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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-2

「うっそ・・」
「あの絹里さんが、告白・・?」
「あ・・、新井さんっ!追いかけてあげないと! 」
「お・俺? 」
「そうですよ!早く! 」
「きっと休憩コーナーです。私たち今までそこに居て、もう誰もいないはずですから!」

そう急きたてられ、とうとう後を追いかけることになってしまう。
(でも、絹里さんが、・・・俺を、好き?)
なんでそんな。好かれる理由なんて思い浮かばないけど――――。


絹里さんは、言われた通り休憩コーナーにいた。
「絹里さん」
背中に声をかけるとびくっとして、
「ご・・ごめんなさい・・。迷惑、でしたよね・・・」
向こうむきで、涙混じりの声で言うものだから、
「そんなことないよ。俺だって絹里さんのこと嫌いじゃないし。・・・びっくりは、したけど。あの、だから、泣かないで」
「な・泣いてませ・・」
すん、と鼻をすすっている。
わたわたとポケットに手を入れても、こんな時にハンカチが無くて鞄まで開けて探して。
あったのはコンビニでもらうお手拭きだけ。

「絹里さん、ごめん、これしかないけど」
後ろから手を伸ばし、肩越しに差し出した。
「・・・。ありがとうございます」
受け取ってくれて、ビニールを破る音がする。俺は財布を出して自販機に入れ、温かい飲み物を二つ取り出した。

「新井さん、すみませんでした。・・あの、もう大丈夫です、から」

少ししてこっちを向いた絹里さんは落ち着いたようだ。だから軽めに、
「じゃ、水分補給。はい、これ」
一本渡す。
驚いて目を瞠ったのへ笑って、
「すぐ返事とか出来ないけど、好きか嫌いかだったら、好きだよ。それでもいい?」
そう聞いた。
「・・はい。」
「うん。俺、仕事残ってるし。絹里さんはもう終わりだよね? お疲れさまでした」
「はい。お仕事がんばってください」

俺はこれで終わったと思っていた。
女子の包囲網なんて知らなかったし、思いもよらなかった。

翌日、出社すると妙に視線を感じる。
振り返ると決まって二・三人の女子社員がいて、目が合うと囁き合いながら行ってしまったり、クスクス笑ったり。
「なんだろ・・・? 」
背中に何かついていつのかとトイレに入ってスーツの上着を脱いで見たけどそれも無し。
「寝ぐせとかでもなさそうだし」

理由が分かったのは昼休みだった。
「よう、新井。おまえ昨日、着物姿の絹里さんに告られたんだって? 」
社食で食べていたら、北森が誰かと一緒に空いてた俺の前に座る。
「・・っ、ぐ・・っ」
いきなり言われて食べ物が喉に詰まる。吹き出しそうになって、慌てて手で口を押さえて咳きこんだ。
「おーおー、大丈夫か? 」
あんまり気の毒そうじゃない声でそう言うと、
「なあ? 新井ってこんななのに。どうしてモテるのか俺には分からん」
隣に顔を向ける。
「・・ごほっ、・・っ、もう、い・きなり声かけてくるなよ北森。・・手、洗ってくる」

戻ってくれば北森の横に・・女性が一人増えていて、何か喋ってる。あれ、誰だろう?
「あ、戻ってきた。小林さん、新井です」
「あら、こちら? ・・あ、初めまして、総務の小林です」
「は・・はじめまして」
座りながら挨拶する。一見人当たりの良さどうな笑顔だけど、用心した方がいいみたいな・・・。

「総務の方なんですか? 」
「ええそう。隅っこにいるから新井さんの目には入らなかったみたいだけど」
「いえ、そんな」
「いいけどね。おばさんより絹里さんみたいな若い子にみんな行くし」

(う。。なんか棘がある、みたいだ)






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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-3

「でも小林さんベテランだから、頼りにされてるんでしょ? 」
「あら北森さん、そうでもないわよ~」
ケーキセットを食べながら満更でもなさそうに答えてる。
北森が助け船を出してくれてほっとした。でも、安心もしてられない。こっちも情報収集しないと。
「小林さん、総務に長いなら色々ご存じですよね? あの、教えて欲しいことあるんですけど」
年上だから言葉に気を付け、伺いを立てるように聞いてみると、
「えー・・、いいわよ。なあに? 」
身を乗り出す。目が、キラッと光った。
「あの、今日やたらと視線を感じるんですけど、どうして・・・・」
「まあ、新井さん知らないの? 」
俺の話を途中でバッサリ切って、大げさに驚く小林さん。北森も、
「おまえな・・・」
半分呆れてる。
「・・・・・。いいわ、教えてあげる。新井さん昨日、絹里さんに告白してもらったでしょ? ‘好きです’って」
「え、はい・・、多分」
「『多分』? 」
口調がとんがる。
「あ・あの、けど」
「新井さん、女子社員敵に回したい? 」
「と・・とんでもない! 」
「じゃあ決まり。
だからみんな注目して待ってるの。あなたがどう返事するか」

うそだろ・・・・。

小林さんはさらに続ける。
「絹里さんって人気あるもの」
「そうだぞ、新井。おまえ早く答え出さないと彼女を狙ってる・・・と」
横から口を挟んだ北森が小林さんに睨まれる。
「女性の方から告白するのは凄く勇気がいるのよ。その事忘れないで頂戴ね。それと」
ケーキを食べ切り、コーヒーを飲んで、
「もちろんOKなんでしょ。早く言ってあげてね」
ほかの子たちが浮かれてて騒々しいから。ごちそうさま。 と、貫禄さえ見せて席を立った。

残された感の俺たち三人。まず北森が、
「何か、疲れた」
はあー、と脱力する。
「俺も」
続けて言いながら、
「北森・・? 」
と、残ってるもう一人は誰かと目で聞いた。この人、まだ一言も喋ってない。
「あ、すまん。こちらは中畝さん。今度二課へ配属になったんだ。慣れるまでしばらく俺と組むことになって」
「はじめまして。 中畝 英生(なかうね ひでお)です。よろしくお願いします」
丁寧に挨拶され、焦りながら自分の名刺を差し出す。
「俺・・、じゃなくて、私、一課の新井 崇です」
「あ、中畝さんまだ名刺無くってさ。これから総務に申請に行くとこ」
「済みません、せっかくいただいたのに」
「や・や、こっちこそ何か失礼しちゃって」
くすっと中畝さんが笑った。
「あなたが女子社員に好かれるの、分かる気がします。裏表がない人なんですね、きっと」
「そうだな。おまえ、分かりやすいもんな」
北森が同意する。
「どーせ。単細胞だって言いたいんだろ」
俺にだって隠し事くらいあるんだぞ。・・・言わないけど。
「ま、友だち甲斐はあるんだからそこで満足しろ」
じゃあな。と北森は中畝さんを促し、行ってしまった。
「何しに来たんだ・・・、あいつ」

「あ~、予定外の出費。財布軽っ」
小林さんのケーキセットの支払い、俺の分になってたんだ。小銭全部使いきって、いつもは凸凹な財布が平らになってる。

「・・・だけど、絹里さんにはちゃんと返事したんだけどな・・・」
好きか嫌いか、より、友人として好き、の方がよかったのか?
う~~ん、と悩みながら外回りの支度をしていると、二課の方でざわめきが起きた。
「苑田さん?!」
あの声は、中畝さんだ。
「・・・中畝・・?」
苑田さんの、驚いた声も聞こえた。





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-4

え? 中畝さん、苑田さんの知り合いなのか?

「おや、二人は知り合いだったのか? 」
一之瀬課長が、そのださんと、北森とその横にいる中畝さんを見比べている。周囲には二課の人が何人かいて、顔合わせをしているようだった。
「はい。苑田さんは、大学の先輩なんです」
こんな所で会えるなんて、と嬉しそうに続ける中畝さん。
「それなら中畝さん、いっそ指導してもらう? 苑田さんに」
北森の言葉が、耳に飛び込んできた。

苑田さんと?

思わず目をやる。苑田さんは、静かに、
「今はチーム営業もしているので無理だと思います。それに北森さんといる方が、中畝・・さんにもいいはずです」
聞いた一之瀬課長も、
「そうだね。これ以上は苑田くんでも無理だ。
それに北森くん、私は君のコミュニケーション能力を高くかっている。中畝くんに色々教えてあげて欲しいんだ」
「は・はいっ」
「・・分かりました」
北森が誉められて勢いよく返事し、中畝さんは仕方ない、といった感じで答えている。俺はほっとして、いつの間にか力の入っていた肩を落として息を抜いた。
(良かった。絹里さんのことだけで一杯いっぱいなのに、中畝さんの事まで来たら、俺、頭がパンクする)
本気で思って鞄を持った。


二課では、中畝とその場にいた人間との顔合わせが行われ、それぞれが仕事に戻っていく。
「・・北森さん、苑田さん‘チームで営業’って言ってましたけど」
「気になるんですか? えっと、去年の秋から始まったんです。苑田さん、出来る人だから一課の二人と組んで。お互いの仕事先とか回ってます」
年はそう変わらないが、北森は中畝に丁寧に説明していた。
「誰とですか? 」
「一人は、さっき会った新井。もう一人は市島さんって人です」
「新井さん・・・ですか」
「どうしたんです? 気になるんですか? 」
「い、いえ」
二人の話している横を苑田が通り過ぎ、新井に声をかける。それを中畝がじっと見ていた。

「新井、ちょっといいか? 」
「はい」
声をかけられ、休憩コーナーへ。

「何かありましたか? 苑田さん」
「あったのはおまえだろ? ・・絹里さんと」
「! ・・・もう、伝わってるんですか? 」
「返事がまだだ、ってところまではな」
「そんなこと・・。好き嫌いの好きだ、とは言いましたけど」
「‘告白’されたらそんな返事じゃ通用しないことぐらい分かるはずだ。付き合うなら」
「ひろさん」
「・・その呼び方は」
咎める顔をするひろさんに俺だって、と聞きたい事をぶつける。
「それ以上(絹里さんのことを)言うならずっと呼ぶから。ひろさんの方こそあの人、何なんだよ? 後輩の中畝さんって」
「中畝? ・・ああ、あいつは大学の二つ年下の後輩で。だからその呼び方、社内ではやめてくれ」
「どんな後輩だった? 」
「普通の・・、人当たりのいいやつだ。父親が転勤族でよく引越ししていた話を聞かされた事がある」
「ひ、、苑田さんと、仲良かった? 」
「普通だといっただろう? それよりおまえの方こそ、OKなのか、そうじゃないのか・・・はっきり話しておかないと、明日には‘公認’になるんだからな」
「まさか」
苑田さんの心配を笑い飛ばして外回りに出たけど・・・。
俺が甘かった、って後悔する事になった。





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-5


休みを挟んだ月曜日。俺の所に突撃がやってきた。
「新井さんですね? 私、社内報を担当している三木元と言います。少しお時間いいですか? 」
午前中の休憩時間にやってきたのは、眼鏡の女性。
「はあ・・、構いませんが」
「じゃあ、お二人揃って話が聞きたいので。会議室、取ってあります」
「会議室? 」
「そうです。手短かに済ませますから」
俺の腕を引っ張って急かしながらそこへ向かう。

(『二人揃って』とか言ったよな? この人。誰か待ってるのか?)
「あの。誰かいるんですか? 」
「当たり前じゃないですか。・・・ああ、絹里さん、お待たせ」
絹里さん??
連れ込まれた小会議室で、三木元さん、ドアの外に’会議中‘の札を掛けてさっさと座る。
机を間に置いて、絹里さん。
「新井さん、なにぼっとしてるんですか? そっち、座ってください」
時間無いんですから。と絹里さんの横を指さす。確かにそこには椅子が置いてあったけど、
「これ、一体何なんですか? 俺、さっぱり判らないんですけど」
座らず、聞いていた。
絹里さんが困った顔をする。三木元さんは顎をツンと上げるようにして、
「お二人の事を、社内報に載せるためのインタビューに決まってるじゃありませんか」
言い切る。

社内報に載せるインタビュー?

「ですけど三木元さん、私たちまだ・・・」
「あら? 小林さんは『もう付き合ってる』から大丈夫、って言ってたわよ絹里さん。それにもうスペース作ってあるから」
さらっと言う三木元さんに絶句した。 俺、まだその返事してない・・・。

それからはもう三木元さんペースで、あっという間に俺と絹里さんは出来たてほやほやのカップルにされてしまった。

「うん、これなら纏まるわ。ありがとう。二人とも仕事頑張ってね」
原稿を作り上げ、うきうきしながら出ていく三木元さんを見送り、どちらからともなく絹里さんと目を合わせ。

「・・・ごめんね、絹里さん。俺がはっきりしなかったせいで」
「いいえ、私の方こそ。新井さん、迷惑じゃ・・・」
「迷惑って言うか・・。あ、でも、ほんとに嫌いじゃないよ。ただ・・・」
その先を言っていいのか迷う。俺には好きな人がいるんだ、と。
「ただ、・・・何ですか? 」
「気になる様子で訊ねてくるから、
「あの、さ。俺・・・」
「新井―、どこだ? 電話だぞー!」
答えかけた時、ドアの外から呼ばれてしまった。
「はい!今行きます。   ごめん絹里さん、呼ばれてる」
仕事に戻ろう?そう声を掛けて会議室を出た。

「すいませんでした」
電話を終わらせ、呼んでくれた同僚、町田さんに声をかける。
「ま、いいけど。 それで? 」
「はい? 」
「社内報の三木元さんだろ? さっき来てたの」
「そう、ですが」
「やっぱあのことか」
「やっぱ? 」
何だか悪い予感がするけど、聞かないと落ち着けない。
「決まってるだろ? 今年最初のカップル誕生!着物姿で告白―。 ってやつ」
「ええっっ!?」
あの時居合わせたのは、麻倉さんに結城さん。それに・・・。
「おまえさ、女の情報網のスゴさ、知らない訳?」
「全っ然・・・」
どこから漏れたのかと必死で思い出してる俺の横で、町田さんは苦笑した。
「どっちにしても手遅れだから、いっそ付き合えば? 彼女、いい子なんだから」
ライバル、多いんだぞ。上手くいけばラッキーだ。と肩を叩かれたんだけど。

「冗談じゃないよ・・・」
苑田さん・・、ひろさんが、どんな反応をするか。
去年だって、絹里さんとコーヒーを飲んだだけで大騒ぎになったんだ。


社内報が全社員のPCに配信される前に話したかったけど、こんな時に限って会えない。電話も、駄目。





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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その64

今日は、キーボードについて。

よくよく眺めると、使わないキ―がたくさん。
私が使っているのはほぼデスクトップ。ノートPC、タブレット、スマホや携帯に比べてキーが大きい(ァ、駄洒落みたい)から、扱いやすい。

そもそもがタイプライターを基としているからなんでしょうけど、慣れるまでが一仕事。 
さらに言い訳すると、私がちゃんと仕事してた頃は、ワープロだって出始め・・・あ、年齢が。。汗あせ。

PCは、使えないと差しさわりが出るー、と少々焦って始めたのがきっかけ。 半分以上は私用で使ってました。 今は完全に私物、になりましたね。


・・・と。  
キーを打っていて一番なのは、打ち間違いと変換。
冬のボーナス、が、ぐゆの、になったり、の―ナすになったり。はなが、鼻だったり花だったり。
○○さん、が、○○だんになってるのを後から発見して、脱力した時もありましたっけ。

そうそう、数字が並んでいる場所を、天気―・・・、いえ、テンキ―と呼ぶのだと知ったのもしばらくしてから。
そして端っこにあるNumlk・Scrlknoki、のキーが多少面倒くさいキーだと気が付くのは、ずうーーっと、あと。

最初は、早々に壊したのかと青くなった、のでした。


未だに使いこなせないキーボード。
ブラインドタッチが出来るだけで、尊敬する私です。  たまに、「便利なキーの使い方。」 という見出しにつられて記事を読んでもその場限り。


あー、サクサク使ってみたい・・な。



『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー25

「優奈ちゃん。あの‘米原’って言う人、同じ学校なの?」
「あ・・、はい。部の先輩なんです」
「そう・・・」
優奈ちゃんだけ、じゃないんだろう初詣でに誘ったのは。何人も一緒にいたから。けど
なんだか気になる目で優奈ちゃんを見ていた気がする。


「優奈ちゃんの家って・・、ここ?」
「はい」
ついて行って、玄関で唖然とした。 ひょっとして・・、しなくても俺の家二軒分。
「能見さん・・? どうかしましたか? 」
「いや、でっか・・大きい家だから驚いて」
「このあたりでは普通です。お母さん、いつも掃除が大変、ってぼやいてます」
口調を真似て、クスッと笑う優奈ちゃん。
そ・そうだろうな。玄関が二つもある家なんて、初めて見た。
「お母さん、ただいま」
俺の驚きをよそに優奈ちゃんは引き戸を開ける。俺も続いてあがりかけ、

(あ、まずっ・・)
ガシャ・・ン!

デニムのつもりで足を出して裾に引っかかり、思わず手を伸ばした先が、引き戸。
派手な音を立ててしまった。
「能見さん大丈夫ですかっ? 」
「だ・大丈夫。・・足、開きすぎただけ、だから」
「優奈、どうしたの? 」
音に驚いてパタパタッとスリッパの音。
「あ、お母さん、なんでもないの。ちょっと・・、」
優奈ちゃんが言ってる間に、お母さんが出てきた。優奈ちゃんによく似てる。
「どうやら無事に帰ってきたみたいね。・・あら? 」
「あ・あの・・。初めまして。あ・けましておめでとうございます。その・・、俺、優奈ちゃんの着物に泥付けちゃって、それであの、送ってきて」
転びはしなかったけど、軽くテンパってる時に優奈ちゃんのお母さんと顔を合わせて、
挨拶やら何やら一度に話そうとしてしまって支離滅裂になる。
「違うわおかあさん。能見さんたちが助けてくれたの」




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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-6

今日は、苑田の視点も少し入ります。~~ から ~~ の間です。


::ひろさん、社内報にあること、本当じゃないから信じたりしないで。

結局、こんなメールしか出来なかった。
「俺の事、信じてくれるよな・・・」
落ち込みながら送信した携帯を眺める。会って話をしたら絶対大丈夫、な自信があるけど、ひろさんは自分の経験があるから、もしかしたらもう止めよう、とか言うかもしれない。
そんなこと、させるもんか。


~~ 外出する時、新井が女子と会議室に入るのを見かけた。
(あれは確か、社内報の三木元さん・・・)
新年の抱負でも聞いているのだろうか、と思いながら出掛ける。あとからメールが来て、首をひねった。
「『本当の事じゃない』って・・。どんな話したんだ? 」
社内報は、明日、全社員のPCに配信される。 まずは見てからだ。と頭を切り替えた。~~



新年初の社内報は、多くの独身男性社員にショックを与えた。
「おい、見たか? 」
「見た。ショックだよー」
「絹里さん、俺も目をつけてたのに」
「営業の新しい企画で、チーム組んで営業してるののサポートしてたって書いてある」
「俺も営業行っとけばよかったぁ」
「おまえじゃ無理だよ」

「新井さんって、営業一課のあの人よね? 」
「かっこいい、って言うより爽やか系の? 」
「あ、知ってる。おんなじ一課の市島さんと、二課の苑田さんと組んで仕事してるんでしょ」
「私は別にいいんだ。市島さん狙ってるし」
「えーっ、いつの間に?! 」

社内のあちこちがざわざわする中、営業フロアによく人が来るようになった。中島部長に言わせると、
「おまえの品定め」
なんだそうだ。 でも、ついでと言うか便乗してと言うか、何となく話をして戻っていく人たちもいて、このフロアだけ不思議な熱気が漂っている。
俺は自分に、(平常心、平常心)と言い聞かせながら仕事をこなしていた。

「市島さん、ここ、いいですか? 」
「え? ああ、新井くん。いいけど」
社食でも視線を感じた俺は安全地帯を求めて見回した先に市島さんを見つけ、トレイを持ってそそくさとそばへ行った。
「・・・・大変そうだね」
「ええ。盛りつけのおばさんにまで『新井さん、絹里さんといつ結婚するの?』 なんて大声で聞かれて・・、くたびれてます。社内報が出て、まだ半日しか経ってないのに」
横に座り、頭を抱えた俺に市島さんが笑う。
「君も絹里さんも随分人気があるんだ、って、初めて知ったよ。芸能人みたいだ」
「・・・それ、笑えないです・・・・」
それに、まだ苑田さんに会えてない。これが一番堪えてるんだけど。
気を取り直して市島さんに聞く。
「今日、苑田さんを見てないんですけど、市島さん、知ってますか? 」
「ああ。一之瀬課長と筆を見に行ってるよ。私と回る予定の会社の人が絵手紙に凝っているから、手土産にするんだと言っていた」
「‘絵手紙’ですか・・?」
「そう。普通の、書道をする筆でも良いようだけど、拘ってる人もいるから、と。一之瀬課長は身近にその方面の先生がいるとかで、詳しいんだ」
「そうなんですか・・・」
(苑田さん、気にしてないのかな・・・?)

午後は、逃げるように外回りに出た。






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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-7



「どうしたんだ? 苑田くん。またため息ついて」
社へ戻る途中、一之瀬課長は不思議そうな顔をして苑田を見た。
絵手紙用の筆は満足のいく物が手に入り、気分も軽くなってるはずなのに、と思っていると、
「え? ・・すみません」
言われて気付いたらしい苑田が謝る。
「悩み事? 」
「・・まあ、そうです・・・」
歯切れが悪いのは、他人に言えない事だからだ。


(出かける前に社内報を読むんじゃなかった・・・・)
いくら崇を信じようと思ってはいても、文字になったものを見ると動揺は隠せない。
「仕事に持ち込まないのは立派だけど、悩みすぎないように。私も中島部長に賛成しているんだから」
「中島部長に? 」
「ああ。君がいると取引先や上司の受けがいい。こちらの意図もよく呑み込んでフォローしてくれるからやりやすいしね」
「一之瀬課長・・・」
「ストレスは、軽いうちに発散しておいてくれよ」
はは・・・、と笑いながら先を歩く上司に感謝する。こちらのテリトリーに踏み込み過ぎない気遣いが、ありがたかった。
(戻ったら、崇の顔を見て話しよう)
その前に、市島さんとの仕事を片付けないと。 自分に喝をいれるように、ひとつ深呼吸をした。


苑田と市島が戻ってきた時も、営業のフロアは見慣れない人間がちらほらしていた。だが、肝心の新井の姿が無い。
「新井くん、外回りに出ているようですね」
戻ってくるなりフロアを見回した苑田に気付いた市島が言うと、
「・・だからはっきりしておけ、と言ったのに・・・」
少し怒った声で苑田が呟く。
「苑田さん? 」
ハッとした苑田が
「あ・・、市島さん、お疲れさまでした。レポート作成したらまた突き合わせ、お願いします」
取り繕うように言って軽く会釈をすると、席へ戻っていく。
(そんなに新井くんの事を気にしているのか。・・・まあ、そうかもしれない。仲もいいし。弟を見ている気分なんだろう)
市島もまた席に戻りながら、微笑ましく思った。


「はァ、・・・終わっちゃった」
予定していた外回りが全部終わって、俺はため息をついていた。
いつもならすぐに戻って苑田さんと打ち合わせしたり、帰るのを待ちながら報告書を纏めたりするのだけど、今日は、足が重い。
「帰りたくないな」
ぼやきまで出てしまう。

恐ごわ見た社内報は、俺と絹里さんが出会うきっかけになったチーム営業の説明から始まり、時々社内で話していた事とか、仕事始めで着物姿の絹里さんと、俺が話している写真!(・・いつ撮ったんだろう?)まで掲載されている。
目にした人ほとんどが誤解しそうだ。

音につられてフィと横を見ると、ドラッグストアから元気のいいCMソングが流れてくる。
「・・・やめた。ひろ、じゃなくて、苑田さんが心配してくれたのを笑った俺が悪いんだ。謝って、ちゃんと話しよう」
お礼代わりに栄養ドリンクを買って駅へ向かった。

帰社したの、残業時間に入った頃。女子社員はあまり残っていないから少しほっとして、けど目立たないように階段を上がった。
「ただ今戻りました」
小さな声で小野山課長に報告する。おや、と言う顔で俺を見上げた課長、
「おかえり。彼女は帰ったよ?」
「かちょ・・!・・・その話、しないでください」
思わず大声になり、慌てて小声に戻したけど気付いた人もいるみたいだ。
(見つかりたくなかったのに)
「仕事な別物だ。気を取られないようにやってくれ。君も切り替えは出来るだろう? 」
ムッとした顔をしてしまった俺に可笑しそうに笑いながら、課長はそう労ってくれた。
「・・・はい」





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-8


席に戻って見回す。苑田さんは、PCに向かってデスクワークだ。
すぐにも行って、連れ出して話をしたかった。でも、それをしたら叱られてしまう。
「仕事をほうりだすな」 と。
それからはがむしゃらに仕事して、自己最高記録で片付けた。
まあ、時々は腰を浮かして苑田さんを確認していたけど。居なくなられたら落ち込むし。

「終わった~~」
これで苑田さんの横へ行ける。PCの電源を落とし鞄を掴んで、勇んで立ち上がった。
「苑田さ・・・」
呼びかけた先に、中畝さんが、苑田さんと話していた。

なにを話しているんだろうか。楽しそうな様子に気分が萎んでいく。唇を噛んで見ていた俺の視線に気付いたのか、苑田さんが。中畝さんもこちらを向いた。
一瞬絡んだ視線が逸らされ、苑田さんはまた中畝さんと話しはじめる。
(ひろさん!)
二人の時だけ呼べる名前を心で叫んで足早に近づく。
「・・・じゃ、お願いします、先輩」
中畝さんがそう言って俺に会釈して席へ戻って行った。
「・・その田さん」
「もう終ったのか、新井」
俺はまだかかりそうだから、とPCに向き直る苑田さんへ、机の上にあった付箋に、
【遅くなるならひろさんの所へ行く
と書いてディスプレイの真ん中に貼りつけた。 驚いた苑田さんが走り書きを読んで俺を見上げる。頷くと、
【わかった
付箋を剥がして、余白に書き込む。
「それじゃ、お先に」
声に出して頭を下げ、素早くペンを持ったままの苑田さんの手をぎゅっと握ってから7背中を向けた。

帰りがけ焼き鳥屋に寄って、去年苑田さんの休んだ時持って行ったつみれのスープをもらう。評判がいいのか壁の品書きにもメニューとして追加されている。親父さんからは、
「そういやぁ苑田さんに相談したい事があるんだ。いつでもいいから来てくれ、って伝えといてくんないか? 」
と伝言を頼まれた。俺としても苑田さんを誘う口実が出来て嬉しい。
「うん。伝えておくし、なるべく早く来るようにするから」
約束し、店を出た。


「あの焼き鳥屋さん、そんな事を言ってたのか」
「だからまた一緒に行こう? ひろさん、しばらく行ってないだろ」
「そうだな・・・」
それほど待たずに帰ってきたひろさんと、スープを温めこたつで夜食にする。
まだ新年会が続くから、行くなら昼間の方がいいかもしれない。そう言ってスケジュールを確認しはじめる背中に回り、抱きついた。
「崇・・・? 」
ひろさんの肩に顎を乗せるようにして、謝る。
「ひろさん・・、ごめん。俺、あんな、社内報にまでなるなんて思ってなかった。絹里さんにだってちゃんと返事もしてないのに。
でもはっきり断るから。俺の事、信じてくれるよね?」
「・・・・ああ」
一つ息を吸うほどの間が開いてから、返事が来る。声のトーンが沈んでいたけど俺は気が付かず、間近で見たひろさんの唇の動きに目を奪われていた。
湧きあがる衝動のまま頬に、そして首を伸ばし唇の端にキスをする
「ひろさん・・・」
声に熱が籠もっているのが自分でも分かる。手を動かし、ひろさんの顔をこちらに向けて、貪るような口付けをした。






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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-9

さあ、今日からRに入ります(R-18)。年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。























「ん・・っ、ぁ。ふぅ・・んっ」
触れ合ってしまえばお互いを求める気持ちに体が熱くなっていく。
「・・・っは、ひろ、さん。・・・あっち、行こ」
押し倒して舌を吸い、口腔を舐めつくしてからベッドで続きをしたいと誘う。
「一回だけにするから」
何故だろう、目を逸らされてしまう。  まだ怒ってる?
「だめ? 」
「・・何の準備も・・してない」
少し掠れる声で答えるひろさんにドキンと心臓が跳ねた。それはつまり。
「俺が、して、いい? 」
見おろす顔が横を向いて赤く染まり、でも・・・頷いてくれた。興奮度が一気に上がる。
はじめからひろさんの体をひらいていけるんだ。
めったに出来ない、させてもらえないけど、一からすると乱れ方が段違いになる。喉が鳴った。
「ちゃんとする。・・・行こう?」

シャワーも惜しんでひろさんをベッドへ連れ込み、剥ぐように衣類を脱がせていく。
「崇・・。俺は、逃げていかないから・・っ、急ぐな・・・っぁ、あっ」
「やだ。信じてもらうんだ、俺は・・、ひろさん、だけって」
「は・・ぁんっ。・・・あ、痕、つけな・・・っ」
そこは嫌だ、と両手で俺を押し離そうとしたのを逆にベッドに縫いつけ、わざとシャツから見えそうな際どい所に紅い痣をつけた。幾つも。
「ん・・ふっ。・・・あっ・・ぁ」
胸の粒を、舌先でぐりぐり擦りたてると声を高くして反応する。
「ひろさ・・、ひろさん。好きだ、・・・ずっと」
「崇・・っ、ゃ・・っだ、あ・・くんぅっ」
刺激に硬く立ちあがったそれに歯を立てれば喉を晒すようにのけ反る、ひろさん。
いつもならこのあたりで限界になって挿入てしまうけど、今日は。

そのまま体を下にずらしながら何度も舌を這わせる。体に当たるひろさんの雄が硬くなってるのに気付き、片手を持っていって、つう、と撫でて握ると、
「・・っ、崇ッ・・」
びくびくと全身が、握った雄も手の中でグンと跳ねて透明な蜜を溢れさせる。すぐに指を濡らしていき、上下に動かすと湿った水音が聞こえ。
「ぁ・あ・・・。・・んぅっ・・、た・かし」
腰が揺れて、無意識にもっと刺激を欲しがるから。 ああもう。
「ひろさん・・」
扱いてた手を蕾に押し当て滑りを擦りつけた。
「は・・ァッ」
急な刺激にそこは驚いて縮まり、開いた両脚が間にいる俺を挟むように力が入る。
「まだ入れないから、力抜いて」
一度体を引き上げて耳元で囁き、全体をぺろりと舐め上げると
「ンンッ・・」
と唇を噛んで体を震わせ、息を吐きながらゆるめていく。
「ここは、もうちょっと我慢してくれる? 」
言いながらまた、手でひろさんの雄を包んだ。
「あっ・・・、触る・・んぁっ」
「すごいね。・・止まらない」
硬く張り詰めて屹立する雄がどくどく脈打っている。そしてもうアンダーヘアまで濡れ切っていた。
もう一度手で滑りを扱きとりながらひろさんを追い上げ、また蕾へ塗りつけ。
「や・・! ぁ・ぁ・あ・・っ。・・・ぁ、崇っ、止め」
高くなった声で啼いて、達きそうだからといやいやをするのが、俺をヤバい気持ちにさせる。

もっと大事に抱きたい。もっと・・・、苛めて、泣かせたい。

そんな気持ちのまま、ひろさんの頭の上の枕を取った。
「腰あげられる? ひろさん」
ほとんど快楽に潜っていたひろさんが、止まった愛撫に閉じていた目を開け、短い息継ぎで俺を見る。
「こし・・? 」
「そう。これ入れるから」
ゆっくり頭が動いて枕を見、意味を理解して上気している顔に赤みが増す。
「ね? 」
重ねて促すとぎくしゃく頷き、膝を立て、腰を上げるひろさん。隙間に枕が押し込まれ、高くなった腰が膝立ちの俺の前に晒された。





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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その65

やって来ました・・・が。

一番分かるのが空気と空、でしょうか。
朝晩が涼しくなり、空気が澄んできて、空が高い。 
不思議ですね、秋の空は抜けるように青い色と高い透明感。

理屈では、
日本にやって来る高気圧が海からの夏、と、大陸からの秋(水を部組む割合)。 次に大地の状態。これは雪解けや芽吹きで土や砂が舞い上がりやすい春と、草などが生い茂っていて埃が立ちにくい秋。
なんだそうです。

そんな事は、置いといて。

空気が澄んで良く見えるせいでしょうか、目がよくなった気分になれます。
木の枝の先の、葉っぱがとんがっている、とか、雲がくっきりした形をしているとか。夜空だってキレイに見渡せる。

ついでに、音もよく聞こえるようになって。  焼き芋屋さん、竿竹屋さんが 「あっ、来た」。。
財布を持って玄関で迷うんですよー。、焼き芋屋さん。


これからは色彩も豊かになる秋。楽しみも色々。


皆さまの秋は、どんな秋ですか?




『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー26

「ただいま・・・」
気落ちした気分で家の玄関に入る。足袋の先が汚れてるのがまた見えて、はーーっとため息が出た。


優奈ちゃんの家には上がらず、帰ってきた。
「わざわざ送ってきてくれてありがとう。一休みして行きませんか? 」
「そうです、能見さん。お茶くらい飲んでいってください」
優奈ちゃんも、優奈ちゃんのお母さんもそう言ってくれたけど、
「いえ、今日は本当に、送ってきただけですから。それにあの、靴し・・、足袋も、汚れてるし。か、帰ります。
着物、ほんとに済みませんでした」
「能見さん・・」
「優奈ちゃん、ごめんね。」
さっきの挨拶で頭を下げた時見えた、足袋の指先の汚れが気になって下駄を脱げない。
「では、また改めていらしてください、能見さん。お待ちしていますから」
「あ、、はい」
優しい言葉に俯きかけた顔をあげると、優奈ちゃんのお母さんが俺に笑いかけてくれた。
「ありがとうございます。 失礼します」


「もっとかっこよくしたかったな・・・。。」
痛つ、と呟きながら下駄を脱ぐ。鼻緒に擦れて指の股が痛いのと、足の裏が変な感じ。
「智・・・、帰ったのかい? 」
はっ、と見上げれば和叔父さんがいる。
「おかえり。何だか声がしたみたいだったから」
「和叔父さん・・・」
何だか泣きそうになって、つい和叔父さんの着物を握って、胸に頭を押し付ける。

「 智? 」
「何でもない」
戸惑ってる和叔父さんの声。でも、離したくない。じっとしてたら、衣擦れの音がして、
抱きしめられた。
「向こうの家で・・、何か言われた? 」  
耳のそばで、優しく聞かれる。
「違う。自分が・・・情けないだけ。
玄関で、転びそうになって。手をついたのがドアで、思いっきり派手な音出して・・・。
あんな恥ずかしい事」
「智、それじゃあ挨拶もせずに帰ってきたの? 」
ううん、と首を横に振る。
「したけど、謝ってきたけど、テンパってめちゃくちゃ言ったと思う。笑われはしなか
ったけど・・・」
思い出して、続きが出てこない。



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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-10

今日もたっぷりRです(R-18)。なので年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。



















「・・崇・・・・」
恥ずかしい、と言えず、ひろさんが名前を呼ぶ。その声にも、羞恥に耐えて俺の視線を受け止める姿にも見惚れてしまう。
「ぁ、、たか・し・・・。触っ・・て、くれ・・」
喘ぐように言って身ぶるいすれば、屹立からぶくりと滴が溢れて落ちる。
唾を飲み、体を傾けひろさんの脇に手をつくと指を二本、半開きになってる唇に押しあて、差し込んだ。
「ん・・っ。ぅ・ふっ、んっ、・・・んん」
自分の体液が付いた指を入れられて、それでも舌を絡ませしゃぶりだす。
「ひろさんの舌、柔らかいね」
ゆっくり出し入れすると想像したのか腰が揺れて雄どうしが擦れる。
「んっ・・、ぅんん・・っ、ふ、く・・、っぅ」
俺のも、もう鈴口が開いては蜜を吐き出してるのを待たせてるから、粘つく音と感触でさらに猛っていく。
「・・・・・」
「え? 何? 」
ひろさんが何か言った。聞き返した俺に、もう一度言おうとしたから喋りやすいように指を抜く。
「・・たかし、・・・もぅ」
「いいの? 」
挿れて、欲しい、と言わせたかったけど潤んだ目が訴えてきて・・、やめた。

たっぷりの唾液が糸を引く指を窄まりにあて、ひろさんが息を吐くのに合わせて、ぐい、と。
「っ、・・っは、ん」
二本受け入れさせられた場所が強く収縮する。
「痛かった・・?」
柔らかくした、と思ったけど、まだ早かったのか?動かさずにいたら、
「・・・だ・い丈・・ぶ」
はっ、は、と小刻みな呼吸の合間に返事が聞こえ、ゾクリとした。
「あっ。・・・あ、崇ッ。たか・・、ぃ・・、た・かし・・・っ」
根元まで入れて回転させ、擦り合わせる。小さな突起を抉るように押して。ひろさんの声と全身が跳ねあがった。
「やぁぁあっ! 」
「ひろさん、声大きい。誰かに聞かれちゃうよ? 」
わざと言うと、
「おまえのせ・・・、ぅんんっ」
恨めしそうな声で抗議する。だからお返し、とばかり指を増やして鍵形に曲げて回した。
「ゃ・・、それ、やっ、は・ふぁっ。だ・・めだ、そ・れ、・・はっ、も」
脇に付いたままの俺の腕を、ぎゅ、と握って限界が近いのだと嬌声をこぼす。
「達っちゃだめ。俺と一緒、・・だろ? 」
「ひぅ・・・っ」
寸前で俺の指の輪に堰きとめられた雄が苦しげに身悶える。前後で与えられる快感に、ひろさんは手足の爪を立ててシーツを掻いた。
「や・・やだ、ぃヤあ・・。崇・・、もぅ、きた・・、達き、たぃ・・っ」
「ダメだってば。俺、まだ入れてないし」

・・・変だ。こんな風にひろさんを泣かせるつもりじゃなかったのに。優しく、大切にだきたいのに。

「イけないようにするから待って」
散らばった服の中からネクタイを見つけ出し、ひろさんの、手を放したら達ってしまいそうな雄へ巻き付けている。

「たっ、崇、嫌・・。外して、くれ。・・・頼む」
「すぐだよ」
指を引く抜き、熱くてしかたない俺の楔を打ち込んだ。
「ああァッ、ん・・っあ。・・んんっ、・・んぅっ」
背中を撓らせたひろさんの唇を塞ぎ、舌を絡ませ、大きくなりそうな声を呑む。
(すご・・い。ひろさんの中、もう)
すぐに包み込まれ、奥へと誘う内側の動き。
肩を背中越しに抱くようにしてひろさんを押さえ、引いて、穿つ。
「んんー・・っ」
肌が密着するまで押し込み、少し引き出して腰を回しながら、カリであの場所を何度も擦る。
「んーぅっ、・・・んんっ、・・っん、ぅんん~~っ」
俺の動きに合わせて腰が揺れ、涙が零れ落ちて俺の頬にも伝わる。
「・・たか、崇・・。ヤっ・・、も、やぁ。 イきた・・・、ぃ・達貸せ・・ッ」
涙をキスですうと、解放された唇で願う。腕が、俺の背中に回され、力が込められた。






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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-11

まだ続いてるエチ。 R(R-18)なので、年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。





















その声と仕草に俺の雄が喜んで、硬く、嵩を増す。
「あ・んっ、んァあ・・っ。たか・しぃっ・・・」

ダメだ、限界。

「はうッ、・・・っ、ぁ、あ・・・、やぁっ!そん・・、きゅ、んぅ、・・・・あ・ふッ」
いきなり強く大きくなった律動に揺さぶられ、ひろさんが悲鳴のような声をあげる。
「その・・声、ダメだ・・・、って・・・」
「たか・・・んむぅっ・・、んん・・・っ、は、ふっ・・」
唇を強引に塞ぎ、すぐそこまで駆け上がった俺は先にひろさんをイかせたいとネクタイを巻いた肉竿に手を伸ばす。解いてあげようとしたのに、触れたら腰をくねらせるものだからつい握ってしまい、ひろさんは汗を散らしながら半狂乱になった。
「ひろ・・、ひろさん。じっと・・して、っ。外せな・・・」
「ぃやっ・・、嫌だっ。たかしっ・・、触る・・・」
いやいやと顔を横に振るひろさんの両頬を押さえて目を合わせ、
「ひろ・・さん。 外したげ、る。・・・だから、一緒、に・・イこう。ね? 」
荒い息継ぎの合間に、喋る。
「・・・・取って・・、くれる・・? 」
色気を湛えて潤みきった目で、聞いてくる。危うく射精しそうになった。
「うん・・、取るよ。・・・じっとして、て」
奥歯を噛んで衝動をこらえ、言葉を言うのに苦労しながら繰り返して、もう一度ガチガチの雄に指を絡める。
「・・っは・・んっ。・・・、・・・っあ、・・ぁ、たか・し・・・」
「ほら。・・もう、いいよ」
べとべとのネクタイを投げ捨て、そっとひろさんの屹立を撫でて囁き。
汗で額に張り付いた髪をかき上げ笑いかける。そしてひろさんを追い上げるためにまた腰を入れた。
「あ・あァっ・・・、お、奥に、当たっ・・、ぃ・・、崇っ、いィ・・っ」
「もっと、感じて・・、ひろ、さん・・」
「・・・っは、・・ぁく、う・・っ、・・・、あ・・んあぁ」
背中に小さく走ったのは、ひろさんが爪を立てた痛み。

思わずニヤついた顔、見られなかったようだった。  よかった。

内心ホッとしていたらひろさんが、
「ぁう・・、たか、し・・っ。もぅ・・、い、ぃくっ――・・・っっ」
体を強張らせ熱い白濁をまき散らす。顎を上げ、晒した白い喉に俺のつけた赤い印が見え、俺も、
「・・出るッ・・・」
最後の一突きをして奥へ放った。



翌日、初めて知った事実を仕事の移動中に思い出して、その度に口が緩むのを止められない。
(あんなことしてるなんて、知らなかった。。知っていたら・・・・)

それは、ひろさんがずっと一人でやっていた事だった。

あのあと、俺は一休みしてシャワーを浴びたけど、ひろさんは疲れ切ってシーツなんかを替えている間もうつらうつらしていて、お湯で絞ったタオルで体を拭くのが精一杯だったらしく、シャワーも出来ず眠ってしまった。

ふと目を覚ました時、横にひろさんが居なくて、浴室からかすかに音が聞こえている。
(ひろさん、大丈夫かな?)
心配になって見に行く。
「・・・ん。・・ぁっ、・・・・はァ・・・」
シャワーの音に混じって、呻くような声がする。立ちくらみでも起こしたのかと、
「ひろさん、開けるよ? 」
返事も待たず、擦りガラスの戸を開け、
「・・・・・」
絶句した。
「・・っ、見るな! 何で起きてきて・・・」
浴室の戸が開く音に驚いてこっちを向いたひろさんの姿勢は。





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-12

今日は前半くらいまでRになります。年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。

























シャワーに打たれながら片手を壁に付いて支え、片手は尻の狭間に押し当てている。
「何・・してるの? 」
声が上ずる。
「―― ~~~・・、お・まえの・・出してるんだっ。ちゃんとしないと、あとで・・腹が痛くなる、から。
処理して、る、だけだ。もう・・終わる。だから、閉めろ・・・っ」
悪戯を見つけられた子供のように顔を赤くして俺を怒鳴るけど、
「手伝うよ。・・俺の、所為(せい)なんだし」
触りたくなって、一歩踏み込む。
「だっ・・、来るなって言ったろ! おまえ、服着て・・・」
止めようと大きな声を出し、それが風呂場に響いてハッとして口を閉じる。
「服脱げばいいんだ」
都合のいいように解釈してさっさと服を脱いで入り込み、戸を閉めて後ろに立った。
「ひろさん、どうすればいい? 」
「し・・・しなくても、っ、触る・・・」
尻に当てた手に、手を重ねるとビクッと震え、指を中へ挿し込んでいるんだと気付く。

「指、入れて・・、俺の精液、出してるの・・? 」
手をさすりながら聞くと、
「そうだっ。も、出て・・、あ」
「いかない。俺がする」
開き直って怒るひろさんの手首を握って引っ張る。指が抜けてあとを追うように白い液体が内腿を伝い落ち、水流に流されていく。
「恥ずかしい、から、・・・やめろ」
「やだよ。出しきった方がいいんだろう? 」
「あ・・んっ」
ひろさんを真似て挿し込んだ俺の指に反応し、声が漏れた。色気より羞恥が先に立つ声音に首筋がぞわぞわした。
「・・・っ、や、掻き回し・・・・、んっ」
指の動きにピクリと肩を震わせる。 指を抜いた。また、零れ落ちていく。
「ぁ・・・、」
「まだ残ってる? 」
「い・・、いい。自分で出来る」
腰を引くのを追いかけてもう一度指を入れようとしたら、く・・、と痛みを訴える声がした。
「ひろさん? 」
「・・したいなら、それで、してくれ・・・」
手を止めた俺に、とうとう諦めたひろさんが指さしたのはボディシャンプー。
「わかった」

(今度からは絶対風呂まで行こう。目が離せなかった)

掻き出す時に、どうしても触れてしまうポイントをひろさんは唇を噛んで耐え、それがまた俺を興奮させて・・・。
約束したから挿れはしなかったけど、ひろさんの手でイってしまった。


通りすがりの人が、ちら、と俺を見て行く。慌てて顔を軽く叩いて頭を切り替えた。


「ただ今戻りました」
「ご苦労さま。あ、新井くん」
「はい」
呼ばれて小野山課長のところへ。
「今夜、空いてるかい? 部長と一緒に、とある新年会に呼ばれてるんだけど私の都合が悪くなってね。代理を頼みたいんだ」
「俺・・ですか? で・すが、肩書き何もありませんし、主任とかのほうが」
「この辺りの会社や個人商店の人が集まる会だからそんなに堅苦しいものじゃないんだ。それに」
「新井、タダで飲み食いできるんだ、一食浮くんだし、来い」
「・・部長」
後ろから俺の頭を軽く叩いて話に割って入ったのは中島部長だ。顔が笑っているから小野山課長の言う通り、堅苦しいものではないんだろう。
「判りました。お供します」






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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その66

 ソイヤッ。 そーれ。 ・・・この掛け声、家の前の小学校から聞こえてきます。  アノ♪よさこいソーラン(節)♪


そういえば私の最近は、「どっこいしょ」 または 「よいしょ」 ・・・。  いっ、いつからなんでしょーー?!
もちろん、最初から ↗  だったわけではないです。では、と思い出すと。。

床などに座っていて立ち上がる時は、特に声を出していなかったような。
力を合わせて物を持ち上げたり、異動させる時は・・、「せーの」 か 「1・2・さん!」 だったなあ、確か。

だとしたら?  アラフォー、あたり・・?
記憶にない。。 それほど自然に口にするようになってしまっていたのでしょうか~~。 愕然。
掛け声をかけると、自然に力が入ってやりやすいのは分かるんだけど。 それにしたって。

段差(30cm以上)を上がり降りする時とか、正座から立ち上がる時とか、布団を干す時・・・あぁ、たくさん言ってる!


年月による抗えない脂肪の蓄積。重力の法則。   恐るべし(冷や汗・たらっ)。

肥満遺伝子分析キット、もしくは遺伝子検査*ダイエットキット、やってみようかな~~~。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー27

「それなら、大丈夫だよ」

え・・? 和・叔父さん?

「大丈夫。悪く思ってなんかいないよ。智のこと、いい子だって思ってくれてる、絶対。
だから、元気出して」
後頭部を撫でられもう一度抱きしめられる。
「・・・本当に、そう思う? 」
顔を和叔父さんの胸につけたままだから声がくぐもるけど、聞こえたみたいだ。
「思うよ。智は、いい子だから」
断言されて、泣きたいのと嬉しいのがごちゃ混ぜになりぐっと歯を噛む。そして、和叔父さんの体に手を回した。
「ありがと、和叔父さん・・」

「和弘さん? お雑煮、固くなるわ・・・、あら、智、帰ってたの? 」
母さんの声にはっと我に返る。な・何やってんだ、俺。
慌てて離れようとして・・、思いとどまった。着物、着てるんだ。また転んだら。家の中でなんて恥ずかしすぎる。
「智くん、着物で歩き回ってずい分くたびれたみたいだよ、枝里子さん。まず着替えてそれから晩ご飯にしたいようだから僕も一緒に着替えてくる。」
「そうね、その方が着物も汚れないし。じゃあ、二人の分よけておくわ」
「うん、ありがとう。
智くん、行こう。・・ゆっくりでいいから」

察してくれたらしい和叔父さんが言いだしてくれて、体の力が抜ける。
母さんが向こうへ行ってからそっと手を放し、
「和叔父さん、ありがと。」
「・・顔、見られてくなかったんだろ? それに着替えなきゃいけないのは本当だ。
足は、大丈夫? 」
「あ、それ。足の裏、変なんだよ。なんで? 」
「普段履かない下駄を履いたからだね。靴はクッションがあるけど下駄は地面の具合が直接足に伝わるから。明日までにはなおってるよ」
「そうなんだ」

和叔父さんと一緒だと知らない世界がどんどん広がっていくなあ。





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-13

確かに気取らず参加できる新年会だった。しかも、
「あれ・・、新井さん? 」
「え? あーっ、焼き鳥屋の・・・」
「ははっ。俺、謙治って言います。高階 謙治(たかなし けんじ)。
新井さんの会社って、俺たちと同じ地区だったんですね。知らなかったな」
「俺も。  あ、せっかくだから名刺・・・」
「いいっすよ。もらっても俺、名刺なんて持ってないし」
「そんな事言わないでもらってくださいよ。・・・・はい」
「・・・じゃあ。
でもいいなあ。俺みたいな個人とか家族で店やってる者(もん)って、持ってないんですよ、名刺。だからこういうとこ来ても・・・。配るったらマッチかポケットティッシュくらいで」
「あ、なら作ればいいじゃないですか。簡単ですよ、作るの。PCからでも作れますし」
「・・・俺、キカイ苦手なんです」
「それなら手伝いましょうか? 」
「ほんとっすか? 」
「え。近いうちにお店にも行くつもり・・・・」
「お願いしますっ」
がばっと頭を下げられて、こっちが焦った。

会がお開きになったあと、部長と久しぶりにバーへ行く。

「たまにはあんな場所も行ってみるもんだろう? 」
「はい、今日はありがとうございました。思っていた以上に楽しかったです」
ビールや日本酒を飲んだ後だから、と言うと、マスターは俺の分だけノンアルコールにしてくれる。中島部長は、
「飲み足りないから」
と適当に見繕ってもらって、水割りだ。

「・・・それで、ほんとのところ、どうなんだ? 」
「は? 」
「総務の、絹里さんだ」
ゆっくり、半分ほどグラスを開けてから聞いてきた部長のひと言に、飲もうとしていたグラスが手から滑り落ちる。
「うわっ!たっ・・」
「お・・、おいおい大丈夫か? 」
驚いて、苦笑した部長の代わりに、マスターがすぐ濡れタオルと水のグラスを出してくれる。
「どうぞ、新井さん。・・・服、大丈夫でしたか? 」
「すいません、マスター。・・・だ、い丈夫・・です」
炭酸ノンアルの入っていたグラスはカウンターに転がっていて無事だったけど、俺の前に盛大な水たまりになっている。ほんの少し上がっている縁のお陰で服にはこぼれていなかった。

水を飲んで落ち着き、
「部長・・。いきなり言わないでくださいよ」
と文句を言う。
「はは。悪かった。おまえがそう焦るとは思わなかったからなあ。・・で、どうなんだ? 」
「どうもこうも・・。俺、まだちゃんと返事してないんです。
真面目に聞かれたので真面目に答え、隠す事でもないと三木元さんを含めた今までを話す。
「・・じゃあ結局、絹里さんに伝えてあるのは’好き‘だって言う事だけで、恋人になりたいとかそう言う付き合いはまだ全然なのか? 」
「そうです。苑田さんにも心配してもらったのに、俺、安請け合いしちゃって」
聞き終わって俺に問いかけた部長へ返事しながら、思い出してシュンとなる。
「だが、彼女は社内でも指折りのいい娘(こ)だぞ。 付き合う気はないのか? 」
「俺にはもったいないですよ。それに好きな人は別にちゃんと・・・」
ハッと口を噤んだが遅かった。
「何だ? 他に好きな人がいるって? 」
「そ・それは」
「先にそいつを言え。誰だ? 社内の人間か? 年は上か? 下か? 」
「う・・上・・で」
「いつ知り合ったんだ? 俺は知らなかったぞ」
想定外に食いつかれ、誤魔化すのに必死になった。


同じ夜、苑田さんと中畝さんが飲んでいるのも知らずに。






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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-14

今日は、苑田の視点で話が進みます。 ~~ から ~~ の間です。



~~「苑田さん」
「すまない、遅くなって」

苑田が待ち合わせたのはラーメン屋。入って見回せばすぐ見つかるから、と中畝に言われた通り、十四・五人で一杯になりそうな広さだったが、席はすべて埋まっている。繁盛しているようだった。
「先に始めちゃってます」
手を上げ、苑田を呼んだ中畝の席へ行けば、笑う彼の目の前にラーメンと餃子がある。
「旨そうだな」
座りながら言って、苑田も同じものを頼む。程なく運ばれてきた二つは、いい匂いをさせていた。

「・・・それで、話って? 」
食後ビールをもらい、話を促す苑田に中畝は少し緊張した顔を見せた。
「苑田さん・・、新井さんと親しいですよね」
「まあ、そうだが」
「教えてくれませんか、彼のこと」
「新井の? 」
首を傾げる苑田に、中畝はジョッキに口をつけ、ごくごくと飲んでから息を吐く。

「・・・苑田さん、俺の親父転勤族だったって話、覚えてます? 」
急に話題が変わった。
「ああ。よく引越しした、と言ってたっけ」
「今でも連絡を取り合ってる友だちもいますけど、ほとんどは忘れていって。でも、忘れられない人もいて」
その中の一人が新井なのか? と思ったが、意外な人物の名前が出た。

半分ほど残っていたビールを飲み干し、
「高校の時、転校先の学校で絹里さんと同じクラスになったんです」
酒の勢いを借りたかのように言う。
「・・絹里さんと? 」
「彼女、あの頃から気のつくひとで、さり気なく周りを支えていたんです。いつの間にか目で追ってる自分が居て。
好きだって気が付いたけど、彼氏がいた。告白する前に失恋でした。大学も違ってましたから・・・」
思い出し、自嘲の笑いを浮かべる。
「それが、再会した」
「はい。名字が変わっていなかったのに驚いて・・・、嬉しかった。けど」
唇を噛む。

(社内報、か)
言葉にせず、苑田もビールを飲み干す。
中畝も二杯目を頼み、口に泡を付けながら飲んだ後、苑田の胸の呟きをなぞるように話を続ける。
「社内報が出る前、新井さんと会いました。偶然、絹里さんの話も出たんです。その時の彼の反応が微妙で気になった。
苑田さん、教えてください。彼が絹里さんをどう思っているのか」

その時苑田の心は、複雑に揺れた。

中畝を、絹里さんに近付ける。そうすれば彼女は新井と付き合わないかもしれない。
新井に中畝のことを教えれば、二人の仲を、取り持とうとするかも、しれない。しかし。
『おまえの子供にも玩具を作ってやりたいんだ』
新井の父の言葉が枷になる。
(俺は、手を離せなくなっている。けれどそれは、崇の家族を傷つけてしまう事になるんじゃないか・・?)
自分達と、隆裕の愛した相手の家族のように。

「苑田さん? 」
ハッと我に返り、意識を外に向ける。急に黙った自分の顔を見る、中畝の顔があった。
「悪い・・・。新井が絹里さんをどう思っているか、だったな? 」
「はい」
どう言えばいいのか、言葉を探すため、ビールを呷る。
「・・彼女のことは、好きだと言っていた」
聞かされた中畝の体が強張る。
「そう、ですか・・・」
「好きか嫌いかで言えば、だ」
「え? 」
語尾が震え、下を向いた中畝に重ねた苑田の言葉へ、顔が上がる。
「・・好きか、嫌いか・・? 」
「そうだ。あいつはそう言っていた」 ~~





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-15

昨日の続き、苑田視点が少しあります。 ~~ から、~~ の間です。



~~ 店を出た時、中畝は酔っていた。本人は真面目に喋っているつもりだが、
「だ・・い丈夫です、って。そ、の田さん、っ、だって・・・、俺より飲んだんじゃ」
「いいから。ほら、肩貸せ」
ふらつく体が言葉と反対で危ないことこの上ない。
駅の階段で転びでもしたら、と苑田は中畝を支え歩く。
「苑田さん、おっれ・・、諦め、ないでや・・って、みます。やらな・・で、後悔すんの、やです、から・・・」
「ああ、分かった。そこ、段があるぞ」
「っ、ふぁひ・・」
(送り届けないと、電車に乗ったら車庫まで行きそうだ)
聞こえないようため息をついた。 ~~



部長の追及をからくもかわし(部長の奥さん、電話してくれてありがとうございます。)、這う這うの体で帰りつく。
「ヤバかったよなー。中島部長、誘導尋問あんなに上手かったんだ・・・」
酔い覚ましの野菜ジュースを飲みながらぼやき、思い出してひろさんにメールを入れた。
::苑田さん、相談したい事があるので連絡ください

「これなら仕事の話だって分かるよな」
今、どこにいるか知らないから‘ひろさん’とは打てない。リメールがあれば状況が分かるから、話も出来る。

けっこう粘って起きてたけど・・・。その日、返事はなかった。


翌朝、通勤途中で着信がある。
(ひろさんからだ)あいにくの満員電車だったから身動きとれず、駅に着き吐き出されるように降りてから急いで携帯を取りだした。
::遅くなって済まない。昼休み、社食に行くから。
「社食かあ。込み入った話は出来ないけど、いっか」
文字を見ながら呟く。でも、話を出来るのは嬉しかった。

昼休み、食事の乗ったトレイを持って苑田さんを探していると、女性の声がかかる。
「新井さん、真希・・、絹里さんならあそこですよ? 」
えっ、と振り向くとどこか見覚えのある女子がいて、一角を指差している。
「あ、いや、今探してるのは・・・」
「照れなくてもいいですよ。もうみんな知ってる事ですから。絹さ・・・」
「よ・呼ばなくていいですっ」
「えー、そうですかぁ? 」
「新井」
「・・苑田さん」
絹里さんを呼ぼうとしていた彼女を慌てて遮ると、さらに後ろから呼ばれる。苑田さんと分かってほっとした。
すると、
「あ・・、苑田・さん。あの、今、新井さん、絹里さんを探してて・・・」
俺を呼び止めた人が余計な口を挟む。
「そうなのか? 」
「いいえ。苑田さんには相談したい事があったからいいんです」
これ以上邪魔されては、ときっぱり言って歩き出した。

「ごめん、苑田さん。もっとちゃんと待ち合わせすればよかった」
席について小声で謝る。
「言いだしたのは俺の方だ。気にするな。
それで相談って? 」
淡々とした感じの苑田さんに小さな不満が起きる。
(コーヒー飲んだ時は嫉妬したと言ってくれたのに)
が、こんな場所で言う事じゃない。それはそれ、と、昨日の高階さん― 焼き鳥屋の -話をしはじめた。

「そう言う訳なら近々行かないと」
「うん、延ばしたら忘れると思う。苑田さんの都合は? 」
「明日くらいなら・・・」

「新井さん」

話が弾んでいるのに、水を差すように聞き覚えのある女性の声に呼ばれる。




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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その67

秋分の日、私のいる部落では秋まつりがありました。 と言っても、子ども神輿が出て各家々を回り、玄関先でわっしょいわっしょい!神主さんがお祓いをする。というもの。
これに付きものなのが、幔幕(まんまく)紅白の幕だったり、細い注連縄(しめなわ)を家の玄関に張り渡したりする地域もありますが、こちらは茄子紺色の幕に紋を染めたものと、家の名前の入った大提灯。

そして・・、押し寿し。
作業を全部写真に撮る。 ・・のは出来なかったので、少しだけ。

002.jpg

↑は、押し寿司をする道具です。すでにお寿司は中にぎゅう詰め。4☓6列・3段入ってます。金具に羽根つきのネジがあるの、見えるでしょうか?
そのネジを締めていって、上から重しをかけ(乗せ)、一晩置きます。

DSCF0086.jpg

↑は、重しをかける前。笹の葉一枚を斜めに切って2等分し、そこにひと口大に丸めたすし飯、鮭などの具、飾りの桜エビや青く染めた海藻(紺ノリと言います)、煎りゴマを散らしています。

DSCF0088 (2)

一晩経った、完成品。
具の酢で〆た鮭、煮しめた油揚げ。ほかにしめサバやシイラと言う魚も使います。
親戚に配ったりするので、多い家は4升も(!)つくったりするとか・・・。 一番上の写真の道具が3~4必要になる・・・。
ちなみに私は1升5合。


昔むかしは楽しみだったんでしょうねー、こんな行事が。
そうそう、最初見た時はびっくりしました、゜紺のり’に。 「こんな青い色の海藻?!」と思ったら、染めてあるんです、青色に。驚きのトッピング~~。 もちろん食べられますよ♪ エゴノリ、テングサなどだそう。

お寿司って、奥が深い。


P・S:: 今回の押し寿し、笹の使い方はワタシの家流。ほかの家はまた違ってます。 それぞれ、具も笹の使い方もお家流があって、面白いんです。
あと、幔幕も写真撮ったんですが、余分なものが写ってて修正できなかったので今回は見送りました(フニャ・・)。。





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『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*頼みごとー28

着物を脱いで専用のハンガーにかける。
スーツなんかもそうだけど、体温とか皺を取るためにも一晩くらい吊るしておく方がいいんだ、って。

そんな事も話しながら着慣れた洋服を身につける。
「あーあ、こんな痕ついてる」
紐で体に巻きつけるから、着物を脱ぐと腰回りに赤い痕が何本も。姿見に映してため息交じりに呟く。
「はは、僕だってそうだよ」
和叔父さんがそう言って肌着をぺろっと捲って腹を見せた。 白い肌に赤い筋が何本も付いてて・・・、ドクンと心臓が、大きく音を立てる。
「か・・、和叔父さん、父さんみたいに出てないんだね、お腹。」
何だかエロチックで見つめていいのか迷う。
「そう? 筋トレなんかしてないけど。あ、でも、車椅子とか持ったりするからそのせいかもしれない」
ぺちぺち自分の腹を叩く。
「さ、触っても、いい? 」
「・・・・いいけど」
困ったような顔をした和叔父さん。俺だって触りたい理由は知らない。でも、和叔父さんも俺も男だし、変じゃ、ない。
(何でどきどきしてるんだ、俺)
まるで医者に行って、 「ではお腹を見せて」 みたいに肌着をまくったままの腹部は、締まった感じで無駄な脂肪が無い。
ひた、と手を肌に乗せた。 びくっと全身が反応する。
「あっ、ごめん」
そうだ、手、冷たかった。
「大・・丈夫。もう、いい? 」
「待って。あとちょっと」
汗をかいていたのか、湿り気を帯びた肌はしっとりした手触り。そっと位置を変えて腹筋を確かめる。
ひく、と動いた感触にまた、どきんとする。

俺・・・。


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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-16

丸テーブルに座っていた俺たちの横から声を掛けたのは。
「絹里さん? 」
空になった、らしいトレイを持ち、同様にトレイを持った同僚らしい二人の女性と一緒だ。
「食事、終わったの? 」
「え・え。・・・あの、それで」
「新井さんたち、もう食事終わりますか? よかったら一緒にお喋りしませんか? 」
絹里さんより先に口を出すのは、後ろにいる女性。さっき俺に、’絹里さんはあっち‘と指さしたひとだ。
苑田さんは俺に下駄を預けるように視線を投げてくる。
「わるいけど、苑田さんと話があるから」
「あ、じゃあ隣にいます。邪魔はしません。それならいいですよね? 」
「恵理、よしなさいよ。・・ごめんなさい新井さん。私たち、行きます」
「いいじゃないそれくらい。公認なんだから」
恵理、と呼ばれた女性は怯まず、絹里さんを引っ張って強引に隣のテーブルに座らせ、自分達も当然と席に着く。
「知子(ともこ)、コーヒー五つ。私にはケーキも」
「わかったわ」
「恵理、知子もやめて。新井さんの迷惑に・・・」
「何言ってるの。なかなか会えないんだから遠慮することないわ。ねえ、苑田さん」
恵理さんはとうとう苑田さんにまで言いだした。

「・・こちらは構いませんよ。新井、おまえは? 」
「―― 苑田さんが、いいなら」
去年の年末に部屋を訪ねた時のような営業スマイルで恵理さんに答えた苑田さん、に渋々同意して、
(ひろさん、怒ってる)
内緒だけど嬉しかった。

「じゃ、高階さんの件は午後に連絡とって、それから詰めよう。サンプル作っておいてくれ」
「はい。あとで持っていきます」
横で聞き耳立てている二人に分からないよう、仕事の打ち合わせを装って話を終わらせる頃には、昼休みも終わりに近い。
(いつまで居るんだろう? )
苑田さんとの話の合間に時おりちらっと横の様子を見ると、絹里さんより友達らしい二人の方が頑張っている。 そして、
「お話、終わりました? 」
もう待てない、と体ごとこちらを向いて質問してきたのは、恵理さん、だった。
「ああ。待たせてごめんね」
苑田さんの、済まなそうな笑顔に、
「い・いいぇ。。・・あ、コーヒー、どうぞ」
赤くなってトレイごとコーヒーカップを出してくる。苑田さんの笑顔が彼女の勢いを削いだのが歴然で、
(やっぱすごいや、苑田さん)
感心してしまう。

「ありがとう」
「あ・ありがとう、です」
苑田さんの靴が周囲に気付かれないよう俺を突つき、俺も慌ててお礼を言った・苑田さんは笑顔のまま続けて、
「あと少ししか時間がないけど、いい? 」
「は、はい。って言うか、真希が新井さんと話したいって」
「恵理、それは」
「絹里さんが? それじゃあ俺は退散しようか? 」
「いいえ、そんな事は」
「あらいいじゃない、そうしてもらえば。私たちも行こう、知子」
「そうね。お邪魔虫にはなりたくないもの」
「知子」
「いいっていいって。じゃ、後でね」
彼女たちの会話に流されまいとして、
「苑田さん」
「早めにサンプル出してくれればいいから」
頼みの綱の苑田さんはスッと席を立ってしまう。つられて恵理さん、知子さんも立ち上がった。
「ほら、こっち座って、真希」
また腕を引っ張られて、今まで苑田さんが居た席に座らされる絹里さん。

「じゃあね、真希」
「がんばって」






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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-17

置いてけぼりにされた、俺と絹里さん。
「すみません、私・・」
「いや、俺もうっかりしてて。ごめん、迷惑かけたね? 」
ぎごちない空気に言葉が続かなくなり、お互いだまってしまう。
「あの・・」

「絹里さん」

俺に話しかけようとした絹里さんとほぼ同時に、彼女を呼ぶ男性の声が背後から落ちてきた。振り返ると知り合いの顔がある。
「中畝、さん? 」
「新井さん? ・・・あ、ごめん。邪魔しちゃった? 」
「そんな事は。絹里さんに用ですか? 」
「うん・・。名刺のことでちょっと。でも、後にするよ」
ほんとにごめん、気付かなくて。と、俺と絹里さんを交互に見てから背中を向ける。何となくその背中を見ていると、社食の時計が目に入った。
「うわ、もう時間になる。絹里さん、昼休み、終わっちゃうよ。話って、急ぐ? 」
「・・いいえ、後でも大丈夫です」
「そう? じゃあまた、後でにしよう」
「はい・・・」
気が急いていたから、絹里さんの、何か言いたげな表情を見過ごしていた。


**
『ね、真希、どうだった? 』
戻ってきた彼女が席に座るなり横にいる同僚が小声で聞いてくる。
『今は仕事の時間でしょ? 』
『でもぉ、話、したんでしょ? 』
『・・・してない。っていうか、出来なかったわ』
『うっそ。あの人(新井)、営業なんでしょ? まさか口下手? 』
『違うわよ・・・』
「絹里くん」
「はい」
上司に呼ばれて席を立つ。
「名刺が届いたから、持っていってくれないか」
「名刺・・、ああ、中畝さん、でしたね。分かりました」
初対面の時からなぜか親しげな笑みを浮かべていたのを思い出す。
(中畝さん、か・・・)
**

残業の合間に名刺のサンプルを作り、苑田さんのPCにメールする。
少しして携帯が鳴った。
― はい」
― サンプル見た。あのままプリントアウトして、高階さんたちに見てもらおう。それと・・・」
― 何?」
― 絹里さんと話して、楽しかったか? 」
― そ・苑田さん。俺は」
― 悪い。・・変なこと聞いたな。 ああ、(焼き鳥屋)行くのは明後日でいいか? 午後、外回りの途中で寄れると思う。アポ取っておいてくれ」
― はい。分かりました」

苑田さんがあんな事聞いてきたのはやっぱり焼きもち、かな? そうなら嬉しいんだけど。

電話を切った後で思った。


二日後。俺と苑田さんは焼き鳥屋にいて、親父さん、謙治さんと名刺のサンプルを見比べていた。
「う~ん・・。謙治、どれがいい? 」
「俺だって迷うよ・・」
「急ぐものではありませんし、今決めなくてもいいいんですよ」
「でもよ、苑田さん。こういうのって勢いで決めないと、何か決まらなそうなんだ」
そう言って親父さんは腕組みしてサンプルを睨んでいたけど、
「だーっ、分からん! 謙治、おまえ好きなの選べ」
さじを投げてしまう。
「親父・・。もぅ。 俺だって迷ってるんだ・・・」

「何だよ、開いてんじゃねえか」
ガラガラっと引き戸を開けて入ってきたのは、あまりいい印象の無い実の息子さん。






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