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『プリズム』

『プリズム』13*苑田の家族ー6

まずは、和美さんとの間柄を聞くことができました


「悪いな、崇。」
「登山のリュックよりは軽いよ、ひろさん。」
徒歩で十分ほどの所にあるスーパーまで行った帰り。俺はお米とレジ袋。範裕さんはエコバッグを大小二つ、を持って歩いている。
「今日が特典付きサービスデーだからって、和美さん、買わせすぎじゃないのか?」
「俺なら、これくらいの重さ、慣れてるし大丈夫。」
お米の袋をゆすって笑う。
「さっき、リュックって言ったな?山登りって、そんな大荷物なのか?」
「冬山なら特にね。今の装備は軽いかもしれないけど、俺の時はだいたい30kgくらい背負ってたかな?」
「そんなに?」
「うん。食料も背負うし、テントなんかも割と重くって。かさばるけど、シェラフも無いと困るし。」
「シェラフ・・?」
「あ、寝袋のこと。」
聞き慣れない単語に興味を示す範裕さんに嬉しくなって、登山用品のあれこれを話し、ついでに部活の話もする。

それと、‘和美さん’が、ひろさんの伯母さんだということも、教えてもらった。
「母さんの母さん、祖母の妹の娘で、母さんとは年が近くてよく遊んでいたらしい。」
「そうなんだ・・。」

「ただいま。」
「戻りました。」
「お帰りなさい。ありがとう、重かったでしょう?」
「崇は重いの慣れてるみたいだったから持たせて来たんで、そうでもなかった。」
「まあ、お客さんなのに?」
「それなら和美さんは?買い物頼んでいいの?」
範裕さんにそう言われ、肩を竦めた和美さん。俺にはにっこり笑って、
「お駄賃は晩ご飯よ。カレーならお腹に入るでしょ?」
キッチンで、テーブルに置いた袋の一つから中身を出しながらそう続ける。
「でも」
「‘でも’は無し。あとはルーを入れて煮込むだけだから・・、あ、あったわ、これこれ。作りかけてから買ってなかったの思い出したの。よかった。
向こうで待ってて。」
ボードゲーム出してあるからそれで時間潰してて。そう言われ、片付けを済ませてきれいにしたさっきの居間へ。
「やあ、お帰り。」
範裕さんのお父さんが新聞を読んでいた。
「あ・・。また来ました。」
「夜も食べてくれるって?和美さん、すごく喜んでた。」
「本当にいいんですか?」
「いいもなにもあれだけ作っているんだ、食べていってくれないとカレーばかり一週間も続いてしまう。だから頼むよ。」
俺の後ろで範裕さんがこっそりため息をつくのが聞こえたけど、そんな風に言われると断れない。


「出来たわよ。」
和美さんが俺たちを呼んだのは、カレーのいい匂いがして、しばらくたってからだった。
「いやー、楽しかった。」
範裕さんのお父さんが楽しそうに報告する。
「ゲームのこと?」
「そう。盤が一杯になっても勝負がつかなくて。」
「途中から父さんが崇の味方をするからややこしくなるんだ。」
二対一じゃ苦戦するばっかりだ、と、範裕さんもテーブルに着きながらぼやいた。



「ほら、崇。ちゃんと拭け。」
「は・・い。・・・・っと」
「崇」
まったく。飲み過ぎだ。
そんな範裕さんの声をぼんやり聞きながら、渡されたバスタオルでのろのろ頭を拭く。
「で・・っく、も、まだ三本だけ・・っす、から・・」
「ビールはな。おまえその他にワインも水割りも飲んだろうが」
「・・そー・・です、っけ?」
「そうだ。 
ほら下着。ばか、逆に穿くな、・・・・・っ、崇!」


カレーの晩ご飯はお酒も出て、それまでやっていたゲーム ――リバーシ―― の勝負や、範裕さんの子供の頃の話、俺への質問などで盛り上がり、結果、どうやら飲みすぎた俺は泊まる事になってしまった。

今は、というと、風呂まで借りて、浴槽で寝込んだりしないよう一緒に入ってくれた範裕さんと、出してもらった服を着ている途中。
男二人では窮屈な脱衣場で下着を穿こうとしてバランスを崩しかけた俺を、横から抱き支えてくれる。
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『プリズム』

『プリズム』13*苑田の家族ー7

 お風呂場で、ハプニング。




「・・転んだら、危ないだろ」
「・・・あ・・」
素肌が密着し、その場所から熱くなっていく気がする。声も、耳のそばで聞こえ、ゾクっとした。
「のりひろさ・・・・」
「た・・・」
思わず回された腕を掴み、体を捩じって目の前にある唇を塞ぐ。
風呂上がりだからなのか湿り気を帯びた柔らかな感触に夢中になり、片手でひろさんの後頭部を押さえ、舌を出して舐め・・・、
「・・んぅ、ゃ・・っ!」
ドン、と胸を押され、体を離したひろさんが口に手を当て固まっている。
「範裕さん、俺・・・」
続ける前にコンコン、と脱衣場の戸がノックされ、
「範裕さん、崇さんは大丈夫?」
絶妙の間で和美さんが声をかけてきた。
「は・・ひ!だ・・、だいじょぶで・・・」
咄嗟に答えた俺の返事にクスクス笑って、
「そう?お布団居間に並べて敷いたから、冷めないうちにいらっしゃいね。」
「わかった。ありがとう和美さん。」
範裕さんが俺より先に答えて、和美さんの足音が離れて行く。

「崇。こんなところで酔っぱらうな。」
冷たく言われ、背中を向けられる。
「・・すいませ・・・・」
急に醒めた気分になり、堕ち込みながらもそもそパンツに足を通すが、目を下に向けたせいで範裕さんの下半身が視界に入って、燻っていた熱で股間が張り詰めだす。
(ば・ばか!)
しなやかに動く範裕さんの体が、なぜか’あの夜‘を思い出させ、ますます元気になる分身を気付かれたくなくて急いでシャツを着、スエットを穿いて、
「先出ま・・!!」

まだ、頭の芯が酔っていたらしい。

くるっと回って一歩踏み出し、思い切り顔面を脱衣所の戸にぶつけてしまった。
ガン、だか、バン、だか大きな音がして、目の前に火花が散る。
「崇?!」
「どうした?」
「何の音!?」
背中から範裕さん、戸のむこうから和美さんと範裕さんのお父さんの声が聞こえてきたけど、鼻とおでこが痛くて返事が出来ない。脱衣所の引き戸が開き、俺が顔を押さえて蹲った(うずくまった)のを見た二人は、しばらく無言だった。

「・・・・・いい音だったけど、顔、大丈夫かい?」
範裕さんのお父さんがしゃがんで俺を覗き込む。そして、
「痛かったなあ。よしよし。」
と、小さな子にするように頭を撫でてくれ、つられて顔をあげると、和美さんが、
「崇さん・・、顔、まっ赤よ。の・り裕さん、タオル・・冷やしてあげて。」
笑いたいのを我慢してる表情で俺の背後にいる範裕さんに頼み、パタパタッ、と向こうへ行ってしまう。少しして、変な音がした。

和美さん、俺に悪いと思って、タオルを口に当てて笑っていたんだそうだ。

『プリズム』

『プリズム』13*苑田の家族ー8

とても緩いですがR,あります(R15?) なので未満の方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方のみ、少し下がってどうぞ。

夜はまだ続く。  崇くん、どうする?
















「ほら、崇。」
「・・ふみま・・・っ」
背後から目の前にタオルが差し出され、顔に当てればヒヤッとして気持ちいい。
「浴室の中じゃ酔ってなかったのに、出た途端これだ。しょうがないな。」
「範裕、そう言うな。
ともかく連れて行ってあげなさい。横になった方がいい。」
「ああ。 立てるか?崇」
「・・・はい」
恥ずかしくってタオルを顔からはずせない。俯いたままひろさんに手を引かれて歩いた。

「タオル貸せ。もう一度冷やしてくるから。」
居間の座卓を寄せて、二人分の布団が敷かれた部屋でそう言われたら、取らざるをえない。
「・・・、見事にぶつけたんだな。けど、鼻血は出てないみたいだ。よかった。」
「はい・・」
初めて俺の顔を見たひろさんが吹き出しそうになって、でも我慢して笑わずに言ってくれたのがちょっと嬉しかったりする。
「横になってろ。他に欲しいもの、あるか?」
「あ・・、喉、渇いて」
「わかった。」

顔はもちろんだけど、体も火照っているから、布団のひんやりシャリシャリした感じがホッとする。
目を閉じてじっとしていると、襖の動く音がして、範裕さんの近付いてくる気配がした。
「もう寝たのか・・?」

頭の上に何かを置いたみたいだ。
「起きてる時は危なっかしいのに。寝てると・・・」
ひとり言のような呟きが近くで聞こえる。目を開けるのが億劫でそのままいると、唇に温かいものが触れた。

範裕さんの息が、肌の上に落ちる。

キス、されてる・・・・。ひろさんから、俺に。
「崇、起きるなよ・・」
驚きが、体の芯をズキンと叩く。風呂場で、顔をぶつけた時に萎えてしまった雄が急激に首をもたげ出す。
一度離れたひろさんがまた近付き、
「寝顔は子供みたいなんだな・・・」
ふに、と柔らかい感触。さらにさっきの‘お返し’のように舌先が伸びてきて、俺の唇をなぞっていく。
我慢しきれなくて細く目を開ける、と、気が済んだのか範裕さんの影が薄暗がりの中で離れて行くのが見えた。
(いってしまう!)

がく、とひろさんの体が止まる。俺が腕を掴んで引きとめたから。
「崇・・・起きて?」
震える声が零れる。
「ひろさん・・、俺」
言葉が続かず、力を込めて引き寄せ、重みがかかる。
「放してくれ」
「いや、です。だって俺・・・、ひろさんが」
「酔ってる、だろ?崇」
「ない・です。・・・・俺のこと、嫌いじゃないですよね?」
「・・・それは」
上半身を俺に預けて、範裕さんが言い淀む。

『プリズム』

『プリズム』13*苑田の家族ー9

さあ、苑田はなんて答えるんでしょう・・?



近い距離にある唇が動き、何か言いかけて、ふと気付いたように俺の胸に耳を当てた。
「崇・・・」
「はい」
緊張して声が掠れる。
「おまえは・・、生きてるな」
「ひ・・の・り裕さん?」
「父さんの言った通りだ。おまえ、時々、怖いくらい隆裕に似てる。」
こっちを向いてくれないから、どんな顔で話しているのか判らない。

‘似てる’。 今の俺には嫌な言葉だ。
ひろさんは、俺にお兄さんの隆裕さんを重ねて、だから俺に優しかった?

範裕さんは、お兄さんが、好き・・・だった?

「おまえの事は嫌いじゃない。でも・・・」
俺の考えている事を途切らせるようにひろさんが続ける。『でも』の先はまだありそうだったのに、俺の気持ちは迷走しすぎて、
「俺を構ってくれたのは、ひろさんのお兄さんに似てるから?死んだお兄さんに出来なかった事を、・・俺にしたいから、なの?」
「崇・・・・」
自分の声だと信じられないくらい冷たい声で、俺は、俺の方を向いたひろさんを問い詰めていた。そのうえ、
「死んだ人に‘似てる’って言われるの、嬉しくない。」
酷いことを、言ってしまった。
目が慣れて、範裕さんの顔が強張るのが、見える。

「・・・・そう、だな。ごめん・・崇」
目を伏せ、小さくなっていく声で謝る範裕さん。
「水、持ってきた。頭の上に置いたから・・・。おやすみ」
いつ力を緩めたのか分からない俺の手の中から震える自分の手を抜いて、範裕さんは起き上がり、隣の布団に入って背中を向けた。



夜は静かだから、音が良く聞こえる。



感情がごちゃ混ぜになって眠れないでいる俺の耳に、範裕さんの、押し殺した息遣いが聞こえてきた。
(ひろさん・・・、泣いてる?)

まさか・・、ひろさんを、傷つけた?

俺を見て欲しかった、だけだったのに。
範裕さんを傷つけるつもりなんて・・、無かったのに。

言った言葉がこんな結果になるなんて思ってもみなかった俺は、愕然とする。
取り返しのつかない事を、してしまった。
亡くなった隆裕さんまで、俺は傷つけてしまったんだ。




「お早う、崇さん。
・・・どうしたの?二日酔い?」
「いえ・・・、まあ・・」
「やっぱり。浩司さん(苑田父)が喜んで飲ませすぎたせいね?だからあんなにお酒を持って来ないで、って言ったのに。」
「私がどうしたって?」
「崇さん、二日酔いみたいよ。お酒はそんなに慣れてない、って言ってたのに浩司さんがあれもこれも飲ませるから。」
「だけどね、和美さん。崇くんは気持ちいい飲み方をするんだ。こっちも嬉しくて・・・。
あ、本当だ。済まなかったね。」
「い・いえ、俺が自分で気をつけなきゃいけなかったんです。すいませんでした。」
寝起きの、多分情けない顔を和美さんに見られて、つい‘二日酔い’のせいにしてしまう。
範裕さんのお父さんにまで見られてしまったが、本当の事は言えないから、ただ謝るしかない。

あの後、苑田さんが寝ている布団へ手を伸ばしては引っ込める事を何度も繰り返した。範裕さんを傷つけるつもりなんて無かった。それだけでも伝えたかったが、勇気が出ず、とうとう朝になって、見事に寝不足の顔になった。

洗面所で鏡に映った自分の顔に凹む。
(これじゃあ無理ないや。初めて来た家なのに心配されるなんてダメだろ、俺。しっかりしろ)
パン、と両手で頬を叩いて気合を入れ、顔を洗う。冷たい水で気分が少し上向いた。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その30

時間って不思議

ほとんど狂いもなく動いているのに、伸びたり縮んだり。
好きな事をしている時はあっという間で、 「早く過ぎてくれないかな」 と思っていると長くて長くて。
どうしてなんでしょうね?


昔、時間の始まりは’日時計’だったそうです。それから水時計、砂時計、星や月、太陽の動きで計る時計が出来て、ぜんまい式、お香――線香で時間を計る香時計など。

今では電子時計というものがあり、一番狂いが無いそう。


でも、振り回されてるのは時間を作った人間。日々、
「まだ間に合う」、
「急がないと間に合わない」と時計を見てる。

私なんかは、進んでる時計を見て「あ、時間が・・・」 とやることが多い人です。
・・・スマホを持ってからは腕時計しなくなったなあ。。持っているけど。



皆さまは時計、持ってます?


『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー3

智くんのドキドキ、今日はひとつだけじゃないみたいです。



出てっちゃった。しろうさん置いて。どーすんだよ。・・・・・って俺が焦っても仕方な
いんだけど。でも、気になる。かといって機材放り出すわけにもいかないし。
 マンションの出入り口から、人が出てくるのが見えた。背の高い、スーツ姿。きっとし
ょうごさんだ。急ぎ足でどこかへ行くのを気付かれないように公園の明かりの無い所へ移
動して見送った。少し迷ったけど、座りなおしてもう一度マイクをあの部屋に向け直す。

部屋の中は静かだった。しろうさん、てっきり怒鳴ってると思ったのに。あれ?でも、何
か聞こえる。小さな音。ボリュームを上げた。

―・・・・・―――さん・・・・
しろうさんだ。もしかしたら・・・、泣いてる?
―・・・・・

聞いてられなくなってマイクをおろした。胸が痛くなる。

「そうだよなあ。男同士だもんな・・・・。」
これを始めてからそう経っていないけど、男女だけじゃなく、同性同士もあの部屋を使っ
てるのを聞いてびっくりした。でも大体同性同士の方が聞いてて切ない。世の中から見て、
普通じゃないから。俺の回りにだっていない。いたら、ちょっと避けるかも。そういう相
手の頭の中で自分がどんな事されてるか・・、想像したらゾッとする。

「んでも、好きになったら関係なくなるのかなあ。」
自分の声が大きく聞こえて、慌てた。そこへ誰かが近づく足音が。
(まず・・・、しょうごさんか?)
急いで影になってる所へ隠れる。やっぱりそうだった。音を立てているのはコンビニ袋。

買い物行ってたんだ。

(はやくしろうさんのとこ、行ってあげてよ。泣いてるんだから。)
口に出せない分、ぎゅっと拳を握ってしまう。
(しろうさん、怒るだろうな。放って行っちゃったもん)
ちょっぴり期待してまたマイクを向けた。

―紫朗?

あ、始まってる。

―・・・
―どうした?

どうしたって、あなたのせいだよ!こっちで勝手に突っ込んだが、

―・・・・、お帰り・なさい・・・

はい?今、何て?

―・・・・。泣いていたのか?

そ・そーだよ、しろうさん、泣いてたんだよ、しょうごさんいきなり出てっちゃうから。
しろうさん、怒んなよ!

―・・・いいえ
―おまえを置いて行くわけがないだろう?何にもないから仕入れてきただけだ。

コンビニ袋のガサガサ言う音がする。

―・・はい・・・。
―そんな顔を

あ・・・、キスしてる、みたいだ。湿った音が耳に入る。

―ん・・・ふ・ぁ・・・っ、ん・ぅ・・
―紫朗・・・

こ・声が、すっごく甘い。生唾飲み込む。
もうっ、こっちで怒ってたの、馬鹿みたいじゃないか。しかもまだ続いてるし。

―・・・しょうごさ・・・・ん・・・
―・・・・めしよりおまえが先だな

嬉しそうな声で言わないで欲しい。も、勝手に盛り上がってください。でも、聞かせてもらいますからね、だ。

『プリズム』

『プリズム』13*苑田の家族ー10

新井くん、ちゃんと謝ること、出来た?



悩んでいたって歩き出さないと迷子になる。
タオルで水気をごしごし擦り
「よ・・」
よし、といおうとしたら、鏡に、俺の後ろに立っている範裕さんが映っていて、まともに目が合ってしまった。
「のりひろさん・・・・」
「・・、お早う、崇」

不意打ちに、目が離せない。自分の顔より鏡の中の範裕さんの顔ばかり見ていると、
「そんなに見ていると穴が開くからやめろ。・・それより、終わったのか?」
静かに言われ、やっと体が動く。
「は・はい。 お・はようございます。・・・あ、邪魔ですよね、今退きます。」
入れ替わろうとすれば体が触れるほどで、横を向いてる範裕さんは、目が腫れてる、ようだ。
「崇」
「はいっ」
「タオル」
「・・・・あ」
握ったまんまのフェイスタオルを渡そうとして、指先が触れる。
「・・っ」
「・・・・っ、ごめんなさい」
びく、と震えたのが伝わり、謝ると、落ちかけたタオルをもった範裕さんが細い声を出した。
「・・・・たかし」
「は・い」
「昨夜は・・・、俺もおまえも酔っていた。いいな?」
「で、でも」
「酔ってしたことだ。」
「・・・・ごめんなさい。俺、酷いこと言って・・・」
「悪気があったわけじゃないだろ?」
だからいい、と呟かれ、泣きそうになった。

俺は、子供だ。


範裕さんに、気を遣わせて。



謝りきれないうちに朝食が済み、帰る事になってしまった。

俺の事を気遣って、和美さんが、
「日曜はいつもパンなの。ホームベーカリー使うから出来たてで美味しいのよ。」
と、まだ温かいパンを出してくれたり、二日酔いに良いからとフレッシュジュースを作ってくれたりしたのに、それにもちゃんと返事できていなかったように思う。

(後ろ髪引かれるって、こういうことなんだな・・・・)
受け取った資料もだけど、足取りも重い。何よりひろさんとの間に壁ができてしまった気がして。


会社で話をしていても距離を置かれてるのを感じる。前は、顔が近付いても平気だったのに。


☆  ☆  ☆


進藤部長の’いきなり出向‘騒ぎから、半月経った。
やっと仕事も落ち着き、中島主任・・・部長、の呼び名にも慣れた頃、また衝撃的な事が起きた。


「おい新井、ちょっと来い。」
中島部長に呼びつけられ、小さな会議室に連れ込まれる。
「なんです?」
「おまえ、聞いてるか?」
部屋の鍵まで掛けて、俺を問い質す。
「何を・・・ですか?」
「苑田が、辞表を出した。」

じひょう・・・!

「辞表って・・どうして?!」
「俺に(理由が)分かればおまえに聞きゃあしない。おまえには何か話してると思ったんだが、知らなかったとなると・・・・、おい待て!」
「苑田さんに会って聞いてみますっ!」
俺の所為なら、辞めなきゃいけないのは俺の方だ。
探しに行こうとドアに飛び付いた俺の肩を中島部長が掴む。
「今あいつは社内にいない!落ち着け!」
「・・・・居ない?」
「そうだ、外回りに出てる。・・・全く、猪みたいに飛んでくんじゃない。」
制止に振り向く俺に軽くデコピンして、
「まぁ座れ。」
自分も椅子を引いた。

『プリズム』

『プリズム』13*苑田の家族ー11

新井くん、急げ!引きとめないと「好き」って言えない(ええ?)よ-!




辞表は、今朝、部長宛ての郵便物に紛れるようにして机の上にあったそうだ。もちろん一之瀬課長にも提出されてて。さらに田之倉専務へも似たような手紙を出していたらしい。
「俺が、苑田の辞表持って飛んできた二課の一之瀬課長と首を捻っている所へ、田之倉専務から電話が入って、びっくりマーク(!)が五・六本頭の周りで踊ったぞ。しかも本人は最後の挨拶回りよろしく、外回り―――直帰の予定だ。

俺が思いつく理由は、進藤がいきなり異動になった件くらいだが、それにしちゃ間が開きすぎてる。 ヘッドハントにかかった様子も無い。

最近くっ付いてるのはおまえだから、ポロっと何かもらすだろうと踏んだんだ。」
「苑田さんは・・・、変わったこと、なんて・・・・」
「あったんだな?」
歯切れの悪さにピンと来た部長は、
「ここで話せることか?」
と聞いてきた。

俺に思い当たるのは、範裕さんの家に泊まった夜の事だ。けど、全部はちょっと・・。

「・・話せる事だけでいいぞ。他人のプライベートは下手に踏み込めないからな。」
中島部長はそう言って、俺が話しだすのを待つ体勢になる。

「・・・・取引先の資料があるから、欲しかったら来いって言われて、苑田さんの実家に行ったんです。」
「あいつの実家?」
「はい。・・・それで、亡くなった苑田さんの家族の・・・・お母さんとお兄さんの写真を見せてもらって。

俺、の・・苑田さんのお兄さんに’似てる‘って言われて、・・・そんなの嬉しくない、って・・」

始めこそ顔を上げていたけど、段々声が小さくなり、下を向いてしまう。
話が途切れた時、頭の上に大きなため息が。そして多分拳骨で、軽く叩かれる。
「あほう。あいつはな、そんなことが理由で辞めようなんて思ったりしない。そこまでやわじゃないぞ。」
「そうでしょうか・・」
「それにしても、・・っと」
部長の携帯が鳴る。
「新井、ここに居ろ。まだ話がある。」
そう言って中島部長は部屋を出た。


「ほれ、飲め。」
戻ってきた部長が赤い缶をなげてくる。
「わっ・・」
受け取ってプルタブを開け・・、
「うわぁっ!」
シューーッと泡が飛び出してきた!
「大丈夫か新井」
「・・・っじゃないです!あっ」
慌てて缶をそばのテーブルに置いたけど、振った手が当たり、倒してしまう。
「給湯室行って雑巾取って来い。」

会議室の中にコーラの匂いが漂っている。
「当分匂うな」
「部長のせいです。何で振って寄こすんですか?」
鼻をくんくんいわせて俺を見る部長に文句を言うと、
「気分上がったろ?」
「え?」
「このやり方は俺と苑田たちの間でよくやってた。
ついでだから教えてやる。苑田はな、結構境界引くんだ。」
「境界?」
「身内か、よほど親しくならないと素を見せない。俺も長い付き合いだがあいつを下の名前で呼んだ事は無い。
けど、おまえは苑田と名前で呼び合ってる事あるよな?それだけおまえを許してるんだ。」

苑田さんに・・・・、範裕さんに、許されてる?

「・・・・俺、ちゃんと謝ってないんです。範ひ・・そのださんに。『酔ってたから』、そう言う事にしておこう、って言われて・・・・」
「だったら行ってこい。」
「は?」
「は、じゃない。苑田は今専務に呼び出されてしばらく戻って来ない。外回り帰宅コースにしといてやるから、謝り行ってこい。
あんまり上手じゃないウインクをして、部長は笑った。
「苑田もおまえも優秀な戦力なんだから、うだうだしてないで仕事しろ。分かったか?」
「・・はい!」

『プリズム』

『プリズム』13*苑田の家族ー12





すぐにでも出掛けたかったけど、予定を出さないと変に思われる。小野山課長に外回りへ出る事と、少々後ろめたかったけど架空の予定を出して外へ出た。

向かったのは、範裕さんの家だ。

「あら?いらっしゃい、崇さん。」
「こ・こんにち、は、和美さん。あの・・、今日、は」
「まず、入って。コーヒーでも淹れるわ。」
挨拶に、クスッと笑った和美さん。
駅を降りて、途中から走りだしてしまい、着いた時には息が入れていたから、だった。

「浩司さんは出掛けていて私一人なの。それで、今日は何のご用?」
改めて聞かれて詰まった。辞表の話はできない。
「・・・個人的な話?私が聞いていいのかしら」
そう言われて、思い出した。
「あの・・、それじゃあ、聞いてもいいですか?」
「どうぞ」
「この間来た時、和美さん、範裕さんの伯母さんだって聞いたんですけど。」
「ええ。静代は従妹になるわ。彼女が亡くなって心配になって、しばらくの間ここへ通っていたの。
まあ、色々あって、結果、同居中。  あ、でも、再婚したとかじゃないわよ。」
にこっと笑ってコーヒーを飲む。

「・・・・・俺、範裕さんにも、範裕さんのお父さんにも、お兄さん―――隆裕さん―――に似てるって言われて、それで、範裕さんに酷いこと言っちゃったんです。」
しばらくして、ようやく話しだした俺に、和美さんは黙って聞いてくれる。
「謝りたかったんですけど、ちゃんと謝る機会がなくて・・・・」




俺が和美さんに打ちあけている頃、苑田さんは田之倉専務の部屋にいた。



「・・・では、君が辞表を出すことは認めない。」
「ですが専務、ご不快になりませんか?私を見て。」
「過去がどのようであれ、現在、表面上は君との付き合いも進藤くんとの関わりも無い。それに、今君が辞めて、余計な尾ひれがついて社内の噂になっては困るんだ。
分かったら仕事に戻りたまえ。」
「専務・・・。」


☆  ☆  ☆



「ただい・・・」

田之倉専務に釘を刺され、辞表を目の前でシュレッダーにかけられてしまい、複雑な気持ちのまま部屋を出た苑田さん。
仕事にも戻れないで屋上に出た時、和美さんから電話があったそうだ。

『しーっ、静かにね。』
玄関で待っていた和美さんが口に指を当てて、声を出さないように指示する。
『・・・何事?』
『いいから。そうっと上がってこっち来て。』
そして和美さんの後について、仏壇の前で正座して手を合わせている俺を、見た。


『どうして崇が?』
『謝りたい、って来たの。
範裕さん、崇さんになにしたの?』
『何・・って』
『二人の間の事なら邪魔しないから、二人で話してね?でも、もう十分以上もああやってるわ』

浩司さんが帰ってくる前に済ませて。と肩を叩きながら言われ、ため息がでたんだぞ。。なんて、あとで何度も愚痴られた。

『プリズム』

『プリズム』13*苑田の家族ー13

謝ること、出来たみたいです。 そ・し・て。




「・・・・崇、もうやめたらどうだ?」
「え・・?・・範裕・さん?」
呆れながらかけられた声に振り向けば、思い浮かべていた本人が立っている。
「驚くことはないだろ。自分の家に帰ってきたら悪いのか」
「そんな事ありませんっ!・・・・・ありませんけど・・」
心の準備が出来てない。話したい事もまとまってないし、第一・・・、
「す・・すいませんでした!」
「崇?!」
「俺、考えなしにあんなこと言って・・・。」
「あれはいいと言った。それに、そんな所で頭を下げるな。・・・仕事は、どうした?」
「仕事より範裕さんの方が大事です!」
「ばっ・・・、馬鹿、なンて事言ってるんだ!さっさとこっち来い!」
がばっと顔を上げて言った台詞に範裕さんが赤くなって怒鳴った。
「あっ・・、はぃ・・、ち・ちょっと、待って・・・」
足がしびれて立てない。
「・・・ったく、おまえは。」
足を投げ出して揉みだした俺を見おろし、しょうがないな、と俺の横に座って、どうにか我慢できるようになるまで、黙って見ててくれた。

「・・・それで?」
「あ・の」
正座はやめとけ、と言われ、範裕さんと同じ胡坐にして座りなおす。ちょっと背を伸ばして和美さんが見えないのを確認し、
「範裕さんが辞表出したの、俺の所為なんですか?だったら、俺・・」
「おまえの所為じゃない。・・・俺が、自分に区切りをつけたかったんだ。」
辞表、の単語に範裕さんの肩がピクっと跳ねたけど、間違えるな、ときっぱり言われた。
そして、出来なかったけどな・・・・、と呟く。
「・・そ、れじゃ、一緒に居られるんです、か?」
「嬉しいのか?」
不思議そうに聞くから、
「もちろんです!俺だけじゃなくて、母さんはまた呼ん・・、連れて来て、って俺に催促するし、父さんも道具磨いたりして今度来るのはいつだ?なんて言ってくるし。
俺だってゆっくり話せなかった・・」
力説する。ウチは全員ひろさんのファンなんだ。もちろん俺が一番だけど、さ。

「お茶――、入ったわよー。二人ともいらっしゃいー。」
話声が聞こえたのか、和美さんが呼んでる。

「なんだか楽しそうだったわね。もういいの?」
「あ、はい」
「じゃ、あっちね。浩司さん、待ってるわよ?」
「父さん?」
「待ってるって・・、俺たちを、ですか?」
「そうよ。これなら勝てるから、って・・、あ」
「待ちくたびれた。 もういいんだろ?もう一回勝負だ。」
範裕さんのお父さんがひょっこりと顔を出し、俺たちを見て笑う。
「父さん・・・。」
「たまには息抜きも必要だ。なぁ、崇くん?」
「あ、は・・、まあ」
「崇。 俺たちサボってる訳じゃないだよ、父さん。」
「いいじゃないか、七並べくらい。頼むよ。」
「一回くらい付き合ってあげれば?範裕さん。」
「・・・一回だけだからね。」

押し切られた形でトランプを始め、、
「もう分かった。降参だ。」
と範裕さんのお父さんが白旗を上げたのは夜になってからで、俺は、また、泊まる事になって・・・しまった。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その31

今日はまず、’お知らせ’から。

私の住んでいる地域が、14日0時30分~5時30分まで、停電になります。
理由は、 「電灯契約」。・・・それって、何?

推測するに、地区内の電灯を一斉に交換しよう。 と言う事なのか・・? そういえば、電灯がLEDタイプになった場所があったなあ~~。



とまあ、こんな話です。
そのせいか、今日は夕方から意味もなく焦りが入り、バタバタしました。

同時に、ずい分電気に頼って生活してる・・、という事実を実感。 3・4年ほど前に隣の部落で1軒全焼する火事があり、それ以来台所もIH。 火の気は石油ストーブとダンナ様の煙草・ライター。仏壇の蝋燭(ろうそく)くらい。
あとは、非常用(?)の結婚式で使った1mくらいあるピンクのキャンドル・ライト蝋燭。はっはっは~。

も、懐中電灯かスマホの明かりが頼りになる・・5時間余り。。
寝るからいいんですけど、トイレだけ困る(苦笑)。

ただ、コメやリコメは明日のになるので、遅くなります。
・・・自営してる、と以前書いたことがあったと思いますが、そのせいもあって、リコメはすごく不規則で、申し訳なく思っています。




では、あちこちのコンセント、抜いて。    おやすみなさい。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー4

 智くん、聞きながら興奮している様子。
そしてRがつくので、18才未満の方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールして、どうぞ。




























―立てるか?
―・・大丈夫・で・・・
―おっと

ガタタッと、家具がこすれる音がした。

―その格好もそそるな
―誰のせいだと、っ、・・・は・・んっ、

文句が喘ぎ声になる。しょうごさーん、何して・・・。

―こ・ここではっ、やめてくださ・・っぅ
―テーブルの上だと食べ物になった気分か?

テ・テーブルっ?!ど・どんな格好で?

―あ・・んぅ。・・・んぁっ、あぁ・・

う。こっちの方が。どうする、マジでやばい。ト・トイレ・・・。

―だ・・・だめ、です・・

き・聞きたい。でも、限界。機材置いてトイレに急ぐ。走れなくて、早足しかできない。
「う・・・、急がない、と・・・」
自転車で来てるからジーンズ汚して帰れないし、必死になった。ジッパーを下ろすのまで刺激になる。
肩で息をしてくつろげた隙間から指で触ると、下着がもう既に湿っていて盛り上がってた。
「・・っ、はぁっ、う・・」
合わせの部分をかきわけ、自由にしてやると、そこはもう硬く屹立して透明な滴を溢れさせてる。
「あ・あ・・、くぅぅっ・・」
興奮しすぎていたのか、あっという間に達していた。荒い呼吸をしながら手を洗って、後始末した。こんな事になるなんて思ってなかったから、何も持ってなくてしかたなく個室のペーパーを大量に、、使う。
(今度はタオル要るな)

頭の隅にメモ。でもって、急いで引き返した。マイクを向ける。あれ?声が・・・、

―・・・そんなによかったか?

しょうごさんだ。

―落ち着いたろう?
―・・・あなたの・・せいじゃ、ないですか・・・
喘ぎながらしろうさんが答えてる。ちょっと残念。聞きそこなっちゃったみたいだ。
―本番はあっちだ。じっくり聞かせてもらう。
―昌吾さん・・・・
うっわ、声まで紅くなってる。これからどうなるんだろう?俺、保つかな?

―・・・

あれ?聞き取りにくい。部屋の中を移動したんだろうか?
「あ」
水の流れる音。
「うわー、お風呂だ・・」
浴室に入ると音は聞こえない。それにいつまで入っているのか分からない。一回、三十分も待たされて結果電池切れしたことあったんだ。
「・・しょーがないや。帰ろ。」
部屋に戻って来て今日の分をPCに落とす。
普段なら、聞きながら、なんだけどさすがに今回は出来なかった。
「あんな強烈なの、初めて聞いた」
どんな仕事をしてる人たちだったんだろう?

『プリズム』

『プリズム』13*苑田の家族ー14

新井くん、何か聞くことができるんでしょうか?



急だったから、ありあわせよ。そう言った和美さんが出してくれた夕食は、素麺。茗荷(みょうが)、葱の薬味に唐揚げ・茄子の煮びたし・サラダ。

ぜんっぜん‘ありあわせじゃない’と思いながら食べ、また範裕さんと二人、並んで寝る。


「範裕さん。・・・俺、この間実家で母さんの本、読んでて、『好きになっちゃったんだから仕方ないじゃないか』って言葉がすごく残って。」
電気の消えたなか、眠れないまま寝がえりをうち、ひろさんも起きているのが気配で分かって、唐突に話しだす。
「・・・・『仕方ない』、か・・。隆裕は『どうしようもないんだ』。そう、言ったよ。あの人だから、あの人だけでいい、と・・・・」
思い出してるひろさんの声が苦い。
そうだよな。世の中みんな、母さんみたいな考え方しない。
「でも、俺、ちょっとだけ羨ましいと思います。一生その人だけ・・・」
「冗談じゃない!家族はどうなる?たとえ表だって言われなくても、必ず囁かれる。相手の家族だってどう思うか」
「範裕さん・・」
俺の言葉に激しく反発し、空気が動く。ひろさん、起き上がったみたいだ。
見えないのに、視線が強く当たるのを感じる。
「俺はそんな、相手の家庭まで壊すような恋愛は、絶対したくない。
それくらいなら・・・・いっそ独りでいた方がいい。」
言葉の最後が震えている。

「・・・ごめん、ひろさん。。俺、そんなつもりじゃ・・・・」
俺も起き上がって声の方を向き、謝る。
「あ・・、いや・・、俺も、言いすぎた。・・・・・・つぃ」
手で顔を覆ったのか、声がくぐもる。堪らなくなって手探りで近付き、ひろさんの上半身を抱きしめていた。
「崇―――― !」
「俺、・・・おれ、範裕さんを傷つけたり、家庭を壊すなんてしません。ちゃんと守ります。だから、独りがいいなんて、言わないでください。」
「な、何言って・・・。崇、おまえまた酔っぱらって・・・・」
俺の腕の中から逃れようと、ひろさんがもがく。
「酔ってないです。
範裕さん・・、ひろさん、好きだ。お兄さんに似ててもいい。
中島部長に、『苑田が辞表を出した』って聞いた時、頭を殴られた気分でした。

さっき、仏壇の前に座って謝って、聞いてたんです。俺が範裕さんの事、好きになってもいいですか、て。
何の答も無かったけど、ひろさんが声をかけてくれた。

だから決めたんです。隠すのやめよう。何もしないで後悔するより、駄目なら、ちゃんと振られて終わりにしよう・・って。」

本当はこんな風に言うつもりなかった。でも俺も必死で、何か言われたら暴走しそうで、いつの間にか見えていたひろさんの唇が動くのに、口付けていた。

きっと、ひろさんの方が焦っていただろう。自分の家で、俺とこんな事になってるのを見られたら・・・・と。


体で抵抗したのは、少しの間だった。
何度か重ねていたそれはいつも柔らかく、俺を誘うように隙間を開けている。舌で唇をなぞっていたら、ひろさんの舌が開いていた隙間から、つん、と、俺のをつついた。
「・・っ!」
そんな事されるなんておもってなくて、口が離れる。
「ビギナーのくせに大胆だな。」
声を出さずに笑って、俺の胸に顔をうずめた。
「・・・・おまえは、嫌いじゃない。だけど、それ以上は応えられない。


 話してなかったけど、隆裕――――兄さんは、男同士で恋愛をした。
大学に入って始めた家庭教師のバイトで知り合った子供のうちの一人の、父親だった。

止めさせようとして、殴り合い寸前までいった事もある。 でも・・・・。相手と心中するように・・・逝ってしまった。」
範裕さんの体が震えだす。 さらに力を入れて、抱き寄せた。

『プリズム』

『プリズム』13*苑田の家族ー15

苑田の気持ちが明かされます。そして、・・・・R無しでも大丈夫そう、ですか?




範裕さんのお兄さん、隆裕さんの事は、主任たちから聞いていた。それ以上の内容を聞かせてくれたのに驚きはしたけど、それで俺の気持ちがブレる事は無い。
話は続いた。

「就活してた頃、中島さんに誘われて今の会社に入った。進藤とは同期で、初対面で・・・・。
ある時、あいつの親戚の話になって、命日が隆裕と同じ日で、話しているうちに・・・分かって。それから俺は」
「もう、いいです、範裕さ・・」
「聞けよ。
俺は言われるまま体を差し出した。女にも、男にも。償えるとは思わなかったが、進藤の気が済むなら、と。
 ただ、おまえに目をつけたのだけは、許せなかった。話しをしても通じなくて、とうとうあの女の手に渡してしまった・・・・。
後悔してないとは言い切れないが。

でも、俺は人に話せない事をしてきた。それで人並みに誰かを好きになるなんて、出来ないんだ。」


告白し終えたひろさんが、ほう、と息を吐いた。胸の、その場所があったかくなる。俺がひろさんに感じているのと、同じだ。
そばにいるといつもあったかくって、安心できた。俺に進む方向を教えてくれた。

俺はもうひろさんと離れたくないんだ。

「範裕さん・・。じゃあ、俺が好きでいることはいいんですね?」
「・・・話、聞いていたんだろ?どうして俺なんか・・」
「『俺なんか』じゃなくて、範裕さんだから、です。男だから、女だったらなんて思ってません。俺は・・・ひろさんが、欲しい。」

自分の声が欲情している事に気付いた。途端に育ちだす雄を自覚する。
「崇・・・」
途方に暮れたひろさんの声が耳を擽り、あっけなく理性が飛んだ。
「ぁっ・・、た・たか・・」
両肩を掴み押し倒し、もう一度唇を重ねる。組み敷くようにすると、俺の重みでひろさんは動けなくなる。
「たかし・・やめ・・・・」
布越しの鼓動を感じ、その早さに動揺しているのが分かる。きっと俺のドキドキも伝わってるだろう。

服も脱がず行為を始めてしまったのは、気が急いていたからだ。
ひろさんの気持ちがどこにあるのか判らない。本気で拒絶されたら絶対落ち込む。
でも、俺のする事に少しでも反応してくれたら。 声を上げてくれたら。。


「何で泣くんだ、崇」
「・・・範裕さ・・・。うっ、・・俺、やっぱり、ダメなんですか?・・お兄さんの代わり、も・・、っく、出来な・・すか・・?
ヤだったら、言って、ください・・、嫌だ・・・って・・・」
「おまえなあ・・・」
ただ撫で回すしか出来ない俺に声もあげず、されるままだったひろさん。何の反応も無く、どうすればいいのか思いつかずとうとう半泣きで口説きだしたのへ、ぽんと頭を叩かれる。
「とにかくちょっとどけ。おまえは重い。」
「あっ」
慌てて、抱きついていた腕を解きひろさんの横にずり落ちる。大きく息を吐き出し、そのまま何度か深呼吸して俺の方を向いて、
「崇、ひとの話はちゃんと聞け。
俺はおまえを隆裕の代わりにしようなんて思った事は無い。確かに仕草を見て驚くことはあるが、それだけだ。 それにおまえの方が・・・・」
ちょっと口ごもったけど、
「おまえは元気で、見ていて気持ちがいい。」
手を伸ばして俺の頬に触れ、撫でてくれる。
「・・・りひろさ・・」
「おまえの気持は、わかった。だが、すぐに答えは出せない。・・・それでもいいか?」
優しい声で言われ、一気に舞い上がった。
「は・・!」
すぐ口を塞がれる。
「大声出すな。父さんたちが驚く。」
「・・・はぃ」
ひろさん、ククッと笑って、
「そのしょげた顔、二度めだ。」
鼻をつまんだ。
「話は終わりだ。寝るぞ。・・おやすみ」
「・・おやすみなさい・・」
宣言されて自分の布団に戻ったけど、治まってない場所が一ヵ所。
(しょうがないよな・・・ココは)
出すか、自然に大人しくなるまで、待つしかない。

(範裕さんにゼロじゃない、って言ってもらっただけでも万歳なんだから)
目を閉じ、ゆっくり息をしながら宥めていると、ひろさんの起きる気配がした。

『プリズム』

『プリズム』13*苑田の家族ー16

あらまあ、の展開に。それとも、’お約束’?  Rが付くので(R16?)年齢に達しないかた、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。




















(トイレかな・・・)
ぼうっとしていたら、柔らかくなりはじめていたモノを、掛け物越しに、撫で、られ・・・、
「・・ぅ・・!」
わあ!の叫びになる前に、
「静かにしてろ」
範裕さんの声が。
『のっ・・ひろさん、な・に・・・?』
『何って、出した方がいいだろ?動くなよ。』
さっき、ひろさんの上に圧し掛かっていた時硬くしてたの、気付かれてたんだ。

で、でも、そんなこと言われたって。

俺の焦りをよそに、ひろさんはさっさと俺の足の間に膝を入れて開かせ、そこに陣取ってしまう。手が強弱に力を加えて刺激するから、せっかく寝かけたのがたちまちMAXになる、
『だ・・だめだ・・。やめて、範裕さん・・っ、そ・・・な、刺激した、ら、・・っう、んぅっ』
『いいから。目、つぶってろ』
横着して、タオルケットを半分に折って掛けていた足の方からひろさんの手が入って来る。腿を撫であげ下着に潜って直に触られ、全身が跳ねた。
『範裕さっ・・ん、はっ』
『すごいな・・・』
クス、と笑った後の呟きに顔が熱くなる。そんなこと言われなくたって自分の状態がどんなだかは感覚で分かる。
『自由にしてやるから』
え? と思う間もなく手が離れ、タオルケットを押し上げ、新しい下着がぐい、と引っぱられる。
『ひろさ・ん、・・・・ッ』
空間を与えられた俺の屹立が勢いよく反りかえり、思わず唇を噛んだ。のに、すぐ腰が浮く。
ひろさんの指が絡んで、上下したんだ。
『ぅあ・・っ、ひ・・ろさんっ』
口を片手で押さえたけど、止まることのないぬりに粘り気のある水音が聞こえ、その音を立てているのが範裕さんだと思うと、余計興奮してしまう。

滑らかな動きになった手が、扱いたり、鈴口をくりくりと撫でこすったりする。
『ぁ・・っつ、ひろ、さ・・っ。も・・、だめ、だ。放し・・・』
寸前までいかされて、パンパンになった雄をひろさんの手からどけようと声を出せば、ふわりと何かが被せられ、それが引き金になって、、爆発していた。
「ンッ・・!・・んん・・っ―――」
シーツを鷲掴みして足を突っ張る。自分でシた時とは全然違う弾け方に、目の裏で花火が上がった。

はあはあと荒い息をしながら余韻を追っていると、ひろさんの手がタオルのようなものと一緒に俺の柔らかくなった雄を拭っていく。そして下着とタオルケットが元に戻され、ポン、と軽く叩かれたあと、ひろさんは立ち上がり、部屋を出ていった。
(あ・・。)
そ、か。我慢できなくて、手の中にしちゃったんだ・・・。

タオルっぽいものをかけられたから、下着も汚さなかったけど、後始末をひろさんがしてるのがこそばゆく、恥ずかしい。
(お礼、言った方がいいよな?でも、なんて言えばいいんだ?)
‘ありがとうございました’?‘お世話かけました’・・?
「じゃないよな・・・」
考えあぐね、戻って来ないひろさんを待ってるうちに、寝落ちしてしまった。


翌朝は、すっきり目覚める。


「あ、お早うございます、和美さん。」
「おはよう、崇さん。・・今日はいい顔してるわ。ねえ、浩司さん。」
「はは、そうだな。やっぱりビールだけにしといたからか。・・・範裕は?」
「・・・起きたよ。お早う、父さん。」
「おや?珍しいね。」
「あらほんと。ずい分早いのね。」
「崇の寝起きがいいから。」
和美さん達の会話に、疑問がわく。
「あの・・、ひ、範裕さんて、朝、苦手なんですか?」
「ああ。早起きの時は目覚ましが3個いるんだよ、範裕は。」
「言わなくてもいいじゃないか父さん。」
口を尖らせるようにするひろさん。

へえ・・。

具だくさんの味噌汁とハムエッグほうれん草のおひたしの朝食を食べて会社へ。
「ひろ・・、苑田さんが朝に弱いなんて、知らなかったな。」
「会社で言うなよ。」
「はい」
じろっと見られた。
でも、また一緒に出勤できるのは、嬉しい。まして、範裕さんの知らない一面を知ることが出来たんだ。足取りも軽くなる。

それから、苑田さんは俺に壁のようなものを作らなくなった。

『プリズム』

『プリズム』14*廣済堂の丸林くん

仕事中、思わぬことが。





「う~~ん・・・、参ったなあ。」
外回りの昼食時、丼物屋でゲリラ豪雨に降りこめられた。あと三社は回らないといけないのに。かと言って、出るとなると・・・。
「・・っわー、参ったー」
見やった店の出入り口の引き戸を勢いよく開け、雨の叩きつける音とともにびしょ濡れの男性が入って来る。水が滴る紙をかき上げながら、
「ひでぇなあ。せっかくおろしたばっかりのスーツが台無し。あ、すいませーん、タオルカ何か・・・」
「ほら、使いなよ。」
戸の開いた音に顔を出した店主がその男性を見たとたん奥に引っ込んだと思うと、急いで出して来たらしいタオルを何本か差し出す。その中の一本がおちそうになって、慌てて掴んだ。
「はい、これも。」
まず、顔と頭を拭きはじめた男性が俺の顔を見て、
「ありがとうございます。・・・・あ、れ?新井さん、ですか?名賀都商事の。」
「・・そうですが」
見覚えは無いけど正しい問いかけだったので、答える。 誰だろう?
「いやー、奇遇だなあ。こんな所で会えるなんて。あ、もしかしてこれからウチにくるとこだったとか?」
破顔して、笑いながら言う相手に戸惑いながら聞いた。
「あの、・・失礼ですが、どちら様ですか?」
「・・そっか、俺、一回しか会ってないし、覚えてないですよね?・・っと、待ってくださいよ・・・。
俺、丸林 直斗(まるばやし なおと)って言います。 『さいこう堂』の。」
取りあえず、といったかたちでタオルを肩にかけ、内ポケットの名刺入れから濡れて柔らかくなっている名刺を、破らないように出してくると、ニヤリと笑う。

さいこ・・・・廣済堂!

「思い出してくれました?俺、あの時研修中でお茶汲みさせられてたんです。」
赤くなる俺に、丸林、さんは、説明した。


「当てずっぽうだったけど、本当に来る予定だったんですか?」
「うん。と言うか、時間が読めなくなったから微妙なんだ。」
予定はしてたけど、この雨で。
うんうんと頷く丸林くんは俺と一つしか違わない年で、カラッとした性格らしい。
「えー、来てくださいよ。絶対注文あるんですから。」
昼がまだだったと、親子丼をかきこみながら言う。
「何で?」
「知らないんですか?あれ以来、課長も、話を聞いた部長も新井さんの事気に入って、来るの楽しみにしてるんですよ。
だから、妙に忙しくなったりして。」
忙しい?
「そ。曰く、『名賀都商事が来る前に、あそこの在庫、減らしておけ』。・・・くくっ」
ポカンとした俺の顔を見て、笑いだす。
「いいなあ、その顔。
あきらかな営業スマイルってしないですよね、新井さん。それもいい、って言うんです。上の人たち。逆に俺はノリが軽いってしょっちゅう小言言われますけど。」
「そんな事ないと思う。確かに話しやすいけど」
食べるのを止め、小首を傾げる丸山くん。
「だって、食べてる時は喋らないだろ?箸を俺の方向けたりしないし。」
指摘するといきなり真顔になった。
「・・新井さん・・・。」
「それに、俺のドジ話だってさらっとながしてくれただろう?そんな風に気の遣い方出来るのってすごい事だと思う。」

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その32

あぶない場所。


私にとってそれは、『本屋さんだけ』だと思っていました。行くまでは。
第2のアブナイ場所は・・・、100均ショップ。

ご存知の方も多いと思いますが、あそこってワンダーランドですよね?スーパー並みに物がある。値段もお手頃。色もカラフル。もー目移りして目移りして。。
フラッと入って、お財布に1000円札でもあろうものなら店内をぐーるぐる。

「あ、これ買っておこうかな?確かもうなくなる(と、その時は思う)。」
「へえ、こんなのあるんだ。試しに買ってみよう(でも、買って満足し、そのうち忘れる)。」

全部が全部ではないですが。。


良いものだってあります! ’当たり’だったのはミニまな板。ネギとか、匂いの強い物、魚をさばく時、台所以外で包丁を使う時――たとえばコタツでリンゴを剥くとか――、にすごく便利。
他には、ボタン電池。ファイルケース、洗濯バサミ8個付きの物干し。←これ、ズボンを干すのに大活躍してます。
食べ物だって、種類が多くて。

さすがに押し入れに入れるほどの大きさの衣装ケースはないけど、やろうと思えば一人暮らしの道具、全部揃う。

お店によって若干種類が違ってたり、100円以上の品物があったり。でもそれはそれ。
楽しかったから、いいや。



・・・・よくありません。
時計見て、血の気が引いて、ダッシュでご飯の支度しに帰りますっ!! ごめんねー、チンのオカズと残り物アレンジ料理で。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー5

  智くん、現実が呼んでます。  そして。




急に着信音がしてビクッとする。この音は、
「優奈ちゃんだ。」

::もしもし」
::・・あの、ごめんなさい、遅くに」
::いいってそんなの。声が聞けてうれしい。」
時計に目をやれば二十二時半を回ってる。
::どうかした?」
::・・・、明日、競技会があって・・・」
::え?そうなの?だったらもう寝ないと」
::・・・・うん。」
::ゆうな、ちゃん?」
声が震えてるみたいで名前を呼ぶと、
::あの、能見さん・・。言ってもらって、いいですか?」
::言う、って、何?」
::・・・頑張れ、って・・・」

あ!

::うん。
  頑張れ、優奈ちゃん。俺は遠くて応援に行けないけど、ここから、応援する
  から。頑張れ。」
:: ありがとう!能見さん。
  おやすみなさい。」
::おやすみ。」

電話を切ったあと、少しだけ後ろめたかった。着信履歴が一時間おきくらいにあったから。
「ごめんね優奈ちゃん。あそこ行く時は持っていかないからさ・・」
OFFにしたスマホに謝りながら、
今度はその事・・・話しておいた方がいいかな?  と、ぼんやり思った。








さて、ちょっと休憩を。そろそろ年末年始。 番外編的に、智くんが聞いていた二人に登場してもらいます。
希望があった昌吾と紫朗のあの部屋のこと、を、それぞれの視線で。





――  事の始まりは、昌吾さんの一言だった。

「紫朗、明後日の晩、空いてたな?」
「え?はい。昌吾さんが何も入れるなと言っていたので空けてあります。」
社長室で聞かれ、答える。
何を言っているのだろう?随分前から言っていたからスケジュールを調整してあったのに。
「俺じゃない。おまえだ。」
「私、ですか?」
首を傾げる。確かに自分は社長でもある昌吾と行動を共にすることが多いが、今回はある
場所の下見・・、とだけ言われたので送迎だけすればいいだろうと用件をひとつ入れてい
たのだ。








『プリズム』

『プリズム』14*廣済堂の丸林くんー2





俺の言葉をじっと聞いていた丸林くん。
「・・・そうかあ。そんな風に見てくれるから受け入れてもらえるんですね。
うちの部長、厳しいんです。俺なんか評価、低くって。」
「・・それって、期待してるからじゃないのか?丸林くんなら出来るだろうって。」

今度はビックリ顔になる。
「・・・、新井さん、すっげーポジティブ。でも、そう言われると、そうかも、って思っちゃいますよ?」
「思っとけば?
あ、雨、止んだみたいだ。じゃ、俺行くし。」
「ちょ・・、待ってください、俺もう終るし、一緒に・・・っぐ」
最後の一口をかきこみ、噎せるのが気の毒で、待つことにした。


「色々、ありがとうございました。」
「いいって。それより良かったな、服、借りられて。」
待っている間、あまりにもひどい濡れ方だったので、店主に相談してみた。

結果オーライ。
サイズが合わないのは諦めて、お礼を言って服を借り、会社に事情を連絡。半休と直帰をもらって帰る事にした丸林くん。
用件が済んでいて社へ戻る途中だったのも幸いだったよう。
「重要な書類とか持ってないんで、帰るのも気が楽です。」
そう言って笑う。聞けば途中までは同じ道なので、彼に断り、予定していた取引先へ電話を入れ事情を説明する。どこも多少の被害はあったらしく、「この雨じゃ、しょうがないね」と言ってもらえ、ホッとする。

明日、早々に行って謝らないと。

そして。

「・・・でですね、あのテープなんですけど・・新井さん?」
「丸林ッ、危ないっ!」
さっきの豪雨で路上に大きな水たまりが出来ている。そこを通りかかった車が水しぶきを上げ、それをまともに被った対向車がハンドル操作を誤り、こっちに直進してくる。
ブレーキ音と、通りがかりの人たちの悲鳴。体に受ける衝撃。
丸林くんの濡れた服が入った手提げが宙を舞い、なぜかそれが目に焼き付いていた。




救急治療室で処置してもらい、手術室のそばの部屋で待っていると、ばたばた走ってくる音が近付いてきた、

「たかし!!」
「苑田さ・・わっ!」
駆け込んできた苑田さんが、俺の名前を呼んで抱きつく。
「のり・・・、苑田さん・・・」
会社や、仕事の時は絶対下の名前を呼ばない範裕さんが、俺の名前を叫ぶように呼んで、肩を震わせながらしがみついていた。
「崇・・・・よかった。・・連絡受けて、救急車で運ばれて手術中だ、会えないかもしれない、って・・・・」
「大丈夫だよ、範裕さん。俺は、捻挫だけ。」
耳元で聞こえる涙声に、そう答えて抱き返す。
「ん・・。心臓・・・・止まるかと、思った・・・。よ、かった・・・・、無事で」
「・・・うん。・・手術してるのは、一緒にいた、丸林くんなんだ。」
「・・・・まるばやし?」
「そう。廣済堂の社員。偶然会って。・・・あのゲリラ豪雨で同じ店にいて、一緒に歩いてたんだ。彼の方が重傷でさ・・・・・」
それを聞いて、やっと体を起こす範裕さん。
「まだ・・手術室なのか?」
「もうそろそろ終わるんじゃないかと思うんだけど・・・あ」
廊下を、ぱたぱたと複数の足音が近づいてくる。そして、
「あの!丸林直斗(まるばやしなおと)の家族ですが!・・・直斗は・・」
「大丈夫ですよお母さん。手術も無事終わりました。」
と、冷静に答えているのは、おそらく手術室から出てきた看護士さんの声だろう。
「あの・・」
「骨折だけですみましたから。・・今は麻酔で眠っています。」
「そう、ですか・・・。よかった・・・・」
「よかったね、お母さん。」

「無事に終わったみたいだ。・・・良かった。」
「そうだな・・。」

『プリズム』

『プリズム』14*廣済堂の丸林くんー2

新井くん、苑田に抱きつかれて、鼻の下が伸びていたかも(笑)。



まだ何か話している丸林くんの家族の声が近付いてくる。それに気づいた範裕さんが慌てて立ち上がった。

「では、こちらでお待ちください。・・ああ、あの方が一緒にいた・・・」
「あ、新井です。・・あの、丸林くんは・・・」
「大丈夫ですよ。単純骨折でしたから。手術も無事、終わりました。」
俺の質問に答えてくれた看護士さんが笑顔でそう言ってそれじゃあ、と部屋を出る。

「・・直斗の母です。新井さん、この度は息子がご迷惑を・・」
「いえそんな」
「姉の江利です。」
「新井です。」
「・・苑田です。新井と同じ名賀都商事の者です。」

お互いの自己紹介の後、丸林くんが目を覚ますまで待って、少し話をして帰る事にする。

「・・まあ、あの子はそんなご迷惑までおかけして?」
「い、いえ、迷惑だなんて」
「直斗は甘えるの上手いから、新井さんは気がついていないのよ、お母さん。」
手術は無事成功。足の骨折のみでほかに異常は無いと分かり、全員がホッとし、和んだなかで俺と丸山くんの遭遇に話が及ぶ。
そうかなあ、と丸林くんのお姉さんの話を聞きながら首を傾げていると、意識が戻ったと連絡が来た。


「新井さん・・、すいませんでした、俺のせいで」
「いいって。気にするなよ。それに俺の方が軽傷だったんだ。丸林くんの方が大変だろ?」
「いえ、それは・・」
「そうよ直斗、こっちはびっくりしたんだから。あんまり脅かさないでよね、式場の予約済んでるのよ。」
「悪かったって。俺だってまさか雨上がりにこうなるなんておもってなかったしさ。」

「失礼します。こちらに丸林・・・」
「あ、ここです梨田さん。」
集中治療室で、何だかのんびりした感じの姉弟の会話が続く。と、丸林くんの名前を呼ぶ声。それに答えて手を上げた苑田さんを見つけてやって来たのは、廣済堂の丸林くんの上司、梨田課長だ。
「課長?!」
首を曲げてそっちを見た丸林くんが驚く。
「課長・・、一体、どうして・・・・」
「どうして、じゃない。お礼はこちらの名賀都商事の方に言うんだな。就業時間外に連絡が来たら色々面倒になる所だったんだ。」
言いながらこっちを見たので、頭を下げる。
「梨田課長、そう言わなくても。こちらもたまたま新井が一緒だっただけですし。」
「いいえ、苑田さん、助かりました。・・・それにまたお世話になって。」


また?
苑田さん、廣済堂でも何かしてたのか?

『プリズム』

『プリズム』14*廣済堂の丸林くんー3

さて、新井くん、苑田と帰ります。どこまで一緒かな?



旧知の中、と言えそうな雰囲気の会話を聞いていた俺と丸林くん。
「それじゃ、失礼します。た・・新井、歩けるか?」
「はい」
梨田課長も一緒に帰るのかと、ちら、と窺うと、
「私はもう少し。新井さん、丸林がお世話かけました。お礼はまた改めて。」
会釈される。

「あれ?の・・、苑田さん、どこ行くんですか?出口はあっち・・・」
「まずは着替えを買う。その格好じゃ目立つ。」
言われて見回せば、なるほど、派手に泥汚れが付いている。

病院の売店で見繕い、外を歩ける姿になって社へ戻ると、小野山課長と中島部長が待っていた。

「お、戻ったな。・・・・災難だったが帰って来られる程度でよかった。廣済堂の方は?」
「はい、丸林くんが骨折で、でも、他に異常は無かったそうです。」
「ゲリラ豪雨の後だったって?気をつけないとね。」
「心配掛けて済みませんでした、小野山課長、中島部長。」
「まあ、書類やなにかは明日にして今日は帰れ。・・・苑田、いいか?」
「ええ、転ばないように送っていきます。」
「そんな。苑田さんだって仕事があるのに。俺、一人でも大丈夫です。」
歩きかけ、ついうっかり捻挫した方の足に体重をかけてしまい、呻く。
「ほれ、無理するな。」
「苑田さん、お願いします。二課の方には私から話しておきますので。」
「ありがとうございます、小野山課長。」



いつもよりゆっくり歩く帰り道は、色んなものが見える。
(あ、こんなとこに公園があるんだ)
(この家・・、犬がいる・・・)

「崇」
「はい?」
「子供みたいだな。・・そんなにきょろきょろ見て回って」
くすっと笑う苑田さんに赤くなってしまうけど、しょうがない。
「普段急いで通るだけなんで、こんな風にゆっくり見てないんですよ。」
「そうか?」

途中、スーパーに寄って買い物をして、部屋に着いた時には夜になっていた。
「ありがとうございました。あとはもう一人で出来ますから・・・範裕さん?」
勝手知ったる、の足取りで風呂場へ行って湯を落としはじめるのへ声をかけると、
「捻挫した足、痛むだろうから一晩くらい居てやる。一応そのつもりで来たから、余計な心配はしないこと。 おまえはとにかく休め。

そう言えばご両親には連絡したのか?」
「え・・?まだです。  交通事故で捻挫だけって、なんか恥ずかしくて」
「馬鹿。後から聞かされる方がよっぽど恥ずかしいんだぞ、ご両親が。それとも今俺が電話するか?」
「ま、待ってくださいよ。それ、俺が恥ずかしいです。」
「じゃあ、しろ。」


― もしもし」
― どうしたの?崇」
― あの・・、ちょっと、足怪我してさ。捻挫なんだけど」
― それくらいなら大丈夫でしょう?・・それ以外何かあったの?」
― えー・・と、交通事故で・・」
― 事故?誰か巻き添えにしたの?」
― そうじゃなくって・・・・あ」

― もしもし、苑田です」
― まあ、範裕さん?」
― 崇は事故に巻き込まれた方です。ゲリラ豪雨でハンドル操作を誤った車にぶつけられて。幸い足の捻挫で済みました。今夜は私が一緒にいますから。」
― それなら安心できます。よろしくお願いしますね。・・・またこちらへも
  いらしてください。」
― ありがとうございます。詳しくは本人にもう一度聞いてください。
では、おやすみなさい。」
― はい、おやすみなさい」

・・俺抜きで、話が終わっちゃった。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その33

来週は、2014年!
早いですね―。今日を入れてもあと5日で2013年が終わってしまう・・・。


え~、(コホン)今年は私にとって特別な時間があった1年でした。  そう、まさかの’書き手’になってしまったのです!
思っても見なかったですよーー、こんな事は(複雑)。


このブログ村を知ったのは、もう2年くらい前でした。
それまでは、18禁の電子書籍屋さんでマンガや小説を立ち読み、とか、サンプルを見る、とか。 それも結構面白いんですけどね(腐腐)。
でも、ここに1歩踏み込んだら・・。日常が変わりました。


気に入った方のサイト(ブログ?)を渡り歩き、所々でコメントを入れ、更新される時間にはウキウキとPCの前に座り。
私自身、色々書くことは好きなので、とある方には、「その登場人物、こんなサイドストーリイがあったら面白いですよね」
なんて勝手に作った小噺を送ってみたり。
お話に触発されて、自分でも書いてみたり。

楽しかったんです。それだけで。・・・・・それが、ひょいっと・・。
つくづく、「私って、’あなたなら大丈夫’的なおだてにすぐ乗る人だー・・。ははは。。」 です。


今でも、PC内の写真をブログに乗せることとか、他の方のブログや外のURLへジャンプさせる方法が分からず、゜ヘルプ’へ行ってやり方見ながら、「えー、何で?出来てないし!」

PCの前で唸っています。リアルに、相談できる人はいるんですが、ブログを公開して教えてもらう事は出来ず。
いつかは何とかなるだろう、と、現実逃避。

いや、来年は頑張ろう。



さて、わたくし事を長々並べて来ましたが、みなさまは10大・5大ニュースありましたか?

っと、年末年始は、1/1(火)~1/6(日)までお休みさせていただこうと思っています。 やはりお正月は手強い。
天気予報も雪マークが並んでます。 気合を入れて乗りきって、また、来ます。



では、よいお年をお迎えください。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー6

昌吾さんと紫朗さん。どんな人たちなんでしょう?


「何か用事があるのか?」
「ええ、まあ。」
「断れ。」
「昌吾さん・・・」
ついため息が出そうになる。
「どうせ大した用事じゃないんだろ?」
「・・緊急ではありませんが、後回しにすると面倒なんです。」
「俺も手伝うから付き合え。」
「社長。」
「二人きりの時は肩書きで呼ぶな。言ってあるはずだぞ。」
「ですが・・・あっ」
眉間にしわを寄せ、文句を言った昌吾が、いきなり紫朗の腰を抱き顎を捉え、唇を重ねる。
抗議しようとしていた紫朗の、半ば開いていた口は易々と昌吾の舌の進入を許し、すぐに口腔内を占領された。
「ん・・、んぅっ。は・・っぁ、う」
ぐるりと周回し、熟知した場所をことさら舐め回す。逃げる紫朗の舌を絡め取り、吸い上げる。
「・・ぁ、ふ・・、め、です・・しょう」
角度を変えようと僅かに離れたすき間に言えば。言葉を飲み込ませるかのように唇が密着し、唾液を送り込まれる。
飲み込みきれない分が、つ、と顎へ伝って、昌吾の指を濡らした。

かくん、と紫朗の膝が抜け、唐突に唇が離れる。
「・・付き合え。いいな。」
抱き支えたままの昌吾が近い距離の紫朗と目を合わせてもう一度言う。
下の唇を親指でなぞられ、その感触にぞくりと背中を震わせて、観念したように、
「・・わかりました。」
昌吾の望む返事をすると、にっこり笑顔になって、
「よし。」
ぎゅっと抱きしめる。紫朗の顔がほんのり赤くなった。




昌吾さん――辻口社長、は、小さいながら腕のいい職人を抱えている町工場の社長だ。
多少気の荒い者もいるが、年齢に関係なく辻口を慕ってくれ、子供のように思っていたりする。
紫朗もそうだった。そしてそれ以上に・・・恋していた。


(俺が、同性しか愛せない人間だと気付いたのは、高校に入ってから。・・あの頃はそんな自分が認められなくて、荒れたっけ。)
誰かを本気で好きになれば、女性と付き合える―――。
そう思って、来る者拒まず、手当たり次第に付き合った。幸か不幸か人並み以上の容姿に熱をあげる女子は多く、いつの間にか‘たらしの長坂’などと呼ばれるようになって。
それがある日、
「おまえが、長坂 紫朗か?」
声をかけられ、出会ったのが昌吾さんだった。

「おまえがこの間振った佳苗って子、覚えてるか?」
強い視線に押され、頷くと、昌吾さんはつかつか近付いて来て、いきなり頬を平手打ちされた。
「いい加減にしろ!佳苗はもうちょっとで手首切るとこだったんだ!」

聞かされた内容より、平手打ちより、昌吾さんの目に声が出せなかった。そして、その時から昌吾さんに魅かれ・・、今に至っている。

『プリズム』

『プリズム』14*廣済堂の丸林くん-4

どんなお泊りになるんでしょう?新井くん、ちゃんと一人で出来るかな?



俺と話すより楽しそうだった母さん。 
 ちょっと・・、納得いかなかったんだけど。

一休みして、あっためたコンビニ弁当を食べ、
「ひろさん・・・、シャワーくらいなら、大丈夫?」
「うー・・ん・・」
「さっとだけ。汗を流すくらい。」
何だか頭がざらざらする感じだし。 そう訴えたら、‘シャワーだけなら’と、渋々同意してくれた。

浴室に入るとドアを閉める前にひろさんがTシャツと短パンで入って来る。木の丸椅子を据え、
「今日は洗ってやる。ここへ座れ。」
「座れ・・・って・・」

捻挫した足首はレジ袋を二重にしてカバーし、口をタオルで巻いて水気が入らないようにしている。
風呂用の椅子だって、いつも使っているのは小さくて足に負担がかかるから、と範裕さんに言われ、木の丸椅子も買ってきた。
だから大丈夫だと思っていたのに。

「平気ですって、範裕さん。ちゃんと座ってするし」
「おまえがいつ転ぶかと外で心配するよりこうした方がよっぽど安心できるんだ。黙って言う通りにしろ。」
「・・・・はーい」
諦めよう。それになんだかしてもらうのって、嬉しい。

「いいか?流すぞ。」
「はい、いいよ。」
前は自分で洗ったけど、背中と頭は範裕さんがしてくれる。
他人にしてもらうのは、どうしてこんなに気持ちいいんだろう。それが好きな人ならなおさらだ。
シャワーがかけられ、目を閉じてなかばうっとりと範裕さんの指の感触を追いかけているうち、いつの間にか・・・。

「崇、それ、どうするんだ?」
範裕さんのちょっと呆れた声に、ハッと我に返り・・、焦った。

置き場所に困って、いつの間にか触っていた足の間で、シッカリ育った肉棒。
「あ・は。。洗って、大人しくさせま・・・」
顔を赤くしてぼそぼそ言うと、範裕さんは吹き出した。
「っくははっ、おまえ、元気良すぎ。しょうがないなあ。」
「・・って、範裕さん、シャワー、かけないで」
急いで両手で防御する。マジで刺激が強いんだ。
「分かったわかった。少しの間がまんしろよ。」

範裕さん、なんか、テンション妙に高くないですか?

陽気に笑うのに気を取られていたら、
「だけどこっちは我慢できそうにないから・・・・」


えっ?あ・・っ。
「の・りひろ、さんっ。」
フックに掛け、体の前にかかるシャワー。背後からは範裕さんがピッタリくっつき、左肩に顎を乗せ、右手を前に回し、
「洗いついでだ、ココもしてやる。」
ほら、手、どけろ。   と言われたが。
「い・いいですっ、・・・範裕さ・・」
「なんで?初めてじゃないし抵抗しなくてもいいじゃないか。」
「で・もっ」
「・・・やらせろ、な?たかし」
耳に息を吹き込むように囁かれ、か――ッと全身の血が熱くなった。
「ふぁ・・っ、あ、」
体の力が緩み、すかさず範裕さんの手が滑り込んで、つい、と握る。
それだけでグンと育つ雄に、ふふ、と笑う。
「そんなに喜ぶな。」

違います!・・・・違うと思う、けど。

「ぁ・・あ、はあっ・・、っく」
「そろそろか?・・今日はずい分早いみたいだな。」
笑いを含んだ声に言い返したいけど、視線がどうしてもそこへ行ってしまって、目に入る光景に煽られる。

『プリズム』

『プリズム』14*廣済堂の丸林くん-5

お風呂で湯あたり(?)しそうな崇くん。
そして、今日はしっかりRになります。年齢に達してない方、苦手な方はご遠慮ください。 大丈夫な方は、スクロールしてどうぞ。























範裕さんの指が俺の雄に絡みつき、リズミカルに上下する。かと思えば、ゆるく括れを締めたり、すでに濡れて透明な液を吐きつづけている先端をぬらぬらと擦ったりする。
さらに根元まで滑った指が、その下の双つの嚢をやんわり揉みこむ。
シャワーがなければ』音が聞こえているだろう場所は、もうわずかしか耐えられそうにない。それに気付いていないのか、
「こっちも、してあげないと」
「・・ぅああっ」
手の平が胸を、立ち上がりはじめた突起を撫であげ、ビリッと感電したような痺れが走る。
「やっ・・、ひろ・さ・・・んぁ・・ぅっ」
もう限界だからと首を横に振ったが、
「のぼせる前に出して、楽になれ」
悪魔の囁きをする範裕さんに、
「・・ひ・ろさっ、範裕さん・・ッ」
ぶるっと胴震いし、欲望を解放していた。



「ほら、シャツ。・・・崇?」
「あ、うん、何でも」
服を持つ手をじっと見てしまう。
(だって、範裕さん。その手で、さっきまで俺の・・・)

リアルに思い出し体全体が微熱を帯びてくる。
「崇?熱でも出たのか?」
「い・いえ。熱はないです。・・も、もう寝ないと仕事が・・」
「そう言えるなら大丈夫だろうが、無理はするな。見舞いにも行くんだろう?」
「・・・はい」
そうだよ、忘れるところだった。丸林くんの方が大変なんだ。

あれもこれも範裕さんにしてもらって、ベッドに入る。
まだ熱い時期でよかった。俺に遠慮して、範裕さんは押し入れから色々出して寝支度をしている。これが冬なら、寒くて寝られない。

眠りが深くなった頃だと思う。魘(うな)されていた。

**あの時一緒にいたのは丸林くんなのに、範裕さんと話しながら歩いている。
水たまりが、目に入る。
(だめだ、逃げないと)
上から見ているもう一人の俺が叫ぶのに、話しながら歩いている俺は気付かない。
水しぶきが上がって、車が。
範裕さんめがけて突っ込んでくる。**

「・・・かし、崇、しっかりしろ!」
「・・あ・・?の・りひろさ・・ん・・」

「いやな夢でも見たのか?魘されて・・」
汗かいてる。とタオルで額の汗を拭ってくれる。掛け時計の小さな明かりにぼんやり白く見える手を、握った。
範裕さんは、黙って俺を見る。

「卑怯だ、って言っていいです。でも・・、俺」
もう片方の腕を伸ばし引き寄せ。

俺に引かれるまま体を倒す範裕さんに唇を押しあてる。少し乾いているそれを舌でそっとなぞると、間から舌先が触れてきて。今度は逃げずに絡ませると誘うように唇が開いた。
口の中へ差し入れ、ゆっくり動かす。 上顎の裏あたりで、
「・・ん、ふっ・・・、ぁ」
鼻に抜ける甘い声が聞こえて、火がついた。
夢中になって口腔内を掻き回し舌を絡ませて吸い上げ、溢れた唾液が口の端から伝う。
はあ、と息がこぼれ、範裕さんが口を離した。
「おまえが、交通事故なんかに遭うから・・・。
もう心配させるな。俺は・・・・」

目元を染めて言うと、触れるだけのキスを唇に、頬に。そして、耳たぶをはくりと甘噛みする。
ぞくん、と走り抜けるものがあった。

動けなくなった俺の、パジャマ代わりのシャツを捲りあげながら範裕さんの手が滑る。
それだけで感じてしまうおれのそこここが尖りだす。
「あ・・っ、はっぁ、・・・・んあ、ぁっ、の・・りひろ、さ」
下がっていく頭部からふわりといつもの匂いがする。
「んんっ」
ざら、と舌が胸を舐め、刺激に膨らんだ粒を押しつぶした。
猫が舐めるように何度も舐め転がされ、もう片方が疼いている。知らずにこっちもと体をひねると、その動きで移動した先の胸の粒が範裕さんの舌に突かれて喜んで立ち上がる。残された方も指で弄られ硬さを増す
「・・くぅ・・・っ、ひろさ・・ぁ・・」
シャツを着たままの背中に手を伸ばしてしがみつけば、
「たかし・・・」
甘い声で俺の名前を呼んでくれる。 ぞくぞくした。

(範裕・・・ひろさん・・。もっと、欲しい・・・)

プロフィール

ますみ

Author:ますみ
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