FC2ブログ

『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-77

「面白かったですね!」
「うん。その場所に立ったり、叩いたり、積み上げたりするだけで色が変化・・とか、」
「私はあの花畑が好きです」
「絹里さんの立った場所から咲いていった、あれ? 」
「はい」
目がキラキラしてる。楽しかったんだ。ホッとしてこっちも嬉しくなる。
「そういえば新井さん、積み上げてる時変わった掛け声言ってませんでしたか? 」
「・・記憶が無いけど」
「『ほっ』 とか、『よっせ』 とか」
あ、と思い当たる。
「それ、山登りしてる時よく言ってた。つい出ちゃうみたいだ」
苦笑する。
「山登り? 」
「そう。俺、山岳部だったんだ。大学の時」
(あれ? 同じようなこと・・・)
「新井さん? 」
「ん? や、似たようなことがあったなァ、って。よく考えたら苑田さんにも言われた」
「また、苑田さんですか」
絹里さん、少し咎めるような口調をする。
「何か変? 」
「そんなことないですけど・・・」
らしくない、含みのある言い方が気になって、
「言いたい事があるんなら言ってくれないと、分からないよ」
「何でも無いです。・・・・食事、どうします? 」
「俺は特に・・、絹里さん、食べたいもの、ある? 」
「私が決めていいんですか? 」
「絹里さん? 」
ハッとした顔で、黙って。
「・・すみません、私」
「いいよ、俺も悪かったんだから。じゃあ、ラーメンでもいい? 」
「はい、いいです」

気まずい雰囲気。会話もすぐ途切れてく。

「今日はごめんね」
「いいえ。私も変なこと言ってしまってごめんなさい」
「気にしてないから。
それと、・・今度ゆっくり話したいんだけど」
「・・・。分かりました。おやすみなさい」
「おやすみ」

絹里さんとちょっとした口喧嘩をしてから、お互いどこか遠慮がちになってしまってる。けど、チーム営業の終了もそろそろで、顔を合わせる機会だけは多い。
今日もそうだった。

「今回は多かったですね、苑田さん」
「ええ。やはり時期的に卒業や新年度に向けての関連が増えたんだと思います。
・・そう言えば」
絹里さんとの打ち合わせで経過報告をしていた苑田さんが、何か思い出したように、
「新井、あの卓上クリーナーのデータ、出せるか? 」
と聞いてきた。

「あ、はい。PCにあります。ちょっと時間かかりますが」
「出して来てくれないか?」
「分かりました」
「苑田くん、‘卓上クリーナー’って? 」
席を立つ俺に目を向けてから、市島さんが質問している。
「新井が自分で見つけてきた・・・・」
苑田さんの説明を聞きながら席に戻り、PCから資料をプリントアウトする。

「持って来まし・・た」
「ああ、ありがとう」
言葉が詰まったのは、苑田さんのほとんど真横に絹里さんがいて話していたらしい雰囲気だったから。

(なんでだ? 苑田さん、絹里さんのこと気にしてるはずなのに・・・)





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ





スポンサーサイト



『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-78

絹里さんは、俺が、内緒で付き合ってる相手がいる事は、知らない。
でも、苑田さんは絹里さんのことを知っている。――― 俺のことを好きになってくれた、女の人だということを。
それに不安になって、わざと俺を焚きつけたりしてるのに、そんな気配、微塵も感じさせない。
仕事と、プライベート。その切り替えが凄すぎ。

「・・・・これを、新井くんが? 」
「ええ。面白いでしょう? 」
「私も面白いとは思いますけど、これをどう使うんですか? 苑田さん」
資料に目を通した、市島さんと絹里さんの視線が苑田さんに向けられる。
「新井の時は結婚式の引き出物でしたが、これ、別の事にも使えると思うんです。例えば、卒業式の後の、謝恩会、とか」
「・・あ! 」

俺も、声は出なかったけどびっくりした。 本当に苑田さんの頭の中、覗きたい。

「絹里さん、私たちはチームだけじゃなく個人でも仕事をしています。その個人の仕事、上手く拾えば大きく使えるんじゃないかと思ったので、新井の資料を参考にして上部に打診してもらうこと、・・出来ますか? 」
「 やってみます」

絹里さんの何かに、火が付いたみたいだ。言い切った声に意思が籠もってる。
・・苑田さん、絹里さんに何を見たんだろう? 


打ち合わせは無事終了。 絹里さん、いつもより背筋を伸ばして帰っていく。

「のり・・、苑田さん。よかった、んですか? なんだか絹里さんの仕事増やしちゃったみたいですけど」
まだ市島さんが一緒にいてスケジュールを突き合わせているから変なことは言えないけど、理由が聞きたい。
「私も聞きたいです、苑田くん。チーム営業は間もなく終わる。絹里さんはこれからもっと忙しくなるのに、個人の仕事を格上げするような大変なことまで引き受けさせるなんて、彼女には重荷にしかならないんじゃないか? 」
「なりませんよ」
言い切る苑田さん。
「チーム営業になって会うまで、あまり知りませんでしたが、絹里さん、プロデュースする才能を持ってる。それにモチベーションも高い。埋もれさせるのは惜しいと思ったんです」
俺と市島さんはその言葉にただ驚くだけだ。

いつからそんな事に気付いていたんだろうか。
・・そんな事まで見つけたから、俺に、付き合ってみろって言ったのか・・・?
けど、俺には苑田さんが必要なんだ、ずっと。
絹里さんには本当に悪いけど、ちゃんと断ろう。





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ





『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-79

決心しても機会が無い。あっという間に明日はホワイトデー、だ。
「新井―、お返しはちゃんと買ったのか~? 」
「アクセサリーは買うなよ、おまえのセンスは見たこと無いから心配だ」
周囲にそう冷やかされながら一番無難なマシュマロとキャンデーの詰め合わせを買い、

::絹里さん、明日、渡したいものがあるんだけど、時間ある?
::はい、大丈夫ですが、どこで会いますか? 
::社外の方がいいんだけど
::でしたら、十九時に待ち合わせしませんか?
::十九時? うん、俺も予定無い。場所は、この間のレストランでいい? 
::わかりました。

メールのやり取りをした。


「・・っ、ごめん、絹里さん。遅く、なって・・・」
「いいえ。待ってる間、新井さんの事考えてたから楽しかったです」
今日こそ間に合わせようと頑張ったけど、結局、会社に’お返し‘を忘れて駅で気が付いて取りに戻り、二十分近く遅れる。レストランは予約しておいたから、座れない、なんて無かったけど、一人で待ってたのは居心地悪かっただろうな、と思う。
俺が座ってすぐ食事が来る。

「偉いなぁ絹里さん。一人暮らし始めてからずーっと自炊してるんだ」
「でも、外食もしますし、面倒な時はあり合わせで済ませるから、ちっとも偉くないですよ。新井さんだって食事作れる、って」
「俺のはおおざっぱな、腹に入ればいいや、みたいなもの。
その点、苑田さんはちゃんと料理してるよ」
何回か作ってもらった。と続けると絹里さん、ため息をついた。
「また苑田さん・・。新井さん、どうしてそんなに苑田さんのことが出てくるんですか? 」
「どうして、って・・。苑田さんとはほとんど一緒に居るし、絹里さんも嫌いの人じゃないだろう? 」
「そうですけど・・」
一度言葉を切って迷ったあと、
「新井さん、私、聞きたい事があるんです」
はっきり言う。だから俺も、
「俺もある。・・・話さないといけない事が」
そう答えた。 大きく息をして姿勢をただし、口を開く前にメインディッシュが湯気を立てて運ばれてくる。
「食事のあとでいいですよね? 」
「うん」

デザートも済んで、コーヒーを飲みながらお互いにタイミングを計ってる。そんな空気に焦れて先に言いだしたのは俺だった。
「絹里さん、俺、渡そうと思って持ってきた物があるんだ。受け取ってくれる? 」
「・・・・はい」
横に置いてあった鞄の中から、例の’お返し‘を取り出す。
「これ。
バレンタインのチョコ、ありがとう。手作り、だったんだよね? あれ。
そんなチョコもらったの初めてだったからとっても嬉しかった」
それはホワイトデー、とすぐ分かる水色の包装。





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ



『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-80


「ありがとうございます。 ・・これも、苑田さんが教えてくれたんですか? 」
軽く頭を下げてよそいきの声で言う絹里さん。

喜んでくれるのを少しは期待していたから、その言葉にムッとする。
「お礼に、って思っていたから自分で考えて選んだよ。苑田さんといつもくっ付いている訳じゃないから」
「・・・済みません」
そっと手を伸ばして、テーブルの上の包みを引き寄せる。
「絹里さんは俺が苑田さんと居るの、嫌なのか? 」
「違います。・・・・ただ、私のこと、どれくらい好きでいてくれるのか新井さんちっとも話してくれなくて。バレンタインの時も私だけ気持ちが入り過ぎて・・・。
苑田さんは新井さんのこと名前で呼んでるのに、私は」
「絹里さん? 」
はっ、と言葉を途切らせたけど、
「新井さん、私への気持ち、教えてください」
両手を組んでテーブルの上に乗せ、きっぱり、聞いてきた。

真剣な目だ。だから正直に答えよう。
背筋を伸ばして、
「俺も、絹里さんにちゃんと話したかった。
最初に言ったこと、覚えてくれてるかな? 『好き・嫌いで分けるなら好き』だって。付き合うようになって、色んな事を知って、今の絹里さんは友達以上に好きだ。
でも。
俺は、隠し事をしていた」

食い入るように聞いていた絹里さんが唇をきゅっと噛む。それでも俺は言わないといけない。

「俺には・・、付き合ってる人がいる」

聞いたとたん、組んだ両手が白くなるほど力が入る。

「その人と結婚することは・・、出来ないけど、それでもいいと思ってる。
だけど絹里さん、騙したとかじゃないことだけは理解ってほしい。
俺は、夢を見たかったんだと思う」
「夢、ですか・・? 」
絹里さんの目から涙がこぼれて、ぎくっとした。
「ご・ごめん。泣かせるつもりじゃ・・・」
「・・・いいえ・・」
ハンカチで目を押さえ、
「全部、聞、かせて、ください・・・」
続きを促す。

「うん・・。
絹里さん、社内で一番お嫁さんにしたい人、なんだって? そう聞いたときは嬉しかった、本当に。そんな人が俺を好きになってくれたんだって。
父さんは子供が好きらから喜ぶだろうな、なんて少しだけ夢を見た。けど。
今付き合ってる人の手を離せないんだ。 俺が守ってやる。そう決めてしまっていた」

言い切って、ああ、俺はこんな風に思っていたんだ、と再認識する。
苑田さん・・ひろさんとずっと一緒に歩いていきたい。なにかあったら守りたい。




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その83

あなたは誰?

ドキッとするセリフです。
私・・って一体なんでしょう。 取りあえず生き物、の仲間。で、動物。2足歩行、肺呼吸、性別(有性)種。無翼(想像の翼は特大ー。わはは)。

だいぶ範囲が狭まって来ました♪
被毛・尻尾・牙・・無し。発声器官、有り。衣類着用。 
衣類か。面倒くさいですよね、色々と。流行も取り入れないといけないし。体型も考えないといけない。どっかに理想の体型、の型ってないでしょうか。体を入れてポン、と押し出せば出っ来あっがり~。  イヤイヤ。それだと毎日使わないと。

ここまでは掃いて捨てるほどあります。
問題はこの先。

私は、どんな’存在’なんだろう?
世界に一つなのは分かるけど、例えるなら長く続く人類の’鎖’の一つ。流れの中の泡ぶく・・?

でも、残るものがあると良いなあ。   もしかしてここにいるのがそれ?
私、ここにいますよーーー! 穴でも掘って叫ぼうか。


そうそう、もし私の欲しかったもの全部持ったもう一人の私が目の前に来たら?
・・・殴っちゃうかも。。「見たくないわっ」 って。 そんな自分がコワイ・・汗。






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ







『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*カラコンと名前-4

いつも聞きに行く公園。今日はどんなのが聞けるだろうか。
「あれ? 」
ベンチが、変わっていた。 ‘ペンキ塗りたて’の札が貼りつけてある。
「え~、なんで? 」
この場所が一番音が入りやすいのに。しょうがない、二番手の・・・、
「ここも? 」
つい大きな声が出て慌てて口を塞いだ。
「なんだよも~~」
よく見ればジャングルジムも紙が貼ってある。この公園全部、ペンキ塗り直し?!
「こんな所で立ったまま音録りなんてできないや」
変質者に見られてしまう。 がっかりして自転車を押して帰った。


「今日なら大丈夫だろうな」
あれから十日。ペンキだって乾いてるはず。前日まで雨で地面はちょっとぬかるんでるけど地面に座る訳じゃない。
「さあ、行こ。」
前回の分も気合いを入れて、自転車に乗った。


うん、オッケー。集音マイクの位置を確かめヘッドホンをつけた。

「あ・・、来た」
ドアを開ける音がする。今日は最初から聞けそう。 わくわくした。


― 大丈夫? 
― うん、これくらいの段差なら・・。あ
― ほら、危ない。手を貸して
― ・・・ありがとう。
― どういたしまして

今回も年の差がありそうなカップル。しかも男同士。
(もしかしたら、またすごいのが聞こえちゃう? )
ドキドキしながら続きを待った。




↓ランキングに参加しています。ポチッとしていただけると励みになります♪
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ

『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-81

今日は絹里さんの視点もあります。 ** から ** の間です。



長い時間が過ぎたように感じたけど、実際は五分くらいだったんだろう。
「新井さん」
絹里さんが泣いて赤くなった目で俺を見た。
「・・・なに?」
「私、納得できません」

納得・・できない? 

目が丸くなる俺に彼女は続ける。
「新井さんは結婚できなくてもいい、って言ってましたけどそんなこと普通思いません。それに相手の人だってきっと家庭を持ちたい、好きな人の子供が欲しいと思います。
・・・まさか、新井さん、不倫とかじゃないですよ・・ね? 」
「ふ・・!
ち・違うちがう。そんなんじゃないよ、ただ、相手も俺も仕事があって」
「一緒に居られない仕事なんですか? それともライバル社に勤めてる人とか? 」
「・・違う」
「海外ですか、もう肩書きがある人ですか? 」
「まだない・・、けど」
(絹里さん、マスターの子湖塚さんみたいな聞き方する・・・)
焦りながら追及(?)をかわしていた。が、

「会わせてください」

会わ・せる?!

「会って、話がしたいです。新井さんがそんなに想ってる人が結婚したくないなんて、許せません。いい加減に付き合ってるなら、私、負けたくない」
「絹里さん・・・」

どうしたんだろう? 急に・・。

「だ・だけど向こうにも都合が・・」
「待ちます。会わせてください」
「わ・・、分かっ、た・・・。聞いて、みる、から」

とうとう勢いに押され、会わせることを約束させられた。


「ここでいいです。おやすみなさい、新井さん」
「・・気をつけて」


ちゃんと断るはずだったのに、絹里さんとはまだ続くことになってしまった。
「絹里さんって、あんなに強かったんだ・・」
帰りの電車の中で、ついこぼしてしまう。

どうして気にするんだろう? 


**
「はぁ・・。言っちゃった・・」
真希は新井と別れ、ホームで電車を待ちながら肩を落とした。

今日のデートでは言わないでおこう、と思っていたのに。苑田さんのこともそうだったけど、新井さんの気持ちが分からなくて。この先も不安があったから、あんな事を言われて我慢できなくなってしまった。
**




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ





『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-82

絹里さん視点の話が続きます。 ** から ** の間です。



**
さっきまでの会話を思い出したら、また何だが出そうになって慌てて鼻を噛む。
(言ったことは戻せないんだから、気持ちを切り替えなきゃ。また明日も会社で新井さんに会うんだから)

顔を上げて。しゃんとして。
真希が自分に活を入れた時、
「絹里さん? 」
声がした。
「え・・? 」
と振り返る真希の前に居たのは。
「中畝さん・・・」
「また会えるなんて、嬉しいなあ。僕は近くの文具店を見てきた帰りなんだけど・・。
どうしたの? 」
偶然の出会いを喜ぶ顔を見て、真希の涙腺が緩む。
「中うね・・さん。私・・」
「きっ・絹里さん?! 」
ぽろぽろ涙をこぼしはじめた絹里に驚き、オタオタした中畝だったが、周囲の視線を浴び、咄嗟に彼女を庇うようにしてホームの待合室に入る。

電車が二本ほど止まり、発車したあと、ようやく真希は落ち着いた。

「あの・・、ありがとうございました」
涙を拭く真希に、中畝は、
「落ち着いたみたいだね。・・・ちょっと待ってて」
近くの自販機からホットのお茶を買ってきて差し出す。彼女の好きな銘柄だ。
「温かいうちに、飲んで」
「はい・・」

「・・みっともないですよね、人前で泣くなんて」
「そんなこと無い、どうしようもない時だってあるんだから」
絹里の、自分を茶化すように笑う様子に中畝は強く言う。
「そういう時は誰かに助けてもらっていいんだ。・・まァ、君には新井くんがいるけど・・」
お節介だったね。 苦笑する相手に、
「新井さんは・・・」
真希の言葉が続かない。
「あっ、ごめんっ、冷やかしとかじゃない・・・、絹里さん? 」
唇を噛んで俯いた真希にまた狼狽える中畝。
「まさか、喧嘩した・・とか? 」
違うと首を横に振っても、新井との会話は夢ではない。断られた事に変わりはないのだ。

「「・・・絹里さん、僕でよかったら、聞くよ」
中畝の遠慮がちな声が、なぜ? どこが悪かったの? と答えを出せないエンドレスな真希の回想をプチリと断ち切る。

驚いて顔をあげれば、真剣な目に見つめられていた。
「吐きだせる時に出せるだけ出したらいい。でないと、ずっとそこに居続けて出られなくなってしまうんだ」
言って、にこりと笑う。
「これはね、僕も言われた言葉なんだ。
僕が中途採用なのは知ってるよね? 前に居た会社はブラック企業で・・、気付いても辞めさせてもらえなかった。
そんな僕を助けてくれたのは、一之瀬課長。あの人は僕を助けるために勤め先まで来て売れて、上司とやりあってくれた。
さっきの言葉も、僕が苦しんでいる時言ってくれて、ずい分救われた。
だから今度は僕が絹里さんを助けたい。

・・もちろんに言いたくない事は聞かないから」

「中畝さん・・」
**






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ



『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-83

翌日、中畝は新井を呼びだした。

「なんですか、用って」
「すぐに済むから」
外の札を‘使用中’にし、鍵までかける中畝さんは怒っているような気配がする。
(俺、何かしたかな? )
首を捻っていたら、
「僕と絹里さんは、近頃よく会うんだ」
いきなり面食らうことを言われた。
「そうなんですか」
だから、どうしたんだろう? と疑問に思っていると、
「昨夜も会った」

昨夜?

「君は一体何をしてるんだ? 絹里さんを好きなら、一人にしたり泣かせたりするべきじゃない」
「中畝さん? 」
「彼女には笑顔が似合う。それなのに君はいつも」
「それは俺と絹里さんの問題だ、って前にも言ったと思いますけど。それよりなぜ中畝さんが口を出すんですか? 」
まるで責め立てるように言われ、とうとう腹が立って‘口出し無用’をしたら、

「理由はある。僕が、絹里さんを好きだからだ」

いきまり、宣戦布告された。

「中畝さんが、絹里さんを・・好き? 」
心の理解が追い付かず、繰り返してしまう。

「そうだ。今までは絹里さんが君を好きなら、君と幸せになるならそれでいいとおもっていた。しかし君は彼女に誠実じゃない」
一度言葉を切り、一人の女性を手に入れる、ライバルの目をして、

「このままいるなら新井くんには渡せない」
中畝さんは言い切った。

俺はぐっと拳を握る。
誠実じゃないのは、その通りだ。泣かせてしまったのも、俺が悪い。だからって、
「絹里さんは物じゃない。それに俺や中畝さんが決める事でもない。決めるのは絹里さんだ」
中畝さんからそんな宣言をされても困る、と言いたかった。

「もちろん僕だって彼女に言うつもりは無い。ただ、新井くんに言っておきたかっただけだ。卑怯な事はしたくないからね」
話はこれだけだ、と中畝さんは俺にほとんど話をさせず、言うだけ言って先に出て行ってしまう。
残されたのは俺と、
「なんだよ。確かに俺が悪いけど・・・」
持っていきようがないもやもやだ。しかもこれから苑田さんと、外回り。
「くっそ。あとちょっとしか時間が無い」
時計を見て、この事を無理やり心の引き出しに押し込んで深呼吸し、会議室を出た。





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




お知らせ

お知らせ

すみません。
今日は雪のことを記事にしようと思ってましたが、リアルの各地で大変な様子なので別の記事にしようと思います。

もう少し時間がかかるので、しばらくお待ちくださいませ。 (m(__)m

雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その82

意外な使い道。

100均ショップ ――今は値段の高いものもありますが―― などで買った道具で本来の使い方とは違う目的に使用する。
収納とか、台所などでよく利用されてますね。

では例えば、カードだとどんな使い方が出来るでしょう?
定規代わり。栞がわり。折り目をつける。・・・スイッチを押す(エ?)。 痒いところをかく。豆粒を並べる基準にする。
他には?

考えると面白い!
他にはどんな使い道があるでしょうね♪

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*カラコンと名前-5

何だろう、足音じゃない音がする。キュキュ・・、って。

― 待って、今椅子をどかそう
落ち着いた感じの男の人が言う。そしてガサガサ・・と物音。何か買ってきたのかな。

― これ・・
― どう?
― ・・・嬉しい。全部俺の好きなものだ

やっぱり。

― でも、大変だったんじゃない?こんな・・
― そんなことはないよ。それにこれはお祝いも兼ねてるから。聞いたよ、お母さんに。アメリカで手術出来る見込みが立ったと、とても喜んでいた
― ・・・
― 翔太くん?
― ・・自分で言いたかったのに。お母さんてば話しちゃったんだ
― そんな顔をしないで。まずは食べよう。準備を手伝ってくれるかい?
― うん!

なんだか今日は様子が違うような。
いつもなら服を脱ぐ音とか、エロい声が聞こえ始めてるのに、食事の支度をする音が聞こえてくる。
ほのぼのしてていいんだけど、物足りない。
(今日はもう止めて、帰ろうか)
片付けようとした時、

― 能見さん、これは? 開けてもいいの?

しょうたくん、の声が耳に飛び込んで、きた。

何?! 今なんて呼んだ?
のうみさん・・!?

― ちぇー、いいじゃん
― 駄目だ。それは、まさかこんな場所に誘われるとは思ってなかったから・・、メッセージを書き入れてあるんだ
― ほんと!?

いきなり飛んだ会話にはっと意識が戻る。
まさか、だよな。
和叔父さんじゃないよ・・な。



↓ランキングに参加しています。ポチッとしていただけると励みになります♪
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-84

今日は後半、Rがあります(R-18)なので、年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。





















仕事にだけは影響が出ないようにしてたけど。

「新井、ちょっと休もうか」
「はい」
苑田さんに言われ、セルフのコーヒースタンドに寄ってひと息ついた時、
「何かあったのか? 」
穏やかに聞かれ、
「・・っ、熱ッ」
動揺してコーヒーがこぼれ手にかかる。慌てて紙ナプキンを取り、手を拭いたあと、
「苑田さん、おどかさないでよ・・・」
ぼやきに近い言葉が出ていた。

ゆっくりコーヒーを飲んでから、
「崇は、隠し事が下手だろう? 」
苑田さんが言う。名前で呼んでくれたってことは、プライベートで話そうって事。
「きっと、本当に隠す事ができたら一生隠し通すんだろうな、おまえは。けど、いまはそうじゃなさそうだ。
話したくないなら言わなくていい。ただ、気になるから」
「・・大丈夫。マスターの子湖塚さんにも言われた。俺の一番大事なものを忘れるな、って。・・今回は、ちょっと」
思わず苦笑いする。
「・・・ちょっと、喧嘩っぽくなって」
「喧嘩? 」
「売り言葉に買い言葉・・かな? で、頑張って止めようとしてる。ややこしくなるから。だから安心して」
心配してくれたのが嬉しくて、範裕さんの手に手を重ねて握った。
「・・・・っ、崇」
へへっと笑い、残りのコーヒーを飲み干す。
「仕事行こう。今晩、ひろさんのとこ行くから。いいよね? 」

コツン、と頭を叩かれる。でも、目元がほんの少し赤い。
やっぱりひろさんが一番好きだ。


◇  ◇  ◇


「・・・っぁ。・・た・か・・、崇・・っ」
「ん・・、も、俺も、欲しい。・・いい? 」
返事の代わりに、ひろさんは喘ぎながら腕を伸ばしてキスをねだる。
片手でうねる内壁を擦りながら上半身を倒して応えれば、顔を引き寄せ唇を重ねてくる。
舌を絡ませ口の中を愛撫し合えば、さらにテンションが上がった。
「っ、ひろさん、ごめん・・っ」
「ぁ・・あっ、た・・しぃっ・・」
息継ぎに口を離して見おろせば、間近に、薄く開いて潤んだ瞳と、半開きの唾液で濡れた唇が腰を直撃し、耐えられなくなった。

指を引き抜き、待たされてローションもいらないほど滑りを纏わせている剛直を押し込み、腰が跳ねて逃げようとするのを両手で掴まえ、短い間隔で打ちつける。
「あ・・ぁっ、い・・いぃっ。た・・かしっ、ゃ・・そこ、んあっ」
「ひろ・・さっ、ひ・ろさんっ・・。い・・?ここ、いい?・・・っく、んっ」
ひろさんの雄を扱きながら、もっと奥へ届かせたいと腰を入れる。
「やぁっ、もゥ・・・、い・く ――っ」
「お・れも・・・、んんっ・・」
ひろさんの白蜜が二人の腹と胸を濡らし、俺は白濁でひろさんの中を濡らした。


焦ってガッついた分、組み敷いたままの体を、頬をそっと撫で、キスをする。ほんとは胸も触りたかったけど、ひろさんの体奥にいるオレはまだまだやる気十分で、それはひろさんも気付いてる。
「・・・崇」
「ん? ・・なに? 」
「・・飽きないか? 」
「な・・何言ってるんだ! 」
 俺の背中を撫でながらキスに応えてくれていたのに、そんな事を言われてがばっと起き上がってしまった。
「なんで飽きるんだ? 俺、まだ足りなくて明日仕事じゃなかったら、朝までこうして・・」
「あ・・、んあっ、や・・っだ、そこ、擦れ」
一度達ってるから抽送するとヒワイな音が立つ。その音にも感じて、ひろさんは、ビクリと大きく反応し、押し包んでいた柔肉を振り切りながらまた動き出した硬い楔に腰を揺らして、艶やかな声を上げ出す。





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




バレンタインSS

バレンタインSSーー和叔父さん(和弘さん)と智くんの場合

「和弘さん」
「うん? 」
「これ・・。ごめんね、遅くなって」
パソコンに向かって仕事している僕に声をかけた智。椅子を回し、体ごと振り向くとそっと差し出した。
ハートマークのラッピングは言わずと知れたバレンタインのもの。
「買ってきたの? 」
今日はバレンタインから・・・五日は経っている。
「だって・・・。
和弘さんがくれたチョコ、ネットで買ったやつでしょ? 俺、もらうまで気付かなくて、貰ったの当日だったしあの後こっそり出掛けてお店行ったけどもう閉まってたし。
翌日行ったら片付けられてて・・。

探して、けどやっぱりバレンタインだから、それっぽいのにしてほしくて、さ。
隅っこにあったの見つけて・・・作ってもらった」
恥ずかしそうな顔で、口ごもりながら言うから、可愛くて。
「ありがとう」
両手で包むように受け取り、そのまま引き寄せ抱きしめた。
「かっ、和弘さ・・」
「大事に、食べるよ」
(あとで、きみもね)


「あ・・っ、やだ」
「駄目だよ。言っただろう? 動かさない、って」
「でも・・っ」
ベッドの上にもう処分するシーツを広げ、僕は智を寝かせていた。


「和叔父さん、寝る前にチョコなんか食べるの? 」
「ん? まあね」
思いついた悪戯を気付かれないよう、
「また言った」
「あ・・、ごめん。なかなか抜けなくて」
「‘叔父さん’は付けないで呼ぶ。約束したよ? 」
つん、と指で唇をつついて智の気を逸らす。
「あんまり言うと、お仕置きだから」
「え・・? それはっ」
前にされた事を思い出したようでばっと向こうを向き、おやすみと逃げるように部屋へ入ってしまった。
では、こちらも準備にかかろう。

ベッドサイドの明かりが智の体に影を作る。
「いつ見てもエッチな体だね」
「それは、和っひろさんが・・っ、やぁ」
「どうして? 甘くておいしいよ、智」
チョコをひとつ取り出して齧る。すぐに溢れてくるのはブランデーだ。
「ほら、味見」
「ん・・っ、ぁ、そこ、違っ」
少し含み、智に口移しで飲ませたあと残りをたらりと肌にこぼす。
「違わない。ココは僕が味見する」
「あァんっ――・・」
舐め取り、吸い上げたのは胸の小さな粒。そのまま舌全体で撫で回し先を尖らせて押し潰したりしてると、体が間を置いて震える。
「いつもより感じてる? 」
「は・・っ、そこで、喋んない・・でっ」
普段なら頭や肩を掴んでくるのが、今日は無い。
そう、’お仕置き‘。

「いい子だ。ちゃんと守ってるね」
鼻を摘まみ開いた口に、齧りかけのチョコを咥えてキスをする。
「・・っ、ふ・・っ、んぅっ」
甘みと、ピリッとしたアルコールの混じった口腔を遠慮なくかき回し刺激してやると全身で反応した。
やっぱりかわいい。
「おいしかった。・・智は? 」
「・・・」
「どうしたの? もう酔っぱらった? 」
「・・・もっと」
「『もっと』・・? 」
「・・和弘さん、意地悪だ。俺だけ、脱がせて・・、触ったら駄目・・って」
泣きそうな顔で言ってくる。
「約束をなかなか守れない智が悪い。同居したら名前で呼ぶって決めたの、忘れてないよね? 」
忘れたらお仕置き。それも約束だ。

「今度はどこを味見しようか」
二つ目のチョコを取り見せながら包みを開け、また齧って中身を出す。
ちらりと怯えの色を見せながらも目を逸らせず見ている智は、仰向けで膝を立て足を開き、両手はシーツを握っている。


僕が良いというまで、終わりにするまで何をしても動かないこと。
それが’お仕置き‘の時の約束。


前は、目隠しをして全身をくまなく愛撫した。 こっそり録った声を聞かせながら抱いたこともあった。
僕との約束を守り、焦らされて達する智はなんてそそられるのだろう。
箍が外れてしまい、翌日は歩くのも辛そうな事までしてしまうけど止められない。

「和弘さ・・、も、いや・・。して・・、ちゃんと、シて・・・・ッ」
「してるよ? ほら、ココだって」
「ぁあっ。 あ・あ・・、あ、ぅ・・っ」
臍から中芯まで液体をこぼし、チョコでなぞる。
体温で少し溶け、柔らかくなったチョコでもう濡れている屹立もなぞっていくと、忙しない息をする。
「出したら駄目だよ。チョコが台無しだ」
てっぺんのまるい部分にぎゅっと押し付けながら言い、眉を寄せて耐える顔に見入った。
「・・お願い、和弘さん・・。だめ。出ちゃ・・」
「・・・分かった」
唇を震わせて言う智。僕もそろそろ身動きするのが辛くなっている。
「・・ああ! 」
チョコごと口に含み、離した手で脈打つ硬いサオの部分を握る。全身が跳ねた。
「やぁっ、あっ、あぅんっ。かずっ・・・かずひろさ・・っ」
声が一段高くなる。深く含み、舌を這わせると味わう間もなく智の雄は弾けた。
口の中に溢れた青い味の体液を手にあけ、
「智、自分で膝を抱えて」
双丘をこちらへ向けさせる。恥ずかしいのだろう、全身も蕾も淡く染まっている。
わざとゆっくりそこへ手を当て塗りつけ指で窄まったそこを撫で回し、つついてみた。
「はうぅっ」
「待ってたんだね、ここ。嬉しそうに咥えてくれるよ」
「言わないで・・・」
ほとんど抵抗なく根元まで入った指を動かす。すぐに探り当てた場所を・・、
「そこ・・めぇっ。あ、やだ・・ぁっ」
「これをしないと、ちゃんとシてあげられないんだよ? 」
しこりを押したり、指先をずらしたりして出し入れし、息継ぎに会わせて二本めを潜り込ませる。
「あァっん、ん、ふぅ・・っ」
「そんなに締めつけない。動かせないじゃないか」
ばらばらと刺激すると、中がうねるような動きをする。 よさそうだ。
音を立ててファスナーを降ろし、硬く張り切ったモノを下着から解放する。
「ぁ・・和ひろ・・さ・・。お願・・」
「うん、入れてあげる。よく我慢したね」
にこりと笑って指を抜き、ぬらぬらしている自分の雄を持つと、待ちうけ、綻んでいる蕾にゆっくり沈めていく。
「は・・ぁ・ぅっ、・・ん、くう」
「力・・抜いて」
智の手に手を重ねて膝からはずし、両足を抱える。その動きに合わせて張り出している部分を埋め込んだ。
「・・和弘、さん・・っ」
「全部、入ったよ。智の中が吸いついて喜んでる。分かる? 」
腰を揺らすと顔を真っ赤にして手で覆う。
「そんなの・・、言わなくったって」
「じゃあ、もっと違うことを言わせてあげよう」
「んあっ」
馴染んで動かしやすくなったから、引いて、突く。顔を隠したまま声を出すから、
「手をどけなさい、智。顔を見せて」
でないと・・、と言いながら長めの感覚で引き、突く。
「ああっ、やあ・・っ、やめて・・、んああっ」
背中を撓らせて反応するのに手はそのまま。だから、
「あっやだ・・っ。や、ンッ、んんっ。そこは・・っ、あう」
亀頭とカリでポイントだけを責める。
「ほらっ・・、手を、どけないとっ・・、ここだけ、・・ずっと、するよ? 」
「あああっ、やあ・・っっ、和ひ・・、嫌ッ」
頭を振って身悶える。その拍子に手が外れた。
「いい子だ。・・いくよっ」
体を倒し、智の肩を押さえ、肌を打つ音をさせて打ちつける。
「あ・あ・あ・・っ、和っひろさ・・っ、もぅ・・っ、ぁ、いク・・ッ!」
「・・・智・・・っ」

また、やり過ぎてしまった。
イくと同時に意識を飛ばし、くたりと力の抜けた体を清めながら自嘲する。
何度抱いても羞恥を見せる智。それが嬉しくて可愛らしくてつい・・。

チョコを付けた体の向きを変えさせたのと、汗や体液で汚れたシーツを外し、ベッドに寝かし直すと、小さく呻く。
「智・・、水を持ってくる? 」
耳元で囁けば、
「・・・うん・・」
まだ意識が戻りきっていないながらも答える。
親指で頬を撫で、立ち上がった。


戻ってきたら、智が完全に目を覚ましていて、こちらを見ていた。
「水を持ってきた。起きられる? 」
「られない・・。和お・・和弘さんの、せいだ」
掠れた声。
「そうだね。ごめん」
水のコップとドリンクを両手で持ち、どっちがいい、と差し出せば目がドリンクを見る。
では、とキャップを開け、口に含み。

唇を重ね、口移しする。
「・・・もっと」
「はいはい」

ひと息入れて、強請られベッドに入る。
肌を合わせて抱き合いながら休日をのんびりすごした。



・・・・小さい頃からの癖はなかなか直らない。 次は、いつになるだろう。
智から見えない方の顔で笑みを刻んだ。







にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ



『プリズム』

『プリズム』23**チョコの行方-85

今日も前半にRがありますので、年齢に達しない方、苦手な方はご遠慮ください。大丈夫な方、スクロールしてどうぞ。
































いつ見ても、また見たいと思う。飽きるなんてあり得ない。

言葉にする代わりに体で刻み込む。
紅い痣をたくさんと、ひろさんの内側に。
(ひろさん・・・範裕さん。俺は、ひろさんだけだ。もしかしてこれから先、また絹里さんみたいな人に出会うかもしれない。でも、俺の両手はもうひろさんでいっぱいだから、他に誰も入れないよ?
覚悟なんてとっくにしてる。・・・・愛してる)

二度目はひろさんを焦らして泣かせながら二人で昇り詰めた。

「や・・っあ、ぁあっ」
片手で頭を押さえ、耳たぶを唇や歯で甘噛みしたり舐めたりすると、ひろさんの濡れた声が頭の中にまで響いてくる。
「もっと言って。俺だけが聞けるその声、・・聞きたい」
口を離さず囁く。 息と声を吹き込まれ、ひろさんの体が身悶え、くねる。
まるく腰を動かして突くと腹の間で擦れてまた、ひろさんの雄も硬くなっていく。
「ぁ・・、崇」
「・・っ、ひろ・さん」
呑み込んだままの腰が揺れ、自分の意図しない動きに思いがけない快感が走り、ぐっと奥へ。
「は・あっ・・、だめ・・だ、そん・・」
「ダメじゃ、ない、・・って。ほらっ」
「あ・・、くぅんっ、ん・・あ、出・・・」
「イきそ・・?イって。俺、も」

肩で息をしながら、ぐったりしたひろさんに負担にならないよう体を離した。途端にまだ三月の冷たい空気が肌をひやりとさせる。
急いでエアコンのスイッチを入れた。

シャワーで浴室を温め、体を洗ってると腹の虫が鳴る。
「・・そういや、食べてない」
ひろさんの部屋の玄関を入ってすぐ、俺が我慢できなかったから食事もまだだ。
レンジ対応鍋焼きうどんとサラダを用意し、ひろさんに声をかける。
「ひろさん・・、立てる? 」
「・・・いい匂いがする・・」
気だるげに肘をついてうつ伏せの体を起こし、汗で張り付いた髪をかき上げながらこっちを見る。

ひろさん、それ、反則だって。

「崇? 」
つい見とれた俺を不思議そうに見るから、あっと気を取り直して、
「あのさ、うどん温っためたんだ。食べる? 」
「うん。・・・・ぁ」
「ひろさん? 」
「・・シャワー、先にする」
赤くなって呟いた。

手伝いを拒否されて、仕方なく汚れものを洗濯機に放り込む。
「いいじゃないか、別に。。『そんなやらしい顔であと付いてくるな』なんておこらなくったって」
でも、否定できないからなぁ。残念。


二人向かい合ってうどんをすすり、なんだかほっとする。
よく考えたら絹里さんを断って、断り切れなくて中畝さんにまで文句やら何やら言われたの、昨日なんだ。
そして苑田さんと出会ってから、やっと一年経つかどうか。

「色々あり過ぎて一年が早かった・・・」

「どうした崇? 急に」
「え? 俺、何か言った? 」
「『一年が早かった』 とか言ってた」
「あ・・、うん。‘苑田さん’が‘ひろさん’になるまでだいたい一年だったから・・・痛ッ」
「そんな事は思い出さなくていい」
にへら顔で言ったら頭をゴンと叩かれるがひろさんの顔だって赤い。





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ





『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ

「俺は、人生最大の出来事があった年だった。
ずっと一緒にいたい相手ができたんだ。ひ・・範裕さんに会えてよかった。
・・ひろさんは? 」
少し上目使いになってしまったけど、聞きたくて。

「・・俺も、おまえと同じだ」

やった! と内心ガッツポーズをとる。ひろさんが俺と同じ気持ちならあとはどうにかなるはずだ、と確信していた。
 

~~  崇が、大きく見えた。

『ずっと一緒に居たい相手ができた』
『範裕さんに会えてよかった』

そんな事を正面から言われるなんて、思ってもなかった。だから、
『おまえと同じ』
と答えるのが精一杯で。
崇の顔が輝くのが眩しかった、

俺は、崇と一緒に歩いていけるのか・・・?  ~~


翌朝、また同じ匂いをつけて出社する。
苑田さんは市島さんと外回り。俺はほぼ一日デスクワーク。昨日、一昨日と精神的にハードだったから、仕事中だけどどこかのんびりしていた。


~~ 「苑田さん、こぼれますよ? 」
「え、あ」

食事中、ぼんやりしている苑田に市島が気付いて、話しかける。
もうちょっとで箸の先から落ちそうになっていたのを慌てて口へ運ぶのを珍しげに見ていた市島だったが、
「・・・・何か、あったんですか? 」
迷ったあと、そっと口にする。
「・・まあ、そうです。 あ、仕事では無く、個人的な事です。
自分のことなのに、思うように行かなくて・・」
ため息になる。

「苑田さんでも悩むんですか。・・・もっとこう、スマートにやっているのかと思っていました」
「スマート・・って。それ、買いかぶりすぎですよ、市島さん」
苦笑しながら食事を続ける。
「俺にだって、悩むこと結構ありますよ。ただ、仕事とは関係ない事が多かっただけで・・・」
特に恋愛は。
それは口に出来ず、だが顔が赤くなりそうだった。

(和美さんなら教えてくれるだろうか・・・)

市島とたあいない話を続けながら、頼りになる伯母を想い浮かべた。 ~~


苑田が歩き出すのを迷っている時、絹里と中畝は、踏み出そうとしていた。





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-2

今日は絹里さん視点 ** から ** の間、と、苑田視点 ~~ から ~~ の間、があります。



「あ、絹里さん」
「・・・、なか・畝さん」
営業のフロアから総務へ戻ろうとしていた絹里は、休憩コーナーを通りがかり、そこにいた中畝に声を掛けられ、少し緊張した。

「あの、これ。この間の文具店で見つけたんだ。よかったら、使って」
そう言って薄い紙袋を手渡す。
「中畝さん、私」
「僕はこれから北森くんと外回りなんだ。じゃあ」


「まき・・ぬ里さん、どうかした? 」
「あ、松野さん。・・ううん、何でもない」
自分の席に戻ったが仕事が身に入らずどこか上の空の彼女を気にして、友人がこっそりやってくる。
気を使ってくれる事に感謝しながらも、ファイルの中に挟みこんだ紙袋が気になってしかたない。


**
(中畝さん、どうして私のこと気にするのかしら)
最初は、自分と新井が上手くいっていないことをタマタマ見かけ、気にかけてくれてるのかと思った。けれど今はそれ以外の気持ちがあるようだ。

真希は、中畝が覚えている高校の時のことを覚えていない。もちろん転校生がいたことは記憶にあるが、それが中畝だった事も彼にした事も、忘れてしまっている。

「これ、なんだろう? 」
ファイルの間に紛れ込ませていた紙袋。仕事に一区切りつけた時、思い切って開けてみた。
「わぁ・・」
花のような形になった、花びら型のポストイット(付箋)が入っていた。他にもミニ便箋などがあって可愛らしさに顔が綻ぶ。
**


週末。
苑田は実家にいた。

~~ 「ただいま」
「お帰りなさい、範裕さん」

玄関に、小さな内裏雛が飾ってある。まだそんな季節なのか、とぼんやり思いながら靴を脱ぐ。
「なあに? 内裏雛が気になる? 」
桜の香りのするコーヒーを出しながら和美が聞いてくる。
「あ・・、まあ。
ひな祭り、もう終ってるのに何でだろうって」
「一年に一回しか出られないんだから、すぐしまったら可哀そうでしょ。旧暦の三月三日まで置いてあげようと思ってね」
「和美さんらしい」
「ふふ、ありがと」

久しぶりだけど変わらない、父さんと和美さん、俺の三人の夕食。父さんが外に出掛けるようになって、色んな話題が出るのが新鮮だった。

夕食後。父さんとパソコンの話をしようとしたが、
「範裕さん、ちょっといい? 」
和美さんに引きとめられ、座り直す。紅茶が出され、二人で静かに飲んで、

「ところで、何の相談? 」

ひと言、言われた。
目の前の人をまじまじと見てしまう。
「だって、分かるわよ。何年一緒に居たと思ってるの? 」
「・・・・そっか」
苦笑がこぼれてしまう。どう話を切り出そうか迷っていた自分が小さく見えて。
「じゃあ、聞いてくれる? 和美さん」
「もちろんよ」 ~~





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その83

今日何気なく見ていたTVで、歌舞伎の話をしていました。

出雲阿国が始まりだとか言われていますが、私たちあまり興味の無いものには縁の薄い世界。
・・・と思っていたら。

いろんなところに入り込んでいるんですねー、これが。
例えば’黒幕’ ’見得を切る’ ’二枚目・三枚目’ ゜どんでん返し’などの言葉。
團十郎茶、路考茶(ろこうちゃ)、梅幸茶(ばいこうちゃ)、舛花色(ますはないろ)・・など、役者さんの名前や俳号(俳句を作った時のペンネーム)・屋号がついた色。
幕の内弁当。

けっこうあります。   

江戸時代には歌舞伎ってエンタ―テイメントだったから、なんでしょう。
大奥の女性が芝居を見て、役者さんと宴会。門限に遅れて大騒ぎ。なんて事もあったようですし(絵島生島事件)。

浮世絵にもいました。流行も作ったよう。


でも、女形の着物とか、衣装は大変だと聞いたこともあります。 花魁(花魁)の衣装になると総重量40kg!!
お米4袋を身につけて動きまわるんです!
・・・男じゃないと出来ないわ。。

間口が狭く、奥が深いといわれる世界、歌舞伎。  触りをちょこちょこなら、楽しめそうだと思います。ドキュメントとかCMとか(笑)。





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




バレンタインSS

バレンタインSSーー新井くんと苑田の場合

「ひろさん・・・これ」
崇がおずおずと包みを出してこたつテーブルの上に置く。
「・・・どうしたんだ? これ」
「あのさ、要らなかったら言って。俺、持って帰るし、味だって保証できない・・」
「崇? 」
「やっぱいい。ごめんねひろさん」
「ちょっと待て」
引っ込めようとしたのを手で押さえ、
「最初から俺に解るように話せ」
目を会わせずにいる崇へ強く言う。
「ごめん」
「・・開けるぞ」
しゅんとしたのを訝しく思いつつ中身を出すと、

「チョコレート・・。手作りか」
ますます小さくなる崇。
「誰からもらったんだ? 」
つい、声が尖った。
「ち・違うよ!貰ったんじゃなくて・・・」
一度俺を見たあと俯き、
「・・・んだ」
「? 」
聞きとれない。 黙っていると、
「作ったんだ・・俺が」
「つくった??」
「母さんが急に電話かけてきて手伝わされて、『持って行って二人で食べなさい』って。俺、初めてだったから不格好だし味も分かんないから嫌だって言ったんだけど『去年もらっただけでしょ? 今年はあげなさい』とか言ってそれで・・・」
「ああ、分かった。分かったから、崇」
早口で、まくしたてるように言う崇の頬が赤くなっていって、それが可愛い。

「コーヒー、持ってこい」
「は? 」
「コーヒー。おまえも食べるだろ? 」
「・・・だ・だめ!俺が作ったんだから」
「おまえが、作ったんだろ? 食べる」
「いい。あげられないよ!」
奪いあうようになってとうとう、

「・・・あ! 」
パクっと一口。
「・・・・うん、悪くない」
「ひ・ひろさんっ! 」
「ん? コーヒーは? 」
「も・・持ってくるっ! 」
普通にもぐもぐやってるひろさんに、慌ててコーヒーを淹れて持って行く。
「はい、これ! 」
「うん、ありがと」

「・・大丈夫だった? 」
「おまえも食べればいいじゃないか」
「うん・・・」
恐るおそるひとつ。。
「・・おいしい」
「な? 」
「よかったー・・」
本当にほっとした。
「母さんのレシピ、合ってたんだ」
「こら」
聞こえたら怒られるぞ、と言いながらひろさんはまた一つ口に入れ不意に顔を寄せて・・・、
「ん・・・」
キスは、蕩けたチョコレートが甘くて。
体の奥に、火が付いた。


はあっ、と熱い息をこぼしながら赤い痣をつけた体が揺れる。
「ひろさん、まだだよ」
「・・ぅ、あァっ。崇っ、や・・だっ、お・・きくしな・・っ」
「だって、ひろさん・・・エロ過ぎ」
横寝にしたひろさんの膝裏を持って片足を曲げさせ、上半身はこっちを向かせてキスをする。
「ん・・。っふ、あ・・っく」
一度吐き出したから抜き差しすると音が立つ。
「やらしい音」
「それっ、は・・っ、たかしがっ」
深く挿し込んだ楔にああっと喉を反らす。
「もっと、いっぱい聞きたい」

聞かせて、俺だけに。

言葉にはしないで体を起こし、ひろさんをイかせるために動きを速める。
「あ・・、だ・メだ、そ・・っ、や、もゥ」
片手でシーツを、片手で俺の腕を痛いほど握って精を解放した。
「・・・っくぅ・・っ、あ」
達したひろさんの中が、‘おまえも’とばかりに強く締めつける。
我慢できずに白濁を迸らせた。


「あれ? 」
洗濯物を広げながら首を傾げる。
「どうした? 」
「うん・・、何か汚れが残ってる」
「どれ? ・・・あ! 」
シーツの一部分に茶色いものが残って、落ちてない。それを見てひろさんが慌てる。
「寄こせ、それ、処分するから」
「えー、もったいないよ、これだけで」
「いいから、渡せ」
「まだ使えるって」
何で拘るんだ? と思ったら・・、そうか!

 思い出した。
昨夜、ローションが残り少なくてチョコを口の中で溶かして注ぎ足したんだ。
そのせいかどうか疑問だけど、ひろさんとの結合部から聞こえる音がいつもより粘りのある音で、甘い匂いがしてた。
その音を恥ずかしがり敏感になった中が、何度も俺の肉棒に絡み、締めつけて我慢できなくなって。


「とにかくだーめ。ひろさんが嫌なら二人の時は使わないから。それならいいだろ? 」
「・・・・」
ひろさん、赤くなってプイッとむこうを向いて。
「(洗濯)終わったら今度はどこの山へ行くか、いつがいいか決めよう? 」
かわいい、と口の中で呟き気を逸らすためにこう言った。





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*カラコンと名前-6

頭の中、‘しょうたくん’の呼んだ‘のうみさん’の名前だけがぐるぐる回って、また会話を聞いてなかったらしい。

― こら、そんなに動いたら髪が乾かないよ、翔太くん
耳に聞こえた声まで和叔父さんに聞こえてくる‘のうみさん’が、ドライヤーをかけている音がした。

― 能美さん・・。お願いがあるんだけど。
― 何だい?
― 名前、呼んでも、いい?

名前・・。その一言にはっとした。そうだよ、‘のうみ’なんて名字、ほかにもあるは
ずだ。 声が似てたって他人の空似かもしれないし・・・・。
でも、俺の願いも空しかった。

― ・・・・いいよ。
― あ・ありがとう、能美さ・・、和弘さん。


ガンッと頭を殴られた気分だった。
俺が、今、聞いているのは。あのマンションで『しょうた』と話しているのは、のうみ
かずひろ ―― 能美和弘。俺の、和叔父さんだ・・・・。



― 和弘さ・・、触って
― どこを?
― ・・全部。俺の全部、触って。俺が、和弘さんの事、覚えてられるように・・
― 翔太くん・・・

聞きたくないのに。
録音なんか止めて走って帰ればいいのに。

俺は身動きも出来ず、ただ、聞いてる。

― 翔太くん・・・。
― 俺の全部、和弘さんに覚えてて欲しい! いいでしょ? 和弘さん・・・。
― 翔・・っ!

―― ・・ 車椅子の翔太が和弘に抱きつく。それは智には見えない。




↓ランキングに参加しています。ポチッとしていただけると励みになります♪
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ

『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-3

今日も苑田視点からです。 ~~ からですね。



~~ 「・・・崇の、事なんだ」
息を吸って、吐き出しながら口にする。
「喧嘩とかじゃない、わね? 」
「崇に、・・崇を好きな娘(こ)が出来たんだ」
驚きに目を丸くする伯母に、範裕は、苦しい声を出して続ける。
「どうしよう・・。どうしたらいい? 和美さん。俺は、崇には幸せになって欲しいのに」
俺より絹里さんと一緒になった方が世間に波風が立たない。頭では理解出来るのに嫉妬して、自分の方が好きなのに、言えないのがもどかしくて。

伯母の、温かい眼差しに促され、圧し込めていた言葉が溢れてくる。ポツリぽつりと話すのをただ静かに聞いてくれた。
苑田の話が途切れた時伯母が言う。

「自分の事は考えないの? 範裕さん」

「自分の、事? 」
「そう。あなただって好きな人と幸せになる権利があるの、分かっている? 」
「俺・・? だって俺は・・・」
「あなたは幸せになるべきなの。浩司さんや隆裕さん、静代さんのためにも」
和美さんは強く言って身を乗り出し、俺の頬をペチっと叩いた。
「あ? 」
「しっかりしなさい、範裕さん。もっと自分のこと大事にしないと、崇さんだって愛想尽かししちゃうかもしれないわ」
(え・・?)

崇が、俺に?

目の前が・・・モノクロに、なる。


「範裕さん、涙を拭いて」
ハッと意識が戻る。ハンカチサイズのタオルを差し出す和美の服にも色が付いていた。そして泣いていた事を知る。

深呼吸して受け取り涙を拭く。じっと見ていた和美さんがとても優しい声でもう一度、
「範裕さん」
俺を呼ぶ。
「魔法の言葉、教えてあげる」
まるで母さんのような頬笑みを浮かべていた。
「『まほうのことば? 』」
「そう。聞きたい? 」
頷き、
「聞きたい。  教えてくれる・・? 」
自分の感情に溺れてしまいそうで、この際、藁でもいいから掴みたかった。
「・・ あなたは、崇さんと幸せになる。
簡単でしょ? 」

聞いた言葉が耳を通り抜けた。

「範裕さん? 聞こえてた? 」
瞬きして和美さんを見直すと、彼女は肩を竦めて ‘しょうがないわね’ と言いたげに笑う。
「言ってごらんなさい。『崇くんと幸せになる』」
「和美さん・・・」
唖然とした顔をする範裕に伯母は笑いかけた。
「ほら」
「・・・・崇と・・。ふたりで、しあわせに・・・」
躊躇い、言葉が切れる。

幸せに、なって、いいんだろうか・・・。

「和美さん・・。俺」
「言いたいでしょ? 」
また涙が溜まった目を、和美さんが見て笑う。
「俺・・、いいの? しあわせに・・・」
「なるのよ。隆裕さんと、浩司さんと、静代のために」
「けど、俺は隆裕を・・」
「隆裕さんだって分かってるわ。大丈夫。これからもっと大変なことだってあるんだから。これくらい簡単よ」





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ





『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-4

前半、苑田視点の続きです。



最初からもう一度。
そう視線で励まされ、
「俺は・・。俺は、崇と二人で、幸せに・・、なり・・・たい・・」
「・・よく出来ました」
本当に嬉しそうに笑ってくれた伯母は立ち上がり、俺のそばへ来てぎゅっと抱きしめてくれた。

「幸せになるのよ、二人で」
伯母の抱擁から温もりが伝わって来て、また、今度は嬉しい涙がこぼれた。

部屋へ上がってベッドにばふっと音を立てて寝転がり、さっきの言葉を頭に浮かべる。

『崇と、二人で幸せに・・な・りたい・・』

和美さんは、
「今度は、なりたい、じゃなく『なる』って言えるようにね」
楽しそうに’宿題‘をくれた。
今の俺にはそんな事を言うだけでも緊張で口の中が渇いてくる。けど、それと同じくらい、胸が熱くなる。

見もしなかった未来が不意に目に入った。そんな気持ちだ。

「いいのか・・・? 本当に」
幸せになりたいと思って。 崇とずっと一緒に歩いて行って。

繰り返し自分に問いかけているうち、眠りに引き込まれていった。 ~~



週末。
俺は実家に戻って久しぶりに山登りの道具を出していた。
登山靴。ザック。コンパス・・・などなど。たまに出して手入れしてあったからみんな使える。
「今度ひろさんの家に持って行くか、来てもらって・・・、それからにしよう」
春か秋。ひろさんと出かけよう。そう考えてわくわくした。

スマホに撮って片付ける。
部活は、仲間と助け合って山に登り、そのたびごとに感動があったっけ。
懐かしい。
(これからはひろさんと二人で出来る)
二人で朝日を見たり、星空を見上げたり・・・。頬が緩んだ。

「崇、部屋でごそごそ音がしていたが、何してたんだ? 」
夕食時、父さんに聞かれた。
「うん、また山登りしようと思ってんだ。ひろさんも誘ったら行ってみたいって」
「無理しちゃだめよ? 範裕さん、経験無いんでしょ? 」
「それは聞いたよ。・・・って、なんで母さんが知ってるの? 」
「な・い・しょ。あ、行く時教えてね。腕によりをかけてお弁当作ってあげるから」

うーん・・。母さんはひろさんとも、ひろさんのとこの和美さんとも仲が良いしなぁ。
ひょっとして?
「あのさ、母さん。もしかしてひろさんにメールしてる? 」
「いいえ、SNS。長文だと打つのも読むのも面倒でしょ? 範裕さん仕事してるから」
「・・・・・。 俺も仕事してるんだけど」
「そうね。頑張りなさい」
鼻の先をこりこり掻いた。



週があけ、年度末の仕事が忙しさを増す。
俺は初めて一人ですることが多くて、書類のチェックだけでも目が回りそうだ。
(そう言や、去年は来たばっかりで中島主任 ――今は部長だけど―― がほぼ手を貸してくれたんだった)
ふとした時の思い出す。

絹里さんとは自然、会うことも会話も仕事中心になる。だから、気付かなかった。





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ





『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-5

カンの良い絹里さんが見てしまいます。 彼女の視点から見た新井と苑田。。 ** から **は絹里さん視点です。




**
絹里は、用件を持って営業へ向かっていた。
「あ・・、新井さ・・」
本人への用事は無いけれど、やはり顔を見かけると嬉しく、話をしたくなってしまう。だが、新井は気付かず苑田の方へ歩いていく。
(残念)
そう思いながらも足を止め、新井と苑田、二人の会話を見守っているうち、ふと、
(何、だろう? 新井さんの雰囲気が、違う・・・)
初めて感じた。
もちろん仕事中なのだから、絹里とデートをしている時とは違っていて当然だ。
(でも・・・)
そこへ一之瀬課長が二人の横を通りかかり、苑田へ声をかける。新井はまだ用があるのか少し脇へ寄って、終わるのを待っているよう。
その、新井が苑田を見る視線に、息が詰まった。

言葉に言えない焦燥がじわじわと湧きでてくる。

(何? あれは・・。そして私の気この持ちは? )

絹里のジリジリした気持ちは、一之瀬課長の話が終わり再び新井と苑田が二人になって、座っている苑田が新井を見上げたのを見た時、爆発した。
(苑田さんが・・、新井さんをあんな顔で見るなんて! )
自分の顔が強張るのが分かり、咄嗟に踵を返してトイレに駆け込み、個室に鍵をかけ震える息を吐く。
頭の中は今の光景でいっぱいで、他に何も考えられなかった。

待たせたな、と見上げ、微笑む苑田。それに笑い返す新井。
そこだけ見れば普通なのに、絹里には特別な空気が流れた、と見えてしまったのだ。
(新井さんのあんな笑顔・・、私、知らない。苑田さんだって、あんな優しい・・・)
ただの先輩・後輩だけでは、ああはならない顔だ。

「まさか、新井さん・・、苑田さんに・・・?! 」

自分の言葉にハッとして、慌てた見回す。
(バカね、ここはトイレの個室よ)
苦笑しても笑えない。さらに、
「苑田さん、新井さんを名前で呼んでいたわ・・」
ごく自然に’崇‘と口にしていた苑田を思い出してしまった。

「どうして・・? 」

苑田にはいつの頃からか’枕営業’の噂が流れるようになっていた。それは絹里たちのいる総務にまで伝わって来て、社員はどこか苑田を遠巻きににする付き合い方になり、苑田自身も人を寄せ付けなかった。
が、新井はそんな事などまるで気にせず行動を共にし、尊敬のまなざしを向けている。
そのせいか苑田の雰囲気も柔らかくなり、職場で仲間と笑い合う場面も見られるようになっているという。

「新井さん、苑田さんのこと・・」
その先は怖くて口に出せない。
社内用の携帯が鳴り、現実に引き戻された。
**


◇  ◇  ◇


三月末のもう本当に忙しい時期は、俺に仕事以外の事を考える余裕をくれなくて、絹里さんのことは、置きっぱなしになっていた。


そして新年度。
桜が散って、ようやく気持ちに余裕が出てくる。と同時に、絹里さんが気になった。





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-6

午後の休憩時間、居たらいいな、と社食の隣の喫茶コーナーをのぞいて、何人かでお喋りしている女子の中に絹里さんを見つける。

「絹里さん」
「あ、新井さん」
「ちょっと・・、話がしたいんだけど時間ある? 」
「はい。・・じゃあ、行くね? 」
彼女が友人たちにそう言うと、
「いいわねー。いってらっしゃい」
「続きはまた後でね」
まだ俺達が続いてると思ってるから、にこにこ笑って手を振る。

「話って、なんですか? 」
「ごめん。三月、年度末は色々重なってちゃんと話出来なくて。
やっぱり顔を見て話さないと、って思ってたから・・。言い訳にしかならないけど」
「・・・それは、いいです。 私も考える時間が欲しかったですから」
人気の無い廊下の隅で、はじめに頭を下げて謝る俺に笑顔を見せてくれる絹里さん。
その笑顔に嘘はなさそうでほっとする。
「ありがとう。・・でも、本当にごめん。
俺、告白されたの初めてだったから嬉しくて、返事もふにゃふにゃしてて、結果絹里さんを・・・・傷つけた」
「それは違います。私も好きだって言ってもらって舞い上がってました。
・・・あの、もう行きますね。休憩、終わりそうですから」
「あ、ああ。 ごめん」
ちょっと頭を下げて背中を向けた絹里さんだったけど、
「新井さん、約束、忘れないでくださいね」
立ち止り、背中越しにひと言、俺に投げて・・・行ってしまった。


約束・・。
忘れてたわけじゃない。だ・けど、どうやって話したらいいんだろう。
俺は、いい。ひろさんさえ傷つかなければ。でも、どう話したら・・・。

「・・・~~、駄目だ。思いつかない」
頭を抱えた。


「新井くん、どうした? 得意先から怒られでもしたかい? 」
「・・小野山課長。違います」
午後のデスクワーク中、そんなにどんよりしてたか? と思いつつ返事する。課長、
「君の元気は伝染するから、いつも明るく居てくれないと困る」
どこまで本気で受け取っていいのか分からない励まし方で、ポン、と肩を叩いて席に戻っていく。

うん、今は仕事だ。


次の日曜、俺はひろさんと待ち合わせてスポーツ用品店にいた。
「こんな風になってるのか」
「ひろ、範裕さん、初めて? 」
「ああ」
興味深そうに店内を見回しながら、目が輝いている。
ほんとなら真っ直ぐ登山系のコーナーへ行きたかったけど、そんな範裕さんを見るのも良かったから、店内の、商品が並んでいる順に見て回る事にする。ジョギングなどのウエアやスニーカー、テニス、ゴルフ、野球にサッカー・・・。

やっと目的のコーナーへ。





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その84

人間は、毛皮の代わりに服を、牙や爪の代わりに武器を作って来ました。 でも、それだけじゃない(キラ―ン)。
便利な物も作ってきてますよね~。

その一つが・・ゴム

歴史は古く、6世紀ごろにはアメリカ大陸にあった、らしいんです。
そして今から500年以上前に、あのコロンブスさんが今のハイチとドミニカであるイスパニョーラ島を訪れ、その時、原住民たちがよく弾むボールで遊んでいるのを見て驚き!持ち帰ったことでゴムはヨーロッパへ伝えられたとのこと。
原住民たちは、ゴムで手袋やくつ、布にぬって固めた防水シートのようなものまで作り、使っていたんですって。
すごいですねーー。

その後、「加硫法」といいう方法が発見され、よくのび、丈夫になるゴム。さらに、空気入りタイヤなどが作られたりしてゴム製品がたくさん作られ、増えていったんだそう。
さらに、石炭と石灰を原料にした化学物質を素材にして、合成ゴムの製造に成功。現在では、合成ゴムは、石油を原料に、作ってる。。

それだけ人の生活に必要なものになったんですね。
最近ではゴムのアクセサリーまでありましたっけ(ファンルーム、と言うもの)。

これで伸びたまんまにならなければ、うっかり放置して、「きゃー!くっついてる!」 ってことにならなければいいんですけど~。

お気に入りのバッグとかにへばりついてるのを見た時は・・・凹みます。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*カラコンと名前-7

ガタガタッ、と音がした。そしてごとっ、と何かが落ちる音。

― ・・・翔太くん、危ないよ。ドライヤーで火傷したら大変じゃないか
― っ、火傷くらいっ! 和弘さんが俺を見てくれるなら俺は・・っ
― 颯太くん!

揉み合うような音に、ガタガタとまた聞きなれない音が混じる。 そして、

― 分かった。・・・分かったから、翔太くん。

宥めるような和叔父さんの声。 俺にも聞かせてくれた声を、他人が聞いている。
胸が、ぎゅっとする。

― 和弘さん・・・。

しょうたが甘えた声で呼ぶ。
(なんで・・、名前を呼ぶんだ。俺の和叔父さんの。 俺だって呼んだこと無いのに! )

― まずは座ろう。翔太くん、ぶつけてないかい?
― 大丈・・ッ
― 翔太くん?

心配そうな声。俺にも、何度も言ってくれた、のに。

― ・・・足
― どうした? ・・・痛い? 
― あ・・っ
― ひねったのかい? あぁじっとして。とにかく座らないとこのままじゃ・・。
― ここじゃヤダ。ベッドに連れてって、和弘さん

ベッド? 

― そうだな・・。ベッドの方が足の状態を看(み)やすいか。
  じゃあ、しっかり掴まって
― うん

(なんだよ、その『うん』は。そんな嬉しそうに答えるな)
腹が立ってくる。


「・・・ちょっと、お兄さん? 」
「ぅわあっ! 」
不意に肩を叩かれ、声をかけられて飛び上がる。
「うおっつ」
相手も俺の反応に驚いてのけ反り、後ずさった。




↓ランキングに参加しています。ポチッとしていただけると励みになります♪
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


プロフィール

ますみ

Author:ますみ
FC2ブログへようこそ!

最新トラックバック
フリーエリア
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR
ようこそいらっしゃいました!
よろしければポチっとしてください(ペコ)。

Page Top