面白い奴だ・って覚えてもらえるだろうが。営業は、覚えてもらうのも仕事だ。」
「あ・・・」
そんな方法も、有りなのか?
目が丸くなる俺に、
「ともかく、仕事以外でもアンテナ張るの、忘れるな。」
主任はポンと肩を叩いた。

机に戻り、メールやら明日の予定やらをチェックする。
「・・浦野商事、明日だった」
あれからまだ四・五日しか経ってないなんて嘘みたいだけど、向こうは今どうなってるんだろう。
「・・あとは、廣済堂と、・・・・わ、社内の在庫チェックしとかなきゃ。」
でも、こんなくたびれてたら明日にした方がいいな、きっと。今日は帰ろう。片付けて。
「主任、お先に失礼します。」
「おう。がっつり食べて早く寝ろ。」
そうします、とあいさつした。




同じ日、進藤は朝から頭上に黒雲を作っていた。


「進藤様、・・・もうよろしいでしょうか?」
居座られ、手を焼いたチェック係がスタッフに連絡し、駈けつけてきた女性が声をかける。椅子に座り、ガラスの向こうを睨んでいた進藤が血走った目で彼女を見た。
「昨夜いらしたお客様はすべてお帰りになりました。残っているのはあなただけです。」
「まだ二人、居るはずだ。」
「いいえ。使用された部屋の鍵は全て戻っています。清掃も済みました。時間延長もありません。」
「ならばまだ隠れているんだ。探せ!」

「・・・進藤様。私どもを侮辱するおつもりですか?」
怒鳴りつけたのへ返事する口調はまだ、客に対しての丁寧なものだが、目が冷たい。さすがに言い過ぎたか、と思った進藤。
「そ。うじゃない・・。俺の社の人間が、二人、ビル内で、連絡が取れなくなってしまったんだ。ここで待ってみたがまだ出て来ないようだ。探してはもらえないだろうか?」
今できる、最大の譲歩をして、軽く頭をさげた。女性は口の端だけで笑い、
「せっかくのお申し出ですが、返事は同じです。」
「何?」
「何時からここで見ていらしたのかは存じませんが、通らなかったのなら、進藤様がこちらに来る前にお帰りになったのだと思います。」

「俺が来る前に、帰った・・・・」
初めて思い当たったように、繰り返す。
「そうです。
ご理解いただけましたなら、ここから出ていただきます。」
女性の目配せに、一緒に付いてきていたスタッフの二人が進藤の両脇に立ち、グイ、腕を掴んで引き上げる。
「なっ、何をする!」
すでにお帰りになったお客さまからも苦情を頂きました。これ以上の迷惑は、こちらも受けたくありません。」
連れていって、と女性が続け、進藤は怒りを爆発させた。
「俺は客だ!その俺をこんな風に扱っていいのか?!放せ!」
腕を振り払って自由になろうとするが、相手はびくともしない。逆に進藤が引き摺られる。
「いい加減に、しろよ。俺がどれだけ・・・・うぐっ・・」
言い募ろうとした進藤に、別の男が腹に拳を送り込む。
「五月蠅いこと。さっさとつまみ出して。」
苦痛に呻く進藤を見る女性の目が、営業妨害者を見るものに変わっている。
「はい、佐々木さま。」
彼女を‘佐々木’と呼んだ男が合図し、進藤は通用口へ連れさられた。

『プリズム』

『プリズム』12*変化と決意

三者三様に思いを巡らせます。




自分でも『よく食べたな』と思うくらい食べ、部屋に帰る。
スーツを脱いでホッとしたら、  思い出した。
「進藤部長、居なかった・・・・。」
顔をあわせたら、どうしていただろう?

ベッドに寝転がり、考える。
苑田さん・・範裕さんの’枕営業’の噂、あれは・・・、もしかして昨夜のようなことだったのかもしれない。それなら、させていた部長は?
あのビルも、いつごろから使っていたんだろう?
「それに、なんで俺が・・・」
範裕さんが駈けつけてくれなければ、‘商談の取引材料’にされていた。
「あー・・、こんがらがってきた。」
頭を両手でガシガシかき回す。

でも・・・。
昨夜の範裕さん、触れるだけで自分自身が興奮して、離したくなくて・・・・欲しい・と思った。
あんな気持ちは初めてだ。
女の子にはもちろん興味あったし、付きあう、みたいなこともした。クラスメートと下ネタ話が盛りあがり、バカな比べっこをしたことだってある。

それに、範裕さんも俺も男。
「・・・以前、バーで、『好きな人がいる』って言ってたな、範裕さん・・」

『苑田は、意識してないがおまえを好いている』
香川さんには、そう言われた。
・・・熱が出そうだ。


「誰か、相談できる・・・・・」

中島主任。

俺の知らない苑田さんを知っている。聞いたら、教えてくれる、かもしれない。





「苑田、時間あるか?」
中島が、帰り支度をした苑田が休憩所を通り過ぎようとしたのへ声をかける。どうやら待っていたらしい。
「・・・ええ、中島さん。飲み、ですか?」
立ち止り、穏やかに答える苑田。中島が頷いた。


「いらっしゃい。・・・・・なんか、昔みたいですね。」
マスターの子湖塚が懐かしそうに言う。確かに、二人で連れだって来るのは何年かぶりだ。
「まあ、たまにはな。・・どこにする?」
「・・・奥に」
ひょいと頭を動かして挨拶に変えた中島と、会釈する苑田。並んで、カウンターの端に座った。

「ゆっくりしていってください。」
柔らかな笑みでキープされているそれぞれの酒をボトルごと、見繕ったつまみと一緒に置き、子湖塚は二人の前を離れる。気配を察するのは以前からだったが、この商売を始めてさらに磨きがかかったようだ。

「・・・何の話ですか?」
先ずは、と、中島が自分の酒を二つのグラスに注ぎ、口をつけてから、苑田が切り出す。
「今日・・、進藤を見なかっただろう?」
「はい」
「始業時間ぎりぎりに連絡があった。『体調不良で今日は休む』とさ。」
「・・・・・」
「何があったかは知らん。聞く気も無い。だが、そろそろ潮時じゃないのか?思い切れ。」
「・・・そう、ですね・・・・」
たしかに、潮時かもしれない。新井に・・・・知られてしまった。
あんな姿を見られ、そのくせ抱かれて欲情し、吐精までした。
(崇に、軽蔑されたかもな・・・)
今ならまだ自分の気持ちも抑えが効くだろう。新井だってそのうち忘れる。
「考えてみます」




 荒い息を吐きながら、進藤はやっと体を放した。相手もぐったりとして、肩を喘がせている。
大島ビルから追い出され、会社に休みの届けを出した後、ヘルスへ直行したのだ。
(苑田も新井も・・・・、今に見ろ!)
女の柔らかな体を蹂躙し、何度も突き上げ放出し気持ちがおさまった時には、昼を過ぎていた。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その24

炬燵(こたつ)


つい最近まで夏日があったりしたのに、もう恋しくなってきました・・炬燵。
我が家も長方形・正方形の2つが、そろそろ出番になりそうです。


田舎の家なので当然(?)畳の部屋。準備も大変ですが、使用中、抜け出すのがこれまた大変。
義父母もダンナ様も、炬燵にもぐる’コタツムリ’(コタツにもぐってなかなか動かない人をカタツムリに見立てて言うんだそうです。。ホント似てるー!)大好き。

私はダメなんですよねー。たまーに肩までもぐったりしますが、そのうち頭痛が・・・。
みんな、よく入っていられる、ってそっちに感心します。

まあ、洗濯物を乾かすのに使ったり、11月・12月に作る、糀(こうじ)漬けの準備――種の糀とご飯をまぜて発酵させる――にも使ったりするので、役立ってはいるんです、とっても。


え、と、糀漬けはですね、こちらの冬の定番、かぶら漬け・です。
蕪(かぶ)の間に鰤の切り身を挟み、千切り人参などと一緒に漬けて年末年始に食べる郷土料理のひとつ。

ただ、蕪、けっこう厚く切るので(2センチくらいの厚み。間に鰤が入る)、私は大根と身欠きニシンをひと口大に切って人参や昆布の千切りと一緒に漬けるやり方をしています。



炬燵に蜜柑、年賀状書きやらTVでマラソンやら、私のコタツに関する物はこんな感じですが、ネットの見出しで・・・、すごいの見ちゃいました。
’コタツの周りを囲んでいるクッション。背もたれ付き’です。

初めて見た時、「誰だ、こんな誘惑作ったの!」・・思いました。 販売元は通販 ベル○○ン さんです。
ダブルコーナークッションセット ですって。
www.bellemaison.jp/100/pr/2002013D/163187/

(貼ったけど、飛べるかなー??)

確かに、日本人ならこの誘惑に負ける・・・。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*夏休みの出会いー13

さあ、クラスメイト・未遊の電話、何が出てくるんでしょう?


― でね。優奈がちゃんと謝りたいって。」
(え・・・?)
― 能見くん?聞こえてる?」
「マジで?」
― 当たり前でしょ。あの子、真面目なんだから。それで、明日家に居るの?」
「い・・いるいる。ずっと居るよ!」
― 大声出さなくってもいいって。じゃ、明日午前中に二人で行くから待ってて。」
「一緒って、未遊も来るのか?」
― なにそれ。優奈が能見くんの家なんて知ってる訳ないし、一人でなんて行けると思う?」
「・・・・。分かった。」
向こうでくすくす笑ってるのが聞こえる。
― 私の後輩なんだからね。そこのところ、忘れないで。」
最後に言って、切れた。

明日になったら、優奈ちゃんに会える。
「母さん、帰るの明日にする。」



翌日未遊と来た優奈ちゃんは、俺の目をくぎ付けにさせた。

「ほら、優奈、ちゃんと言わないと伝わらないよ?」
未遊の後ろにいた優奈ちゃん、押し出され、俺と目が合ったと同時に、
「あ・・あの・・・、昨夜は、済みませんでしたっ」
勢い付けて頭が下げられる。ビックリした。
「あ・・うん。」
「・・、これ。ちゃんと、洗いましたから・・・」
アイロンまで掛けられた手拭いが両手で差し出される。つい、まじまじ見てしまった。
下を向いたままだけど艶光りしてる黒い髪。昨夜とは全然違う、雰囲気。こっちの方が地
なんだろうけど。

「ちょっと、能見くん、何か言ったら?黙ってると優奈だって困るよ?」
「あ、・・ありがとう。
いや、何か・・・可愛いな、って。あ・・、ごめん、彼に怒られるね。」
つい口にして、しまった、と慌てて謝る。
「能見くん。」
「だからごめん、って。そんなに怒ることないだろ、未遊。」
「ちがーう。優奈に彼氏なんていないよ。何誤解してるの?」
「え・・、だってこんなに可愛いし。」
「あー、もう。とにかく、まず受け取りなさいよ、手拭い。優奈が顔、上げられないでし
ょ?」
そうだった。
もう一度ありがとうと言って、手拭いを取る。偶然指先が触れ合ってドキリとする。

「未遊」
「なあに?」
「さっきの、ほんと?」
「ん?」
聞きたい事は知ってるはずなのにわざと聞き返す。
「だから。・・・優奈ちゃんに・・、彼・・・」
「いません、そんな人。」
未遊が答えるより先に優奈ちゃんが不意に顔を上げて答え、ぱっと向きを変えて外へ飛び
出していく
「優奈!」
「あっ、待って!」
未遊が追いかけ、俺も続けて後を追い・・・、
「あっつ!・・・あちっ・・・」
日向のアスファルトに裸足で飛び出して火傷しそうになった。
「能見くん!?」
未遊の声に優奈ちゃんも立ち止まってこっちを見る。
「みゆ~~、頼むよ、優奈ちゃん連れて来て」
「・・・・はいはい。優奈」
慌てて日陰に入って未遊を拝むようにすると、ぷっと吹き出した未遊が優奈ちゃんを呼び、
優奈ちゃんがおずおず戻って来る。

『プリズム』

『プリズム』12*変化と決意ー2

進藤、何も知らないお嬢さまとデートです。 そして新井くんはお仕事へ。



食事で気分を一新させようとして、着信したスマホを取り出す。
― はい、進藤」
― 良積さん?」
― ・・・祐美さん、ですか?」
婚約した、田之倉専務の娘だ。急いで優しい声を作る。
― どうしました?」
― いま、会社の前に居ますの。美味しいお店を見つけたので、ご都合が良かったらご一緒にと思って。」
― いいですね。他出していますが、すぐ戻ります。待っていてください。」
― わかりましたわ。」
甘い声で応対してやり、会社へ急いだ。


「本当においしいお店でした。祐美さんは色々なお店をご存じで、羨ましいです。」
「あら、良積さんこそ私以上にお詳しいでしょうに。」
祐美をエスコートしながら店を出る進藤は、どこから見ても神士だ。
運転手つきの来るまで来ていた祐美だったので、その運転手にも食事させ、支払いはすべて進藤が持った。

待たせていた運転手に合図し、車へ乗り込む祐美の手をさり気なく取り唇を押し当て、うっとりする彼女へ、
「お気をつけて。近いうちにまた食事を。」
と次を約束する。
「はい。良積さんもお仕事、頑張ってくださいね。」
名残惜しげに車の窓から顔を出す祐美に笑って、進藤は走り去る車を見送った。

「『お仕事頑張ってね』・・・か。頑張るとも。おまえを手に入れ専務の座を、そしてその上を手に入れるためにもな。」
社長に娘がいなかったのは残念だが、専務の位置からでも十分狙える。
口元を歪めるようにして嗤う。


いつか名賀都商事を俺の会社にするためにもこの綱は絶対放せない。だからこそ新井も使えるようにしたかったのだが。
「苑田。兄弟そろって俺の邪魔をするなんて事は、させない。」
身勝手な怒りを燃やした。





翌日、俺は緊張しながら浦野商事・総務室のドアを開けた。
「こんにちは。名賀都商事で・・・・」
目をパチクリさせる。

「こんにちは、新井さん。」
「新井さん、ご苦労さまです。・・・どうかしましたか?」
「どうかして、は・・いませんが。」
湯島さんが課長の席に座っている。声をかけてくれた水木さんの横の机には新しい人が。
「あれから、沢口課長が異動になって湯島さんが課長になって、ここ(総務)に新しく二人配属されたの。」
水木さんが説明してくれる。
「そうなん・・ですか。」
「そうなの。湯島さんが課長になって、色んな事が変わったけど、前よりやりやすいのよ。私毎日楽しくって。」
にこにこ笑う水木さん、すっかり湯島さんのシンパになってる。
「水木さん。」
「あ・・、すみません。つい」
注意されてペロッと舌を出し、仕事に戻った水木さんの代わりに、湯島さんの目配せで、一人の男性が立ち上がった。
「初めまして。新しく配属になった、二宮と言います。これから仕入れを担当するので、よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。名賀都商事の新井です。」
名刺交換する。
「早速ですが、在庫確認、お願いします。」
「はい。」

『プリズム』

『プリズム』12*変化と決意ー3

二宮くんの正体は・・・?



倉庫も内部が変わっていた。
「・・・すっきりして、使いやすそうですね。」
「はい。私たちも探しやすくて、助かってます。」
「あ、これ、ずい分減ってる。また明日にでも持って来ます。」
「・・・・・新井さん」
「何か?」
「あの・・・、沢口課長の事なんですが・・・」
チェックしながら話していたが、二宮さんの口調が急に重くなった。
俺も、手を止める。
「申し訳ありませんでした。」
「??・・・あの、二宮さん?」
向き合った二宮さんが頭を下げて、続けた。
「沢口課長、私の・・伯父なんです。」

え?

「・・・・似てないですね・・・・」
「は?」
驚いて顔をあげるのへ、
「二宮さんの方がずっと男っぽい顔してる。眼鏡もかけてないし。」
きょとんとして、何を聞いたのかわからない、と顔が止まっていたけど、少ししてぷっと吹き出した。
「くっ・・・くははっ、あははは・・」
「っははは・・・」

「新井さんって、面白い人ですね。」
「そんな事ありません。今だって、思った事言っただけです。」
二人で笑って、親近感がわく。

仕事を続けながら二宮さんがポツリと言う。
「伯父は・・、出世したかったんです。」
「・・誰でも、そうだと思います。」
「ライバルだと思っていた人に、肩書きで抜かれてしまったそうです。家へ来て父と飲みながら話していました。」
「それは・・・」
「だからと言って許せることではありませんけど、分かる気もして。」
返事のしようがなくて黙ってしまう。
「・・波枝部長が庇ってくださって、異動にはなりましたが、課長なんです。」
明るく教えてくれた。
「良かったですね。」
「はい。」


「在庫チェック、終わりました。不足分は明日持ってきます。」
「ご苦労さま。・・・あ、ちょっと待って。」
湯島課長に相談があると言われ、一緒に部屋を出る。
「何でしょうか?」
「あのね・・、個人的に名刺作りたいんだけど、新井さん、お願いしていいかしら?」
名刺・・!
どきん、として固まってしまう。
「あ・・、はい。。それは、か・まいません。大丈夫、です。」
「そう?じゃあ、考えておいてください。私の方からも連絡いれます。」
「はい・・・」
笑顔を見せて部屋へ戻る湯島課長を見送るようにしてから、ぎくしゃく歩き出す。
元やさんの名刺を作ってそう時間がたってないだけに、タイムリー過ぎてこわいくらいだ。
湯島さん、どんな情報網を持ってるんだろう・・・・・。

『プリズム』

『プリズム』12*変化と決意ー4

中島主任、こんどは新井くんとバーへ。


「ただ今戻りました。・・・あ、主任。」
「何だ」
「今ちょっといいですか?」
社へ戻って、一息入れている様子で首を回している主任に湯島さんの話をする。
「へえ、浦野商事、異動があったのか。で、新課長さん、名刺が欲しいって?」
「あの、前に一度、作った事はあるんです。」
PCからデータを落としファイルしたものを出すと、
「ほお・・こんな事もしてたのか。やるじゃないか新井。頼まれたんなら、元やさんのところと被らないようにして自分でやってみろ。」
「はい。」
「サンプル出来たら、俺にも見せてくれ。」
「分かりました。」
本来の仕事と違うことだけど、許可をもらってほっとする。
「それと・・」
「まだあるのか?」
「あ、の・・、苑田さんのこと、聞きたい事があるんですけど・・・」
「苑田?」
「はい」
俺の顔を見て、何か気付いたらしい主任がうーん、と唸って、
「俺一人の話じゃなぁ・・・。と、子湖塚もなにか知ってるはずだ。」
ぽん、と手を打つ。
「子湖塚さん・・ですか?」
「マスターだよ。よし、今・・・あ、だめだ。明日ならいい。行くぞ。」
「はい、お願いします。」



久しぶりに主任と来たバー。カウンターの一番隅に座った俺たちに手招きされて来たマスターが、ぽそっと名前を繰り返す。
「苑田さん・・ですか?」
「そう。こいつが知りたがってるんだ。おまえも知ってる事あるだろう?教えてやってくれないか。」
主任は、『ここへ来るならボトルキープくらいしろ』と俺の名前でキープしたシングルモルトを注文して飲みながら、親指で俺を指す。
「そうですねえ・・・・」
グラスを磨きながらマスター・・、子湖塚さんが考え込んだ。

「だけど、どうして急にそんなこと知りたがるんだ?」
「それは・・。」
問いかけられたけど、理由は、言えたものじゃない。
グラスを両手で握り、氷に視線を落として、黙りこんでしまう。

「まず、中島さんの話を聞きませんか?俺の話は、その後でもいいでしょう?」
マス・・子湖塚さんが間を埋めるように主任に水を向ける。
「わかったよ。」
一口呷って息をつく。
「・・俺が苑田・・、苑田と知り合ったのは大学からだ。あいつには年子の兄がいて、俺はそっちの同級生だった。といっても俺は浪人、向こうは二人とも現役だから俺が年長だったけどな。」
中島主任、苑田さんのお兄さん、苑田さん、の年の順。性格は違うが気は合い、三人でよく遊んだ。ささやかな悪戯もした。
そう話す主任は、懐かしむ顔をしている。

「その関係が変わり始めたのは、隆裕が――苑田の兄が恋をしてからだ。」
中島の声に苦いものが混じる。
「出来れば応援したかった。だが、できかねた。隆裕の相手には家庭があったんだ。」
「・・・・不倫、ですか?」
驚いて尋ねる俺に頷き、
「まあな。さらに悪い事にその相手は・・・・男だったんだ。」
男・・・! じゃあ。
「いわゆる同性愛だ。
知らないうちは応援できたが、知ってからは・・・。説得もしたし、無理やり合コンにも連れ出した。女が嫌いなわけじゃない。俺よりモテたし・・・。全部無駄に終わったけどな。」
「・・範裕さんともよくぶつかったと聞きました。でも、『あのひとじゃなきゃ駄目なんだ』と言われて、どうしようもなかったようでしたね・・。」
子湖塚さんが、付けたす。


「・・・・そして、隆裕はその男と一緒に死んだ。」
主任の声が、低く、重くなる。

――― 死んだ ?

『プリズム』

『プリズム』12*変化と決意ー5

聞いてしまった新井くん。何が変化したんでしょう。


「男と出掛けて車で事故った。発見された時、互いを庇いあうようにして死んでいたそうだ、」
・・まさか、・・・・心中・・とか・・・・

「心中ではありませんよ、新井さん。」
こと、と磨いたグラスを置きながら、子湖塚さんが見透かすように言った。主任も、
「事故現場に落石があったんだ。それを避けようとして、ハンドルを切り過ぎたらしい。」
間違えるな、と説明してくれる。
「でも、苑田さんとご家族はそう取れなかったようですね。」
「ああ。遺体の確認で向こうの家族に会い、色々言われたらしい。子供もいて、確か思春期の・・・」
「ええ。中学生と小学生の二人だったとか。」
・・・ただ話を聞いた俺でさえ疑ったんだから、その家族から酷い事を言われたんだろう、と想像がつく。

「苑田の家もボロボロになって、母親は四十九日済んで自殺、父親も入院した。あいつだって表面上だけでも立ち直るのに三年くらいかかった。」
主任が残っている酒を飲んで氷を噛み砕く。今でも遣る瀬無く、力になれなかったことを悔しく思っているんだろう。

「俺が引っぱったこともあってこの会社に入った時、進藤と同期になった。あいつの強引さに苑田が程良くブレーキをかけて、いいコンビだったんだが。」
思わしげに視線をカウンターの後ろ、酒瓶の列に投げる。


「・・・さっきの話、続きがあるんです。」
子湖塚さんが静かに言った。首筋がゾクリとする。
「さっきの?」
「ええ。隆裕さんの。」
主任が姿勢をただして子湖塚さんに強い目をあてる。
「聞かせてくれ。」

「・・・隆裕さんの相手だった男性。進藤さんの、血縁者でした。」

進藤部長の――――― ?!

「進藤さんが敬慕していた伯父だったそうです。・・・・・苑田さん、泣いて謝っていました。」

「進藤・・・・」
主任が、声を絞り出す。
「世間て意外に狭いですね・・・・」
まだ何か言おうとしてたけど、
「マスター・・」
遠慮がちに呼ぶ声に、俺たちに会釈して向こうへ行く。

あとで、昔は、二人でこの店に来ては色んな話をしていたと、ひと言教えてくれた。


そんな事があったなんて・・・・・。



ほとんど飲まずバーを出て、苑田さんの重たい話を抱えて部屋に帰る。
受けとめるにはショックな内容と、何だか胸の奥にむっくりとしたものが出来ていくなか、頭の芯が疲れて、眠ってしまった。


翌、金曜日。・・やっと週末だ。
今までにない‘激動’の一週間がようやく終わる。
タイミングがいいのか悪いのか、部長も苑田さんも見かけるだけで、ちゃんと話す機会が無かった。

今日は仕事に集中して、家に帰ってから考えよう。



でも、事態は知らない所で急展開した。
プロフィール

ますみ

Author:ますみ
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