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『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*暖かくなったら-5

今回も電話のシーンが多いです。今回智くんの相手は・・・。 


みんな無事三年になった。優奈ちゃんも三年。受験に向けて頑張る年だ。

― クラスメイトも、夏休みまでは部活の人と、受験一色の人って分かれちゃってます」
― 俺も部活だったよ。あの後の受験勉強。今思えばあれくらい勉強した時期って無かったなー」

四月上旬、声が聞きたくなって電話したら、優奈ちゃん、話してくれた。彼女も夏休み
までは部活を頑張ると言う。

― でも、勉強もやっといた方がいいよ。暗記できる歴史とか」
― はい。能・・智さんもやってたんですか? 」

『智さん』

そう呼ばれてまた気持ちが優奈ちゃんに向かう。
初めて下の名前を呼んでくれたのは二月。バレンタインだ。お互い都合がつかなくてチョコレートは郵送だったけどその後電話で、
― 優奈ちゃん、届いたよ! こんな可愛いチョコがあるんだね。知らなかった」
― あの・・、喜んでもらえて、嬉しいです能見さん」
―・・。あのさ、優奈ちゃん」
― はい? 」
― 下の名前で呼んでくれないかな、俺のこと」
思い切って頼んでみる。
― 下の、名前・・ですか? 」
― そう、智、って。」
いつか呼んで欲しいと思ってたから、いいチャンスだと思ったんだ。

― ・・優奈ちゃん? 」
早まった? 焦って呼んだら、

― ・・・・・さとる、さん」

小さな声だったけど、はっきり聞こえた。――― やった!
― うん! 」
嬉しくってスマホを握ったまま頷いていた。




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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-35

「では、今月は、一応のプッシュを目標に、ということですね、苑田さん」
「そう言う事になると思います。バレンタインもありますし、チョコレートには負けますから成果があればいい、と言うところでしょうか」
「分かりました」
市島さんも一緒に、二月の方針を確認する。今年は平日のバレンタインだから社内でもチョコが行き交うんだろうな。俺にはまあ、義理チョコがあるくらいだ。
そう思っていたら、
「いっそ、社内くらいは‘チョコもいいけど文具もね’ なんてやってみたら・・・」
思いついたように苑田さんが言う。冗談なんだろう、全部言いきる前に笑ってる。
「・・・。面白いかもしれませんが、我々だけでは無理ですよ」
真面目に受け止めた市島さんが、本気じゃないですよね?としり込みしながら聞き返す。
「そうですね。俺達だけでやったら収拾つかなくなります」
「でも、発想はすごいです。どうすればそんな風に思いつくんですか? 苑田さん」
「いえ。。ただ、今話していてふっと、チョコとレターセットを一緒にして、『返事ください』って女の子が渡すシーンが浮かんだんです。
あ、これならうちの会社の女子もしたっておかしくないな、と」

真剣に聞く市島さんに、苑田さん、ちょっと照れた顔で答えている。
「すごい。 苑田さん、発想とか連想とかが私と全然違う・・」
俺も驚いた。そういうところはまだ少しも追いつけてない。
・・想像するだけの引き出しも無いけど。


市島さんと二人で感心してたら、仕切ってあるパーテーションを覗き込み、割って入った人が。
「お・・っと、こっちじゃなかったか。悪ぃ。・・あれ? 苑田じゃないか。久しぶりだな」
「相変わらずだな、黒田。おまえも打ち合わせか? 」
「はは、まぁな。絹里さん、来なかったか? 」
「まだだけど」
「そっか。どっかで捕まってるのかな? 」
苑田さんと威勢よく喋る’くろださん‘は、振り返り、部屋を見回す。

営業のフロアはちょっとした打ち合わせが出来るよう、スペースを取ってある。そこを仕切って使っていた俺達だけど、ほかにも仕切られている場所があり。
(くろださんもチーム営業のサポートしてるのか? )
名札が見えたので、読もうとしたら、
「あ、来た来た。絹里さん、ここ! 」
身体を捻って絹里さんを呼ぶ。 そうだ、絹里さんも来るんだった。

「済みません黒田さん。お待たせしましたか? 」
「いいって。誰かに捕まってたんだろ? 」
見当が付くようで笑いながら言う。
「ええ、まあ」
「じゃあこれ、渡しておくし。頼むね」
「はい。分かりました」
黒田さん、絹里さんにファイルを渡す。苑田さんを見て、
「また飲もう」
ニカッと笑って行った。

「それじゃあこちらのチームのレポートと予定、お渡しします。確認してください」
座った絹里さんに、苑田さんがファイルを渡す。
「はい。確認します」

「苑田さん、くろださん、って総務の人なんですか? 」
絹里さんが書類に目を通している間、こそっと聞く。
「ん? ああ、俺の同期。『おまえとは田・つながりだな。仲良くしてくれよ』なんて言ってたっけ。それからたまに飲んだりしてる」

そうなんだ。でも、『田・つながり』なんて、苑田さんの同期の人、面白いな。

「・・ありがとうございました。苑田さんの書類はいつも整理されていて助かります。では、預かりますね」
「うん、お願いします。・・・あ、そうだ、絹里さんもチョコは、買うの? 」
「バレンタインの、ですか? 買うのもありますが・・。今年は、作ってみようと思ってるんです」
少しはにかむように言って、ちらりと俺を見る。
「絹里さん、作るの? 大変じゃない? 」
つい、話しかけた。
「そんな事は・・・」
「ふうん。 仕事もあるから忙しいだろうけど、頑張って」
「はい」
何となく言った俺に嬉しそうに笑って、絹里さん、席を立った。





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-36

苑田さん、打ち合わせが終わったあと市島さんと外回りに出掛けた。俺とは来週。祝日とバレンタインがあるから気忙しくなるだろう。


「はい、新井さんにも」
「は? 」
「義理チョコですから、お返しはいいですよ。」
双葉工業でチェックと納品が終わった帰りがけ、差し出されたのはチャック付きの、名刺が入るくらいの袋。中身はもちろんチョコだ。
「ありがとうございます。いただきます」
「どういたしまして」
まだたくさんあるし、選んでもいいわよ、と言われ、見れば箱の中に同じものが。中身は少しづつ違うのだそうだ。
「こんなに買うの、大変だったんじゃないですか? 井上さん」
「いいえ。・・って、私は楽しんでるから。今しか出回らないものもあるんです」
そうそう、売り場で男の人も見かけたんです。あれ、買いに行かされてるのか、自分で買うのか。もしかして~・・なんてちらちらみてたんですよ。
と、後半は興味たっぷりに、内緒話で聞かせてくれた。

そうか、男でも見に行ったりするんだ。どんな人が行くんだろう・・。


苑田さんも、市島さんと行った先で、チョコをもらっていた。

「市島さん、心配しなくて大丈夫ですよ? これ、’お菓子代‘の中から出してるんです」
戸惑い、躊躇う市島に、女子社員が笑いながら種明かしする。
「ご馳走さまです。じゃあ、お返しはピンクのマーカーにでもしましょうか? 」
私たちは文房具屋ですから。
苑田も、差し出されたチョコの包みをごく自然に受け取り、こう返している。
「そんなこと言ったら、’お返し‘が高くついちゃいますよ、苑田さん。でも、『自分用のマーカー、欲しいな』って人はいますから、見本とかあったら買うと思います」
私も含めて。
ニコニコ笑顔の彼女に、
「そうですか。では、バレンタインのあとにでも持って来ましょう。教えてくれてありがとう、佐野さん」

そこを出て、次へ向かいながら、市島がため息をついた。
「どうかしましたか? 市島さん」
「いや、やっぱりすごいな、と思って。私はチョコレートを出された時点で狼狽えてしまったのに。
苑田さんは仕事につなげてしまう」
「あれは偶然です。いつも上手くいくとは限りません」
正面から言われ気恥ずかしくて、切り口上になってしまう苑田だったが、市島も苑田の人柄は分かってきている。気分を害することは無かった。


社へ戻ると、営業のフロアに入ってすぐ、段ボール箱が置かれ、添え書きに、
「・・・・’不要なお菓子は入れてください。欲しい人は持っていってもいいです‘ かあ。俺は、あるかな? 」
コートのポケットにもあったかもしれないけど、後で見よう。

回ってきた相手先のメモと、鞄に入れたチョコを取り出し机の隅に並べる。
「一つくれ」
後ろに人の気配、と手が伸びて。聞き覚えがある声に振り向くと、黒田さんだ。
「なァ、苑田は? 」
「知りません。今週は市島さんと組んでるので」
「そうか? “もうすぐ帰るから俺の所へ来てくれ” なんてメール寄こすから来たんだけどなあ」
「はあ・・・」
チョコを齧りながら言う黒田さんを横目に、レポートをPCに打ち込みつつ生返事すると、
「・・・なあ、あいつ(苑田)面白いだろ? 」
俺の横の、空いてる椅子に座りながら問いかけてきた。無言で見返すと、肩を竦めて
「俺とあいつは新人研修の頃から知り合いなんだ。・・と、京都へ行ったきりの進藤も。
あの頃から苑田は飛び抜けていた。俺達の思いつかない企画を立てたり、提案したり。随分刺激を受けたもんだ。それにあいつ、出し惜しみしない。
おまえさんにも、そうだろ? 」
にやっと笑う。
「・・・わかりません・・」
そう、俺には、自分で気付け、と言うばかりで。
黒田さん、そんな俺を見て、ふぅん、と小首を傾げ、何か言いかけ。
「お、帰ってきた。・・・苑田! 」
戻ってきた苑田さんと市島さんを見つけ、さっと立ちあがる。
「じゃあな」
ひと言残してまた行ってしまった。





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-37

最初の方、苑田視点があります。 ~~ から ~~の間です。



~~ 「待ったぞ、苑田」
市島さんと戻ってくると、黒田が声をかけてきた。こっちへ来るのを見れば、どうやら新井と話をしていたらしい。ニヤニヤしながら近付いてくる。
「ここじゃ何だから、外で話そう。時間、あるんだろ? 」
あとちょっと待ってくれ。 そう言って、市島さんとお返しも兼ねたマーカーについて打ち合わせる。
「それでは、私は色と数の確認をしてきます」
「お願いします、市島さん」

「それで、話って? 」
黒田を自販機コーナーに誘い、それぞれ一口飲んだところで聞かれた。
「ああ。おまえなら出来るんじゃないかと思ってる案件があるんだ」
目を丸くした黒田が、ふっと笑う。
「そーいうとこ、変わらんな。・・・聞かせてもらおう」
「実は、チームで打ち合わせしてた時、」
前置きして、‘社内で、文具とバレンタインをコラボさせたらどうか? ’と言う話が出た事を伝えると、目を輝かせた。
「面白そうだな、その企画。 乗った。早速回覧作って回してみる」
「ああ、任せる」
「おお、任されろ。・・・ところで、ずい分可愛がってるんだな」
「『可愛がってる』? 」
「新井、ってやつ。でも、ちょっと拗ねてたぞ」
クスリと笑われ、我知らず眉が寄る。
「『拗ねてた』? ・・・何が? 」
「‘自分で気付け’ って、教えてくれない、ってさ。けど、あいつ、頑張りそうだ。おまえに食いついていってるんじゃないか? 先が楽しみな後輩だな」
「うん。俺より伸びるかもしれない」
笑いあって別れた。 ~~

苑田さんが黒田さんと連れ立ちフロアを出て、しばらくして戻ってきたのが視界の隅を通る。すっきりした顔だったから、何かが片付いたんだろう。
(同期、か)
苑田さんの同期・・、ってことは、俺の知らない苑田さんを知ってる人なんだ。話を聞いてみたい。少しでも苑田さんを知りたいから。
そう思いながらレポートを纏め、箱に入れるチョコと一緒に持って立ち上がる。
今夜は苑田さんと一緒だから忙しさも苦にならない。
(俺って現金。・・・ひろさん、頼んだら、あの姿して、くれるか、な・・?)
いっけな。仕事しごと。 ペチペチと自分の頬を叩いた。


残業を終わらせ、メールを入れる。
::仕事終わった。俺が行く? 来てくれる? 」
::こっちに来い。俺は今帰る途中だ。食事の用意しておくから」
「わ。だったら急ごう」
携帯を閉じ、急ぎ足になった。

「ひろさん、来たよ」
「早かったな」
まっすぐひろさんの部屋へ行けば、笑顔でむかえてくれる。すごく嬉しくて昨夜の夢がちらつき、下半身が早々に熱くなる。
「どうした? 」
「あ、べ、別に。 あのさ、何作ったの? いい匂いしてるけど」
コートを脱ぎながら誤魔化すように言う。本当に食欲をそそる匂いがしていた。
「ビーフシチュー。和美さんからのおすそわけだ」
あの女性(ひと)の煮込み料理は何でも旨いんだ。と自慢そうに教えてくれる。

「ほんとだ、美味しい」
「だろ? 」
大皿に、たっぷり取り分けられたシチューにしり込みしていたが、肉も野菜も柔らかくて、気付いたら食べ切っていた。
腹が膨れると、気持ちはひろさんに向かう。

「ねぇひろさん。風呂、もう入った? 」
コタツ越しに聞く。向こう正面で一瞬黙ったひろさんがふい、と横顔を見せる。
「・・・入った」
「ったー、痛いよ、蹴飛ばさないで」
「知らん」
ほんとにおまえは、とか呟きながら立ち上がり、食器を流しに持っていってしまう。
「ひろさん~」
「おまえも風呂に入るならさっさとしろ」
声だけ寄こして、水を出す音がする。俺も立ち上がり食器を持った。
「聞いただけなのに」
けどひろさん、頬が赤くなってた。口元が緩んでくる。





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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その73

「ちょっとちょっとー。私、歌が聞きたいのよ!」

これ、たまにラジオに文句付ける時のひと言です。
イマドキの歌は、聞き取りにくいものが多くて。

昭和世代なので、そりゃあ確かにラップとか、早口言葉のようで頭の回りに’?’ マークが踊ることも有ります。けど。
音楽が煩くて肝心の歌声がかき消されて聞こえないことって、ないですか?
声も楽器の一つ、と言われればそれまでですが、所々ではっきり聞こえる。それじゃあ訴えたい事判んないよーー!

歌う方も聞いて欲しいと思っているんだろうから、キチンと聞かせて、ね。


ところで、私の好きな歌は、ボーイズ系が多いよう。あ、歌い手が男性というのではなく、歌の雰囲気が。
 ’目標に向かって、行くぞ!’ みたいな感じ、かな?
後は児童唱歌っぽいもの。季節の歌。  ・・・カラオケはズゥーーー・・・っと、行けてない。 音域も下がって来てる。
ソプラノパート、でした。 昔はうちゅうせんかん・ヤマト、の、♪ァーー ァーー あああ ァ~ァ~ アアァ♪ が楽に出たんですよー。   ホント。

歌うのは、大好きです♡


『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*暖かくなったら-6


― 智さん? 」
― ・・あ、ごめんごめん」
つい、思い出してた。
― 俺もやったよ。それから、教科書を読み直すこととか。問題集は、欲張らずに、2・3冊、徹底的にやったかなあ。
 でも、受験まではマラソンと一緒だから、今から無理しすぎたらだめだよ」
― はい」
この後お互いの近況を話して電話を切る。次の約束はG・W。
だけどその前に、あることが起こった。

十六日、少し寒いけど雨は降っていない。久しぶりに夜の‘録音’に出かけようとして
いる時だった。

「あ・・和叔父さんだ」
着信音で分かる相手に、いそいそと電話に出る。


― ・・はい。・・あ、叔父さん?」
― いきなりごめん。・・今、大丈夫? 」
― うん、平気。何か用? 」
今夜の‘録音’より和叔父さんの方が大事だ。
― 良かった。急で悪いんだけど、手伝って欲しいことが出来たんだ。」
― 俺に?
― 智じゃないと駄目なんだ、いいかい? 」

叔父さんが、俺を当てにしてくれる。嬉しくて飛びあがりそうだ。

― 今度、初めて車椅子を使う事になった人がいるんだ。病院で指導も受けたりしたそうだが、ご家族でよく分かっていない人がいてね。僕が車椅子を持っていくついでに実演することになった。それで、その練習に付き合って欲しいんだけど。次の日曜、空いてる? 」
― うん、大丈夫だと・・、ちょっと待って。・・何も無い。手伝えるよ」
予定を確かめ、そう伝える。
― そうか、助かる。
  じゃあ、土曜日に待ち合わせよう。晩ご飯、ご馳走するよ」
― えー、いいの? 」
― もちろんだよ。場所を決めたらメール入れるから」
― うん、待ってるね」




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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-38

今日の後半、緩くRが入ります(R-15くらい)。なので、年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。










「自分で洗え」
「自分で? 」
ひろさんはもう洗い終わっていて、手を拭いてる。そして俺と入れ替わるようにスッと離れていく。 まだ、怒ってるのかなあ。
食器を、ひろさんがしたのと同じように重ねて片付け、二つずつ重なっているのが嬉しくなる。
部屋へ戻ると、テーブルの上に見慣れないものが乗っている。
「ひろさん。これ・・・何? 」
「オレンジピールのチョコ漬け。林檎で作ったのもある」
「オレンジピー・・・ル? 」
「オレンジの皮を、砂糖でつけたもの」
炬燵に入りながら差し出されたものをよく見れば、スティック状になったオレンジの皮、に、ポッキーみたいに途中までチョコが付いている。
「このまま食べてもいいけど、つまみにしてもいい」
そう言って、ほら、と小ぶりなワインボトルも出してきて、グラスに注いでくれた。
「明日が休みだからって二日酔いはするなよ」
「うん。 でも、このチョコ、どうしたの? 」
「外回りでレモンピールのチョコ漬けをもらったんだ。美味しかったからよく似たこれを買って来た」
「・・チョコ売り場、行ったの? 」
「ああ」
ひろさん、ほんとに行ったんだ。
想像してみる。 仕事帰り、デパートのチョコ売り場でこのチョコを探すひろさん・・。ちっともおかしくない。 じゃあ、俺は?

しばらく黙ったあと、炬燵テーブルに突っ伏してしまった。

「崇? 」
「・・・だって、全然似合わない」
顔を横に向け、ひろさんを見る。
「何が? 」
「チョコ売り場で、チョコを探す俺」
聞いて、目を丸くしたひろさんがクスッと笑った。
「行きたいなら付き合ってやってもいいが、必要ないだろ? 」
「う・・、まあね」
確かに買いに行く目的なんて無いから行く必要だって無い。 それより、ひろさんの機嫌が直ってきたみたいなのが今は重要だ。

体をおこして食べながらふと思いついた。それを実行したくなって、向かい合っていた場所からひろさんの横へ移動する。と言っても小さな正方形のこたつだから、左側だけど。

「ひろさん」
呼んでからチョコ付きオレンジを咥える。
俺のする事を、首を傾げて見ていたひろさんが、呆れたような顔で、しょうがないなと笑って、
「遠い」 
とだけ言う。咥えたままにじり寄って、首を伸ばし、
「ら(だ)め? 」
髪からないように聞いた。そしたら、声を出さずに笑って顔を近付け・・、
「どこで覚えたんだ? こんなこと」
俺の口から先、出ている半分くらいを噛み切って離れる。 期待していた俺が思わず口をとがらせるのを見て小さく吹き出し、食べてからもう一度、今度は唇が触れ合うところまで来てくれた。
そっと開いてギリギリまで歯で挟み、噛みきって離れようとしたから、急いで手を伸ばして後頭部を押さえる。
「ん・・・ふっ、んぅっ・・」
驚いて、声をあげるのを引き寄せ、舌を差し入れた。ひろさんの口の中にもオレンジとチョコの味が残ってて、甘く、ほろ苦い味がする。
「・・ぁ、た・崇・・っ。っは、ん」
「ひろさん、エロい。 もっとする? ベッド・・行く? 」
角度を変え、頬の内側から顎、歯の裏まで愛撫し、ひろさんに熱い息を吐かせ。ようやく口を離したら、俺の名前を呼ぶ。

「どうする? 」
「向こうが、いい・・・」
目元を染めて返事した。


今でも恥ずかしがるひろさんは、そそくさと支度して、ベッドに入ろうとする。
まだ寒いから、スエットの下に薄いシャツを重ねているその身体を、後ろから抱きしめ立ち止らせた。





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-39

今日からしばらくRになります(R-18)。年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。

































「た・・崇、何を」
「ちょっとだけ」
普段しない動きに驚いて振り向こうとするひろさんの首筋へ唇を押し当てる。びくりと震えるのを感じた時、夢で見たあの姿勢をさせたいと欲情していた。

「こうやってするの、初めてだ」
「・・ぁ、あ」
喘ぐようにして答える。だから、
「触っても、いいよね? 」
ひろさんの言葉を待たず、手を服の中へ潜らせた。
「ひぁっ、崇、やっ・・・」
薄い布越しに胸を撫で、小さな突起を手の平でこすりあげる。刺激に敏感なそこは、さらに指で弄られて硬くなった。
「嫌・・だっ」
腕ごと抱きしめられているひろさんが、服の上から俺の手を掴み、止めさせようとする。その前に、存在を主張する胸の粒を、きゅ、と摘んだ。
「んァッ」
いきなり走った快感に喉を反らして声を出す。それだけでもうかりたてられ、俺の雄が、むく、と首をもたげた。
「ひろさん。・・ねぇ、手、ついて」
両手を胸に置いたまま揉むように動かし、指の間に挟んだりすると、はあ、と息を零して体が震える。
ひろさんは感じ出すと体を震わせる。何度も。

(夢の中でもそうだった)

「ベッドに手をついて、ひろさん。  ・・イイところ、触ってあげる」
服を着ていても、きっと同じはず。そう思って、あの姿勢をして欲しくて、言いながらひろさんの足の間に、自分の片足を割り込ませ、広げさせた。
「ゃあ・・。たか、し、そこで喋る・・な」
顎を肩に乗せるようにして喋り、項へ舌を伸ばし、ぺろり、と舐める。 鼻先に杏の匂い。ヘアオイルだ。匂いにつられて髪の生え際も舐めたら、かくんとひろさんの膝が抜けた。
慌てて腕に力を決めて支える。

「だいじょうぶ? 」
「もゥ、やだ・・。崇」
身体を俺にもたれさせ、泣きそうな声で言うひろさんの色気にガツンと来て、続きをするどころじゃなくなってしまった。

「ごめん。もうやめる。・・・ベッド、上がれる? 」
腕を解くと、身体を前へ投げ出し、這うようにベッドへ上がるひろさん。俺は下半身を脱ぎ捨て、すぐに覆いかぶさり服を捲り上げて背中を出し、腰の、弱い所へキスする。
「んあぁっ・・」
伸びあがって反応するから、も一度唇を付け、そっと歯を立てる。
「はん・・っ! あ・あっ、た・かし」
びく、と全身が跳ね、欲情を滲ませた声が零れ落ちる。堪らなくなって上着も全部脱がせ、背骨や肩甲骨を撫でたり、口で愛撫して、続けざまに声をあげさせた。
「ゃ・・っあ、あんっ。・・そっ・・な、崇・・、ぃ、い・・んっ」
「 っは・・、ひろさん・・、エロ」
喘ぎながら両手で枕にしがみ付き、色気がだだ漏れになっているうつ伏せのひろさんの前へ手を差し込む。
「んあっ・・、ぁ・・っ、ふっう・・、く」
スエットの上からでもはっきり分かるカタチになった雄を握り、分かりきっている事を、聞いた。
「ひろさん。興奮した? 」
「―――― ・・・ッ」
横向きの顔が赤くなって、唇を噛んだひろさんにニヤリとする。
「俺はすっごく興奮した。・・・あのままシたかった。だから・・、今度は最後までしよう。ね? 」
「そんなの・・、っぁああっ」
「だって、服ぬがないと出来ないし」
俺の、臨戦態勢の雄を押し付けてから、ひろさんのスエットを下着ごとぐいっと下ろした。





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-40

今日は完全にRになりました。新井くん、色々やってます。R-18、なので、年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。




























もう十分に育ち、下着に染みを付けていたひろさんの雄が布地と一緒に押し下げられ、外れた勢いで反り返る。
「あ・・」
下腹に、小さいけど粘つく音を立てて当たったのが聞こえ、それが恥ずかしいと声をだすひろさん。
「・・・・ヌルヌルしてる」
「いっ、言うな、そんなこ・・・んぅっ」
硬い肉幹を扱く俺の手に反応して言葉が途切れ、鈴口を指の腹で擦れば、また声をあげて震える。
「ゃ・・、それ・・っ。 くうっ・・。ず・るいお、れだけ・・、脱がせ、て」
「俺も脱いでるよ。全部じゃないけど」
そう、下だけは。その証拠にと腰を押し付け、もういつでもOKな雄をじかに擦りつけて伝えた。
「早く入れたい。ひろさんを、もっと感じさせたい」
「あぁっ、・・・は、っあ、・・」
前後から刺激を与えられ、腰を浮かせる。その動きに偶然、熱棒になった俺の雄がひろさんの双丘の狭間に擦れて、
「ぅぁ・・っ、あ、んんッ」
「・・く・・・っ」
一段と高い声をあげるひろさんと、射精感をこらえる俺の奥歯を噛む声が重なる。そしてつい力を入れてしまった手の中で、ひろさんのが弾けた。
「・・・っ、ぁああぁ・・・ッッ」

肩で喘ぐひろさんの体から力が抜けていく。腰が沈む前に手を抜き、放った滑りを蕾に塗り込み、そろ、と指を挿し入れた。
「や、っ・・」
「こっちも熱くなって、ひくついてるよ」
「・・知らな・・・んっ」
奥まで入れた指で内壁をぐるりとなぞり、探しあてた小さなしこりをくい、と押すと全身が波打つ。
俺は性急に指を増やした。限界が近くて、油断したら達ってしまいそうだ。
「やぁ・・、た・・かしっ。・・あ、くぅっ、ん・・・」
喘ぐ声が掠れていて、また煽られる。
「ひろさん・・。腰、上げて? 」
片手で腰を撫で、中へ入れた指を動かしながら強請る。はっ・・、と息を止めて、吐き出し、ふるりと体を震わせ、ゆっくり、膝をついて・・、腰が高くなった。

俺も動きに合わせて膝立ちになり、思わず生唾を飲む。
肘と膝をついて足を開いた姿は何度見ても爆弾モノで、すぐにでも貫きたい衝動にかられる。けど、ひろさんがさらに乱れるのは、
「ね、見える? 溢れて、糸引いてるよ、ここ。・・・ほら」
「っ、や・だ・・。ぁぁっ・・、そ・んなの・・」
「中に入れた指にも、吸いついてきてる。  やらしー」
「ば・・か崇っ。言わなくてい・・・、っ」
こんな風に、ちょっと意地悪な言葉を言った時だ。
実際、前はほぼ完勃ちになるほど復活して透明な蜜が敷いたバスタオルに落ちている。手で包み込んだだけでびくびくした。
「だめ・・、触っ、ら・・、んっ、ンァぁ」
「イイ、でしょ? まだ達かないでね。今度は俺と一緒に、して」
背中と喉を反らして嬌声をあげるのへそう答えて、握ってる手の指で輪を作る。ひろさんが音を立てて息を吸った。
「それ・・、いゃだ」
「如何して?  ・・感じすぎちゃう? 」
頭が小刻みに横に振られる。でも、言葉は無い。何も言わないのは’そうだ’と言ってるようなものなのに。
こんな時、いつも思う。年上なのに可愛くて・・・。腰が疼いた。

「好きだよ、ひろさん」
上半身を倒し、耳のそばで囁く。
「・・俺も。崇が、好きだ・・・。はンッ」
指を引き抜き、待たされ続けて、飢えた肉棒を押しこむ。綻んでいてもきつい入口が限界まで広がり、受け入れた中は、蕩けていた。





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-41







今日まで続いたR(R-18)ですが、ようやく(?)終わります。でも、年齢に達し無い方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、すくろーるしてどうぞ。
























そのまま奥まで、肌が密着するまで進める。
「なか・・、熱いね」
それに、馴染むのを待っている間にもじわじわ動き出しているのが伝わってきて。
「たかし・・」
「もう、・・いい? 」
俺の名前を呼びながら動いて欲しいと腰を揺らすひろさんは、無自覚のフェロモンをゆら、と立ちのぼらせる。それを合図に、
「ぁ・あ。・・・っ、た、かしっ、そ・・っ、擦る・・・ぁんんっ」
腰をつかんだままゆっくり引いて、浅い位置で擦りあげながら小さなしこりへ、ぐい、とカリを押しつける。
「こうするの、好きだよね? 」
「だ・・から、って、そこば・・っ、う・あっ」
深く挿れ、浅く突き、かき混ぜて揺さぶる。 腕の力が抜けてしまったのか、ベッドに肩をついてしまった。
(ひろさん・・、それ、ヤバいって)
貫かれてる尻だけ高くかかげた姿勢を見せられては、熱を吐き出すまで止まれない。

「あ・っ、崇・・っ、そ、な・・深いィッ。・・・っあぁぁっ」
「ひろさ・・、ひろ、さんっ・・」
「ふ、くぅ・・っ、だ・・めぇっ。・・・ゃ、いっ・・も、ぅ・・。 ・・ィ、きた、たか・・、達き、・・イかせ・・っ」
喘ぎながらも自分の雄を縛める指の輪を緩めようと、力の入りきれないひろさんの手がシーツを這うのが目に入る。
どくん、と心臓が音を立てた。
「ひッ、ひぁあっ。・・あンッ、・・・・しっ、たか・・っ」
「いい、って、言って? ・・ひろさんっ・・」
「・・・いっぁ、んんっ、ィ・・、いィ・・」
肌を打ち合わせる音を立ててストロークする。突き上げるたび全身が揺れ汗が散り、両手がシーツを握りしめる。
「は・・っ、ひろさっ、すご・・。からみつい・・くるっ」
「あァッ・・、た、かし・・、たかしっ。も、・・もう・・」
「ん・・。い・・よ、お、れも」
あと半歩、というところに来てるから、ひろさんの根元の輪を外し、ギチギチになっている雄を扱いた。
「あ・ゃ・・、や、ンッ、・・・ァあ ―――っ」
びくん、と身体が強張り、二度目の吐精をするひろさん。そして中にいる俺の雄をきつく締めあげて。
「―― ・・・ッっ! 」
振りきれず、でも、さらに奥へ沈めて熱い白熱を放った。

「・・ひろさん、体、洗おう? 」
「やだ・・。動きたくな・・」
あのあと、興奮が収まらなくて、抜かずにひろさんの片足を抱えあげ、もう一回シてしまった。
ぐったり横たわるひろさんに誘いをかけたら、嫌だと言う。
「でも、汗かいたし、気持ち悪いだろ? 俺、手伝うし」
「・・・だから嫌、なんだ。 おまえ、風呂でも盛ってくるじゃ、ないか・・」
うつ伏せで寝ているひろさんの手が、俺の脇腹を抓ってくる。
「いた・・、痛いよ。ひろさん、横暴」
本当はそんなに痛くないけど、大げさに顔を顰めて文句を言ったら、子供みたいに‘べー’と舌を出して、
「明日が、休みだからって・・、調子に乗るから、だ」
言い返された。まあ、半分はその通りだから大人しく謝る。
「はい・・、ごめんなさい。
でも、・・大丈夫?  あとで辛くなるんじゃない? 」
「・・・・動けるようになったら、行く」
頬が赤くなって向こうをむいてしまった。
「じゃ、俺、先に入ってくる」





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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その74

 世の中、ゲームが溢れてますねェ。

昔は双六(すごろく)とかだったのに、今では現実なのかゲームなのか分からなくかるくらいのものまである・・、んだそうです。
種類も、数えられない。 いや、数える気にもなれないです。

アナログな私、PCや端末を使う○○シリーズなどは苦手。どちらかと言えば人生ゲームなんかが好きです。
・・そういえば、この 「人生ゲーム」 、40周年を迎えるんですって! 
EZwebとか、モバイルなどでもゲームが出来たりするようですし、最新版では、SNSが乗っ取られ・・、とか、ブラック企業に・・、のマスがある(あ、残念ながら購入してません。チラシを見ただけー。苦笑)。 時代にマッチしたものを、と、何度もリニューアルしているそう。 侮れないゲームです。笑。

PCでは、とあるメーカーの、無料体験をよくやっています。30分とか、1時間とかで終了。 「気に入ったら買ってね❤」
的なものです。
けっこう楽しめるのと、強制終了がお気に入りです。

なぜ?  一応、家族がいるので、家事に使う時間を確保する為です~~。


みなさんは、どんなゲーム、してますか?

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*暖かくなったら-7

土曜日、珍しく俺の方が先に着いた待ち合わせ場所は、
「何でホテルなんだろ? 」

奥にあるコーヒーショップは一人でいるとなんだか落ち着かない。出入り口でもあるロビーが見える位置に座り、昼食(ひるしょく)以上の値段のコーヒーをちびちび啜る。
(和叔父さん、早く来てくれないかな・・・)
と、変わった形の車が、自動ドア越しの玄関に見えた。
「タクシー、なんだけど・・・」
屋根の上にタクシー特有のマークが乗ってる。でも、いつも見てる形じゃなくて。
じっと見てたら、
「あれ? 和叔父さん? 」
降りてきたのはやっぱり和叔父さんで、でも、タクシーの後方が開いて、
「・・・車・椅子? 」
和叔父さんがタクシーの運転手さんと何か話しながら車椅子を降ろしている。そして、空の車椅子を押してロビーへ入ってきた。迷う事無くこっちへ来る。
視線を感じたのか顔をあげ、俺を見つけると笑顔になった。

「ごめん、待ったかい? 」
「そんなには待ってないけど・・。その車椅子、どうしたの? 」
和叔父さんもコーヒーを頼み、ひと息ついたところを、聞いてみる。
「うん、これが頼んでいた事のひとつ。旅行に行くのが好きな人なんだ、今度の人は。それで、ホテルに車椅子で行くとどうなるのかも知りたいと言っていたから、智に頼むついでに・・、と思ったんだ。」
そうなんだ。
「何でホテル、って思ってたけど、そういう訳なんだ」
「そう。それに、ここのホテルの食事は美味しんだよ。どうせなら智と食事もしたかった」
「でも、高くない? 」
「僕が誘ったんだから、智は気にしなくていい」
「気にするよ。それに俺だってバイトしてるんだから」
そんなに甘えられないし、俺だって・・・。
「分かった。じゃあ、ここのコーヒー代、智が払って」




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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-42

カラスの行水で済ませて戻ればひろさんがベッドの上で座り込んでいる。
「ひろさん? 」
俺の顔を見て、俯いた。
「どうかした? 」
サイドテーブルに水など色々置いて聞いたら、
「トイレ・・・行こうとして・・っ」
下をむいたまま、声を呑む。
「・・・・、もしかして? 」
思い当たってひろさんを覗き込んだ。 頬が染まった顔で、ようやく頷く。

「出しちゃお、出せるだけ。せっかく起きたけどさ、もう一回横になって・・・」
「・・行きたいんだ」
俺の・・、だけじゃないんだ、と切実な表情をする。
「分かった。トイレ行きたいけど、立てないし・・・歩けないんだね?・・・ちょっと待ってて」
どうせならシャワーを浴びた方がいいだろうと思い、浴室へ行ってから距離を測り、何とかなるかも、と思って。

「ひろさん、ちゃんと捕まって」
横抱きに抱きあげた。
「た・・崇」
めったにない、ひろさんの狼狽えた顔と俺にしがみつく両手に、テンションが上がる。
「距離・・、短いからっ、なんとか・・・っ」
とはいえ、ひろさんだって男何だから体重はある。


「・・ば・ばてたーー・・・」
シャワーを浴び、すっきりして気力が戻ったのか、帰りは自力で(でも、壁に手をつきながら・・だけど)ベッドに戻ったひろさんは、疲労困憊して横にダイブしたおれにクスクス笑う。
「俺より若いのに」
「・・体力・・、使い切った・・・」
「それなら、安心して寝られる」
ほら、とペットボトルを差し出してくれる。
「ひどい・・・」
やっと横をむいてそれを受け取り文句を言ったら、
「けど、助かった。ありがとう、な」
すう、と上体を傾け、優しいキスを唇にくれる。
顔が、だらしなくにやけた。


翌朝。爆睡してすっきり目が覚める。
横ではひろさんがまだ眠っていて、あぁ、二人で寝たんだ、と思い出す。そうっと動いて手を伸ばし、額にかかっている髪をかき上げた。静かな寝顔にじんわりと胸が温かくなる。
「ひろさん・・。ずっと、一緒に居ようね・・・」
叶えばいいと願いながら呟く。
あくびが出て、もうちょっと寝ようと目を閉じた。

次に目が開いた時、隣にひろさんがいなかった。時計を見ると、九時に近い。もそもそ起きだしてリビングを覗くと、新聞をじっと見ているのが目に入った。
「ひろさん? 」
声をかけるとビクッとして振り返る。
「あ・・、起きたのか。じゃあ、食事の支度、しないとな」
「どうかした? 新聞に、何か気になることあったの? 」
「べ・つに。おまえが気にする事じゃない」
「そう? 」
「ああ。 顔、洗ってこい」

~~ 嘘をついた。
崇には、話せない。・・・新聞には、病気で臥せっていた宮崎の妻、澄江の死亡記事が載っていた。 ~~






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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-43

今日は一日、部屋で過ごした。
食事のあと、交替でシャワーを浴びて寛ぐ。俺は久しぶりの肉体労働(?)で筋肉痛。ひろさんは外へ出たくないようで着替えもしない。

「あ・・、ひろさん、これ、見てるの? 」
ラグの上でごろごろしながら暇つぶしに本棚を眺めていて見つけた、山の写真集や山に関する本。抜き出して広げて見ると、付箋が付いていたりする。
「ん? ああそれか。まあ、時々」
横で本を読んでいたひろさんが俺を見て答える。
「暖かくなったら、行ってみたいなと思って。・・・まだ、思ったるだけだ」
「それって、俺と? 」
「ほかに誰がいる? 」
照れくさそうに言う様子は夜とは違う可愛さがあって、ほんっと誰にも見せないでほしいと思う。
「うん。行こうね、絶対。
そうだ、そしたら一緒に買い物行こうよ。靴とか、服とか」
コーヒーを淹れているひろさんを肘をついて見上げながら言えば、頷いて笑う。
「それはおまえが先輩だから、頼む。 頼りにするぞ」

う・わ。 ・・それは考えたこと無かった。

「頑張る」


~~ 外へ出る気になれない。
崇が、体が痛いと言うのを口実に、部屋で過ごした。山の本を見つけ、話題を振ってくれて安堵する。
一緒に行きたいのは間違いないのでそう言うと、顔中笑顔にして答えてくれ・・、ほっとした。 ~~



休日明け、苑田さんと出社する。
今週は一緒に外回りするから参考になるかもしれない、と、市島さんと組んで回った時の、 ’チョコのお返しに、マーカーを‘ の話も聞かせてくれた。
「それいい。俺も真似して平気? 」
「大丈夫だろう。ただ、同じようにマーカーを使うと急に在庫が減ってほかの連中が困るから、もうちょっと考えてみるんだな」
あーあ、出た。 いっつも俺に出される、‘自分で考えろ’・・・。仕方ない、あとで考えよう。

仕事の合間に、「文具」 で検索をかける。変わり種の消しゴムや付箋、ユニークな形のクリップ、小さな折り畳みの鋏。それに、
「あれ? 」
検索の手を止め、思わず見入ったのは、卓上クリーナー。
ミニカー型で、色もカラフルな、テーブルの消しゴムかすなどを掃除する物だ。
「これ、あずま商店さんの、引き出物にいいかも」
プリントアウトしてながめる。一度、実物も持っていって、相談してみよう。

「新井、そろそろ行くぞ。・・何見てるんだ? 」
「あ、苑田さん。はい、今支度します。 これですか? ちょっと頼まれた物があったんで見てたんです」
PCの電源を落とし、プリントアウトした物も持って席を立つ。

「いいんじゃないか」
「ほんと? 」
「ああ。面白い物、探しあてたな」
移動中、あずま商店さんの話をし、引き出物の一つにどうか、と問いかけたら賛成してくれた。ただ、
「これ、多分取引の無い相手先だ。今回限りになるかもしれないから、小野山課長に相談してから持って行った方がいい」
と修正が入った。





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-44

新井くん、苑田の真似が出来るのか?


 ◇  ◇  ◇

あさってはバレンタイン。という日の昼休み、母さんから電話が入る。

― 崇、明日のお昼、付き合って欲しいんだけど予定とかある? 」
― 別に無いけど。付き合うって、どこに? 」
― デパ地下、見に行きたくて」
― デパ地下? 」
― チョコレートよ、バレンタインの」
― 何でまた急に・・・」
母さん、今までは近場で買うか、自分で作ったりしてるか、なのに。
― TVで特集やってて、行きたくなったのよ。父さんは用事があるから、って断られて。いいでしょ? お昼、ご馳走するから」
― まあ、いいけど」
― 決まり。じゃあ明日、お昼になったら電話して」
― 分かった」

「デパ地下か・・」
あんまり行かないけど。そしてそんな場所で、会ってしまった。


翌日、約束通り電話する。
― あ、崇。今☆☆ビルにいるの」
― うん、ざわざわしてるのが聞こえる。そっちに着いたらまた電話しようか? 」
― そうね。お願い」 

「もうそんなに買ったの?! 」
「『そんなに』じゃないわ。これだけ。袋がかさばるから大量に見えるだけよ」
待ち合わせ場所に着くと、母さんはもう袋を幾つも提げていた。 これだけ・・って、何軒回ったんだ? 
「あ、そうそう、これ渡しておくから。時間になったら並んで」
「これって・・、整理券? 」
そう。母さん、狙ってる物があるんだけど、、買うのにどれくらい時間がかかるか判らないし、並んでる時間がもったいないじゃない? 頼むわね」
小さな紙を俺に渡すと、’いざ出陣‘みたいな歩き方でさっさとエスカレーターに乗って行ってしまった。
「忘れてた・・。母さん、気合入るとすごいんだっけ」
整理券の文字を読みながら呟く。昔はよく一緒に出掛けて、デパート四・五軒平気で回っていたのを思い出した。

「ええ? あと五分しかない」
俺も急いで地下へ降りる。そして、固まった。
「冗談・・・」
満員電車並みの人混み。しかもほぼ女性。
「こんな所で並べって・・?」
帰りたくなった。けど、携帯を出して母さんを呼ぼうとした時、
【整理券をお持ちの方―、お並びください―】
売り子さんの声が響き、早くも列ができはじめる。
(並びたくない)
本気で思い、列に並ぶのと母さんの怒りを天秤にかけた俺に、
「新井さん、・・ですか? 」
この声は、と背後からの遠慮がちの呼びかけに振り返れば、やっぱりそうだった。

絹里さん・・・!

「どうしたんですか? こんな所にいるなんて」
「それはこっちが聞きたい・・・あ、」
頼みの綱とばかりに整理券を両手に挟んで、
「絹里さん、頼む! これ、引き受けてくれない? 」
「え?・・これって、整理券、ですよね? もしかして」
「そ。あそこなんだけど、並ぶ勇気なくってさ―。ごめん、お願いできる? 」
「いいですよ」
くすくす笑って整理券を取ってくれた。
「行ってきます」





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-45

当然、と言いましょうか。 新井くん母と絹里さん、ご対面です。



「あらまあ、初めまして。崇の母です。ご迷惑かけてすみません」
「いいえそんな。私も欲しかったんです、このチョコレート。一緒に買わせていただいて、こちらこそありがとうございました」
引き受けて買い物をしてくれた絹里さんと、目的をゲットしてうきうき帰ってきた母さん、俺が合流し、ひと息いれたのはデパート内の軽食屋。
腹が減ってばくばく食べてる横で、二人とも紅茶を飲みながら楽しそうに喋ってる。


「それじゃ、今は崇と一緒に仕事なさってるんですか? 」
「チーム、と言えばそうですが、私はサポートが主な仕事です。た・・新井さんは、苑田さん、市島さんと組んでいて、成果をあげているんですよ」
「そうなの? 教えてもらえると安心するわ。この子、ちっとも話してくれないから」
別の話ならしてくれるんだけどね。と続け俺の方を見るから、噎せそうになって慌てて水を飲んだ。


「新井さんのお母さまって、楽しい方ですね」
「‘さま’はいいよ絹里さん。そんな大層な人じゃないし。それに‘楽しい’って言うよりちょっとズレてる、んだと思うけど」
二人で話しながら、でも、昼休みがもう終りそうなので早足で歩いてる。
「あ、信号変わりそうだ」
「急ぎましょう」
走って渡りきった、ら、
「きゃっ」
「絹里さんッ」
段差にでも躓いたのか絹里さんが転びそうになる。咄嗟に伸ばした手でどうにか支えられた。代わりにびり・・っと紙袋が破れて、中身がばらける。
「だ・大丈夫だった? 」
「は・い。なんとか」
顔が間近になっていて、見合った時、絹里さんの目がきれいで睫毛が長い事に気付く。
ドキッとした。
「・・・あ、買ったの、ばらばら」
抱き支えるようにしていた手を放し、急いで集める。
「はい。これ」
「すみません」
「もし、ダメになってるのあったら、そのチョコ、俺がもらうよ? 」
「そんなこと・・」
「付き合ってもらったの、俺の方だし」
ふと、絹里さんの向こうにデジタル表示の時計が見え、
「わ、もう終るよ昼休み。行こう」
「・・・・はい」
時間を気にしていて、絹里さんの顔が曇ったのは見逃していた。


苑田は、市島と窓際の席に座り、予定をすり合わせていた。
「あ」
「? どうかしましたか? 市島さん」
「いえ、横断歩道を渡っていた人が転びそうになって」
視線を追って外を見おろせば、散らばった何かを拾い集め、横にいる女性に手渡している男が見える。
「無事だったようですね」
「ええ。仲がいいなあ。カップルで買い物でしょうか」
二人で、微笑ましく見ていた。


◇  ◇  ◇


~~ その夜。仕事を終えた苑田は、ある場所へ向かいながらまだ迷っていた。





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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その75


月に1・2回、タクシーに乗ります。家族の定期検診の付き添いで。
私が運転して病院まで行ったこともあるのですが、気を使って苛々して、帰って来るとぐったり(たまに言動が荒っぽくなったりした事も。苦笑)。
なのでいつの間にかタクシーを利用するようになりました。

普段は運転してるのでよそ見なんて出来ないのですが、こういう時は別。
見慣れてる道も、違って見えます。
「あ、この店、内装が変わったー」  「わ、道路、舗装し直したんだ」 「おー、高校生?し・しかも男子2けつ!(通り過ぎるまでガン見。笑)」   などなど。

運転手さんもバラエティー豊か。
「この間検査で引っかかって、待ち時間に検査してもらったんですよ」  という病院で客待ちの運転手さんがいたり、
「ドクターカー、って知ってます? わし(あ、こちらの人はけっこう言います。俺、私、より多い)、もう何回も運転してるんです。飛ばす時は5時間かかる所40分くらいで行く時があってねー。高速、150キロ出しましたよ」  という運転手さんもいたり。
まあ、この場合、人命がかかってるんで非常事態ですけど。 

かと思えば、
「いやー、四国までお客さん乗せて行ったことがありましてね。それが・・・」 と、話してくれた運転手さん。
「今日は混んでますね。違う道で(病院まで)行っていいですか? 」  ・・で、結局余計に時間がかかった。 時も。

たいがいは話好きで、色んな話題を持ってる方々。 でも、私より年上のおじさまばかり。
イケメンなおにーさんは居なかった。。 

生涯で1回くらい、顔も声も上等なタクシードライバーに乗ってみたいなぁ。



『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*暖かくなったら-8


「はい、着いたよ」
和叔父さんが部屋のドアを開けるなり、俺は車椅子から飛び降りた。
「ヒドイよ和叔父さん。俺に座らせるなんて」
どこも何ともないのに、コーヒー飲んで店を出たらいきなり「ここに座って」ってにこにこ命令。そのままフロント行ってチェックインして。
俺は恥ずかしくて縮こまるようにして座っていた。


「俺にお願いしたかった事、ってこれだけ?!」
「・・・まだある。部屋を取らないと出来ない事が。だけど・・」
「車椅子のままご飯食べたって全っ然美味しくなかった!トイレだって・・。和叔父さんの頼みだから引き受けたのに、こんな恥ずかしいことばっかりなら、帰る! 」
「・・・そうか。じゃあ、もう終わりにしよう。あとのことは、誰か別の人に頼む」  

別の人? そんな事、平気で言うの?  和叔父さん。
俺は楽しみだったのに。 そわそわして、服だって、どれにしようか悩んだのに和叔父さんはただ、助手が欲しかっただけ?

「智・・? 」

何だよ、今さら驚いた顔したって

「ごめん。 泣くほど嫌だったなんて思わなかったから。 ・・ごめん、智。謝るから、
もう泣かないで」

和叔父さん? どう、したの? 泣きそうな顔しちゃってさ

「え・・っ? 」
不意に抱き寄せられて怒りが霧散する。そして、ぎゅっと腕ごと抱きしめられ、そうっと頬を指先でぬぐわれて、初めて泣いてたんだと気付いた。
「智・・」
「・・だって、俺じゃないと、って和叔父さん言ったのに。別の人に頼む、なんて。
俺、楽しみにしてた・・のに」
「うん・・、悪かった。 智も、面白がってくれると思っていたんだ。
覚えてるかい?  小さい頃はよくそうやって遊んだの」
「俺・・、もう二十才だ。子供じゃない」
「・・そうだったね」
もの凄く近い距離で見つめ合って話していた。




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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-46

今日も苑田視点の話になります。 ~~ ですね。 


~~ (俺が行ってもいいんだろうか・・・)
黒にも見える濃紺のスーツに黒のネクタイを締めてはいても、向かうのは表面上何の関わりも無い彼女 ――宮崎 澄江―― の通夜の会場。
気付かなければそのままやり過ごす事もできたのに、なぜ気付いてしまったのだろう。

後ろから来た複数の足音と話し声が苑田の横を通り過ぎる。ハッとして物思いから醒めた。彼らの行き先は苑田と同じ葬儀場だ。少し先お角を曲れば恐らく多くの人がいるだろう。
彼女は趣味も幅広く友人も多かった。

(やめよう)

自分の入って行ける場所ではない。踵を返して踏み出した靴先に、女の声が落ちた。
「あら? 貴方・・」
「慧子、どうしたんだい? 」
目の前に身なりのいい、見覚えの無い夫婦が立っている。 が、向こうは覚えがあるようで目礼をして脇を抜けようとした苑田の腕を捕まえた。
「進藤さんといらしてたわよね?  貴方」
街灯の下、全身が強張る。妻の声に夫もすかすようにみた。
「・・そのようだ。 ふぅん、ストイックな様子もなかなか・・」
「ひ・人違い、です。俺は」
「宮崎さんたちとも’大島ビル‘で知り合ったのかしら? 」
振りほどこうとした時に畳みかけられる。このまま連れ出されるのかと血の気が引いた。だが、
「君はもう焼香を済ませたのか? 」
慧子の夫に聞かれ、思わず首を横に振る。
「俺なんか・・。知り合いでもないですから」
放してください。と続ける言葉に何を感じたのか、
「それなら私たちと来なさい」
「そうよ。せっかく来たのでしょう?お別れぐらいしてあげなさい」
二人の口から意外な言葉が出た。 まじまじと見る苑田に、
「故人を悼むきもちがあるのだろう? 私たちもそうだ。それに、こんな時に君をどうこうしようなんて思わない」
「本当よ。 だから、安心して」
夫婦は真面目な顔で申し出る。
「・・・・はい。 お願い、します」
彼らの言葉を信じた。

通夜、と言いつつも情報交換の場にもなっているそこへ、夫妻に連れられて入る苑田。
「・・青野さん、あなたもですか? 」
「南野さん。 これは、お久しぶりです。ええ、夫人とは夫婦ともども交友がありまして」
記帳の前からさっそく声をかけられ、青野夫妻も、
「あなた、ほら、横瀬さんいらしてるわ」
「ああ、挨拶しないとな」
と、知人を見つけては言葉を交わしている。中には苑田を見て不思議そうな顔をする者もいたが、青野たちのそばにいるためか、誰も声をかけない。


澄江は、穏やかな顔で目を閉じていた。
列につき、焼香して覗いた棺の仲で、化粧を施された唇が柔らかな色をしていてなぜかそれにほっとする。

青野夫妻が喪主の宮崎氏に挨拶しようと移動する前に、
「本当にありがとうございました。俺は・・・これで」
抜け出す。驚いた視線を受け流し、電話がかかってきた振りで足早に離れた。 



「・・・・なあ・っ、子湖塚。聞いてる、か? 」
「聞いてます」
葬儀場を出てすぐ、苑田はバーへ直行した。だが、心のどこかに隙間風が吹くようで飲んでも酔えない。

『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-47

昨日の苑田の話、少しだけ続きがあります。



「なんで・・こんな気分になるんだ・・」
「嫌いじゃなかったから、でしょうね。 多分」
「え・・? 」
ぼんやり、子湖塚の背後にある酒瓶の列を眺めながら呟いた苑田へ返ってきた、子湖塚の言葉にハッとする。
「苑田さん、過激なところもありますから本気で嫌だったら突き放すでしょう? 容赦なく。 
それをせず、かつ付き合いが続いたのは、嫌いじゃなかったからだと思いますよ」
彼だけが客だからか、グラスを磨きながら続ける。
(そうなのか? 俺はあの夫婦を・・・)
考えに沈む苑田は、客が来て、子湖塚が離れていったのも気付かなかった。 ~~


◇  ◇  ◇  


バレンタイン当日。
社内も、朝から女子社員がパタパタ走りまわっていて、どの机の上にもチョコがある。俺の机の上にもあるチョコを見ながら、ふと思い出した事が。

『俺、チョコの中に酒が入っているやつ駄目なんだよなー』
いつだったか、北森がそう言っていたんだ。
『何で? 美味しいじゃん』
『小っちゃい時食べて気持ち悪くなってさ―。それからダメ』
『へー。トラウマなのか』
『チョコだけなら平気だぞ』
『はいはい』

「あいつ、そんなのもらったらどうするんだろ」
くす、と笑い、出掛ける支度をした。

「苑田さん、何かあったんですか? 」
「いや、別に」
訪問先に入り、仕事を終えて出てくる。その間はいつもの苑田さんなんだけど、移動になると途端に無口になって話しかけられない。
(体の調子が悪い、ってわけじゃないみたいだけど・・)
午前の分を終わらせ、お昼を過ぎて一度戻った時、
「あ、苑田さ・・」
「範裕さん」
受付の安田さんの声に被って、明るい声の女性が苑田さんを呼ぶ。

「・・・和美、さん? 」
「よかった。
あなた達営業だからいつ戻るか分からない、って受付の安田さんに言われて。十二時半まで待って駄目なら帰ろうと思ってたの」
ありがとう、と人懐こい笑みで安田さんにお礼を言ってこちらに来るのは、やっぱり和美さんだ。

「ここ(会社)に来るなんて初めてじゃないですか? ・・まさか」
「浩司さんは元気よ。心配しないで。用事があったの、二人に。 これ」
驚く苑田さんと軽く話したあと紙包みを取りだした。
「明日じゃ遅いし。たか・・、いけない。新井さんと知り合ってから初めてのバレンタインだったから、ちょっと頑張ってみたの」
ふふ、と楽しそうに笑い、一つづつ俺と苑田さんに手渡す。
「わ、ありがとうございます」
「ありがとう、和美さん」
「どういたしまして」
じゃあね、と、本当にこれだけに来たようで、和美さんはあっさり帰って行った。

「和美さんから貰えるとは思わなかったなぁ。なんかうれしい」
「あのひとは行動力があるから」
エレベータの中で言いながら鞄にしまう。俺と苑田さんのは大きさが違っている。しょうがないよな、と思いつつ。
それが、サプライズになって帰ってきたのは夜だった。





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『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-48

和美さんの登場で気分が変わったのか、いつもの苑田さんらしくなる。けど昼食の時間に、今度は絹里さんに遭遇した。

「苑田さん? どうかしたの? 」
社食で食べながら話していたら、苑田さんがふと俺の後ろを見て 『しまった』 と言う顔をする。振り向く前に、
「新井さん」
絹里さんに呼ばれた。俺も一瞬、しまった、と思ったけど今さら逃げる訳にもいかない。
「こんにちは。お昼、終わったの? 」
トレイを持っていなかったのでそう聞くと、
「今日は、お弁当で・・」
「そっか」
「あの・・、それで、これ・・、もらってくれませんか? 」
頬染めながら小さな声で言って、トレイの横に包みを置く。絶対チョコレートだ。
「あ、、うん。ありがと」
「これは、苑田さんに」
「・・ありがとう」
「あの、それじゃ」
和美さんみたいに、用が済んだらまるで走るようにして行ってしまった ――。


「苑田さんのも、ちゃんとしたやつなんだ」
俺のが包装されてるのはもちろんだけど、苑田さんの前に置かれてるのもきれいに包んである。大袋チョコをばらまくように配っている女子とは違う。
そう思いながら手に取った。四角い箱は、厚みはあるけどポケットティッシュくらいの大きさで手に収まる。苑田さんも同じように手に取って、すっとポケットに入れた。
「あ」
「・・なんだ? 」
「うん、この大きさって、ポケットに入れても目立たないんだ。今気付いた」
「そうだな。絹里さんはそいう事も考えてる、ってことだろう」
どこで会うか判らないから、と呟く。
ってことは、絹里さん、朝から俺のこと気にしながら仕事してたのか?
「悪かったかな・・・」
「いいんじゃないか? ‘公認’なんだ」
「苑田さん? 」
言葉は柔らかいのに、目がちょっと怒ってる。
「昼休み、終わるぞ」
「はいっ」

午後の外回り、気あいを入れなきゃいけないのに苑田さんと絹里さんのチョコが気になって集中しきれない。
「苑田さん、俺・・、何かしでかしましたか? 」
「別に。資料、ちゃんと入れないと混ざるぞ」
「あっ、すいません」
何社も回るからと色別のファイルで仕切っていたのに、危うくボンと放り込みそうになる。
(でも、ひろさんの話し方キツ・・・)
午前よりさらに機嫌が悪くなったみたいで、言葉にまでチクチク刺されている気がする。
どうしたらいいんだろ?


楽しかったはずの外回り。
戻って来て日報やレポートをを出すためにPCを立ち上げながらため息が出た。





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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その76

とうとう今年もあと33日! 早いですね―。今年は私的に、春ー夏・夏・夏ー秋・冬 という感じの1年でした。

巷にはカレンダーがたくさん。 そこで、カレンダーって、いつからあるの? と、
気になり・・。


最初はやはり、月の満ち欠けから、だったようです。
うん、太陽の365~6日周期より、月の約29.5日周期の方が分かりやすいですもんね。
発見したのはお坊さん。
遥か昔の紀元前18世紀頃。古代バビロニア帝国の時代の僧侶の皆さんが月を観測していて周期があることを見つけ、そこから太陰歴が出来たのだそう。

太陰歴ではどうしてもズレが出来ることから(1年で11日、3年で1ヶ月ほど!)太陽を基準にした太陽暦が出来、今に至る・・。とか。
そうそう、太陽暦が採用される前のローマでは、新月の日には笛を吹き鳴らし、月がかわったことを市民に告知。この笛の音を聞いた人たちは、その合図とともに前の月のお金の精算をしていたと言われています。
月末(?)精算はこんな頃からあったんですね。


日本には中国から6世紀後半に太陰太陽暦が伝来、
明治時代まで国暦として採用されていました。日本の太陰太陽暦は数回の誤差の修正を経て、天保十五年(1844年)に改暦。「天保暦」と呼ばれるように。この天保暦は世界で最も正確な太陰太陽暦であったと言われているのです。 って。

日本人、すごいなーー。

で、文明開化に合わせて外国基準の太陽暦に乗り換えー。 でも、旧暦も和号も置いて行かずにくっつけて。
載っているカレンダーには、明治147年・大正103年・昭和89年・平成26年。。ちゃーんと書いてあります。それもすごい。


来年は、どんなカレンダーを、いくつ部屋に置きましょうか?


『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*暖かくなったら-9


和叔父さんの声が耳のそばで聞こえて、ゾクリとする。
とたんに正月に見た体つきを思い出して、かあっと体も顔も、頭の中まで熱くなった。

「も・・、いい。分かったから。まだ何かやりたい事あるんだろ? 和叔父さん」
気付かれたくなくて、抱きつかれてる胸を押して言う。
「・・やって、くれるのかい? 」
「もう外へ出ないなら、やる」
「うん。あとは部屋の中ですることだけだ。
ありがとう、智」
「俺だって・・、最初から話てくれたら怒んないよ」
う、、そうだね。
和叔父さん、反省したみたいでかおがちょっと赤い。それからもう一度ぎゅっと俺を抱きしめ、やっと体を放した。

「それで、何するの? 」
「ベッドへの移動。ホテルのベッドはこんな風に空間が無いだろう? それに、傷つけたりするかもしれないから気を使うんだ。どんな風にしたら一番いいのか知りたい、って言われたんだよ」
説明を聞きながらふぅん、って思う。確かに言われないと分からない事だ。
「じゃあ、また座るの? 」
あれに、と指させば、
「うん、頼むよ」
和叔父さん、にこ、と笑った。

ほかの人に何か頼む時もこんな笑顔してるのかな?  何だかジリッとした思いがこみ上げてくる。
誰にもして欲しくない、って思うのは・・、俺の、我が儘か。
頭を振って追い出し、ベッドのそばに置きっぱなしにしてた車椅子に座った。



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