FC2ブログ

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*不思議な二人ー10

番外編?の昌吾さんと紫朗さん。今日でようやく終わります。 で、もちろんR18なので、年齢に達しない方、苦手な方はどうぞご遠慮ください。大丈夫!と言う方のみスクロールして、どうぞ。




























「ビールでいいか?」
「・・ください」
二度の放出で息が切れている。基から体力のある恋人は俺を支えてもよろける事さえなく、腰にタオルを巻いたまま缶のプルタブを開け一気に炭酸を流し込む。
ベッドに腰を下ろし、ゆっくりアルコールを含み飲む俺とずい分な差に、つい苦笑が漏れた。
「余裕だな、紫朗」
「・・そんなんじゃありませ・・・」
押し倒され、見あげる昌吾さんの顔に、さっきの言葉を思い出す。両腕を首に絡めて引き寄せ口付けて、
「ここなら、どれだけ声をあげてもいいんでしょう?」
誘う。

「ああ。俺が満足するまで聞かせろ。」
喉を鳴らしたあと獰猛な笑いを見せて言い、まるで貪るように愛撫を始めた。

「あ・・、ぁ・あっ。あぅ・・っ、んっ、しょ・・ご・・。昌吾さ・・、んはぁっ」
寝室の中は俺の声で溢れている。
シャワーを浴びたのが無駄になるほど汗ばみ、体が熱い。

「はぅっ・・、ん・・ぁ、・・・ご、さ・・、しょ」
力が抜けてシーツに落ちた手をもう一度伸ばし、名前を呼ぶ。
「ん」
気付いてくれて、倒した背中へしがみつく。
「あ・あぁ・・っ、しょ・・ご、さっ、・・・もぅ・・」
「もっと、か?・・今日、は・・、欲ばりだ・・・っ」
「違・・ぁ、ふっ。や・・、ひっ」
サオを握られ、鈴口からこぼれ続ける蜜を塗りこめるように指が押し擦る。悲鳴じみた声をあげ背中を撓らすと、
「く・・、紫朗、そんなに・・、締めるなっ」」
昌吾さんの動きが止まる。
けれどすぐ、律動が俺を揺さぶり、
「ぁあ・あっ。昌吾・・、しょ・ご、さ・・っ、も・・、く・・、ィく・・・」
「いい・・ぞ。い・け・・っ」
最後の追い込み、と腰を打ちつける音が立つ。
声にならない声に口を開け、昌吾さんの背中に爪を食いこませながら達し、昌吾さんもグンと嵩を増して、白い熱で俺の内側を濡らしていった。


スポンサーサイト



『プリズム』

『プリズム』14*廣済堂の丸林くん-21

廣済堂には色々な人材がいそうです。高輪さんは、どんな人?




「あ、俺です。初めまして、新井さん。しばらくの間ですがよろしくお願いします。」
俺の問いかけに応えてそばに来たのはスマートな印象の男性。
すっと名刺を出され、俺も慌てて名刺を出した。
「あらい たかしさん、ですよね?」
「はい、そうです。高輪さんは、たかなわ・・・公哉(きみや)、さん?」
「惜しい。‘ともや’って呼びます。ま、覚えてもらうにはいいんですけど。」
「そうですね。 お習字の時は大変だったんじゃないですか?」
「はは、まあ、そうです。
今日、在庫チェック、どうしますか?」
「うーん・・・、じゃ、確認だけ。」
「わかりました。」

そつの無い対応で早々にチェックも終わり、社に戻る。忘れないうちにと高輪くんの名刺を出して、鉛筆で名前を書き入れた。ホルダーに差し込み、PCにも打ち込みながら、
「何でも出来そうな人だったなあ・・・」
感想が漏れた。あの人ならそうむじゃなくてもよさそうな気がする。営業でも経理でも、ひょっとして人事でもこなしそうな雰囲気があった。
「丸林くんだと想像つかないけど。」
うん、彼は経理で数字と睨めっこしてるより、筆記具の方が似合う。

俺も、営業にいるのが一番だって言われたい。


二・三日後、廣済堂へ補充品を納入した帰り、病院へ寄った。

「え・・・・。高輪が?」
「うん。丸林くん、知ってるのか?」
「知ってるどころか。同期なんです。・・そうか。あいつが俺の代わり・・・・」
黙りこんだ丸林くん。
「・・ごめん。話さない方が良かった?」
「え?あ・・、いえ、そんな事は。・・・・ただ、あいつ、出来るんです。おれよりずっと。  それだけです。」
『それだけ』じゃない顔して言う。確かに俺もそう思った。

「でも、代理だって事だから。・・それで、抜糸っていつ?」
「えーと、・・・確かカレンダーに印つけて・・っ、痛た」
「ああ、無理しなくていいよ。」
体を動かしたら傷が痛んだんだろう。代わりにサイドテーブル(床頭台)の上にある卓上カレンダーを取って見てみる。
「んー、一週間くらいあとだね。」
「ええ。そっからリハビリです。・・何か毎日が長くって」
ただ寝てるだけ、と言うのがこたえるらしい。
「うん。それはしょうがない。ちゃんと治さないと後が大変だし。」
「それ・・・、苑田さんも言ってました。」
丸林くんの口から苑田さんの名前が出て、イラッとする。
「いいなあ、新井さんは。俺もあんな先輩いたらもっと仕事楽しくなるのに」
「そうかな?厳しいよ、苑田さん・・・」
つい視線を泳がせた俺は、枕元にある一冊の本を見つけてハッとした。
「それ・・・」
「はあ?・・ああ、これ、苑田さんがくれたんです。ほかにも」
そう言って取り出すのはすでに何回も読んでいるのが分かる本ばかり。
「どこから読んでもいいし、飽きないから、って。」

そんなに楽しそうに言うな。
当然だろう、みんな範裕さんが自分の本棚から選んだものばかりなんだ。

「良かったな、退屈しのぎがあって。」
「ほんとです。あ、そうだ新井さん、また苑田さんと来てください。お礼、言いたいんです。」
ズキッと胸に何かが刺さった。
「・・新井さん?」
「・・そのうちに、ね。じゃ、俺」
「はい。ありがとうございました。」


病院を出て、大きく息を吐いた。
丸林くんが範裕さんを自分の先輩・のように思い始めているのが気に入らない。だけど、
『俺の範裕さんなんだから手を出すな』
なんて言えないから。

「丸林くんがお礼言いたい、って言ってた事、範裕さんに伝えないと・・・」
気が重いな。。


『プリズム』

『プリズム』14*廣済堂の丸林くん-22

新井くん、落ち込み路線です。苑田の方は違う見方をしてるのに。





ずるずると一日延ばしにしていたら、明日あたりが丸林くんの抜糸の日だって気付いた。
やっぱり行ってあげた方がいいんだろう。
ため息ついて範裕さんにメールした、

::範裕さん、丸林くんが本のお礼を言いたい、って言ってました。抜糸もそろそろだそうです。今日か明日、都合、どうですか?
::了解。明日は少し忙しい。明後日なら大丈夫。
::じゃあ明後日。お願いします。

携帯を閉じてから、
「あ、高輪くんのことも聞けばよかったかな?」
と思い出す。まあいいや、会ってからでも聞こう。


◇  ◇  ◇       


「あ・・、苑田さん、来てくれたんですか?」
嬉しそうに笑う丸林くんに、苑田さんも、
「新井からも聞いたよ。抜糸、済んだんだって?」
「はい。明日シャワー浴びて、それからリハビリです。・・・早く復帰しないと。」
「急ぎすぎは良くない。筋肉がガタ落ちのはずだから急に負荷をかけると余計長引くよ。担当の先生や理学療法士さんたちのの言う事を聞いて、腰を据えてかかった方が早いんだ。
それにお姉さんの結婚式もあるんだろう?」
備え付けの椅子に座りながら答えている。
「あ・・・・」
失念していたらしい丸林くんが狼狽えた声を出した。
どうもお姉さんには勝てないらしい。

「そうですよね・・。姐さん、しつこいからきっと一生言われる。」
その悲観した口調に、ぷっと吹き出してしまう。
「新井さん、笑わないでくださいよー。」
「悪いわるい。でもそれなら高輪くんのことは気にしないでちゃんと治した方がいいよ。」
軽く言ったつもりだったけど、丸林くんがきゅっと唇を噛んだ。
「高輪くん・・・って?」
俺の焦った顔と丸林くんの顔を見比べ、苑田さんが聞き返す。
「あー、丸林くんの代理で、今総務にいるんです。」
「そしてあいつは、俺よりずっと出来がいい・・・同期なんです。」
悔しさの中に諦めを滲ませて、丸林くんは俺の後に続けた。

「崇、おまえはどう思った?高輪くんのこと」
いきなり苑田さんに聞かれて、
「えー・・と、何でも出来そうだなあ、って。」
「何でも?」
「うん。経理とか営業とか。・・ひょっしたら人事みたいなとこでも」
「実際、やってきてますよ、あいつ。」
俺たちの会話に丸林くんが混じる。
「じゃあ、君は?」
「俺・・・ですか?
無理ですよ。’軽い‘って言われますけど不器用なんで、経理なんて行かされたらノイローゼになっちゃいます。」
ふられて、自嘲するように言う。
「だったらいいじゃないか。」
「はい?」
「自分が総務に向いている、と思ってるんだろう?だったらそこで頑張ればいい。梨田課長だって判ってるよ、きっと。」
「・・・苑田さん」
俺には一度も言ってくれない科白を丸林くんはいとも簡単に手に入れ、顔がぱっと明るくなる。
「ありがとうございます。なんかやる気出てきました。また来て、色々教えてください。」
「その前に君が退院してるよ。どちらにしても焦らずにやることだ。」
浮上した丸林くんに笑いながら言って、苑田さんは席を立った。


「まっすぐで分かりやすいな、丸林くんも。」
「・・・ですね。」
「崇?」
つい尖りがちになる俺を、苑田さんは不思議そうに見る。
そうだよな。俺が勝手に嫉妬してるんだ。けど、苛々するのを押さえられない。

本文

『プリズム』15*湯島さんと香川さん

新井くん、拗ねてしまいました。でも、仕事に引き摺ったら駄目よ。  ほら、大変なことが。




「どこかで食べていこう。何がいい?」
「・・ひろさんの所がいい。」
「俺の?」
「だめ?」
「構わないが・・」
困惑する表情を向けられなにか。。
「じゃあ、いいです。俺、帰りますから」
「たかし?」
どうかしたのか?と腕を取るひろさんの手を振り払ってしまった。
「あ・・」
俺の拒絶に驚きと傷ついた表情を見せ、かたまるひろさん。

「帰る」

これ以上一緒にいたら喧嘩になってしまいそうで、目を逸らし、歩き出す。だから、
「崇・・」
俺の背中を見ながら、泣きそうな声で名前を呼んでくれたこと、気付かなかった。



部屋に帰ってベッドの上に鞄と上着、ついでに自分も投げ出す。
「なんだよひろさん。丸林くんにばっかり・・。俺は本の一冊だってもらった事ないのに
励ましたりとか。・・・俺には」
携帯の着信音が鳴る。あの音は、ひろさんだ。

九回鳴って、止む。

それからあと、、鳴らなかった。


翌朝、着替えもせずいつの間にか眠っていたせいで皺がついたスーツを急いで脱ぎ、シャワーを浴びて出勤する。

「いっけな。携帯忘れた。」
ひろさんにメールするか悩んで出しておいたのをポケットに入れ忘れた。
仕方ない。遅刻する。


「・・・はい、おります。新井くん、電話。」
「あ、すいません。・・もしもし」
― やっとつかまえられた。浦島商事の湯島です。」
― ああ、いつもお世話になっています。どうか?」
― 携帯に連絡入れたんだけど出なかったから。急に要るものができたの。今日、寄ってもらえるとうれしいんだけど。」
― 分かりました。時間、未定になりますけど・・、午後イチか夕方になら。」
― それでいいわ。お願いします。」
― はい。」

「どうした?ポカでもしたのか?」
聞いたのは電話を取り次いでくれた同僚の岩志田だ。
「そうじゃないけど。携帯忘れてさ。」
「ならいいけど。浦島商事って時間にうるさいだろ?」
「うん、気をつける。サンキュ」

いつも通り外回りして、社内の倉庫でのチェックがもたついて・・、
「うわっ!忘れてた!」
机に戻ってPCの付箋を見て思い出した浦島商事への連絡。
「やば。もう十九時」
急いで電話を入れる。
「誰か居てくれるといいけど・・」

― はい、浦島商事です。」
― 済みませんっ、遅くなって。名賀都商事の新井です。」
― ・・・・・」
― すいませんでした!・・・あの」
向こうでため息をつかれ、焦る。
― あの、本当に済みませんでした・・・。」
― もういいわよ、新井くん。」

うわぁ、湯島課長さんだ。

― 個人的な用事だったし、時間も遅いから難しいでしょう?次はわすれないで
  ね。」
― ですけど」
― 思い出してかけてきただけでも良しとするわ。待ちぼうけするかな、って思
  ってたし。」
― あの、せめて用件だけでも」
― ・・以前話していた’名刺‘のこと。ちょっと・・、名前が変わるから、それ用
  に作ってもらえたらな、って。」

そんな大事なこと?

『プリズム』

『プリズム』15*湯島さんと香川さんー2

さあ、踏ん張れるか?




― い、今から行きます」
― それは無理ね。私、退社するから。待ち合せがあるの。」
― あ・・で、でも、何か出来れば」
湯島課長、クスクスッと笑って、
― それじゃあ。来週、結婚するの。名字変わるからその名前で名刺作って欲しかったのよ。」
― 結婚・・て、あの時話していた婚約者の人とですか?」
― そう。」
ちょっと恥ずかしそうな声が返ってくる。
― おめでとうございます。じゃあ、そのための名刺?」
― ええ。」
― いつまでに要るんですか?」
― できれば明後日くらい。携帯ならメルアド知ってるし、って思ってたから。」
― 携帯・・。すいません。今日置いて出て来てしまったので」
― 後で着歴見たら、びっくりするかもね。」

社から頼んだ名刺はもうちょっと日にちがかかるから、無理を承知で掛けたのだと言われ、体が縮んだ。

― あ・・、ごめんなさい、携帯が鳴ってる。」
― すいません、俺」
― いいのよ。それじゃ。」
電話が切れ、脱力してしまった。


湯島課長さん、俺に大事なこと頼んでくれようとしてたのに。
「せめて明日朝イチに見本届けられたら、喜んでくれるかな・・」

PCを立ち上げ、個人用名刺のフォルダを開く。ここには元やさんの時に色々試作したデータがある。
「被る事はないと思うけど・・。お祝いごとだからきれいなもので、と・・」

何とか納得のいく見本が出来たのは二十一時過ぎで、また印刷所へ走って行って頭を下げた。

「今度はおまえさんのミスだって?」
印刷所の紺谷さんが機械を動かしながら声をかけてくる。
「はい。・・携帯忘れて連絡がうまくいかなくて。すいません何回も無理言って。」
「まあ、面と向かって頭下げられるあ断りにくいし、あんたはよくやってるからな。」
「へ?・・・そうですか?」
「ははっ、ここにいたって噂は聞こえてくるもんさ。それに、そうやって自分から来て頼んでるだろ?
ほかの連中はめったに来ない。来るとしたら苑田さんとか絹里さんとか、数えるくらいさ。
 おっ・・、出来たみたいだ。」
「あのっ」
「うん?」
「苑田さんも、来たことあるんですか?」
「ああ。あの人は用事じゃなくてもちょくちょく顔を出して話ししていくんだ。」
いい人だよ、と紺谷さんの顔が綻ぶ。

そうなんだ・・・・。

「ありがとうございました。」
「おう。頑張れよ。」

よかった、間に合いそうだ。
名刺を入れたケースを撫でながら思った。


部屋に帰って一番に携帯を確認する。
不在着信・七件。メール・六件。
「うわー、来てる。」
帰りがけに買ってきたハンバーガーを齧りながら呟く。会社関係がほとんどだけど、
「ひろさん・・・」
湯島さんのメールと交互に二件、範裕さんのメールがある。
口の中の塊りをお茶で飲みくだし、開けた。
最初のは、
::崇、どうしてる?」

次のは、
::今、焼き鳥屋にいる。待ってるから。」
すぐ時計を見る。
「二十三時十七分・・・。だめだ、今からじゃ間に合わない。」
電話しないと。

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その38


たまに、ファンタジーを。


私が最初に出会った想像上の動物は、’竜’でした。

雨を降らせる神さま、でしたっけ。
東洋では基本『善きもの』なんですねー。翼も無く雲に乗って(もしくは掴んで)空を悠然と飛んでいく。

西洋の龍と対面したのは、課題図書(あ、懐かしい響き)。エルマーと竜・・と言う本でした。
表紙や挿し絵を見た時は「何、これ?!」でしたよ。おなかは出てるし翼はあるし、縞しま模様で!

向こうでは竜ってワルモノだったのでした。   あ、エルマー・・のシリーズは違ってましたよ、はい。

でも、冒険は必ずついていて。楽しく読んだことを思い出します。




社会人になってから’剣と魔法’・・いわゆるファンタジーがブームになっていろんな物語で龍が出てきました。
まるで人間のように種々雑多。

イラストやCGなどのなかで衝撃だったのは、ねばーendingストーリーの中に出てくるドラゴンさん。
「ファルコン」と言うお名前だったけど~~。
予告編で初めて見た時。 「無理ーーッ!」っと内心叫んでました。 チャウチャウみたいな顔で、体毛が風に靡いてる??

見慣れて、渋々受け入れた後は、こんなのもアリか・・・。


そうそう、日本では’辰の子太郎’とか、田沢湖の’辰子伝説’とかありますが、欧米では見かけないようですね。

考え方が違うから・・・かな?



『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごと

想像しか出来ない大学の学園祭。。知ったかぶりたくさんでお送りします(大汗)。どうぞ温かく見守ってください~~。



十月に入ると文化祭に向けて学内がざわめきはじめる。まあ、俺たちの学部は地味だから
内海たちのいる学部なんかと合同でひろく’環境‘をテーマにしたブースを作る事になった。

「おい、これは?」
「あ、そのパネルに貼って。」
準備に追われていた俺に内海が例の格好でやってきた。
「これ、本当にやるのか?智。」
「ああ。面白いだろ?」
「・・けどなあ」
「あら内海くん、それなの?・・・っ、似合う」
「ちぇっ、笑いながら言うなよ、久賀原。」
同じ学部の、数少ない女子の久賀原 貴美が内海を見て目を見張り、笑いをこらえながら感想を言う。

「明日が楽しみ。」


文化祭当日。
午後からが当番だった俺は早めに出て大学の最寄り駅で待ち合わせた。

「智。」
「あ、和叔父さん。」
「呼んでくれるなんて思わなかったよ。」
「だって、アイディアの半分は和叔父さんじゃないか。」
学校へ向かいながらそんな話をする。

「でさ、内海がまた似合うんだ。」
「そう?」
「うん。女子にも誉められてた。」
「それは楽しみだね。」


賑やかな学内をひやかしたりしながら俺たちのブースに。

「いらっしゃい。」
入ってすぐ内海を見た和叔父さんが、立ち止まってしまった。



『プリズム』

『プリズム』15*湯島さんと香川さんー3

どうやら間に合った新井くん。諦めずやる、という大事なことが少しは身についたかしら。





― はい」
― もしもしひろさん?」
― 崇?・・・どうした?」
― どうした、って・・、メール見て。ごめん、今帰って来て部屋にいるんだ。」
― ああ、それじゃあ来なくていいよ。店も閉まるし、俺も、もう帰るから。」
― ごめん。今日携帯忘れて。」
― 連絡ついたんだし、いいから。じゃ。」

切られてしまった。

「ひろさん?」


翌日、出社してすぐ浦野商事へ連絡を入れ、湯島課長の携帯に見本のデータを送って、
::ありがとう新井さん。予算や枚数このくらいで。こんなに素敵な名刺になるなんて思わなかった。頼んでよかったわ。でも、無理  しないでくださいね。」
と返信をもらう。
「よしっ」
机の下でガッツポーズし、また印刷所へ行って紺谷さんに頼んだ。



「の・・苑田さんっ!」
「新井?」
昨夜の引っかかりのもうひとつ、範裕さんを捕まえられたのは昼休みの後、エレベータの前だった。
「ど・・、どこ行くの?」
「どこって、外回り。」
避けられているのかと思ったけど、違うようでホッとする。
「俺も行くからちょっと待ってて。話したい事あるし。」
「・・今か?」
「うん。」
返事も待たず机に戻り鞄を掴んだ。

「おととい、すみませんでした。」
運よく二人きりになった箱の中で、すぐ謝る。
「一昨日?」
「俺、苑田さんに変なことしちゃって。」
腕を振り払った事を言えば、
「変な、って・・。ああ、あの事か。気にしてないから。」
どこか淋しげに笑う。
「・・すいません・・・」
続けようとするけど、ドアが開いてしまう。湯島課長さんの事とかも話したかったのに、
「じゃ、おまえも頑張れよ。」
仕事モードになって歩き出す苑田さんにそれ以上言えなくなる。
「・・・いってらっしゃい」
少し遅れて歩き出し、外へ出る。と、黒塗りの車が俺たちの前にスーッと止まった。左ハンドルだ。

「あ」
苑田さんが声をあげる。

「よう」
ウインドウが下がって声をかけたのは、
「香川さん・・。和服ですか?珍しいですね。」
「ああ、ちょっと集まりがあってな。・・・・」
「何か?」
考える素振りの香川に問いかける苑田。
「・・時間、あるか?」
「ええ、まあ」
車に乗れと合図して苑田の後ろに目をやる。ふっと笑って、
「久しぶりだな、坊・・、新井。元気そうだ。」
「・・・はい。香川さんも。」
「(苑田を)借りるぞ。」

俺が何と言えばいいのか迷ってる間に苑田さんは車に乗り込んでしまって、
まるで攫うように車は走り去った。

『プリズム』

『プリズム』15*湯島さんと香川さん-4

気になって仕方ないけど、まずは仕事が先、の新井くん。一方苑田は――。



 外回りの仕事は、気合を入れてなんとか終わらせる。湯島課長のように迷惑をかける訳にはいかないから。けど気持ちは、香川さんと苑田さんが乗った車を追いかけていた。

どこへ行ったのか。
いつ帰ってくるのか。
そして、なぜ今日来たのか。

そこまで考えて、馬鹿馬鹿しくなった。
「今日来たのは偶然じゃないか。苑田さんだって驚いてたし。余計なこと考えないで聞けばいいんだ。」

社に戻って、それとなく苑田さんの机を見たが、まだ戻った様子はない。
(遅くなるのかな・・・・)



「相変わらず仲がいいな。」
とあるホテルの最上階にあるスイートルームの窓辺で香川が言う。
「・・そうですね」
その前に座り、香り高い紅茶を飲みながら苑田が答える。
香川は紅茶を好み、資格も持っている。自身で専門店へも行き、ブレンドまでするらしい。
今口にしているのも手作りだ。

「これには甘いものが合う。」
テーブルの上には確かにスイ―ツが取りどりに並んでいた。チョコを一粒口に投げ入れ、
「眉が寄ってるぞ。」
手を伸ばして苑田の顔をあげさせる。
「口に入れてやろうか.?」
「・・冗談はやめてください。」
溶けかけたチョコを歯で挟んで見せられ、苦笑してクッキーを摘まんだ。

空気が緩んで、互いのカップに二杯目の紅茶を注いだあと、
「・・進藤に会った。」
香川がごく自然に話しだす。
苑田の、紅茶を飲もうとした手が止まった。
「京都で、高松に連れられて挨拶回りをしている途中だ。女と一緒だった。」
「おんな・・。西園寺 佳奈子、ですね。」
「ああ。」


佳奈子に抱き付かれ、必死で逃げようとしていた進藤の姿が脳裏に甦る。


「それなりに、幸せそうだったぞ。」
息を詰めて続きを待っていた苑田は、香川の声に全身の力が抜けるのを感じた。
「幸せそう・・・でしたか。」
複雑な思いの中、それでも不幸ではなくて良かったと口の中で呟き、琥珀の液体とともに飲み込む。


「話はもう一つある。
俺の事だ。

前々から誘われていた高松と、組むことにした。で、これからはおまえの頼み事に気軽に返事が出来なくなる。これは伝えておかないと、と思ったのさ。」
苑田の動揺が収まったのを見て取り、本題を切りだす香川。
「香川さん?」
「しばらくデートは出来ない。俺としちゃあ淋しい限りだが新入りになるわけだし仕方ない。まあ、おまえにはあの坊やもいる。心配しなくて・・・、どうした?」
「な・・何でもありません。・・・・っあ!」
まるで別れのようなことを仄めかす言いようと新井の事を出され、不意打ちにカップを取り落としてしまう。
「すみませ・・・」
慌てて床に転がったカップを拾おうとして、香川にその手を握られた。
「・・香川さん・・・、離して、ください。」
「坊やと何かあったのか?」
ビク、と躰を竦ませた苑田。ふるふるっと頭を振って否定しようとする。けれど、
「話してみろ。」
静かな声で重ねて聞かれ、目を瞑った。

『プリズム』

『プリズム』15*湯島さんと香川さん-5

後半、とても緩いですがRになります(R15くらい)。年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮くださいね。大丈夫な方、少し下がってどうぞ。














「崇に、見合いの話があるんです。」
カップを戻し、椅子に座りなおしながら話しだす。声がどこか投げやりで虚ろだ、
「見合い?」
傍に立ち、見つめてくる香川の視線に横を向いて、
「ええ。・・考えてみれば当然ですよね。崇だって、もういつでも結婚してもおかしくない。現に年の近い親戚に彼女がいたり、結婚して子供がいたり、」
「苑田」
「崇のお母さんだって、見合い写真を何枚も広げて楽しそうに話していて」
「苑田。」
「俺にまで勧めてくれたんです。好い女性(ひと)がいるから、と・・・」
衣擦れの音がし、苑田の目の前に着物の袂が翳される。
香川が背後に回り、髪を撫でていた。

不意に暗くなった目の前に話し続けられなくなり、言葉に詰まった喉が震える。
「――・・・」
感情の抑えが出来ず、くっと小さな声が漏れ、両手で顔を覆うとすぐ嗚咽に変わった。
「坊やはおまえにぞっこんだろう?」
優しく言い聞かせる声が頭上から落ちてきたが、苑田は首を横に振る。
「俺に・・、そんな資格はない。崇に『好きだ』と言われても答えを出せないんです。それなのに」
「おまえが逃げても坊やは諦めないぞ?」


「言えるわけ、ないじゃないですか!
隆裕の時のように、崇の家が壊れたら、俺は自分を許せない。

そばにいたい、なんて。俺を見て欲しいなんて、そんなこと・・・・」


本好きの母親とDIYが趣味の父親。二人とも崇を慈(いつく)しみ、愛している。
あの家族の輪の中に入れただけでも幸せな気持ちになった。それをどうして破壊できるだろう。。

自分の気持ちを吐露したことにも気付かず、苑田はまた首を横に振った。


「では、俺と来るか?」
意外すぎる提案に、え、と苑田の顔が上がる。
「高松のいる世界は今までのおまえには全く縁の無い世界だ。新しくやりなおすのに、行き詰って逃げ出すのに、都合のいい場所だ。」
くい、と顎を持ち上げ、真上を向かせると袂から出したハンカチで濡れた頬を拭い、苑田の顔を見おろしふわりと笑う香川。
「おまえ一人くらい、養ってやれる。」
ん?と小首を傾げて問うのへ心が揺れる。
「香川さん・・」
逃げ出したいのはやまやまだ。
「でも・・・」
顎の下の手が離れ腋の下に差し込まれる。二の腕を引き上げ立ち上がったのを、抱きしめられた。

温かな抱き方に気持ちが伝わってくる。
体を委ね、唇が重なるのも拒まなかった。


「おまえがして欲しいと言うなら、過去を忘れるほど抱いてやる。」
耳元で囁かれ、熱い息がかかり、涙がこぼれそうになる。

(崇から離れてしまえば、こんな想いも忘れられるのか?)
(香川さんは、俺を・・・・)

「範裕。」
名前を呼ばれ、気付けばベッドで仰向けになり香川を見上げていた。
「いいか?」
もう一度合わせられた唇から舌が伸び、苑田のそれを撫でていく。快感が走った。
「ん・・・、ふっ・・ぁ」
優しく繰り返し、そっと開かされて香川を受け入れる。舌が絡み、思わずこぼれた自分の声の甘さに頬が染まる。
「・・・そそられるな。本気で手に入れたくなる。」
ネクタイを緩め、引き抜きながら香川の声に欲情が滲んだ。
「俺なんか・・・っ」
間に脚が押しつけられる。そのままゆっくり擦られ、眠っていた雄が兆しはじめた。

「かがわさ・・、っあ、・・・んぅ」
「まだ序の口だぞ?」
悪戯っぽく囁くと耳朶を甘噛みする香川。どうずれば相手が昇りつめ、達かせられるのか熟知した動きが苑田を徐々に乱れさせていく。

『プリズム』

『プリズム』15*湯島さんと香川さん-6

昨日の続きになります。・・つまりRが前半にあるので、年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮くださいね。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。
























ワイシャツの釦が上から外され、少し無骨な指が滑っていく。
「ぁ・・」
繊細なタッチでポイントが探り当てられ、唇が痕を追い、、
「・・・んァッ・・!」
ちりっと痛みが肌を噛む。
崇も同じ場所に痕をつけた、と思い出した途端。
「・・・・ぅわっ」
香川の、苑田より一回り大きな体が突き飛ばされ、ベッドに尻もちをついていた。

「・・・っ、くっ、・・くははは・・・っ」
呆気にとられる苑田をよそに、突き飛ばされた香川が乱れた髪や着物を直しながら笑う。

「それがおまえの本音。
いい加減自分に正直になれ。我が儘になって坊やを捕まえろ。
子供は出来ないが一生幸せにしてやる。二人で幸せになろう。・・そう、開きなおれ。」
「かがわさん・・、俺は」
「誰かを好きになれる、りっぱな人間さ。
そうそういないぞ、一生、本気で好きになれる相手は。」


ほら、服、なおせ。
カラッと言われ、訳が分からない顔でベッドに放られたネクタイを取り、釦をかけなおす苑田。

「締めはコーヒーにするか。」
先にベッドをおりながら呟き、香川は苑田に背を向けた。


「香川さん、・・聞いて、いいですか?」
「答えられるものにしろ?」
「香川さんには、いたんですか? 本気で、好きになった人・・・」
「・・・ああ」
苑田を見返す目に優しさと懐かしさが入り混じる。
「今はもう会えないが、死ぬまで一人でいても立っていられるものをもらった。
再会できた時に少しでも胸を張れるよう生きていくつもりでいる。」
言葉を切ってコーヒーを飲む。

キリマンジャロは酸味とコクが特徴で、特にタンザニアAAは逸品だと、これも香川が苑田に教えたものだ。

そのキリマンを味わいながら、香川の想いの深さが羨ましい・・、と素直に思う苑田。
「俺も、なれるでしょうか ―――。」
「なれる。相手があの坊やなら。」
断言され、目が丸くなる。その表情へニヤッと笑いかけ、
「あいつなら大丈夫さ。まだ仔犬だが、じき大人になっておまえを押し倒すのが上手くなる、と見てるよ。」
からかうように投げると、苑田が目を伏せ赤くなる。
「ふうん。・・そいつは経験済みか。」
「ばっ・・・・、からかわないでください。」
否定しても、気付かれてしまっただろう。喉の奥で笑われ、
「あの坊やがねぇ。。」
と感想をもらされた。

続けて何か言おうとした香川の懐で音がする。着信音だ。
「高松か」
音で分かるのだろう。苑田に目配せして取り出した。

― どうした。」
― 今どこだ。悪ィが来てくれないか。・・・・・・お偉いさんが、お前に会いたいって来てるんだ。
― 俺に?」
― ああ。最低必要限だけ回ったはずなんだが、ちょい、断れなくてな・・・」
― ・・解った。どこへ行けばいい?俺はホテルにいる。」
ホテルの名前を告げると、
― そこなら近い。拾っていくから下りていてくれ。」
― 了解。」

スマホを戻す香川。
「どうやらお開きだ。」
「はい。」



雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その39

  目・・って大事。

ブログ村に来るようになって、たくさんの方のブログを見るようになり、目が疲れるようになりました。



現在、近視用の眼鏡をかけています。 そもそもは小学生の時TVを近くで見ていたことが原因。慣れるまでは眼鏡をかけたまま顔を洗ったりお風呂に入ったり。湯気や空気の温度の違いで曇る、走れば眼鏡が動いて視界が微妙にブレる。・・、とあまりいい事がありませんでした。

もちろん今も眼鏡さんと仲良し。
うっかり壊してしまったこと、何度もあります。昔はフレームもガラスだったので重くて耳が痛くなったりしたこともありましたねー。


いつ頃からか眼鏡がファッションになり、服を着替えるような感覚でたくさん眼鏡を持つような時代が来て。
個性的な眼鏡が出回りました。

そして眼鏡にはもうひとつ、アイテムという役割が。
思い出すのはモノクル、という片目に嵌めこむようにして使われていた眼鏡。アルセーヌ・ルパンとかかけていたものですね。18世紀末には見られることを意識して、たくさんの変わった眼鏡も作られたそう。

今は花粉予防のため、とか、PCからの振る―ライト予防のため、とか、医学的な予防にも使われるように。


目に良いのは自然と碧。
分かってますけど、情報の8割くらいを目に頼る’人’は目を休めることができにくくって。

サプリやアイマスクをよく使ってます。
アフリカや、山の少ない地域の方は視力がすごーくいいとか。 うらやましい。





リレー小説

リレー小説を体験しました。

こんばんは。
今回は初めての体験をお知らせします。   この際なので’バレンタインプレゼント’と副題を付けて。

リンクもさせてもらっているブログ、’BL すいっち’のひかるさんからお誘いがあって、「リレー小説」と言うものへ参加しました。
面白かったですー。
だれが、どこまで進むのか。受け取ったバトンをどう渡すのか。ポーカーゲームのようでした!

ひかるさん、参加させてくれてありがとう~~。


なお、版権はご一緒させていただいたひかるさん、くもりぞらさん、mam3様にあります。無断転用などはお控えください。
お願いします。


Sstrong Beat ~俺達の音楽~

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー2

智くん、大好きな和叔父さんと学園祭を楽しんでます。





部屋は半分を現代に、残り半分を江戸時代に分けて‘環境’を色々な視点で見比べる展示にしている。
他に簡単なクイズもあって、全問正解者は武士の格好をした内海から葉脈だけにした木の葉の栞や景品をもらったり、写真を撮ったり。
内海はもう開き直って楽しんでいる。肩幅もあるし背もあるから着物が似合うんだよな。

「お疲れさん、内海。」
「おう、・・・・誰?」
「俺の叔父さん。和叔父さん、こいつ内海。塾友。」
俺の横にいる和叔父さんを見た内海が首を傾げたので、お互い初対面だったと紹介する。

「はじめまして、能見です。いつも智がお世話になっているようですね。」
「内海です。そんなことないですよ。仲良くやらせてもらってます。」
武士の格好の内海とジャケット、デニム姿の和叔父さんの握手は何だか不思議な感じだ。
「・・良く似合ってますね。」
「ありがとうございます。なんか着物着ると背筋伸びて。」
「あ、和叔父さん、展示見てってよ。
内海、後で。」

展示を見て、ちょうど昼時になったので、食べ物を出しているエリアへ。

「内海くん、だっけ?よく似合っていたね、あれが。」
オムそばを食べてる和叔父さんがまた言う。
「最初抵抗してたんだけど、じゃんけんで負けてさ。最後は俺と内海と女の子。三人で勝負したの」
あの時の内海の顔を思い出して笑ってしまう。
「あれ、じゃあ、じゃんけんで負けてたら智くんがあの恰好だったのかい?」
「・・・思い出させないでよー和叔父さん。俺じゃあ似合わないよ。」
「そんな事ないと思うけど」
何かついたのか唇を舐めながら話す、その口元に目が行く。
(なんかすげーエロくない?和叔父さん)
「智くん?・・・落ちるよ。」
「え?あっ」
フライドポテトを入れたカップが危うく手の中から滑り落ちそうになって慌てて持ち直す。
「あ・・っぶなかったー」
「無事だったポテト、僕にももらえる?」
「うん、どうぞ。」
「ありがと。」

『プリズム』

『プリズム』15*湯島さんと香川さん-7

少し遠くへ行ってしまう香川さん。それでも苑田と繋がっています。



ロビーへ降りるエレベータの中で、
「ああそうだ。携帯の番号と東京の部屋の鍵は変えていない。いつでも使え。」
「・・いいんですか?」
「傘も、残ってる。坊やは連れ込むなよ?鉢合わせしたら困る。」
「香川さん・・・」
また赤面した苑田だったが、二本の指の背で頬を撫でられこくりと頷いた。


ロビーに出てしばらくすると真っ青な車が玄関に着けられ、男が一人慌ただしく降り立つ。
「・・目立つ奴だ。」
急ぎ足で入ってきた高松へ苦笑した香川が手をあげて合図すると、横にいる苑田が視界に入ったのか目を瞠(みは)った。

「・・・おい。しけ込んでたのか?」
「いいや。茶だけだ。」
「・・・・。で、連れてくのか?」
「いかん。振られた。」
「ほえ?」
驚いた顔で苑田を見る。苑田はただ静かに高松を見返した。
高松の喉が鳴る。まじまじと顔を眺め、ついで全身を見回し、口笛を吹く真似をする。
「普通のあんたを見るのは初めてだが。
香川の気持ちが少し理解るぜ。 惜しいなァ、磨けば・・・・ィてっ」
「煩いぞ、高松。お偉いさんが待ってるんじゃないのか?」
拳骨で頭を殴られた高松が上目使いに香川を見たが、
「あ、そうそう急ぐんだ。(車に)乗ってくれ。」
「俺の車は?」
「若いのにさせる。」
「傷の一つでもつけたら容赦しねぇからな。」
「へいへい。よーく言っとくよ。  おっと。じゃあな、苑田。
こいつ、もらってく。」

「・・高松さん。」
「あん?」
「香川さんが貴方と組むのは・・・、それは」
聞いておかなければ、と言う意思をこめる苑田へ悪がきの顔で笑いかけ、
「勘違いすんなよ?こいつのことは前々から誘っていたんだ。」
「しつこかったからな。」
香川の嘴入れに二人で苦笑いする。
「全くだ。おまえを他所(よそ)へやるわけにはいかなかったしな。なんせ・・・・」
「高松。」
香川の一声にハッと口を噤(つぐ)む。
「ま、まあ、そういう事だ。あんたが気にしなくっていい。」
「潮時だったのさ。」
「・・・はい・・」
まだどこか納得していない苑田につ、と近付いた香川が顎を取り唇を重ねるだけのキスをした。

「わ。。香川」
「・・ごちそうさん。」
ペロリと舌で唇を舐め、行こうぜ、と呆れる高松を促し行ってしまう。
あまりに自然過ぎ誰も気付く者はない。

苑田は一つ息を吐いて少し体温の上がった体を一歩踏み出し、香川とのひと時を後にした。


 ◇  ◇  ◇


(今日は直帰したのかな・・)
用事を見つけて居残っていた社内だったが、一人になってしまって、新井もようやく帰る気になった。
時計は九時を回っている。
苑田には一度メールを入れたが返事はない。
「もう一回入れようかな。」
ポケットから携帯を取り出し、電話にしようか、と迷っていたら着信音がした。
「わっ・・、って、の・り裕さん?」
― もしもしっ?」
― 新井さん?今大丈夫ですか?」
(この声・・・?)
聞き慣れた声と違ってはいても、聞き覚えのある声に返事が遅れる。
― あの・・、新井さんですよね?」
― はい、そうです。・・・・もしかしてマスターさんですか?バーの」
― ええ。新井さん、今どこですか?」
― 会社、ですけど」

『プリズム』

『プリズム』15*湯島さんと香川さん-8

苑田、子湖塚さんのバーで何してるのか。。 




俺の言葉にマスター・・、はほっとしたようだった。それから、遠慮がちに、
― 良かった。  こちらへ来ていただけませんか?苑田さんが・・・」
― 範裕さんが?どうかしたんですか?」
焦って聞きなおす俺に、
― 大したことでは。ただ、お酒のペースが速いのでちょっと」
― 分かりました。すぐ行きます。」
速効で片付け、バーへ急ぐ。
(飲むペースが速い?香川さんと何かあったんだろうか?)


「こんばんは・・・」
そーっとドアを開け中へ入ると、
マスターが俺を見て笑い、酔ってカウンターにうつ伏せている範裕さんを目で示す。それから指で唇を押さえ『ないしょ』のポーズをすると俺をちょいちょいっと手招きした。
『分かりました』と頷き範裕さんから離れた席に座る。
店にはほかにお客さんもいて、でも常連さんたちなのか、マスターの行動を不思議がりもしない。

「すみません、来てもらって。」
「いいえ。俺ものり・・、苑田さんと会いたかったから。」
「そう」
ひそひそ話をしながらこれはサービス、とハイボールを置いてくれる。
「どうしたんですか?(苑田さんは)」
「判らない。開店と同時くらいに来て、それから飲みっぱなし。時々ため息つきながらただ飲んでるだけ。新井さんなら知ってるかな、って思ったんだけど。」

んん?聞かれて首を傾げた。その台詞、聞いたことがある・・・・?

そうだ、中島部長だ。
苑・・範裕さんが辞表を出した、って聞かされた時。

「でも・・・」
「話したくないなら」
「いいえ。
前にもそんなこと言われたな、って思って。でも違ってたみたいだったんです。俺・・、苑田さんに信用されてな・・い・・」
自分で言って落ち込む。俯きかけると、
「そんなことない。」
マスターが強く言う。
「苑田さん、新井さんのこと信頼してる。
さっき、私が苑田さんのスマホから連絡入れたでしょう?あれだってそう。苑田さん、自分の持ち物めったに他人に貸したりしないけど、
‘新井さんに連絡する’
と言ったら、あっさり貸してくれて。明日はオーロラでも出るんじゃないかって思うくらい驚きました。」

オーロラって・・・。
口がポカンと開いてしまう。

そんな俺にマスターはくくっと笑って、
「話さない、のではなく、話せない、のかもしれませんよ?ですから自信持ってください。」
「マスタ・・子湖塚さん。ありがとうございます。」
じゃ、起こして連れて帰ってくださいね。そう言ってマスターは今度は俺と苑田さんを放置してくれた。


まだ飲みきっていないハイボールを持って横へ座る。範裕さんがこんなになるまで酔うなんて初めて見るから、困ってしまった。俺の部屋はまだ予備の寝具がない。かと言って範裕さんの部屋、となると俺が躊躇ってしまう。
(合鍵とかもらってたら良かったんだけど。無いしな)

ちびちび飲みながら考えた。が、カランと氷が鳴ってグラスが先に空いてしまった。
(えーい!もう悩むのやめ!俺の部屋へ帰る。)

「マスター、ごちそうさまでした。」
「いえ。タクシー、呼んでも?」
「はい、お願いします。」

『プリズム』

『プリズム』15*湯島さんと香川さん-9

タクシーに乗って次の舞台。新井くんの部屋で、何か起きる?



「つきましたよ、範裕さん。降りられますか?」
「・・・ぅん」
「あ・・、わっ、だめですそれっ」
「・・・・じょぶ・・」
「お客さん、怪我しないでくださいよ。」
「ああ、ごめん運転手さん。お金・・」
「はい、確かに。 お釣りです。」
「あ、ども。待って、範裕さん」

酔ってるくせに足取りだけはしっかりしていて、ふらつくこともなく階段を上がる範裕さん。
捻挫が治りきっていない身としては有り難かったけど複雑でもある。
「あ・れ?」
「・・どうか、した?・・・ひろさん」
ドアの前で戸惑っているのへやっと追い付く。急いだから息が切れて、言葉が上手く出てこない。

「ここ・・、俺の部屋じゃ、ない」
「うん。俺の・・、とこ」
理解するのに若干の時間がかかり、分かった途端一気に酔いが醒めた顔になる。
「何でおまえの所なんだ?」
「それは、ごめん。」
「俺は一人で飲んでいたはずだ。なぜおまえがいる?」
「・・・電話が、かかってきたんだ」
「誰から?」
「あの・・ひろさん、(部屋の)中で話さない?」
次第に大きくなるひろさんの声に恐る恐る言うと、ハッと気付いてくれて、
「開けろ。」
低い声で言う。


「・・・それで子湖塚、俺を起こさなかったんだな」
「ひろさん・・、怒ってる?」
「ここまで来て、か?」
ふう、と息をつき、俺が差し出したコップを受け取る。ごくごく水を飲むその喉元に、目が吸い寄せられた。
バーで飲んでいるうちにネクタイを外したのだろう、いつもより開いている場所からちらりと見えた、赤い痣。

「崇?」
「ひろさん・・・それ」
凝視する俺に訝る視線のひろさん。指さしして答えると、バッと手でシャツを掴みその場所を隠した。
「おまえには・・・関係ない。」
顔をそむけられてしまう。

「あの男性(ひと)と・・・、香川さんと」
抱かれたの、と聞こうとして詰まる。
もし肯定されたら、ひろさんに自分でも分からない怒りをぶつけてしまいそうで、耳を塞ぎたかった。
「何かあったとしても、おまえには関係ない。
それより、見合いの日、決まったのか?」
「・・・・見合い、って? 俺に関係ないって、どういう事?」
「するんだろ?崇のお母さん、楽しそうだった。何枚もある写真見比べて」
「見合いなんてしない!俺が好きなのはひろさんだけだ!

母さんに言ってきた。ひろさんが好きだ、って。だから見合いは断ってくれって。」
俺の言い返した内容に驚いた顔をする範裕さん。
その無防備な表情に、抱きついていた。

「・・崇!」
「どうしてそんな顔するんだ、ひろさん。俺は何度も好きだって言ってるのに。丸林くんにも、香川さんにも俺、嫉妬してた。
ひろさんから答はもらってないから誰かと何をしていてもどうしようもないけど、嫌だった。」
ごく近くにある顔を見つめ、
「俺のこと、ちょっとは好きでいてくれるんだろ?」
開いた唇が声を出す前に塞いだ。


『プリズム』

『プリズム』15*湯島さんと香川さん-10

一つ階段を上がります。ただし・・・。




俺からのこんなキスは初めてだったと思う。
離そうとするひろさんの後頭部を押さえ、腰を引き寄せ舌を入れる。逃げるひろさんのそれを追いながら、頬や上顎の内側をなぞり、舐め回す。見つけた舌を絡め取り、吸い上げた。
「ん・・、んんっ、・・・・んっぅ・・」

やがて、ひろさんの腕が躊躇いながら俺の背中に回され、力が入るのを感じる。
不思議なことに、欲情が湧かなかった。
ただ、好きだと・・、きっとひろさんを愛してるんだと、そう伝えたくて唇を合わせていた。

一度離し、今度は啄むように何度もキスしていると、ひろさんの膝が抜ける。
「・・だ、大丈夫?」
慌てて支え、その拍子に顔が離れ・・・、動けなくなった。
ひろさん。   そんな顔。。

お酒と、息が苦しかったせいでか、ほんのり染まった肌。
キスで濡れて、いつもよりぽってりしてあかい唇。
潤んだ瞳が俺だけを映している。
「ひろさん・・範裕さん。好きだよ。・・・愛してる」
「たかし・・・」
そおっと、包むように抱いて囁いた。ひろさんも抱き返してくれる。
気のせいか、俺の名前を呼んだ声が甘く聞こえた。それだけでも、嬉しい。


そうだ。俺が、ひろさんを愛してるんだ。
範裕さんの答が俺の欲しいものと違っていたってそれは当然で、見返りとかが欲しいわけじゃない、

自分の気持ちがクリアになって、ひろさんを抱きしめてる腕に力がこもる。
ずっとそばにいるから。離さないから、と。


どれくらい経ったか分からない。
自分の気持ちが静まって、力を抜いた。
「崇?」
少し不安そうな声に笑いかけ、
「ひろさん、明日の土曜は?」
聞く。
「・・特に予定は、無い。」
「あのさ、俺、溜まってる仕事、片付けたい。それで、躓いてるところとか、教えて欲しいんだ。・・ひろさんの時間があるなら。いい?」
「・・・ああ。」
唐突に仕事の話を始めた俺に、二・三滴不満の入ったひと言が返ってくる。断られなくてほっとして、
「やった。
じゃ、シャワー、浴びて?
ひろさんの着替え、まだ置いてないから俺のだけど・・・」
「構わないさ。外回りに行くんじゃないだろ?」
くすくすっと笑ったひろさんにつられて俺も笑いながら腕を放し、順にシャワーを浴びた。


――― 今度家に帰ったら、布団宅配してもらおう。それとも、二人で寝られる大きいベッド買おうか。

ひろさんを起こさないように寝がえりを打つ。すぐ横にある寝顔は穏やかで、それがくすぐったい。

気付かれないよう額に唇を押し当て、声を出さず『お寝みなさい』と言ってもう一度寝た。
だから、ひろさんがそれで目を覚まして静かに半身を起こし、俺を見おろしながら囁いて頬にキスしてくれたのなんて、全っ然気付かなかった
「崇、俺も・・・・愛してる」


雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その40

  宝石



たっくさんあります。名前も知らなかったものや、そんなのも? というものも。
そもそもは光る石。人間以外にはそれだけなんです、けど。

キレイなんですよ~~。
ジュエリーになっているもの。石自体は加工されていても、まだペンダントやブローチなどになっていない、裸石(ルース)と呼ばれるもの。
ショップの前を通りかかったりすると、買う気も無いのについついながめちゃうんです。
まあ、すぐ横にある値札にも目がいっちゃいますけどね(苦笑)。


そして、希少・・と呼ばれる宝石たち。
最初に聞いたのは、名高い゜ホープ・ダイヤ’。 初めて知りました、ダイヤモンドに青い色の物があるなんて。

他には、蛍光色で青色のパライバトルマリン、とか、碧色のデマントイドガーネット、オレンジ色のパパラチアサファイア、ピンクのコンクパール・・・。


私たちが持っている宝石の名前とイメージからかけ離れた色なのに、これはサファイアです。これはダイヤです。
なんて言われたら。。

目が回るかも(苦笑)。


さらに珊瑚とか、琥珀。石じゃなくても・・、宝石。


人間って、キレイでキラキラしたものが好きなんだなーー って思いました。




『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー3

あら?和弘叔父、待ち受けの優奈ちゃんを見て、どうかした?




ふと思い出す。

「浴衣なら着たよ、この間実家に帰った時。確か写メ撮ったと思うけど、見る?」
「見たい。」
ちょっと待ってとスマホを取り出しONにすると優奈ちゃんの待ち受け。
「この子は?」
身を乗り出していた和叔父さんが聞いた。
「優奈ちゃん。盆踊りの時ぶつかって、今は・・・彼女。」
「・・・・そう」
照れくさそうに説明する俺に和叔父さんは低い声で返事してくる。それに俺は気付かないでいた。


「あ、これこれ。大きくするね。」
画面いっぱいに和叔父さんの着物を着た俺が映る。和叔父さんじっと見て、
「・・・これ、僕の浴衣?」
「うんそう。母さんが出してくれたんだ。
あっ、そうだ、かき氷持ってた優奈ちゃんとぶつかって汚しちゃったんだ。
ごめん。」
「それはいいよ。
・・智くんにも似合うんだ。この色にして良かったな。」

あれ?

「ねえ、和叔父さん?」
「うん?」
「俺のこと、『くん』、て。」
「ああ」
「さっき、内海と話してる時はつけてなかったよ?」
「そのこと?」
和叔父さん、クスッと笑って、
「智くんは兄さんの子だから、身内だけの時はつけないと紛らわしくなるから。外の人には区別しなくてもいいんじゃないかと思ってね。」
嫌だった?と聞かれ、
「そんなことない。なんかちょっと嬉しかったけど。」
親とか友達以外に呼び捨てにされるのって、新鮮。和叔父さんの声だとさらにわくわくする。

だって和叔父さん、親戚の誰も呼び捨てにしてない。俺だけ。特別。
もっと呼んで欲しい、と思ってしまう。

『プリズム』

『プリズム』15*湯島さんと香川さん-11

まずは香川さんと高松さん。苑田と何の話をしていたのか気になったんでしょう、二人で戻ってきました。





香川は結局、高松と先ほどのホテルへ戻ってきた。


「そんな風に言ったのか?」
「苑田がまだ引き摺っているようだったからな。」
“お偉いさん”との会合のあと部屋へ引き上げ飲み直しているうち、思い出したように聞いた高松は、香川の答えに呆れる。 
「・・・・まあ、見ようによっちゃ『幸せ』だな。」

例の、京都の秘密倶楽部で見かけた二人は、爛れた雰囲気を発散していた。
「蟷螂(かまきり)女も年貢の納め時かと思ったが、そうでもなさそうだ。女ってのはやっぱり怖ェ。」
どちらも目の下にクマを作っていて、必要以外はベッドから出てこないと言う。
そこで主導権を握るのは進藤だったが、絞り取られるばかりらしい。

「あのギラギラしていた男が目の下に隈、ときた。ミイラ取りがミイラだが、どっちが取られたのかねえ?」
「俺は嘘は言ってない。進藤はともかくあの女の方は幸せそうだった。」
「ふん。」
高松は鼻で嗤う。確かに嘘では無い。名前を出さなければ通る話だ。
「けど、そんなに大事なオトコ、別れてよかったのかよ?」
グラスを舐めるように飲んで聞けば、
「ああ。あいつのそばにはもうじき成犬になりそうな坊やがついてる。大丈夫さ。」
ふっ切った笑顔が投げ返され、ホッとする高松だった。


◇ ◇  ◇


翌日、ファストフードのモーニングセットで朝食を済ませ、一緒に会社へ行く。
仕事モードの範ひ・・・、じゃない、苑田さんは俺の二歩も三歩も先を行っていて、いつもの倍の速さで溜まった仕事が片付いていく。
面白くなって夢中でやってたら、終わる頃には昼を食いッぱぐれていた。

腹が減ったと俺のお中がぐぅるる・・・、と変な音を出し苑田さんの笑いを誘う。
「・・ほんと、正直だな。」
食事にしよう、と言われたけどあと一件だけ片付ければ終わるから、と、欲張って答え、十四時近くになってしまった。
「お・わった―――。」
PCの電源を落として大きく伸びをしたら、また腹の虫が鳴る。
「じゃ、崇のお腹が満足する食事に行こうか。」
「はーい」


「・・・すっご。この、中に、入るんですか?」
「そ。急がないとランチタイムが終わる。急ぐぞ。」

連れて行かれたのは、とあるホテルのランチバイキング。残り時間三十分を切っているのにまだ人が ――主に女性だけど―― たくさんいる。

「ちょっと・・、勇気いるんですけど・・・」
牛丼系のほうがいいと腰が引けたが、
「万遍なく食べられるしデザートもある。これを逃す手はない。いいから来い。」
「わっ、苑田さんっ」
じれったくなった範裕さんに腕を引っ張られた。

「どうだった?」
「美味しかった・・です。」
何故か母さんくらいの年の女の人たちに好意を持たれ、珍しい食べ物を教えてもらったり、食べる順番を教えてもらって、満腹になる。
食べてる最中、範裕さんのお皿に乗っている物が欲しくなって切り分けて口に入れてもらった時、きゃー、と周囲に黄色い悲鳴が飛んだのは意味不明だったけど。


「じゃあ、俺は実家に帰るから。」
「うん。範裕さん、今日はありがとう。俺、もうちょっとで足が治りそうだから大人しくしてる。」
「それがいい。」
駅で別れた。

『プリズム』

『プリズム』15*湯島さんと香川さん-12

  完全復活した新井くん。  相変わらずです。



足が治った、のが実感できた週は、元やさんの名刺追加注文が出来あがったのと、浦野商事で始まった。


『元や』は、小谷伸雄常務が社長になってから雰囲気が変わった。
前向きな姿勢になった、と言えばいいのか。でも、嫌な感じじゃない。

「おや・・、新井くん?」
「あ、小谷社長。お久しぶりです。」
営業を終えて外へ出ようとしていた俺は、エントランスで社外から戻ったらしい小谷社長と偶然鉢合わせした。
「元気そうだね。」
「はい。社長もお元気そうです。」
「はは、新米は忙しいよ。今日も半分挨拶回りだ。・・仕事、終わったの?」
「はい。」
「少しいいかい?」
「・・かまいませんが」
挨拶して行こうとしたら、引き止められた。

「どうぞ。」
「ありがとうございます。」
連れてこられたのはもちろん社長室。その部屋は入って左側の壁一面が本棚になっていて威圧感があり、長居したくない。
(小谷社長は親しみやすいのに、この部屋にいると遠い感じがするなあ)
目だけ動かして部屋を見回し、前と同じように秘書の佐藤さんが出してくれたコーヒーを飲みながらそんな事を思っていると、
「うん、私もそう思うんだ。」
と言われ、びっくりした。

「あ・あのっ、俺、何か言いましたか?」
慌てて聞いたら、
「いや、聞こえなかったよ、なにも。私も同じことを感じていたんだ。ちょっと硬いなあ、ってね。」
君のお陰で決心がついた、ありがとう。
お礼を言われて話が終わり、丁寧に見送られて外へ出る。
「俺ってそんなに顔に出るのか?」
今度ひろさんに聞いてみよう。

浦野商事は、変わらず。
ただ湯島課長の女っぷりが上がっていてますます格好いい。驚いたのは水木さんで、服装が変わっていた。

「嫌だ、どうしたんですか?新井さん。そんなじっと見て。」
離し言葉まで違っている。
「その、、水木さん、なんだか別の人みたいで。」
「そうでしょう?でも、水木さんて元々こういう人なのよ。」
やり取りを聞いていた湯島課長が笑う。それから、
「遅くなったけど、新井さん、これお土産。」
デスクの引き出しから小さな包みを取り出した。
「お土産?旅行とか行ったんですか、湯島課長。」
「新井さんてば。決まってるじゃないですか。新婚旅行のお土産ですって。」
水木さんがちょっとだけ呆れた。

そ・うか・・・!

よく見れば薬指に指輪が光ってる。
「あ、ご結婚、おめでとうございます!すみません、遅くなって。」
慌てて頭を下げた。


鈍いと笑われ、課内の人たちにもからかわれて、逃げるように浦野商事を出る。 参ったな。

「あとは・・、双葉工業と、廣済堂、か。あ、でも。」
携帯と手帳のデータをつき合わせ、予定を確認して相手先へ電話を入れる。
「よしっと。行こう。」


久しぶりに欲張って外回りして戻ってくる。
「はあぁ、疲れた~~。」
疲れたんだけど、気持ちいい。廊下で大きく伸びをした。

「さーて、データ打ち込んで終わりにしよ。」
報告書は明日にして、と暗いディスプレイに映る自分に言ってPCを立ち上げる。
「あれ?メール来てる。」
誰からだろうと開けて、
「丸林くん、だ。・・・・・そうか、退院、決まったんだ。」
あれから見舞いに行けなかった。―――来て欲しいのかな、丸林くん。範裕さんも一緒に。

行けば喜んでくれるだろう。俺だって嫌、なんじゃ無い。範裕さん抜きなら。 

「でも、二人で行ったほうがいいよ、な・・・」
ため息をつきそうになって、ぐっと飲み込んだ。

『プリズム』

『プリズム』16*悩みは、いろいろ。

 おめでたいんだけど、気が気じゃない?!




「崇、もう行けるのか?」
「うん、ひろさん。」
連絡すると、ひろさんも『良かった』と喜んで、退院に合わせて会いに行くことになってしまった。退院日は土曜だ。本当はひろさんに泊まってもらって一緒に行きたかったけど、残念ながら予備の布団が無い。絶対要るよ。考えないと。

「お祝い、忘れるな。」
「はーい。」
便利なものにしようとプリペイドカードにして、面白文具とセットにした。
迎えに来てくれたひろさんと駅へ向かう。


「あ」
「あれ?新井さん?」
「どうして君が?」
「総務の代表です。荷物持ちがいるかもしれないって。」
病院のロビーで見つけたのは高輪くん。そして俺の横を見て、尋ねるような視線を送ってきた。
「あの、新井さん、そちらは」
「あ、高輪くん初めてだっけ。の・・、こちらは、会社の先輩の苑田さん。苑田さん、彼は丸林くんのピンチヒッターをしてる総務の高輪くん。」
「初めまして。廣済堂の高輪です。」
「こちらこそ初めまして。名賀都商事の苑田です。」
挨拶し合い、名刺交換する。
「範裕さん、名刺持ってきたの?」
今日は完全プライベートなのに、と聞けば、
「何かあった時、用に、少し財布に入れてる。」
「そうですね。身分証代わりみたいなものです。」
高輪くんまで。

俺・・スーツには入ってるけど。財布にあるの、メンバーズカードとかだ。名刺、入れとこ。

高輪くん、範裕さんの名刺を丁寧にしまってから気付いたようで、
「苑田さん、・・もしかして丸林に本を?」
「暇つぶしにね。」
「俺も見せてもらったんです。面白かった。機会があったら俺にも教えてください。」
目をきらきらさせて頼んでる。
「構わないけど、高輪くんも色々読んでるんじゃないかい?」
「まあ。でも、苑田さんは俺と違うジャンルだと思うんです。お願いします。」

本の話題で盛り上がる二人にムッとしていると、エレベータが開いて丸林くんとお母さんが降りてきた。

「丸林くん。」
呼びかけに気付いて近づき、俺達を見て複雑な表情になった丸林くん。
「退院おめでとう。」
「ありがとうございます、新井さん。」
「おめでとう。お姉さんの結婚式に間に合いそうだね。」
「苑田さん。。ええ、どうにか。まだリハビリ残ってますけど。」
「大変だったな、丸林。」
「高輪・・・。来て、くれたのか。」
「荷物持ちくらいは出来るから。」

「まあまあ皆さん済みませんねえ。わざわざありがとうございます。
直斗、母さん先帰るから、少しお話していけば?」
「でも、姉さん待ってるんじゃ」
「そうよ、帰ったらすぐ準備で忙しくなるんだから、ゆっくりしてらっしゃい。」
丸林くんのお母さん、そういって荷物を乗せたワゴンのようなものを押しはじめる。
苑田さんと高輪くんがさっと荷物を持った。
「お母さん、私たちが荷物持ちますから、そのワゴン、返してきてはいかがですか?」
範裕さんの言葉に、
「そうね・・、そうしようかしら。じゃあ、悪いけど待っててくださいね。」
空になったワゴンを押して、病棟に戻るエレベータに乗っていった。

「苑田さん、本、ありがとうございました。俺、普段ほとんど読まないんですけど、いただいたのみんな面白くって夢中で読みました。」
「そう?それなら今度は本屋へ行ってみるといい。このごろの本屋は立ち読みOKの所も多いし、パソコン検索もできる。」
「ええー、そうなんですか?ちっとも知らなかったです。」

丸林くんの懐いてる様子に何だか腹が立つ。そして範裕さんにも。
(どうしてそんなにくっつかせるんですか?)
見ていたら睨んでしまいそうで視線を外す。すると高輪くんまで範裕さんに視線をい送っていて、カッとなった。



『プリズム』

『プリズム』16*悩みは、いろいろー2

 退院祝いが、妙な方向を向いて。。



「崇?」
不意に歩き出した俺を範裕さんが呼ぶ。
「トイレ」
ここにいたら自分だけマイナスオーラ出してしまいそうで、咄嗟に目に付いたトイレマークに向かう。
一応用をたしながら、ここでだけはため息と深呼吸を我慢した。

「範裕さん、丸林くんたちは?」
危ういバランスの気分で戻れば範裕さんだけが俺を待っていた。
「タクシーに荷物積んでる。丸林くんのお母さんはそれに乗って帰るそうだ。俺たちは近くに食べに行こうと話し合ったが」
崇はどうする?と目で聞かれ。

帰りたい。範裕さんの手を引っ張って。だけど今日は、丸林くんの退院祝いだ。

「・・俺も行く。」
「そうか。」
範裕さんの手が上がり、俺の頭をぽんっと軽く叩いて耳たぶをつんと引っぱり放される。
「行くぞ。」


「それじゃ、改めて。
「「「退院おめでとう」」」
「ありがとうございます。」

お母さんを見送ったあと、近くのファミレスへ入った。丸林くんの分は三人で持つことにして料理を選び、テーブルが埋まったところで乾杯する。
さし障りの無い程度に入院中の事や仕事の話、最近の話題なんかで賑やかにしていて、ふっ と間が出来た。


「苑田さん、・・・聞いても、いいですか?」
高輪くんが少し低い声を出す。
「答えられないものはそう言うけど、いい?」
範裕さんの答に頷いて、
「俺・・、迷ってるんです・・・・」
その言葉に、丸林くんも俺も黙って、食事の手を止め続きを待つ。

「会社の中で、色んな部署に行かされました。・・器用貧乏って言うのかな、どこでもそこそこ出来ちゃうんです、俺。だから、仕事でアツくなったこと、ほとんど無くて。
 会社に行くのが嫌だ、とかじゃないんですけど、これから先もこのままかなって思ったら・・・」

「いいじゃないか、どこでも使ってもらえれば。」
「丸林?」

深刻になる声を遮るように丸林くんが口を挟んだ。
「俺なんか経理は苦手、営業笑いも出来ない、総務だって必死なのにおまえはちょいちょいでこなせるんだ。この怪我だって’馬鹿なやつ‘としか思ってないんだろ?」
溜まっていた鬱憤を吐き出すように続ける。
「苑田さんにだって、すぐ取りいって。本の話なんかで盛り上がって。
どうせ俺は本屋にも行ったこと無いから、横で聞いてて面白かっただろうさ!」

「丸林くん。」
言い募ろうとした丸林くんを範裕さんが静かに制した。
ハッとして口を閉じる彼に笑って、高輪くんの方を向く。高輪くんは、ぎゅっと唇を噛んでいた。
「高輪くん。そんな話したの、初めて?」
「・・・はい。」
「丸林くんが言ったような事、前に聞いたことがあるのかな?」
「昔・・たまに。だから、言わないようにしてたんです。
ただ、丸林は同期だし、この仕事(総務)の代役する時も色々教えてくれたから、理解ってくれると思って・・・・」

聞いた丸林くんが、何かを喉に詰まらせたみたいな顔をする。
「うん。彼はあまり裏表がないから、君も安心したんだろう?ちょっとタイミングが悪かったけどね。

丸林くん、高輪くんは君と友達になりたいみたいだけど、君はどうなのかな?」


え・・・?

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その41

表だって、好き!とは言えないものの一つに、道草・寄り道・回り道、があります。

車で移動することが多くなってからは少々大変ですが。
なにせ「あっ、あれ気になる」。と思っても運転中だと止まれない。

ダンナ様と一緒の時だと、「わー、これいいな」と立ち止まると、もう5mくらい離れちゃう。さらにコンパスの差があるから、追いつくの一苦労。


まあ、自営手伝いと家のこと半々くらいでやっている身分ですので、時間がある・・ような無いような。
自分への言い訳にしてます。苦笑。
そういう時犠牲になるのはいつも家事。特にご飯が’出来あい’総出演。レンジが何度もチーンと鳴ります。ナハハ。


学生時代はいろんな道草、寄り道してましたっけ。友だちと駅までゆっくり歩きながら喋ったり、本で時間をつぶしたり。

テスト勉強より、ラジオとか、ちょっと横に置いておいたやりかけのトレスとかが気になって気になってーー・・・(あ、高校ではアニメ部入ってました)。



懐かしいけど、その時のテストの点は思い出したくない。。


社会人になって、料金ギリギリまでの定期を買い、休日には普段乗りない駅へ降りて歩きまわったりもしました。



贅沢な時間。

皆さま、どんなことしてました?









プロフィール

ますみ

Author:ますみ
FC2ブログへようこそ!

最新トラックバック
フリーエリア
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR
ようこそいらっしゃいました!
よろしければポチっとしてください(ペコ)。

Page Top