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『プリズム』

『プリズム』20**大島ビルの、影-4

新井くん、出陣?


株式会社 尚和(ショウワ)の駐車場に車を入れ、受付へ回る。
相沢社長は前社長の親戚で、仕事も出来るけど、ワンマン・エロ好きおやじらしい。
「相馬さんも言ってたな。『好き嫌いが分かりやすい』って。」
文具の取引も、それでトラブったんだとか。
嫌われるのも困るけど、好かれすぎるのも問題だ。どうやら気に入られてるみたいなので、これから出入りには注意しよう。

「こんにちは。名賀都商事です。」
「名賀都商事、さん?・・・いつもの方ではないんですね」
「あ、はい。今回から事務用品を担当させていただくことになりました、新井と申します。今日は納品に来たんですが、総務担当の相馬さんはいらっしゃいますか?」
受付で名刺を出し説明して、相馬さんを呼びだしてもらうよう頼む。
「相馬さん・・・ですか?」

あれ?どうしたんだろう。ベテランのはずの受付嬢、安倍さんが狼狽えてる。

「少々・・・お待ちください。確認します。」
電話を取った。
今日休む、とかの連絡は無かったし、変だな・・・と思ってると、
「・・・はい。・・はい、やっぱり?・・・あ、分かりました。」

「「あの」」

同時に話しかけ、なんか笑ってしまう。
それで気持ちが変わったのか、
「申し訳ありません。相馬は急用で席をはずしています。代わりの者が来るまで、少々お待ちください。」
さっきの電話のことなどおくびにも出さずにこやかに対応する。さすが、と思うけど気になって。
「安倍さん。相馬さん、何かあったんですか?」
「いいえ。本当に急用なだけです」
「・・・事故とかじゃ、ないですよね?」
驚いて、間が丸くなる安倍さんに、
「そうなんですか? まさか、入院とか?」
丸林くんを思い出し焦って尋ねると、
「ど、どうして知ってるんですか?! まだ知らせが入っただけで・・・あ」
慌てて口元を押さえる。
「入院、なんですね?具合は?意識、あるんですか?」
心配になって矢継ぎ早に聞きたて、前のめりになってしまった。そこへ、
「すみませーん。お待たせしました、総務の秋山で・・・」
「安倍さん、どうしました?」
二方向から声がした。

振り向くと、一人は『秋山』と名乗った女性で、もう一人は、
「朝井さん」
「・・・新井さん、ですか?名賀都商事の」
とっさに面識のある朝井さんに、
「あの、相馬入院したんですか?」
質問を向ける。
「え?相馬さんって・・・、さっき、急いで出ていきましたけど、事故でもあったんですか?」
「新井さん、ちょっとこっちへ。
秋山さん、事故とかじゃないよ。何か勘違いしてるんだ名賀都商事さん。俺が話しておくから総務に戻ってて」
言いながら俺の腕を取り、秋山さんに説明して歩き出す。
「でも・・・」
「いいから。ね」
「・・・は・い。分かりました。それじゃ、戻ります」
秋山さん、好奇心いっぱいに俺たちの話に混ざっていたけど、朝井さんににっこりされて渋々戻っていった。

俺の方は。

「新井さん。どういうことか、説明してください」
小さな会議室のような部屋に連れ込まれ、詰問。
「ど、、どうって言われても」
「事故が、とか、入院とか、口にしてましたよ」
「それは・・。相馬さんが急用だ、って聞かされて。でも、休むとかの連絡は無かったですし、事故に遭ったくらいしか思いつかなかったんです。
俺、似たような経験したんで・・・つい」

俺の話を聞いて、朝井さんの緊張がとける。肩の力を抜いて、
「・・・新井さん、脅かさないでください。焦るじゃないですか・・・・」
「え?じゃあ・・・」
「これ、オフレコにしてくださいよ? 事故があったのは本当です。
相馬さん、窓口に指名されて対応に追われてるんです。」
「対応に?」
「事故にあったのは、社長なんです」
「ええ?!」

社長相沢?







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『プリズム』

『プリズム』20**大島ビルの、影-5

「・・・よせばいいのに買ったばかりのスマホを弄りながら歩いていて、人にぶつかったんだそうです」
ため息をつきながら苦り切った口調で言う。
「人に、ですか?」
「ええ。相手の方が怪我をされて」
「それは・・、大変ですね」
「いっそのこと、電柱にでもぶつかってくれた方がこちらとしても楽だったんですけど」
朝井さんの言葉に想像してしまい笑いそうになったけど、でも一応事故は事故だし、と顔を引き締める。
朝井さんも同じことを思ったらしくそれ以上は口にしなかった。

「・・・そう言うことなので、状況が分かり次第社内と各方面へ連絡します。新井さんもその時までは口外なさらないでください。お願いします」
改めて頭を下げられ了承した。ただ、
「苑田さんには、伝えてもいいでしょうか? その、ここは苑田さんが先なので・・・」
「苑田さん、ですか?」
考え込んで、
「・・・それは新井さんにお任せします。」
一任されてしまった。
「では、私の用件は終わりです。お仕事の邪魔をして済みませんでした。総務には連絡を入れますので」
「分かりました」
お互い頭を下げて部屋を出、右と左に別れる。

あ・・、朝井さんてどこの部署なんだろう?聞きそこなった。


他の営業回りも終わらせて戻り、少し迷う。
苑田さんは、市島さんと外回りでまだ戻っていない。伝えたい内容が内容だけに、顔を見て、直接話した方がいいんだけど、多分今は無理だ。あの時の、

『私の仕事の邪魔だけはしないでください』

と言ったひと言は、俺の中に強烈に残っている。
尚和の・・・、相沢社長の件は急がないから後にしようか?
「うん。そうしよう」
苑田さんのPCに付箋を貼って伝言を残し、仕事に戻った。

倉庫で物品の在庫確認をしたり、新たに増えた会社も含めた営業回りを整理しながら予定を組み立てているうちに人が減って、気付けば俺と帰り支度をしている二人がいるだけで、フロアは静かになっている。
(苑田さんたち、まだかかるのかな?)
何か温かいものを飲もうと立ちあがった時、話し声が近付いてきた。
「あ」
帰って来た。と思ったのも、すぐ、
「・・・ですから市島さん、その方法では」
「私のやり方に、口を出さないでくれと言ってるんだ!」
市島さんが苛々した声を大きく響かせながら部屋に入ってくる。

「市島さん・・・。どうか、したんですか?」
帰りかけていた一人が驚いて呼びかけた。
ハッとした市島さんがフロアを見回し、
「い・いや。仕事の・・・進め方で、意見がちがってね。 それだけだよ」
言い繕って、話しかけた同僚に何とか笑顔を作る。
「そうですか・・・。びっくりしますよ。普段静かな市島さんの大声なんて。あ、僕もぅ帰るんで。お疲れ様です」
「ああ、お疲れ様です」
一人が帰り、もう一人が、
「苑田さん、市島さん、お疲れ様。お先」
「お疲れ様です、飯野さん。
そうだ、一駅先の雑貨屋さんならまだ開いてます。お子さまのプレゼント買うのに間に合いますよ」
「え?そうか、ありがとう。それじゃ」
飯野さん、言われて急に元気になって、急いで帰った。

苑田さん、ほんっと色々知っていて・・・、俺にも少し、分けて欲しい。いや、半分くらい取り替えて欲しい、その脳みそ。

胸の中で呟いていると、
「大したものだ。そうやってゴマをすり、さらに‘営業’までして相手を落とすのか。 確かに私のやり方は君の気に入らないだろう」
「市島さん、俺はただ」
体の向きを変え、言いかけた苑田さんが俺が居残ってるのに気付く。
「た・・。新井、いたのか」
「新井くん?」
俺に背中を向けて喋っていた市島さんも俺を見る。
「・・・お帰りなさい。仕事、どう、でした?」
問いかけに、
「ああ、上手く行ったよ。苑田くんのおかげで」
蔑みの籠もるはとても、’うまく行った感じじゃない。






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『プリズム』

『プリズム』20**大島ビルの、影-6


そうっと範裕さんを見る。
「苑田さん・・・?」
「うん。感触は・・良かった。次は」
「苑田くんが行けばいい。私は、ごめんだ」
「市島さん」
「それは、どういう・・・」

苑田さんも俺も、意味を測りかねて聞き返す。それへ、険のある市島さんが、突き刺すような言葉を投げ返す。
「はっきり言わないと駄目なのか? 
君のように色気で仕事を取る人間の横には並びたくない、と言ったんだ!」

苑田さんが一瞬、凍りついたように動きを止めた。

「苑・・・」
俺が言う前に苑田さんの手が動いた。す、と髪をかきあげる。
前に、尚和から出て来た時もしていた、怒りや悲しみの感情を、抑える仕草。

「・・・分かりました。別行動がいいと言うなら日を改めます。
ですが、俺の扱う物は高額になることもあります。どうアプローチしたらいいですか?」
「君自身ですればいい。簡単だろう? ついでに色仕掛けで経理の岩腰部長にも声をかけたらどうだ?
私では見向きもされないが、君ならあの堅物でもイチコロだろう?」
市島さんの言葉の棘が、さらに苑田さんを傷つける。

「市島さん、言い過ぎです」
これ以上苑田さんを傷つけてほしくない。そう思って口を挟んだが、
「新井くん、僕は知ってる事実を述べたまでだ。君にも話していただろう、そういう営業をする男だと」
「市島さん!」


「・・・それなら」
低い声が流れた。
「十万出してみな。そいつ・・・落として契約取らせてやる」
あまりに絶望的な、だけどその声だけで押し倒したくなるような色気を滴らせて、範裕さんが言い放つ。
「苑田さん・・・・・」

「はっ。 やっぱり君はそんな奴なんだ。
よく分かった。

中島部長に話をして、チームは止めにしてもらう。もう同じ場所に居たくもない。失礼する!」
「市島さんっ、待ってください!」
出ていこうとする市島さんの腕を掴む。
「放してくれ。君だって聞いていたんだろう? 彼はやっぱりそういう人物なんだ。体で仕事を取ってくるんだよ」
「違います。
苑田さんは自分のことで体を使って営業するなんて、少なくとも俺が知ってる限りでは一度も無かった。
それに苑田さんはみんなが知らない所で努力してるんです」
範裕さんを振り返って、
「の・・、苑田さん、来てください」
「新井?」
「新井くん?」
「俺の部屋まで来てください、二人とも」


無言で部屋へ来た俺たち。

「これ、見てください」
リビングで待ってもらった市島さんの前に差し出したのは、範裕さんにもらったデータ。
「これ・・・?」
「・・・それ、まだ持ってたのか?」
怪訝そうな市島さんと目を見開くようにした範裕さんに頷き、

「これは、苑田さんが自分で作って、使っていた取引先のデータです。
市島さん、よく見てください。そのデータ、作るのどれだけ大変か。俺、真似して作ってみてよく分かりました。
なのに苑田さん、惜しげも無く俺にくれたんです、『役に立つから』って。

『体で仕事もらってる』。そう言いましたよね。もしそうならこんなデータ、作る必要も無い。それに、市島さんだって気付いてるんじゃないですか?
苑田さんが以前営業していた取引先は、どこも苑田さんを嬉しそうに、懐かしそうに迎えてくれた。
それって、ちゃんと仕事してたからじゃないですか?」

「・・・・・・」
「市島さん」






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『プリズム』

『プリズム』20**大島ビルの、影-7




押しつけられたデータの束を持ったまま俺から目を逸らし、何も言おうとしない市島さんへ続けようとしたのを止めたのは、範裕さんだった。

「崇、もういい」
「範裕、さん?」
「いいんだ。事実は・・・、過去は変えられないし、言い訳をするつもりもない。
進藤とは、どうして出会ってしまったんだと思うことはあったが。 けど、そのデータ、大事にしててくれたんだな。ありがとう」

微笑んで俺の方をポンと叩く。
抱きしめたいのをようやく我慢した。
代わりに想いを込めて範裕さんを見る。受け止めた範裕さんも小さく頷いてくれた。

「・・・・それじゃ、どうしろと言うんだ。私に・・・媚を売れと言うのか?」

茫然とつぶやく市島さんに我に返る。危うく忘れるところだった。

「市島さん・・・。あの」
「そうなんだろう?君たちが言いたいのはっ」
「違います」
自棄になった市島さんに、範裕さんが静かに答えた。

「違う・・・?」
ええ。
俺が言いたかったのは、話題を増やしてはどうか、ということです。」
「わだい・・・」
俺に一度視線を向け、範裕さんが続ける。
「はい。担当者や総務の人たちの会話からでも色々分かります。それぞれの人の好み、興味を持っていること、家族の事なんかが。
それを知るだけでも話の糸口になりますし、広げる事だって出来る。

市島さんは、すごく記憶力の良い方ですから、使わない手は無いと思います」

「え? そうなんですか?」
思わず話に割り込んでしまう。

「崇」
「あ、すいません。でも、俺、そんなに頭よくないから、羨ましいです」
窘める範裕さんに首をすくめながらも続けると、市島さんの体から力が抜けた。
「・・・記憶力、か・・・。そんな風に言われたのも、利点だと言われたのも初めてだ。
『どうしてそんな事まで覚えてるんだ』 とか言われるくらいで」
「そんな、もったいないですよ! メモ取ったって忘れる俺に比べたら」
「だからおまえは常に手帳に書き込んでチェック入れろ、と言ってあるだろう?書けばその分覚えていられるんだ」
範裕さんは呆れ顔で俺を見る。

う・・、そうでした。

ぷっ、と小さく聞こえた吹き出す音は、市島さんだった。
「君たちは、いつもそうなのか?」
今日初めて聞く、笑いを含んだ声が温かい。

「私は・・・、今まで、雑談なんて時間の無駄だと思っていた。
だが、‘情報を集める’ことも出来るんだな。知らなかった。・・・・苑田く、ん」
言いかけて、躊躇う。

「やり方は、人それぞれです。市島さんにあったやり方を見つけてください。
手伝えることがあったら手を貸します。俺も、・・新井も」
言葉の先を予測したのか、範裕さん、笑顔で答えている。それから腕時計を見て、
「そろそろ行きましょう。電車も無くなります」
市島さんを促した。






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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その54

 すみませんっ!!
予約投稿、22時・・のはずが23時になってました~~! 大遅刻。凹



今日は6月6日。ということで、あの童謡が・・・。
♪ぼうがいっぽんあったとさ~♪

懐かしいコックさんです。お天気も、こちらは夕方から雨。ついつい落書きしたら、、書けるものですねー。他にも、へのへのもへじとか、つるニハ○○ムし。
そう、ロボット猫・ドラちゃんもありました。

懐かしついでにぐーグルさんへお出かけしてポチポチしたら・・・!?

へのへのもへじで、猫が描かれ・・・いえ、書かれてていました!
相変わらず進歩がなくて、そちらのサイトへ「飛んでください」が出来ない不勉強者ですが、まずこちらを。

サイトの名前は、「これは使える!へのへのもへじで猫を書く方法」
URLは、  http://www.yukawanet.com/archives/4180051.html

です。
ほかにも、へのへのもへじ で検索すると面白いサイトがコロコロ。お時間があったら見に行かれてくださいませ~。

日本語、特にひらがなは、自由自在。 






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『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー16

「やってるな」
「兄さん」
どうにか一人で結べるようになり、和叔父さんにも合格点をもらって帯を見ていると、父さんが覗きに来た
「和弘、正月も居るんだって?」
「うん」
「だったら気をつけろ。敏江が来るぞ。」
「敏江さんが?」
自分で帯を締めながら和叔父さんがちょっと眉を顰める。
「敏江伯母さん、何で来るの?」
俺も苦手にしてる伯母さんが、何で来るんだろうと思ったら、
「ばぁか、見合いに来まってんだろ?和弘の」

見合い。 どきっとした。

「僕はいい、って断ったのに」
「いい年した男が独身なんだ、放っておかんだろ、女どもが。おまえだっていい加減忘れて新しい出会いでも・・・」
「兄さん。それはもういいじゃないか。」
和叔父さん、父さんから目線を外して鏡で帯の具合を見る。 なんだかわざとらしい気がした、のは俺の気のせい?

「よくない。俺はおまえが早く結婚して、子供が出来るの待ってるんだ。甘やかしてやるぞー、おまえが彩香や智にしたみたいに」
父さんは気付いてないみたいだ。
「それに俺だって言われるんだ。『いつまでも和弘さんを子守り代わりに使ってると、一生独身よ』みたいなこと」

「兄さん」
「な、なんだ?」
「僕がこの家に来るの、迷惑?」
「・・・いや。俺は助かる。おまえは枝里子とも仲いいし、彩香だって懐いてる」
「ならいいじゃないか。僕は好きでやってるんだ。他からとやかく言われることはない。」
いつもと違う、どこか感情的な、きつい話し方をする和叔父さんに俺も父さんも雰囲気に
呑まれたようだった。
「わ・かった。
けど、おまえちゃんとそれ、敏江に言えよ?俺はごめんだからな。」
「うん、そうする」
ようやく鏡から目を上げ、父さんに笑う和叔父さんの笑顔は、きれいだった。





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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンド

珍しいツーショットに足が止まる。
(苑田さんと・・、絹里さん)
社内だし、チームメイトみたいなものだから変ではないけど、話をしている苑田さんの表情があまり見たことない柔らかさで、なぜか胸の隅がジリッと焦げる。

「あ、新井さん」
苑田さんの視線が動いて俺を見たのにつられるように、絹里さんが振り向いて俺を見つけ、笑顔になる。

(わ、なんかいい笑顔)

「今、市島さんの事で聞いていたんです」
「市島さん?」
歩き出し近付くと、苑田さんが、
「外回り行くのか?」
「はい。あ、でも急がないです」
「そうか」
頷いて自販機コーナーへ歩き出す。自然、俺も絹里さんも続いた。

「・・・それで雰囲気変わったんですな」
絹里さんの言葉に、
「女の子たちの間でも噂になってる?」
苑田さんが聞いている。
「はい。
前より話しやすくなったとか、雰囲気が優しくなった、とか。彼氏にいいかも、なんて言い始める人もいて」
「へえ?じゃ、モテ期到来かな?」
「そうかもしれません」
クスッと笑う。そして俺を見て、
「市島さんが変わるきっかけ、新井さんなんだ、って聞きました」
きらきらした瞳で言う絹里さん。やば、赤くなりそう。
「そんな事ないですよ絹里さん。俺より苑田さんのほうが」
「いや?新井がいなかったら、市島さんと衝突していたかもしれない。俺もおまえに助けられた」
「は・恥ずかしい事、言わないでください・・・」
こんな風に、苑田さんに面と向かって褒められたの、初めてかもしれない。

「あの、じゃ、・・外回り、行って来ます」
「ああ」
這う這うの体で逃げ出した。でも、気分は最高だった。

「新井さんって、かわいいんですね」
「ああ。それにしごいたらその分反応が返ってくる。伸びしろがあるから、先が楽しみなんだ」
苑田さんは甘い笑顔を見せて絹里さんにそう答えていたと、ずっと後で聞いた。


◇  ◇  ◇


十二月は飲み会も増える。
携帯に母さんからのメールが入ったのは、あちこちの忘年会が束になって予定を埋めだした頃だった。

:: 崇、十四日空いてる?大丈夫なら範裕さんの都合も聞いて家に来なさい」

「これなんだけど、のり・・・じゃない、苑田さん、どう?」
尚和の、相沢社長が事故に遭った翌々日、一人で外回りに行こうとしていた苑田さんをつかまえ、事情を話している時のに来た母さんのメール。
ついでに聞くと、
「どうって、おまえのお母さんの誘いなら断るわけにいかないだろ?都合つけるからそう言っといてくれ」

やった。

でも、家であんな事が起きるなんて・・・・・・。



相沢社長は、歩きながらスマホいじりをしていて角を曲った際、出会いがしら的に女性とぶつかったらしい。相沢社長の方が軽傷だったらしいが、二人とも救急車で運ばれ、入院中だ。
気の毒に、相馬さんは折衝係をさせられていた。けど前より社長に物言いが出来る立場になって、生きいきしている。

「相馬さん、変わりましたね?」
苑田さんも出入りしてるから聞いていたけど、俺もまた尚和へ行って相馬さんに会うと、雰囲気が違う。
「はは、そうかい? まあ、社長の言うことだけを聞いていたんじゃどうしようも無いからね。ただ・・・」
「何か、あるんですか?」
「相手の女性、タクシー運転手だったんだ」
「タクシー?」
「近頃、増えてきているらしいよ」
「大変ですね・・、色々」
それ以上は首を突っ込むことでもないので聞かなかったけど、交渉は長引くんじゃないかと思った。







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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンドー2 


  
午前中から営業に出て昼になった頃、デパートの前を通りかかり、思いついて中へ入る。
実家へ帰るついでに、早いけどXマスプレゼントを買おうと思ったからだ。おふくろは図書カード、父さんには趣味のDIY用のエプロンと決まり、
「ひろさんにも何か買おう」
として、困ってしまった。
ひろさんの好みって、よく知らない。

思い出してみたら、仕事や家族の話はよくするけど、好きな事とか趣味とか、話した事がほとんど無い。


「新井さんじゃないですか?」

へこんでいたら声をかけられた。
「絹里、さん?どうしたの、こんな所に」
「私、今日は半休取ってて。ここは時々来るんです」
探し物ですか?と聞かれ、
「ちょっとね。プレゼント買おうと思ったんだけど・・・困ってさ」
「手伝いましょうか?」
「悪いよ。せっかく休み、取ったんだろ?」
「有休消化ですから。特に目的が決まってるんじゃないです。あ・・・、無理にとは言いませんし」
「・・・じゃあ、頼んでも、いい?」
一人だと決められそうもない、と気付きせっかくだから頼んでみる。少し不安そうだった絹里さんの顔がパッと明るくなった。
「もちろんです。それであの、誰へのプレゼントなんですか?」
「苑田さんなんだ」
「苑田、さん?」
「うん。いつも助けてもらってるし、教わること多いから。
けど、趣味とかほとんど知らないの、今気付いて、ちょっとへこんでた」
正直に言えば、くすりと笑う。

「何が良いかな―・・・」
「そうですねー・・・」
二人で腕組みしながら考えてて、
「そうだ、あっても困らないものにしましょう」
先に絹里さんがポンと手を打つ。

「あっても、困らないもの?」
「そうです。 ネクタイとか、ベルトとか。靴は・・サイズが判らないと駄目ですけど。ほかには・・・、時計?」
「あ、それ! 苑田さんいつも腕時計してるからそれにしよう。
ありがとう絹里さん、俺一人じゃそこまで考えがいかなかった」
ノリでつい手を握り、上下に振る。
「そんな。大したことじゃないです・・・あの、手」
「え?わっ・・・ごめん」
慌てて放した。

そのまま一緒に時計売り場へ足を向ける。
「苑田さんって、いつもどんな腕時計してるんですか?」
「どんなって・・・普通だよ」
「革のバンドとか、金属とか。私、昔金属のバンドで産毛が挟まって痛かったことあるんです」
「そうなんだ。えー・・と、苑田さん確か・・・金属の」
思い出してみる。

「文字盤は数字じゃなかったな・・・。全体にシルバーで、日付が付いてて、バンドは、・・・うん、金属だ。
文字盤のガラスに細かい傷が結構あったけど、大事に使ってるみたいだった」
「よく覚えてますね」
「まあね。しょっちゅう見てるし」
お風呂と、寝る時以外は着けてる。そう言えばこの間電池交換した、って言ってたな。

「じゃ、新井さんはどんな時計が似合うと思いますか?苑田さんに」
「うーー・・・ん・・・」
数があり過ぎて悩む俺に店員さんが。
「お客さま、何をお探しですか?」
「う・・、あの、ですね」
「プレゼントなんです、先輩の。ちょっと・・・、迷ってて」
側に来られて引く俺の代わりに、絹里さんが続ける。
「贈り物ですか?」
「はい」
「よろしければ男性か女性か、教えていただけますか?」
「男性です。仕事が出来て、私たちが尊敬する先輩なんです。Xマスに腕時計を贈ろうと思ってるんですけど、あまり高価(たか)くなくていいもの、ありますか?」
「それはそれは。素敵な方なんですね。では少々お待ちください」
絹里さんと店員さんの滑らかな会話に口が出せず、俺はただぼーっと立っていた。







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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンドー3

今日の途中から明日の一部まで、苑田の視点で進みます。 ~~ から、~~の間です。


店員さんが探しに行き、
「絹里さん、よくそんなにすらすら話せるね。俺なんかまごつくのに」
営業なのに言葉に詰まって上手く言えなかった俺が軽く落ち込むと、
「だって、せっかく店員さんが来てくれたんですから、聞かないと損します、それに向こうはプロですから」
小首を傾げて返してくれる。 違うんだけどなあ、と思いつつ言えずに、笑ってごまかした。

言葉通り、五分と待たせず目の前のショーケースの上に十個ほどの腕時計が並べられ、その中の一つに・・、目が止まる。
「これは?」
指さすと、
「ああ、それは‘スカーゲン’と言う北欧のメーカーの物です。そのタイプは軽量なんですよ」
熱の入った説明をしてくれる。
手に取ってみると本当に軽い。そして手に馴染む。
「いいなぁ、これ」
思わず口に出すと店員さんもにっこりした。この人が気に入ってる、おススメの時計なのかもしれない。


~~ (新井?)

苑田は自分の目を疑いたくなった。
通話しながら何気なく見た通りの向こう、デパートから一組の男女が出てくる。
男は新井だとすぐ気付いた。だが、横に居る女性に息が止まる。

― 苑田さん?」

急に黙り込んだ苑田に、電話の相手が呼びかける。
― もしもし苑田さん?どうしたんですか?」
― ・・・済みません、急用が・・・出来まして。またこちらからかけ直します」
― え?・・・ちょっと待ってくださ・・・」
仕事の話など出来る余裕も無く、相手の返事も待たずに電話を切り、立ち止まったまま二人がコーヒーショップに入るのを見届けた後、急いで通りを渡った。

(崇、今日は外回りだと言っていたのに、なぜ絹里さんと?・・・それに)
傍から見て楽しそうだと思い、不意に胸をつく感情が湧きあがってきて狼狽える。

苑田が、「いらっしゃいませ」の声を聞きながら店の中へ入り視線を投げれば、二人は買い物をした紙袋とトレイを手に通りに面したウインド―席へ座るところだった。
列に並びコーヒーを注文する。席を探すふりで店内を見回し、気付かれないような壁際に座る。
「何を話しているんだ・・・?」
熱いコーヒーを啜りながら小さく呟く。
ここから見ていても正しくカップルで仲も良さそうだ。ジクリと胸が痛んだ。息苦しくなって、目を逸らす。

内ポケットから着信音がして、飛び上がりそうになった。

― もしもし・・、もしもし、苑田さん?一体どうしたんですか?」

さっき話していた取引先だ。

― ・・・あ、・・済みません、でした・・・」
― まあ、いいですけど。急用、終わりました?」
咄嗟の言い訳を信用してくれている。仕事中だと気持ちを入れた。
― はい。大丈夫です。 返礼用の手帳の件でしたね」
― ええ。サイズが・・・」
会話を続けながら、チラチラ視線を投げてしまうのはどうしようもない。
自分の知らない崇に苛立ち、隠れるようにして見つめている自分にも苛立つ。

― 分かりました。では明日、見本を持って伺います」
― お待ちしています」

やっと終わった。
いくぶん冷めたコーヒーを飲みながら目を向け・・・、崇と視線がぶつかりそうになって慌てて顔を伏せる。
声と気配に神経を集中させ、そっと様子を見れば二人の背中が視界を横切って行った。 ~~






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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンドー4

   
~~ (何やってるんだ、俺は・・・)
店の外で別れた新井と絹里さんを見ながら、苑田は動けずにいた。

崇が女性と話をしているのくらい、何度も見ている。頼まれて、手を貸している事だって普通にあった。だのに、
「なんで絹里さんとお茶しているくらいで・・・」

“新井さんて、かわいいですね”

彼女と、崇のことで会話していた時のひと言がポカリと浮きあがってくる。
(まさか、絹里さん、崇を・・・?)
自分の考えに、固まってしまった。 ~~

◇  ◇  ◇

「ふぅん、崇にあんな娘(こ)がいたなんて知らなかったな」
通りで新井と絹里を見送っていた男が呟く。
崇の父親だ。

今日は、元同僚の船橋と待ち合わせ、話をした。帰りがけ、久しぶりの場所をぶらぶら歩いていて店に入る二人を目撃したのだ。
「今度帰ってきたら聞かないと」
息子の、‘初めての彼女’を見られたとうきうきした足取りで駅へ向かった。



「これ、どうやって渡そう」
夜、部屋へ戻って来てから、時計の包みを持って考える。父さんとおふくろは帰った時でもいいけど、ひろさんは会社で会うし、今年のX‘マスは平日だ。

「まだ、日があるから考えとこ」
あ、絹里さんにもなにかお礼しようか?
見られていた、なんて知りもしないから、俺はそう呑気に考えていた。

◇  ◇  ◇
 
忘年会、と称する飲み会が一晩に二件も続いた翌日は、苑田さんと回る日だった。
予定していたより早く用件が終わり、時間が空く。

「ひ・・、範裕さん、ちょっと、付き合ってくれないかな」
「ん? どこへ行くんだ?」
「お礼、しようかな、って」
「お礼?」
「うん、絹里さんに。この間選ぶの手伝ってもらったから。・・・だめ?」
立ち止った苑田さんの顔がきつくなる。 どうしたんだろう?
「そう言うのは二日酔いが抜けてから考えた方がいいんじゃないか?」
声が尖り気味になっているのは、ちゃんと相手の事を考えろ、と怒っているからなのか?
確かにまだ頭はずきずきするけど。
「でも、早めの方がいいかな、って思うんだ。X‘マスプレゼントじゃないから」


~~ 崇の言葉にカッとなってしまった。
『X‘マスプレゼントじゃない』? それなら別にプレセントを買うつもりなのか? そして、それにも俺を付き合わせるつもりなのか? ~~


「それくらい自分で選べ。絹里さんの好みくらい分かっているんだろ?」
「え?」
思いもよらない返事に、聞き返していた。
「絹里さんの好みって・・・・俺、知らないよ?」
「だったらおまえの好きなものでもあげればいい」

あ・・・、おんなじことを言う。

「何だ?」
「う・ううん、なんでもない」

なぜか、絹里さんと同じ事を言う、とは言わない方がいいと思った。

スカーゲンの時計を選ぶ時、まだ候補もあった。文字盤の色や、全体の大きさで悩んでいたら、絹里さんが、
「新井さんの好きな方をプレゼントしてもいいんじゃないですか?苑田さん、きっと喜んでくれますよ」
とアドバイスしてくれたんだ。


「とにかく、俺は(社に)戻る。買いたいなら行ってこい。ただし、報告書は纏めないといけないからそれまでに戻れ」
「苑田さん?」
思い出してる間に、急に機嫌が悪くなった苑田さんが歩き出し、置いて行かれてしまう。

「・・・・行っちゃったよ。なんで?」
首をひねるが、分からない。






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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その55

パーティに行ってきました。

といってもリアルではなく、ブログ村の中です。 よくお邪魔して読ませていただいている、とあるブログの方が、
「ブラインド・パーティに参加します」 と書いていたのに興味を引かれ、私もそのブログへ行ってみました。
いろんな方が、持ち回り幹事をして、お題や文字数を決め、参加を募る・・・パーティ。

5月に行われた時、作品出品者も、コメント側も、時期が来るまで匿名、が条件でした。   うーん、うーーんん。面白そう。
結果、飛びこんじゃいましたーーー!

無謀。

厳しいコメントもいただきましたが、刺激的でした。
そして今日と次回、その時出したSSを読んでいただこうと思います。 恥ずかしいですが。。。

SSって、書いたことがなくて、勢いでやったのでそっけなさすぎると思いますが、笑ってご容赦ください。   ではどうぞ。




「椎の木の下で」***

「その木を、傷つけるな。」
不意に声をかけられ、ギクリとして手を止めた。

「その木はもう運命が定まっている。だから、それ以上傷つけないでやってくれ。」
「なんで判るんだ?」
背後から近付く声に、自分のしていた事を隠すように体ごと振り返る。
そこにいたのは、俺よりは年上の男性だった。

「この木は、この場所にいてはいけないのだそうだ。もうじき、伐られる。」
彼は、ため息をついた。
「だが、そんなことをしなくても、これはもうすぐ寿命が尽きる。あと僅かなのに、人間には待てないのか。」
哀しげな目で俺を見て、木にそっと両手を当て、梢を見上げる。
その仕草が、木を抱きしめているようで、どきりとした。

男は、椎名、と名乗った。
「俺は濱野。濱野 英有生(はまの ひでゆき)。」


それから俺と椎名の付き合いが始まる。
花粉症の俺が樹木が好きではない事を残念がり、色んな木の生態を教えてくれる。
いつの間にか耳を傾けるようになり、熱心に聴くようになっていた。


「どうしたんだ?」
「・・・今日は花粉、ひどかったから。」
椎名は俺を見て目を丸くする。そりゃそうだろう。眼鏡にマスク、帽子まで被った俺は、どこから見ても、不審者だ。
 今までなら、風のある日はほぼ出掛けなかった。可能な限り家にいて、せめて雨でも降らないかと外を見ていた。
でも、椎名とはここでしか会えない。区画整理で伐られることが決まった椎の木を、同じ名前だからか彼はずい分大切にしていた。
「杉なんか嫌いだ。」
マスク越しのくぐもった声で不機嫌に言う。それでも椎名に会いたくて、出てきたから。
「・・・・・・これが、椎でよかった。杉なら会えなかったな。」
「・・・ごめん。そんなつもりじゃなくて・・・」
「分かってる。」
そう言いながらも寂しげな目をする。
「けれど、どんな木だって、種を作らなければ次代を残せないんだよ、英有生。」
「・・・うん」



別れは、突然。
「恐い・・・。恐いんだ、英有生。」
夜中に、部屋のドアチャイムを何度も鳴らした椎名は、開けたとたんそう言って俺に縋る指先も体も震わせる。
「と、とにかく上がれよ。ここじゃ落ち着いて話しも・・・」
「だめだ。・・・駄目なんだ。私はもう生きられない。木が・・伐られてしまうっ。
あ・・・あぁっ!」
「椎名?!」
激痛が走ったように椎名はもがいた。


「いやだ・・・。嫌だ、死にたくない・・・っ!英有生、助けてくれ、私を、あの椎の」
「椎名ッ!?」
不意に、椎名の体が薄れた。俺の腕を掴んでいた腕も体も、透き通っていく。
「ひでゆき・・・」


まさか・・・。
まさか!?

椎名は、本当にあの、椎の木?!

「!!」
「くっっ!」
腕に食い込むほど、椎名の指に力が入った。 そして、
「・・・英・ゆ・・・き。」
「ああ」
「最後、に・・・、君に会えて。よか・・・た。さよ・な・・・」
すう、と椎名が見えなくなる。
「椎名、しいなっ!」


俺は、走っていた。椎名と初めて会ったあの、椎の木のところへ。
息が上がり、よろけそうになる足を踏みしめ、やっと、辿りつく。
木は・・、切り倒されていた。






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『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー17

TVで除夜の鐘を聞きながら今年を振り返る。
(二十歳になって、彼女が出来て。和叔父さんに智、って呼び捨てされて)
来年は三年。もう就活も始まる。学生生活でゆっくり出来る正月はこれが最後かもしれない。
「なのに敏江おばさんが来るのかー。」
あーあ、と呟く。
お喋りなのはいいとして、何でも断定して喋る伯母さんの相手は疲れる。しかも俺の小さい頃の事まで持ちだして言うから、はっきり言うと・・・ウザい。
「未だにお年玉、ってのはいいけど」
母さんは断るんだけど、和叔父さんまでプリペイドカードをくれるから渋々黙認。
「だから気を使うのよ、敏江さんが来ると」
て、ぼやいてる。


「こんにちはー。おめでとー」

来た。
元日の、十一時を過ぎる頃よく通る声が玄関で響く。敏江おばさんだ。自営で、お店をやっているから、お正月はほぼ一番乗りでやってくる。

「いらっしゃい。あけましておめでとう、敏江さん」
「今年もよろしくね、枝里子さん。
これ、少しだけど。」
二階に居てもよく聞こえる会話。きっとまたお店の物だろう。そして次は、
「智―、下りて来なさい。敏江おばさんよ~」
ほらね。

「今行くー」
仕方ない、下りないとおばさんの方から階段上がってくるんだ。

「あら智ちゃん、おめでとう。また背が伸びた?」
「おめでとう、敏江おばさん。まさか。俺もう二十歳過ぎたんだよ。」
炬燵に入って見上げてるおばさんに可笑しくなってちょっと笑う。
「やあ、智くん。明けましておめでとう」
「おめでとう、政英(まさひで)おじさん」
政英おじさんは、おばさんと違って大人しい印象だ。

「おめでとうございます、敏江おばさん、政英おじさん」
「あら彩香ちゃん。まあ、着物?・・・似合うわねぇ」
姉貴の声が後ろでして、敏江おばさんが出した声に振り返ったら、ほんとに着物着てた
「馬子にも衣装さ」
「お父さん、ひどい」
「そんな事ないわよ。きれいだわ。」
「ふふ。ありがとう」
どこか自慢そうに笑ってしなしな座る。





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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンドー5

― 母さん、助けてくれない?」
― あら、どうしたの?」

結局おふくろに電話をかけ、無難な、ハンカチとストラップに決まる。

― でもさ母さん、どうして苑田さんに断られたんだか、分かる?」
― 崇・・・」
電話の向こうでおふくろが大げさにため息をつく。
― 説明するのが疲れるけど・・・。
  崇、範裕さんの事、好きでしょ?」
― 当たり前じゃないか」
― 好きな人に、女の人へのプレゼント買うの、付き合わせるの?」
― でもさ、絹里さんは休みなのに俺に付き合ってくれて、悪いなって思ったから」
― 範裕さんもそう思ってくれてるといいけど?」
― 思ってる・・・かな」

別に、悪い事したわけじゃない。

― それに、絹里さんは範裕さんともよく会ってるし、俺、話しやすくて助かってるんだ」
電話の向こうで、また特大のため息。
― 範裕さんの苦労が分かるわ・・・。
  とにかく、お礼なら早めに渡してあげなさい。それと、何を手伝ってもらったか、なんて言っちゃ駄目よ。」
― ・・・・全部は、言ってないけど・・・」
― 話したの?」
― うん」

― 母さん?」
― 我が息子ながら、ってやつね。顔を見て話していたら、頭を叩いていたわ。
  帰ってきたら理由を説明してあげるから、ちゃんと範裕さん、つれてくるのよ?」
― あ、うん・・・。分かった」

半分は理解できない話だった。 俺、やっぱ鈍いのか?



「母さん、今日は意外なものを見たよ」
「お帰りなさいおとうさん。なんです?意外なものって」
息子からの電話の後、うきうきと帰って来た夫にそう声をかけた妻は、次の台詞を聞いて、電話が先でよかったと心の底でホッとしていた。

「崇のガールフレンドを見たんだ。」

「ガールフレンド?」
「そう。
後輩の船橋と会いに出かけたろう?そのあとデパート散歩をしていたら見かけたんだ。崇とお茶をしていた。
少ししか見えなかったけど、可愛い子だったよ」
「そう・・・」
「あれ?喜ばないのかい、かあさん」
「い、いえ、そんな事は無いけど」
息子は現在、進行形で恋愛をしている、とは言えない。
(話したら、ひっくり返るかもしれないわね、お父さん)

息子の将来に夢を持っている夫を、今はそっとしておこうと思った。


絹里さんに‘お礼’を渡し、仕事と飲み会が続いたまま、十二日。

残業中に、苑田さんも席に座っているのが見えて、傍へ行く。
「苑田さん、明後日、大丈夫ですか?」
「・・ああ」
「あの、都合がつかないなら・・・」
「そんな事はない」
けど、視線はPCのディスプレイを見たままだ。気になってそこにいたら、一つため息をついて、
「ちゃんと行く。 約束は守るよ」
俺を見る。
「・・・約束だから、来てくれる?」
「言い方が悪かったな。
行くよ。約束、じゃなく、おまえの家だから」
「うん。 ・・・一緒に、行けそう?」
「まだ詰めないといけない件があるから、確約は出来ない」
「俺のほうから、連絡入れる」
「分かった。 ほら、仕事片付けて来い。俺はもう終るぞ」
「は、はいっ」
今夜は、範裕さんの家に行く予定だった。急がないと。






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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンドー6

少し気がかりだった絹里さんへの’お礼’も済んで、新井くん、苑田の部屋へ。・・・・なので、Rが入ります(R-18?)。
年齢に達してない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。
























やっぱり変だ、範裕さん。
いつもより二人の間に隙間があるし、話しかけても会話が続かない。

「ひろさん、俺、何かした?」
組み敷いた、仰向けの体を見おろしながら問いかけると、
「なにも・・・っ、ぁ、崇・・・っ、ぁ・あ」
白い喉をさらしながら答える。
「おま、えの・・、気のせ・・ぃ、やぁっ、そ、こ」
今までの愛撫でうっすら染まった体が、俺の指に反応してびくりと跳ねた。
もっと快楽に溺れたひろさんが見たくて、乳曇ごとベロッと舐める。
「ああっ!」


~~ 崇の愛撫に溺れそうになりながら、こんな事を思っていた。

絹里さんとの仲を勘ぐって妬いたのだ・・・とは、言えない。
何度も肌を重ねているのに。
’愛してる‘と、言ってくれるのに。
自信が無い。・・・俺は、男・だから。 ~~


「あっう!たかし・・・っ」
「よそ見しないで。・・・集中して」
どこか上の空のひろさんに、ちょっとだけ意地悪をする。
「ここも、イイところだったよね?」
「ゃ・・・、や、だっ、崇、あっ、ンッ」
全身がビクッと波うつのへ、待ちきれなくなって俺の雄をこじ入れていく。
「あ・・・ぁあっ。・・っ、ぃ・い・・・っ」
腰を抱えられ、短く喘いで俺を受け入れながら、ひろさんが頭を振る。
小さく刻みながら最奥に入れきると、背中までのけ反らせて、ひと声悲鳴をあげた。

「ひろさん・・。好きだよ、ひろさん」
両肘をついて両肘をついて顔を近付け、囁けば、
「・・・俺も、好き・・だ」
閉じていた目を開け、今でも頬を染めながら、照れくさそうに答えてくれる。
だから、
「・・・ぁ、崇」
「だって。ひろさんが・・・」
(可愛い、って言ったら怒るだろ?)
言葉の代わり、じゃないけど、ひろさんの中で俺の雄が一段と容積を増す。
一度引いて、また奥へ。
「んぁっ。・・・たか・し」
「いくよ?」
舌を絡ませるキスをして、こく、と小さく頷くのを見て体を起こした。

「っ、あ、ん・・・っ、んあっ、崇っ。・・・っく、はっう、・・ぃ・い」
「いい?ひろさ・・・、ここ、も?」
「ぁ、や・・っ、」
俺の動きに合わせて声が零れ、揺さぶられてさらに艶を増すひろさん。腕中でどれだけでもエロくなるひろさんにまた夢中になる。
「そ・・んっ。い・・、や・ぁ、そこ・・・っかり」
「やだ、なんて、・・ないよっ。ほら・・ここ、こんな・・・」
雄を擦りつけてストロークすれば涙をこぼして俺を見る。自覚が無いのは分かるけど、瞳の中の揺らめきに呑み込まれそうだ。
「やあっ!ああ・・んっ。あ・ぁ・・っく、」
軽く昇りつめたのか、俺の腕をぎゅっと握りしめ、中の動きもきゅうっと絞るように締めてくる。
「ぅあ・・、ひろさ・・ん」
くっと息を止めて爆ぜそうになるのをやり過ごし、グン、と奥を突く。
「たか・・っ、も。 もぅ・・、い・かせ・・」
喘ぎながら訴えるひろさんに抵抗なんて、出来ない。俺も限界だった。
「いいよ・・っ、俺も、もう・・」
肌を打ちつける音が早くなって、
「あっぁ、・・・だ、たか・・っ、ぁ・・、ィ、・・くぅ・・っ」
ひろさんが先に駈け昇り、俺にしがみつくように、けど背中も喉も反りか
えらせて達し、温かい体液をドッと溢れさせる。
「ひろさ・・んっ」
さっきより強い締め上げと匂いの刺激に、俺もひろさんの中を熱く濡らした。

荒い息を吐きながらまだ物足りない気持ちでいたけど、たくさんすると翌日のひろさんは、気だるい仕草と隠しようがないフェロモンを全身に纏わせて仕事をするから、俺はいつも一人でやきもきすることになる。
明後日・・、もう、明日?は実家にも来るんだし、仕方ないか、と諦めた。


朝、会社の最寄り駅から出たあたりで、声がかかった。
「「新井さん。・・あ、苑田さんも、お早うございます」
「絹里さん。おはよう」
「お早う絹里さん。どうしたの? 急用?」
「いえ、そうじゃないんですけど。・・あの、新井さん、ありがとうございま
した。これ、さっそく着けてるんです」
差し出す携帯についているのは、お礼にと渡したストラップ。






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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンドー7

  
「林檎のチャームなんてあんまりないから、すごくうれしかったです」
「そう?気に入ってもらえたんなら良かった。女の人にプレゼントなんて初めてだから」
「え、そうなんですか?」
「う・・と、その、おふくろ以外では、かな?」

話しながら三人で歩く。主に話すのは絹里さんで、俺と苑田さんは相槌を打つくらいだ。

「じゃあ、新井さん、苑田さん。また。」
「うん、また」
「絹里さんも仕事頑張って」
タイムカードを押して、別れた。

「新井、絹里さんと仲が良いんだな。知らなかったよ」
「それほどでもないけど・・。話しやすいことは確かなんだ」
「・・・普通それは、仲が良い、と言うんだ」
苑田さんは怒ったように言って、足を急がせて行ってしまう。
「苑田さ・・・」
「新井。朝から仲がいいな」
ポンと肩を叩かれ、
「中島部長。 おはようございます」
「お早う。あの子、総務の子だろう?いつの間に仲よくなったんだ?」
「違いますよ。絹里さんはチーム営業のサポートしてくれて」
「照れるなって、楽しそうだったじゃないか。 おまえも市島もそろそろ適適齢期か?」
「ばっ・・・部長!」
ははは・・・、と笑ってまた先に行かれる。

冗談にしたって絹里さんに悪いじゃないか。

俺は本気で思ってた。


十四日の午前。
時々、鞄を見ながら仕事する。
中には今夜持っていく両親へのプレゼントが窮屈そうに収まっていて、見るたび
気分が上向きになる。

「苑田さん、大丈夫かなあ」
俺は、午後、外回りの後直帰にしてあるけど、出来れば一緒に行きたい。ただ、金曜はいつでも気忙しさがあって・・・。
つい、苑田さんの席のあたりを見た時だった。

「はい、代わりました、二課の苑田で・・・え?!」
めったに聞けない声に周囲の視線が集中する。
「はい・・・、はい、そうですが。・・・・分かりました。確認してすぐ伺います。」

「苑田くん、どうかしたのか?」
電話を終えるのを待ちかねて、一之瀬課長が声をかけた。
「・・・はい。私の確認ミスかもしれません。ともかく先方へ行って来ます」
「分かった」
フロア全体が耳をそばだてているみたいで、やり取りが俺のところまで聞こえる。
苑田さん、手早く支度して席を立ち、視線を感じたのか、ぐるっと辺りを見回した。慌てて顔を伏せた人もいたようだけど、俺は目が合った時、思わず
(頑張って)
声には出さず言っていた。

(大丈夫)
苑田さんに伝わったようで、小さく頷き、微笑んでくれる。そして、出掛けていった。


「珍しいな、あいつがミスなんて」
苑田さんの姿が見えなくなってから、中島部長が一之瀬課長のそばに行き、話しかける。
「ええ。何か、あったんでしょうか?」
「・・・、まあ、あいつのことだから、すぐに取り戻せると思うが」
「そうですね」

部長たちの会話を聞きながら、俺ももう一度予定や書類をチェックし直す。
「うわ」
危ないところだった。相手先に提出する書類に抜けている所が。大急ぎで書き直す。
浦島商事さんは相変わらず厳しい会社だ。ミス一つが信用に響いてくる。
(後は、と・・・。うん、問題なさそう)

「うわぁ、やばい」

一課の中、向こうの机で声が上がる。
「どうした?作田くん」
「あ、小野山課長。すみません、ここ、どうしたらいいでしょう?」
作田さん、聞かれて小野山課長に何事か相談に行く。 不備が見つかったらしい。
(俺みたい・・・)

苑田さんのミスのせいだろうか、居合わせた全員が仕事のチェックをし直している。







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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンドー8



昼食を早めに社内で取り、席を立とうとした時、
「新井くん」
「あ、市島さん。これからですか?」
トレイを持った市島さんが俺の前に。
「ああ、そうなんだが」
「・・?」
座りながら何か話したそうで、言葉を選んでいる様子だ。
「・・・さっきの、苑田くんには・・驚かされたね」
「はい。ほんとびっくりしました。あんなに慌てるの、見た事なかったですから」
「うん・・・」
「市島さん?」
「いや・・・。彼もミスをする事があるんだな、と思って。
仕事中は、隙の無い完璧な人間だったし」
「そう、ですね。俺はあまり感じなかったですけど、教わる時はすっごく厳しかったです。」
「・・君たちは、仲が良いから。 ただ、あんなミスをするなんて、何か合ったんだろうか?少し気になったんだ。
新井くん、知ってるかい?」
「え?・・いえ、それは・・・」
聞かれて初めて、気になった。

苑田さんのお陰(?)か、外回りは無事に終わる。雑用ができて一度社に戻ることになり、電車に揺られながらぼうっとしていたら、市島さんんの言葉を思い出した。

そういえば、この頃苛々しているみたいだった。
俺には話してくれないけど・・・、聞いてもいいのかな?



「たまにはおまえのミスもいいもんだ。お陰で営業部全体が締まった」
「何です?それ。  俺は気つけ薬かショック療法ですか」

電話の直後すぐ行った事もあり、どうやら無難に収まって戻ってきた苑田は、中島に声をかけられて、社外でファミレスに座っていた。

笑いながらコーヒーを飲んだ中島が切り出す。
「・・・チームで営業するのは、疲れるか?」
「いいえ」
それには即答できたが、
「市島と揉めたか? それとも新井か? 」
続けられ、言葉に詰まる。

「・・・どちらでも、無いです。俺の、気持ちの問題ですから・・・」

目を逸らしてしまう。
「そうか?
ま、無理はするな。根を詰め過ぎて年末年始に休まれたら困る。
なにしろおまえは目上の連中に受けがいいからなあ」
「先輩・・。俺の心配してくれるのって、そんな理由ですか?」
「笑うな。俺に取っちゃ大問題だ。上の機嫌がいいとごり押しも効くんだよ」

軽い調子で気にかけている事を知らせてくれる。
苑田は、中島と笑い合って仕事に戻った。


◇  ◇  ◇


「ただーいま~」
「おかえり。あら、一人? 範裕さんは?」
「・・まだ。遅くなるって」
母さん、俺より範裕さん?コートを脱ぎながらそう思っていたら、

「お、崇だけか。範裕くんは?」

声を聞きつけて玄関まで来た、父さんまで。
「範裕さんは後から来るって。・・・・せっかくプレゼント持ってきたのに」
後半の呟きは聞こえなかったらしい。
「まあまあ。・・崇に聞きたい事があったからな。
あ、母さんお茶。崇と二つ」
「はいはい」

「何?聞きたい事って」
座卓のある部屋へ手招きされて座ると、父さん、にこにこしながら言いだす。
「どこまでいったんだ?」
意味不明な言葉に、
「どこまで・・・って?」
「だから、どこまで進んだんだ?もう、・・・キスとかしたのか?」
「キ !?」
絶句する。

「かわいい子だったじゃないか。会社の子なのか?」
はあ?

「と・・、父さん」
「照れなくったっていいぞ。それで、お正月には連れて来るのか?」
「ちょ、ちょっと待ってよ父さん。」
訳が分からず、話を進める父さんにストップをかけた。
「何の話か分かんないよ。最初から言ってくれない?会社の子、とか・・・・キス、とか」
最後のひと言は、口ごもってしまう。

ひろさんとは、それ以上をしてるのに。






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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その56

明日は、夏至。1年で一番夜の短い日、です。冬の冬至ほどメジャーでは無いですが、ちゃんとした季節の区切り。24季節の10番目です。
主に冬瓜(とうがん)を食べたり、関西ではタコを食べたり、関東では小麦で焼き餅を作って神さまにお供えしたりするんだそう。
タコやおもち。どちらも稲がよく育つように・・、との願いがあるんだとか。

一方外国では恋愛に関する行事が多い様子。
スウェ―デンでは未婚女性が7種類の草花を枕の下にして寝ると・・・、
フィンランドでは、夏至の夜に交差点に立ったり、井戸や泉を覗くと・・、
ギリシャ北部では、無花果の木の下に自分の持ち物を置いておくと・・、

将来の伴侶の(主に夫)姿や顔が見られる・・。願いが叶う・・・。なんですって。 不思議ですね―。
イギリスでは、ストーン・ヘンジへ行って、特定の石の間から出てくる日の出を見る人が多い、らしいです。


さて今日は、前回の続き。 「椎の木の下で」 の後篇を。  では、どうぞ。

椎の木が切り倒されたのを見た、濱野くん。



「・・・あの」
「なんだい?」
「この木、少し、分けてもらっても・・・」
「はあ?」
「枝先でいいんです。少し分けてください!」
俺の剣幕に押されたのか作業をしていた人のうちの一人が、鋏で小さな枝を切って渡してくれる。
「ほら、これでいいか?」
「ありがとう、ございます。」
「あんた、それを育てる気かい?」
やり取りを見ていたのか、別の人が声をかけてきた。
「え・・・?」
「そいつを挿し木して大きくするつもりなのか、って聞いてるんだ。」

育てて大きく・・・?

「で、出来るんですかっ?」
「ああ。大概は芽や根が出る。ただ、そうするつもりなら」
その人は作業ズボンのポケットに手を入れると、
「これも、持ってけ。」
ドングリをいくつか手の平に乗せて俺に差し出す。
「これ・・・」
「この、椎の木の実だ。これだけあれば芽を出すのもあるだろう。」
ほら、と差し出す。
「ほんなら、枝ももうちょっと持ってけよ。どうせこのまま燃やしちまうんだ。」
「燃やす・・・?」
「ああ。ここんとこ見ればわかるけど、この木、中が腐ってて、もうダメなんだよ。どっちにしても切るしかなかった。」
「そうなん、ですか・・・」
何本かの枝を、水を含ませたタオルを巻いてもらって、ドングリもポケットに入れて項垂れて歩き出す。

「そういや、 『だが、そんなことをしなくても、これはもうすぐ寿命が尽きる。』 なんて言ってた・・・」
ぐす、と鼻をすすりながら思い出す。
「ごめんな、椎名。おれ、全っ然気付かなくって・・・・・・」
枝を抱きしめ、泣きながら、帰った。


あれから、ずい分時間が経った ^


「濱野先生、この木は?」
「ああ、これは、私の生きがいの木なんだ。」
「生きがい、ですか?」
「ああ、先ほど仰っていた椎の木ですね?」
「そう。」
樹木医となった俺の家の、庭に育っている椎の木。俺の人生を変えた木は、まだやっと十数年しか経っていない。
「この木のおかげで、樹木医になれたんだよ。」
「そうなんですか。」
インタビューに来た雑誌記者に答えて、幹に手をつけ、見あげる。



暖かくなり、ようやく外に居られるようになった夜。酒とグラスを持ち、椎の木の下に座る。
「椎名、いつになったら出て来てくれる?それとも、俺のこと忘れたか?」
少しの酒を根元近くに注ぎ、幹に寄りかかりながら座り、グラスにも注いで飲みながら愚痴る。
「早くしないと、おれ、年寄りになっちまうからな。」

「それは困る。」


ここまでが、作品として出したものです。この先はお楽しみ。


背後から聞こえた声は、覚えてる声より・・ト―ンが高い。
「私を、育ててくれた恩を返すくらいの時間は、若くいてもらわなくては」

話し方は、変わらない。ちょっとばかり時代劇みたいな、言い方。 だけど、どんな姿なのか、恐くて・・・振り向けない。
「英有生。私をここまで甦(よみがえ)らせてくれて、ありがとう。」
ふわっと背中から抱きしめられる。

あぁ、椎名だ。

「・・しいな」
「英有生。また会えて、うれしい」
「俺も・・・」

回された腕を、ぎゅっと握った。







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『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー18

 よく喋る敏江おばさん、和弘さんに突撃、できるんでしょうか?



「何だかきれいになってない?彩香ちゃん。・・あ、はい、お年玉」
「そんな事ないと思うけど。ありがとう」
素直に手を出す姉貴。褒められて、はにかむ顔が俺にもきれいに見えてちょっとドキッとする。
でもって、続いて入って来た父さんと和叔父さんも着物を着てて、さらにびっくりした。

「あらあらどうしたの?二人とも」
「練習も兼ねて、ちょっとね」
「彩香に合わせてみただけだ」
和叔父さんはちらっと俺を見て、笑いながら座る。父さんは、正座しか出来ないから苦手なんだと言いながらだけど、和叔父さんはすっと座って、背筋も伸びてかっこいい。
凛としてる、って言うのかな。
大人四人と俺、着物の姉貴で炬燵は一杯になる。

「明けましておめでとうございます、敏江さん」
「おめでとう。今年もよろしくな」
「明けましておめでとうございます。こちらこそよろしくね」

改めて挨拶して、敏江おばさん、さっそく横に置いた手提げから何かを取り出そうとして、
「お父さん、お屠蘇、出します?」
台所で支度してる母さんの呼びかけでストップ。
「ああ・・。どうします?政英さん」
「え・・。車で来てるので、ちょっと。敏江は?いただくかい?」
「いえ、話を済ませてからいただくわ。
和弘さん、あのね」
勢い込んで話しだそうとして、
「敏江さん、食事の後で構いませんよね、その話」
こんどは和叔父さんに止められてしまう。
「いいお話なのよ。お写真も預かって」
「今広げるのは失礼だと思いますよ?枝里子さんにも」
敏江さんの好きなもの用意してあるのに。そう続けられて、今写真とか出すのは思いとどまったらしい。
「いいわ。じゃあ後でちゃんとね。」
「はい。
枝里子さん、少し早いけどお昼にしませんか?」
「こちらはいつでも。
智、手伝って」

俺?

「僕も手伝うよ。彩香ちゃんは動きにくいだろうから」
あー、そうか、着物だっけ。手の下というか、袖ががひらひら長いから、踏んずけたら転ぶな。
和叔父さんが立ちあがったので、俺も台所へ行く。




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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンドー9

「そ、そうか?・・・いや、二・三日前、おまえが女の子とコーヒーショップから出てくるのを見かけてな。ずい分親しげだったから・・・・」
残りはもごもごとお茶ごと呑み込んでしまったけど、やっと分かった

「それって絹里さんの事?」
「絹里・さん?きれいな名前だな。その、絹里さんが彼女なのか?」
「違うよ。彼女は、会社の・・・、チームメイトみたいなもん」
急いで否定した。
ここで誤解を招いたら困る。だって、本当に好きなのはひろさんなんだ。

「でもなあ・・。あの子なら」
「お父さん。
崇の人生は崇のもの。私たちは応援するだけよ。  ね、崇」
お茶を持って来て俺の隣に座った母さんが、父さんの勢いを持て余していた俺に助け船を出してくれた。
サンキュー。

どこか気まずい雰囲気を救ったのは、ドアチャイムだった。
「範裕さんだわ」
母さんがぱっと立って迎えに行く。

「今晩は。・・・すみません遅くなって。これ、少しですが」
「あらそんな。時間を決めていた訳じゃないし、いつでもよかったんですよ。崇もお父さんも待たせておけばいいんだし。
仕事、大変だったんでしょ? さ、どうぞ」
「おじゃまします」

話声が近付き、台所へ入って行く気配。
こっちに来ないのが分かってほっとした。父さんがひろさんにまで聞いたらどうしようと思ったから。

「お父さん、崇、できたわよ」
ひろさん、しばらく台所にいたようで俺たちの所に来なかった。母さんに呼ばれて行くと、テーブルの上はX‘マスに。
「どしたの? これ」
座りながら聞く。
「どうせ崇帰って来ないでしょ?だから、ちょっと早いけど作ったのよ。範裕さんが持って来てくれたものも足したから、豪華になって。
範裕さん、手伝わせちゃってごめんなさいね」
「いえ、楽しかったです」
母さんに笑いかけるひろさん、本当に楽しそうだ。
「お、シャンパンまである。気を使わせちゃったか?範裕くん」
「そんなことは。時期的に色々出てますから」

母さんの料理とひろさんの差し入れで、食事は楽しく美味しく盛り上がった。デザートにケーキまで出てくる。
これも範裕さんの手土産だ。
「それだけじゃないの。プレゼントまでもらったのよ」
ほら、と母さんが見せてくれたのは、可愛らしい花籠と、手袋。
「この花、プリザーブドフラワーって言うんですって。きれいでしょう?それとこの手袋はお父さんに。大工仕事にも使えるんだそうよ」
崇は持って来てくれないけど、なんて続けるから、
「そんなことないよ!俺だって用意したあるんだから!」
むきになって言ってしまった。

「そう言えばこの間、『絹里さんと選んだ』って言ってたな。それだったのか?」
範裕さんの声が低い。
「範裕くん、絹里さんを知ってるのか?」
俺より先に、酔った父さんが食いついた。

「え、ええ。最近・・、会うことが多いので」
戸惑う範裕さんに気付かないまま、父さんは話し続ける。
「なんだ、崇おまえ、父さんたちより先に範裕くんに紹介してるのか?」
「違うってば。さっきも話したろ?絹里さんはチームメイトで、範裕さんも一緒なんだ」
「範裕くん、君の目から見て、絹里さんは・・、絹里さんと崇はどんな風なんだ?」
聞こえてないし。
「さあ・・・。
確かに一緒に仕事をしてますが、崇はそのあたり、話してくれないので」

ひろさん・・・。






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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンドー10

後半、ちょっとだけRになるので(R-15?)年齢に達しないかた、苦手な方はご遠慮ください。 大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。






















お父さん、あんまり先走っても崇が困るわよ?  それに、時期が来たらちゃんと紹介してくれるわ。ねぇ、崇?」
「あ・・、うん」
「それなら、いいか・・・。や、別に急ぐ訳じゃないからな。
ただ、父さんも親戚の子供たちだけじゃなく、崇の子供にも小さな椅子とか積木とか、作ってやりたいんだ。
 結構評判いいんだぞ」
「そうだったわねー。夏休みの自由工作に、って頼まれた事もあったし」
父さんのポロリとこぼした本音と自慢に、母さんが笑いながら補足する。

俺は、いきなり聞かされた話の内容に内心焦っていた。
ひろさんは会話に加わらず、黙って聞いている。

「ああそうだ、範裕くん。君も結婚するときには言ってくれ。棚の一つもプレゼントする」
「・・ありがとうございます。その時にはぜひ」
口調にハッとしてひろさんを見ると、営業用の笑顔になって・・・いた。

「そうそう崇、プレゼントって?」
母さんが話を元に戻す。
「え、と、鞄の中 」
「そう言うのは先に言ってくれないと。せっかく買って来てくれたんでしょ?出して」
「はいはい」
玄関に置きっぱなしだった鞄を取ってきて、
「これ、母さんの分。こっちは父さん」
「範裕さんには?」
「あるよ。 あるけど、ひ・・範裕さんは当日だって会えるから今日は持って来てない」

見せたら絶対何か言われる。特に母さんが。

「そう?じゃあいいわ」
それ以上追及されることも無く、父さんもエプロンを喜んでくれて、
「二人からもらって、揃うのがいいなあ」
いそいそ両方着けてみて笑っている。

「範裕さん、明日休みなんでしょう?泊まっていってね」
良い気分の父さんが一番先に眠くなって部屋へ行き、片付けをしながら母さんが当然のように口にする。
「・・・いいんですか?」
「遠慮する必要なんてないでしょ? 崇、お風呂一緒に入っちゃって。時間空くと冷めるから」
「わかった」


「ごめん・・・、ひろさん」
「どうして謝る?お父さんは普通の希望を言ったまでだ。おまえが気にする事じゃない」
「でも」
「ほら、交替だ。のぼせるぞ、崇」
風呂の中で順番に髪や体を洗い、さすがに男二人は入れない湯船に浸かっていた俺は、ひろさんの言葉に立ちあがる。

「あ」

「・・っ、触るな」

ひろさんが体を捻って、俺の手が触れたところを逃がそうとする。
顔が赤くなったのは、そこに、俺の痕があるからだ。
「やだ。俺の付けたものだし、いいじゃないか」
「崇・・・ッ」
洗い場に立って並べば、水気を含んで光る肌が俺を刺激し、逃げられないように背中から両手で捕まえる。

「ひろさん」

風呂場に二人で、なんて、・・・・・事故で怪我をして以来だ。
「ば・・かな事してないで、放せ」
「なんで?」
ベッド以外で、裸で密着するなんてそうはないから、妙に興奮して、そのまま抱きつく。
「ひろさん・・。好きだ」
耳たぶを舐めながら小声で言うと、一瞬体を硬くしてから力が抜け、頬が赤くなった。
そそられて、耳の後ろに口付ける。
「んぁ・・っ」
震えて、背筋を伸ばすように反応するから、俺も。
「ば・ばか、ここでそんな」
ひろさんの声が狼狽え、離れようとする。
「ひろさん、急に動くと、転ぶよ」
わざと腰を押し付け、胸に腕を回して撫で回すと、音を立てて息を吸う。
「やめ・・」
動けば、カタチになりはじめている俺の雄がもろに当たるからそれも出来ず、ひろさんは言葉で俺を止めようとした。

「ここでは。 音が、響く・・・から」

「ひろさんが大声出さなきゃ、わかんないよ」
指で探って胸の小さな突起をぐっと押す。ビクッと体が撥ね、大きな息が漏れた。







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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンドー11

前半、続きのRが入ります(今日はR-18)なので、年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。






























「だ・めだ・・」
「嫌だ。したい」
「崇」
片手を滑らせると、ひろさんの中芯も首をもたげはじめていた。
「ゃ・・」
「そう?」
輪にして包み込み軽く上下させると、手の中ですぐに硬くなる。
「んん、んっ」
「ひろさんのココ、喜んでる。自分で確かめる?」
耳元で、言葉と一緒に息を吹き込むと、立っていられなくなったのか、壁に手をついた。荒い息遣いが、喘いでるみたいに聞こえる。
ごく、と唾を飲んだ。
「このままだと外へ出られないよね?してあげる」
「な、何言って・・、ぁ、あぁっ」
親指で、蜜を零しだした割れ目をスリスリ弄れば、ひろさんは自分で口に手を当てて声を抑えようとする。
「いい? ひろさん。・・また、硬くなった」
「んっ、・・。んぅ・・っ、ぁ、ふっ」
胸の突起と雄を責められて、ひろさんが身悶える。顔は見えないけど、いつもの、俺を煽る表情をしてるんだろう。
ぬめりが増して、手の動きとともに卑猥な水音が聞こえる。俺の雄も、もう臨戦態勢になって、ひろさんの白い尻に何度も擦りつけていた。

「んー・・っ、ふ、ぅっ。 んんっ、んぅぅ――ッ」

瞬間、ひろさんの体がビクン、として、手の中へ逐情し、がくっと膝の力が抜ける。
肩で息をするのを抱き支えながら、今まで見たことのない痴態にタガが外れた。
ひろさんの体液で濡れた手を窄まりに押し当て解そうとして。

「崇、母さんもう寝るから。湯あたりしないうちに出るのよ」
範裕さんの布団、一階(した)に敷いてあるからね。と風呂場の外から呼びかけられる。
固まった。。

見られてもないのに返事が出来ない。
その隙をつくようにひろさんがシャワーを出す。
「わぅっ」
最初の冷たい水がモロにかかって思わずひろさんを放して顔に両手をあて、くしゃみしていた。
「湯当たりじゃなく、湯冷めだな。さっさと洗ってしまえ。替わってやるから」
「ひろさあん・・・」
「気が済んだろ?」
イカされたひろさん、乱れていたのにもう立ち直って湯船に体を沈めてしまう。
俺も、すっかり気持ちが削がれて、小さくなったムスコごと、体を洗った。

母さんが用意してくれた布団で、ひろさんは寝てる。俺は二階の自分の部屋で、・・・眠れない。
自分の体を持て余してるのもあるけど、ひろさんが気になって。

何度目かの寝返りのあと、決めた。グズグズするのは俺に合わない。
山だって決断するのが遅れたら、取り返しが効かないんだ。


階段を下りる時だけ気をつけた。途中、軋む段があるんだ。
ひろさんはもう寝てるだろうか?
そっと呼んでみて、寝てたら引き返そう。 でも、起きていたら。

「崇?」
階段を降りたところでばったり会う。
「どうした?俺は喉が渇いたんだ。おまえはトイレか?」
「あ・・、う、んまあ」
つられて頷き、取ってつけたようにトイレに行って、すぐ追いかけた。

「ひろさん・・・。入っていい?」
襖の向こうで、動く気配がする。
「ひろさん」
「続きをしたいなら、だめだぞ」
「そ・んなんじゃないよ。話がしたいだけ。・・・だめ?」

何か音がして、すっと襖が開く。小さくした灯りの中にひろさんが立ってて、
「少しだけならいい。 入れ」
入れてくれた。


「それで?何を話したいんだ?」






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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンドー11

上着も着ずにいた俺をひろさんは布団に座らせ、一緒に掛け物をかけてくるまる。
こんなことで、と笑われそうだけど、聞かないと。

「あのさ。ひろさん・・変じゃない?」
「変、ってどこが?」
「だから絹里さんの」
とたんに眉が寄る。
「彼女の話をしたいのか?」
「ひろさん・・、絹里さんの事、嫌い?」
「・・・・・嫌いじゃ、ない」
「でも」
「その話はしたくない」
「ひろさん」
「おまえが好きなら付き合えばいいだろう? もう寝る」
「ひろさん!」
苛立った顔をして、俺を押しのけ横になろうとしたのを引き戻そうとして、
「あ・・・っ」
上に乗り上げてしまった。
『いい加減にしろ。寝ると言ったはずだ』
時間も時間だし息がかかるほど顔が近いから、ひろさん、小声で拒否する。
『分かんないよ。どうして俺が絹里さんと付き合うんだ?』
手足をついて体を離し、俺も小声で聞き返した。
『気が合って、仲がいいんだ。 おまえのお父さんも喜ぶ』
『ひろさん!』
言ってから唇を噛み、プイッと横を向くひろさんにイラッとした。
『俺が好きなのはひろさんだ、って知ってるだろ? なんでそんな事言うんだよ』
少し無言のあと、
『・・・。俺は、おまえと結婚は、出来ない』
『関係ない』
『絹里さんは・・、可愛い女性(ひと)だし』
『ひろさんの方こそ、絹里さんを気にしてる』
『それは・・・』

口ごもるのを見て、あることに思い当たる。
ひろさんだって、最初から男だけでも、受け入れる方でもなかった。ってこと。

『ひろさん。
俺に抱かれるより、女の人を好きになって、抱きたい?』

恐るおそる、ひと言区切りの問いかけに、
「違う・・!俺は、おまえと絹里さんが『並んで歩いてるのを見かけて、似合うと思って・・・。妬いた・・・んだ』
途中から慌てて声を小さくして、目まで伏せたひろさんの答にびっくりする。
「ひろ・・『ひろさん?・・・も一回言って?』
俺と絹里さんを見かけた、ことより、最後の言葉に、聞き間違いかと思う。
『範裕さん』
そっと髪を撫でて、待つ。

『・・・おまえが』
『俺が?』
『絹里さんと一緒に居る所を、見て・・・・、嫉妬、した』

『ひろさん・・!』
嬉しくって、耳まで赤くしたひろさんをぎゅうッと抱きしめた。
まさか、焼き餅やいてくれるなんて思わなかった。
『すっごく嬉しい』
桜色になった耳に囁くと、
『も・・、いいだろ。寝るんだ』
重いし退け、と邪険な言い方をする。照れてるんだ。
『はいはい。お休みなさい』

いつの間にか起きてしまった分身をまずひろさんから離し、立ちあがる。
(これ以上居ると俺が辛いし)
見られないように苦笑し、部屋へ戻ってからヌこう・・、と。

「崇」
電気を消し、背中を向けたところで呼びとめられ、振り返る。闇の中、布団が動いて起き上がったような、シュッと布の擦れる音がして、ひろさんの手が寝間着の足に触り、
「あっ・・。ひろさ・・・」
股間にまで上がってきてそこに触る。
『だめだ、よっ。触んないで・・・』
『さっきから当たってた。こんなにしたまま寝られるのか?』

(ひろさん、意地悪だ)

『そんな・の、いいだろ? 何とかするし』
だから、強弱つけながら言わないでほしい。歩けなくなるじゃないか。
『・・・じっとしてろ』

え?・・・・ええっ?!






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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その57

最近また困ることが起きてます。 切手で。

懸賞とか応募。すると買いに行かないといけないんですよねー52円切手。切手印刷積みの、旧の葉書の場合は2円切手。
封書になるともうちょっと大変。表書きを終わらせたあと切手を貼ろうとすると・・、ガ―ン!
「貼るスペースが無いっ!」
なんてことも。

見慣れたサイズの切手は、縦22.5mm☓横18.0mmほど。 ですが、いつの頃からか丸や楕円、細長いものからシール形式の物まで登場していて。


そう言えば、切手を集めたこと、ありますか?
私、今でもしています、シート買いで。

ただ、ね。 種類、大過ぎ!

○○記念、○○シリーズ、沢山たくさん。 果ては、結婚記念・入学記念などという個人の切手まで。
億万長者じゃないんだから~~!

なので、気に入ったものだけ買ってます。 みなさま、はがきや手紙、出すことあります?


『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー19


炬燵テーブルは、料理や取り皿なんかですぐいっぱいになった。和様とりませのお節は、鶏肉と野菜の八幡巻や錦玉子・大人用のブランデー入りの栗きんとんなどなど。
政英おじさんはノンアルコールを、と言ったので俺はビールを自分のグラスに入れる。
「まあ、智くん、ビール飲んでいいの?」
目ざとく見つけた敏江おばさんに、
「去年二十歳になりましたー。へへ」
「敏江さんの所はまだ一人・・、高校生だったかしら?」
「そうなのよ枝里子さん。急に大学行きたいなんて言いだして困ってるの。
あら、これ美味しい」
ばくばく食べる敏江おばさんの周囲は、見事に空になっている。そして、新たに箸をつけたのは和叔父さんが買ってきた、ハム。
「ああ、それは豚とろハム、って言うの。豚の頬肉のハムなんですって」
「へえぇ。豚のほっぺなの」
やば、無くなりそう。 俺も狙ってたから急いで手を出した。

「あー、美味しかったわ~。枝里子さんのところは色々出るから、来るの楽しみなのよー」
「ふふ、ありがとう」
食後のコーヒーを飲みながら、まだお菓子をつまむ敏江おばさん。 よく入るよな。
お節や食器を片づけて、今あるのはデザートだ。
バラの花の形をしたマドレーヌや和菓子、ポテチ、クラッシュゼリーに蜜柑。

「さて、和弘さん」
満足した敏江おばさん、座りなおした。
「縁談はお断りですよ。」
お猪口を置いた和叔父さん、身も蓋も無い言い方をする。
「あら、写真も見ないでそんなこと言わないで」
「言います。」
「どうして?」
「今、好きな人がいるんです」

爆弾発言に、みんなの動きが止まる。 いや、

「そうか、おめでとう和弘さん。いつからなんです?」
普通に聞く政英おじさん以外は。
「気がついたのは最近なんですよ、政英さん。だから交際とかもまだ」
「おや、そうなんですか」

「ど・・・、どういう事なのっ」
「ですから、まだ片想いなんです。」
「だ・・たらお見合いしたって」
「敏江さん、それは相手の方に失礼ですよ」
立ち直った敏江おばさんが、紙袋を取りだすが、和叔父さんも譲らない。
「で、でも、会うだけなら・・・」




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『プリズム』

『プリズム』21**ガール・フレンドー12

今日はしっかりRです(R-18)横にはならないんですけど~。腐腐。 年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。






















グイ、と両手で寝間着を下着ごと引き下ろされ、硬くなっている肉棒が空気に触れたすぐ後。
「ひ・・ろさ・・・っ」
手で隠す前に温かく濡れた場所に包まれる。

ひろさんが俺のを咥えたんだ。

「あ・・」
声が、出てしまう。
唇がゆっくり幹を下りていくと、それだけで胴震いする。
舌が絡み、表面をなぞりながら上下すると快感が波になって襲ってくる。

「や・・やめ・・・」
一気に硬度を増して限界に近付いたそこを刺激されたら、出さないでいられる自信が無い。

『いいから。黙って感じてろ』
ちゅ、と音がして、一度口を放したひろさんが言う。
電気を消したばかりで目が慣れていないけど、体に伝わる感触で、膝立ちして俺の腰に手を回しているみたいなのが、わかる。その姿を想像しただけで、ヤバい。
再び咥えられ、口と舌で扱かれる。腰が揺れた。
『・・く・ふぅ・・っ、』
支えを求めて、ひろさんの肩に手を置いた・・つもりが、指先に髪が触れる。あ、と思ったが、今さら位置を変えられない。
頭に手を置いたためか、ひろさんの口の中いっぱいに含まれ、ドクンと全身が脈打った。
声が出そうになって唇を噛む。
『むぅ・・、っ、んっ、・・・はっ』
ひろさんの息が苦しそうで、でも、何度も出し入れされ、まるで口を犯している錯覚までしてくる。湿った、粘りのある水音が聞こえてくるのもかき立てられるばかり。

『く・・ぅっ、』
興奮したまま喉を突くように腰を入れ、苦しげに呻いたひろさんがえづくように喉を締める。
「ぅぁ・・っ」
絞られた雄が弾けそうになる。 けど、ひろさんは、お返しとばかりに腰に回していた手を俺の尻の方に動かして、
「ひろさ、ん・・・?なに・・」
ビクっと肩まで撥ねる。指を立てて服越しに尻の狭間を撫でおろしたんだ。
「んんっ」
『ぐっん・・っっ』
当然その刺激は俺の雄を膨張させ、さらに髪を掴んでしまってひろさんが身体を硬くする。
誘導されていた快感が暴走してただ解放されたい思いだけになり、無意識に奥へ押し込んでいた。

瞬く間に達して、欲望を放つ。
声をころしていた分、解放感が半端じゃなかった。


余韻に顎が上がり口を開け、荒い息を吐く間を縫って、
呑みくだす音と、また唇が扱き上げ、ちゅぷ・・と小さな音まで聞こえる。
「ぅあ・・、ひろさ・・・っ」
出しきれていない青苦い体液を啜るように繰り返され、雄が残りを吐き出す。

ひろさんがようやく口を放し、咳きこんだ後大きく息を吐いて乱れた髪を階下げた時も、俺の雄はまだ硬さを残していた。
けど、まさかもう一回なんて、言えない。

「これでしばらくしたら収まるだろ? 階段は上がれるな」
掠れた、からかう声でそう言って、ひろさん、俺の雄をつん、とつつく。

わ・・、だ・ダメだって」
今度は手でガードする。
「おやすみ」
下から見上げて、ひろさん。
「おやすみなさい」
返事して、襖を閉めた。


はぁ、とベッドでため息をつく。
(あれで、ひろさんが見えるくらい明るかったら、俺・・・、どう、してたろう・・?)
柔らかで、微妙な動きを見せて雄に絡みつき、撫でた舌。
硬く、筋の浮いた屹立を吸って、締めたり、緩めたりしながら上下した、唇。

「・・・っつ」
思い出したら、手が伸びていた。
やっぱり、一回だけじゃ、足りない。 まだ全身が興奮してる。
(ココを、ひろさんが・・・)
「ん・・。・・・っつ、ん、はぁっ」
握った雄が、ぐん、と硬くなる。
「ぁ・・ひろっ、さ・・・」
慌ててベッドの上を探り、放り出してあったタオルを掴んで被せる。
「・・・くう・・ぅっ」





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