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本文

・・・忘れてました。

ごめんなさい。 昨日の『耳から ~~』に追記で入れておくはずのバレンタインSS,忘れてました。。


「・・・あ! 」
パクっと一口。
「・・・・うん、悪くない」
「ひ・ひろさんっ! 」
「ん? コーヒーは? 」
「も・・持ってくるっ! 」


重ねがさねスミマセン。。
*** この続きは、バレンタインSSのカテゴリーに移動しました。どうぞ左側のカテゴリー、バレンタインSS、でお読みくださいませm(__)m
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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-7

「こんなにあるのか・・? たくさんあり過ぎて、目が回りそうだ」
「最初から全部入らないよ。山に慣れて、テント張るようになってから考えればいいんだ」
「・・・そう、だな」
品数の多さに驚いていたひろさんだったけど、俺の言葉に安心したらしい。
信頼を見せるその表情が新鮮だった。

取りあえず要るものとして、登山靴・・、の代わりにトレッキングシューズ。
「これでいいのか? 」
と聞かれるのへ、
「うん。だってそれ、今日履いて帰るし」
と答える。
「これを? 買ってすぐ履くのか? 」
「そう。足に馴染ませておかないと。山へ行ってから履いたら(足に)負担がかかるんだよ」
ふーん、と半分くらい理解った顔で靴を見て・・、
「高価い(たかい)! 」
値札に驚く。   まあね、二万円近くするから。
「他の靴じゃいけないのか? 」
「ひろ・・、範裕さん。山って、道路と違ってデコボコしてるから靴は重要なんだ。
普通のスニーカーだと、足首が安定しないから挫(くじ)いたりしやすい。かと言って本格的な登山靴はソール(靴底)が硬めで、範裕さんには逆に歩きにくいと思う。
俺も買うし、一緒に揃えていこう」
俺の説明をじっと聞いていたひろさんは、
「・・・山に関してはおまえが先輩だからな」
真面目な顔で言って、靴を買い物かごに入れた。

買い物を済ませ、近くのファストフードの店で一休みする。

「どうだった? 」
「・・・・疲れた」
ポテトを口に入れながら感想を聞くと、そんな答え。足元はもちろん買ったばかりのシューズだ。
「仕事以外でこんなに品物を見て歩いたのは、そう無い」
「そっか」
「見たものと説明で頭がパンパン」
その台詞に思わず笑う。
「店中見て歩いたもんね・・・・痛てっ」
テーブルの下で足を踏まれる。
「おおげさ」
睨まれたけど、口元は笑ってる。


夜は俺の所で、と考えてたけど。


「今日は、嫌だ」
「・・ひろさん? 」

ベッドへ引っ張ろうとしたら、その手を押さえられる。
「どして? 」
「言っただろ? 山のことで色々詰め込んで頭が一杯なんだ、って」
「それは・・、聞いたけど」
晩ご飯の時もあれこれ話してたから。 でも。

「崇」
「なに? 」
「どうしても、シたいか? 」
「・・それは・・・」
「俺の気持ちが逸れてしまって、集中できないかもしれないが・・、それでも、いいか? 」
「ひろさん。そこまで言ってないよ、俺」
何が言いたいのか、わからない。
「横で、ただ体温を感じながら眠るのは、出来ないか? 」

「できなくは、ないけど・・・」
ひろさんの顔が悲しそうで、俺の中の燻りが小さくなる。
「ごめんな、急にこんな事。けど、今夜は・・愛し合うより、そばにいて欲しいんだ」
「・・・・分かった」
ひろさんを悲しませたくなくて、返事した。





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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-8

最後の方、微妙~にRぽくなってます。なので少し下げました。苦手な方はご遠慮ください。











・・横で、ひろさんの寝息がする。
本当に隣で添い寝するようにして、ひろさんは眠ってしまった。

(失敗だったかなあ)
山の話をするのは久しぶりでひろさんも熱心に聞いてくれるから、つい熱くなって喋っていた気がする。
買い物にも時間をかけたし。
ひろさんの嬉しそうな顔も見られて、俺だって楽しかった。
(調子に乗り過ぎたかもしれない)
体の熱を持て余しながら、じっとしていた。


~~ 崇に初めて、NO と言ってしまった。

本当は、抱きあっても良かった。それをおして嫌だと言ったのは。

俺は崇と歩いていけるのか、確かめたかったから。
一緒の夜はほぼ外れなしで体を重ねている。もしかしたらそれ無しで過ごすのが出来ないのでは、と恐れている部分もある。
加えて新しい事を詰め込みすぎた。あんなに楽しそうに熱く語る崇は初めてで、こっちものめり込んでしまった。
情報を整理する時間も、欲しかったのだが・・・。

どこよりも安心できる場所で、崇の温もりを感じながらいつの間にか眠っていた。 ~~


ちょっと寝不足。とってもひろさん不足で目が覚める。
昨夜何事もなく寝たせいか横を見るとひろさんはまだ寝ていて、無防備な顔の俺の方を向いている。それはそれで幸せなんだけど。
(イク時のひろさんも好きなんだよな・・・)

ふと時計を見ればそろそろ起きる時間。 悪戯心がむくむくと。

「ひろさん、おはよう」
そうっと頬にキス。 まだ、起きない。
「そろそろ時間だよー・・・」
今度は、唇に。
「ん・・」
半分寝ぼけてるひろさんは俺の方へ顔をすりよせる。それが子供みたいで、かわいい。
「起きないと、起こしちゃうぞ~」
布団の中で体を動かし、足を絡ませ本気のキスをする。
「ひろさん・・・」

「・・・・っ、は・・ぁっ、たか・・っ、ん、ぅっ」
舌を中に入れ、ひろさんのそれを絡めて吸い上げたら、気が付いた。
驚いておれを押しのけようとして、でも、その手が俺の服を掴む。OKなんだと勝手に解釈して、好きなだけくちのなかを愛撫する。

「・・お早う、ひろさん」
「・・こんな起こし方、するな」
驚くだろ、と言っても目の縁が赤い。
「絶対目が覚めるからいいだろ? 」
「それは・・」
否定できないから、文句も言えなくなってるひろさん。その顔を間近で見てると、下半身が・・・。

「崇」
「こ・・、これは朝の生理現しょ・・」
「嘘つけ」
「わ・た、たんま! だめだよ、握ったら・・、う」
密着とはいかないまでも、くっ付いていたから反応はバレバレで。
「ひろさっ、やめ・・・ってば、ぁ、く・・っ」
「出して、すっきりしてから会社に行けばいい」
「んな、こと・・っ」
限界、一歩手前で、
「シャワーでも浴びて来い」
解放された。もちろん大急ぎで浴室へ行き、
「・・ひろさんの、意地悪」
お湯を浴びながら聞こえないように、文句を言った。





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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-9

今回は、新井くんの視点と苑田の視点が交互の出て来ます。



~~ 崇のキスで起こされる。
本気で口の中を愛撫され、危うく反応しそうになり。先に元気になった崇のムスコのお陰で気付かれることは無かったが、それでもホッとする。

崇がいつもと何も変わらなかった事に。

一度だけの拒否で変わることなど無い、と思ってはいたが、人の気持ちは判らない。
だから、目覚めて崇の顔を見るのが少し怖かった。けれどその不安はあっけなく消える。崇は、何も変わって無かった。
キスのお返しに崇の雄を勃たせてやって浴室へ行かせ、食事の支度をする。
「あの顔・・。見ものだったな」
笑いがこぼれた。 ~~


シャワーを浴びながら熱を放出し、ひとまず落ち着いた。
そして洗面台に常備するようになった杏の髪油をつけて支度する。

「・・いい匂い」
ひろさんは俺より上手に料理する。台所に顔を出すと、
「おまえはいつも元気だな。 食べたら、行くぞ」
笑いながら言って、入れ替わりに洗面所へ行こうとする。よこを通り抜けようとする服を捕まえ、自分でも分からないうちに、
「俺のこと・・好き? 」
聞いていた。

ひろさんは幸せそうに、
「すごく、好き」
ことん、と頭を俺の肩口にもたせかける。

ああもぅ! そんなことされたら・・、さっきやっと宥めた節操の無い俺のムスコが喜んで起き上がるじゃないか!

またシャワーを浴びる、って事は避けられたけど、しばらくは中島部長に小言をもらった時を思い出さなきゃいけないほど、気分は浮かれていた。


◇  ◇  ◇


新入社員の研修が始まったり人事異動があったりしたからか、きぬさとさんとあまり接触が無い。
あの‘約束’をいつまでも引き延ばしている訳にもいかないけど上手く話せる自信もなくて、総務にも行きにくくなってる。
そしたら。
絹里さんは、苑田さんと会っていた。


~~ 中畝が正規に二課の営業になり、新しい異動も配属もない。それで、歓迎会ぐらいはやろうか、という運びになる。
「ありがとうございます。 うれしいなあ」
中途採用だったから思っていなかった、と喜びを素直に表に出す中畝に皆好意的だ。
終業後、会場の手配などでざわついている中、プライベートのスマホに着信があるのに苑田は気付く。SMSだ。
(崇のお母さんからかな? )
何気なく出して名前を見れば・・絹里、さん。

「じゃあ苑田さん、・・どうかしましたか? 」
北森の声にハッとする。
「あ、いや別に。歓迎会、決まったか? 」
「はい。明後日、十九時に。店とか会費はもうちょっと絞りこんでからになるんで未定ですけど」
「わかった。俺も参加できると思う」
「わ。中畝、喜びます」
そんな会話を交わし、休憩コーナーへ行く。
(一体なぜ、絹里さんが・・・)




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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-10

落ち着いて考えようと自販機から容量の多いホットの紅茶を選ぶ。スマホを起動させ、もう一度文面を出して読む。

::苑田さん、絹里です。
  話し合いたい事があるので、明日の都合を教えてください。

「話し合いたい事・・か」
半分くらいは予想がつく。崇の事だ。どう出るか分からないが、明日はそう予定が無かったはず。

::絹里さんへ。
大丈夫、空いてます。

返信するとすぐ戻ってくる。

::ありがとうございます。では、十九時半、’野の花‘と言う店で。
::わかりました。

リンクが貼ってあり、見れば会社から二駅めの和食の店だった。



「こんばんは」
「済みません、急に呼びだして」
「いや、こっちも空いていたし」
店の前で待っていた絹里さんと言葉を交わし、中へ入る。

「いらっしゃいませ」
「予約していた絹里です」
「・・・はい、承っています。どうぞこちらへ」
応対に出てきたスタッフが絹里さんの言葉に頷き先に立つ。

’予約‘
その言葉に胸がざわついた。

通されたのは個室。
他人を気にしないで話をしたい、と言うことなのだと気付き心が緊張する。

「ここ、月替わりの懐石コースが美味しくて時々来るんです。」
「そう・・。楽しみだね」
席に着き、料理が運ばれて来ても会話がほとんど無い。お互いにタイミングを計っている。
魚料理が運ばれてきた。同じくらいにそれぞれの前に置いてあった一人用の釜に火が付けられる。
「苑田さん」
意を決した絹里さんが俺を呼んだ。
「うん・・。話し合いたい事、た・・新井のことだね? 」
「そうです」
キッとした目で俺を見る。ひとつ深呼吸して、
「私、見てたんです」
口火を切った。

「『見ていた』・・? 」
何を? それとも、誰か、を?
「はい。新井さんと苑田さんを。
少し前から営業のフロアに行くたび気にして、見て、いました」
その言い方が、キリ、と胸に刺さる。





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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その85

3月になり、そろそろ暖かい日も増えて来ましたネ。  となると。
お花見・・お弁当 の出番?


昔むかーしは、仕事で帰れない人たちが持って行く常備食。蒸して乾燥させたお米(干し飯・・ほしいい)や、おにぎりだったそうな。
あ、「弁当」は、「好都合」や「便利なこと」を意味する中国の俗語「便当」が語源らしいです。。
「弁えて(そなえて)用に当てる」ことから現在の「弁当」という漢字が当てられたよう。 ほえ~、ですね。

そしてお弁当をお花見に持っていく習慣は、お弁当箱が誕生した安土桃山時代からとされています。
ようやく外でご飯を食べながら花見が出来るようになったんでしょう。

そういえば、お弁当箱って日本のものは色々。竹細工・曲げわっぱなどの自然のもの、漆塗りとか、重箱まで。形だって四角に台形、半円・六角・楕円・・・・脱線したかな?


おかずで楽しかったのは卵焼きでした♪  出し巻き風、そぼろ、茹で卵。
ご飯・卵とひき肉のそぼろ、海苔、の3段重ね。たまにピンクのでんぶが入ってる時もありました。もちろん他のおかずもありましたよ。
おにぎりは丸い形。

頑張って作って、お花見しに行こうかな・・・。


『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*カラコンと名前-8

「・・・あの」
「あのさ」
ほぼ同時に口を開き、言葉が重なって黙る。
「・・いいかな? 」
「はい・・」
「君、劇団か何かの人? 」
「はあ? 」
「いや・・、俺も役者目指してて、時々外で練習するから。違った? 」
俺に声をかけてきたのは、男性。街灯が少し遠いから年は分からないけど、
「俺・・、役者と蚊目指してません」
どこがそんな風に見えたんだろう。
「そっかー、残念。お兄さん舞台とか見映えしそうだから・・・」
「あの、なんでそう見えたんですか? 」
「ああ、ヘッドフォンして立ったり座ったりしてたから。俺もやるんだ、台詞とか動きとか覚える時に。
ごめんな、間違えて。・・ちょっとさ、同志がいる! とか思っちゃってさ。嬉しくなってつい声かけちゃったんだ。
邪魔して悪かったな。 じゃあ」
あっさり背中を向ける。なんか気の毒で、
「あ・・、お芝居、頑張ってください」
声をかけていた。彼は背中を向けたままだったけど手を上げて振ってくれる。
(また、会えたりするかな・・・・)

はっと気がついた。マイクの向きが。。
「やば・・っ!」
今の会話も拾ってる! 慌ててスイッチを切って片付け、自転車に乗った。


家に帰って、機材をテーブルに置いたら気が抜けた。
はあ、と息を吐くと顔をテーブルにつけ、
「今日、何だったんだろ・・・」
呟く。

和叔父さん・・、しょうたをどうしたんだ? キスとか、したんだろうか? その先は?
「録音・・」
してたはずだけど聞きたくない。
なんで今日だったんだ・・。前の‘六の日’なら聞かなくて済んだのに!
「知らなくて済んだのに・・・」



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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-11

崇、ではなく俺と崇を。
何故二人なのか、それは次の言葉で聞かされた。

「この間、初めてお二人が一緒にいるところを見ました。新井さんが苑田さんを見て笑い、苑田さんも優しい顔をしていて。新井さんがあんな風に笑うの、私、知りませんでした。
その時、不思議な空気を感じて気になったんです。
・・・いいえ、ジリジリした気分になった。あとから気がつきました。あれは嫉妬だったと」
「絹里さん」
「苑田さん、覚えてますか? 私、以前、

『新井さんには誰か好きな人がいるんでしょうか? 』
って聞いた事ありましたよね? 苑田さんは、
『新井は絹里さん以外と付き合っていないと思う』

そう、答えてくれました。あれは、嘘だったんですね? 」
「違う! 崇は本当に絹里さん以外の女性とは付き合ってなくて・・・」
ハッと気付いて言葉を止める。

「・・・私以外の女性。もし男性も含めていたら、苑田さんは、入っていた」
硬い表情で断定されて切り返せない。

「いつからなんですか? ・・・まさか、噂にあったような事を新井さんに」
「絹里さん! 
それは、崇を侮辱することだ。・・二度と口にしないでくれ」
「・・・・・すみません。言いすぎました・・」
俺の態度にビクリと体を強張らせ、白くなった顔で謝る絹里さんに意識して表情を柔らげ、
「俺のことは・・、否定しない。けど、たか・・、新井はそんな事しないし、出来ない。
知ってるよね? 」
「・・・はい」

お互い熱くなってしまったのを落ち着かせるために、箸を手に取った。
口に運び、ゆっくり噛みしめていると、料理の味が沁みてくる。
「美味しい・・」
彼女も、同じように思ったらしい。本当に感性が似ている。

火の消えた釜の蓋を開けると、菜の花としらすの炊き込みご飯になっていた。目に鮮やかな色合いで、自然と笑みがこぼれる。


「絹里さん、俺の話も聞いてくれるかな」
食事が終わり、座卓の上がきれいになったところでそっと声を出した。絹里さんは薄々気付いている。崇のために、誤解は解いておきたい。
一つ、頷いてくれる。

「俺は・・、た、新井が好きだ。
初めは、気付かなかった。・・気付きたくなかった。だってそうだろ? 同性と、しかも社内で恋愛するのは、リスクが高すぎる。
それに、俺は噂通りの人間だ。関わらないでいようと言う人が多いのも知っている。
崇もすぐにそうなると思っていた。

仕事で関わるようになり、色々あって。それでも崇は真っ直ぐに向き合ってくれたんだ。
嬉しくて、つい近付くのを許してしまって。いつの間にか・・・」
この先を言うのが、恐い。引き返せないからだ。
それでも、絹里さんには知って欲しかった。

「・・、いつの間にか、好きになっていた」
大きく息を吸う音がする。だがまだ終わっていない。口を開きかけた彼女に首を横に振って続きがあると示した。
「新井に、言うつもりはなかったよ。気付かれないようにもしていた。なのに崇は・・」





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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-12

「もう、いいです」

絹里さんが目に涙を浮かべながら俺を遮る。
「苑田さん、そんな顔で言わないでください。 分かりましたから」
「絹里さんが崇を好きだと聞いて、ショックだったよ。けど、ホッとした部分もあった。新井を、世の中の普通に戻せるかもしれない、と期待までして。
自分から手を離す事は出来なくなっていた。奪われたら諦めも付くかもしれない、と・・・・。狡い事まで考えた」
「苑田さん」
「俺に、相談にも来たし、とても真剣で崇を好きな気持ちが伝わって来て、、羨ましかった」
「そんな・・・・こと」
涙を浮かべる絹里さんに、俺はもう一度首を横に振った。 今から一番酷い事を言うんだ。


「絹里さん・・ごめん。
俺は崇と、こいびと同士の付き合いをして・・いる。 離れられないんだ・・。
崇と、これから先も一緒に歩いていきたい。

許して、くれないか・・・? 」

お願いだ。
座布団を下りて畳に手をつき、頭をさげた。


しばらく、何の音もしなかった。 絹里さんが考え込んでいるのが伝わる。
俺に対してなら、どんな事も受け止めようと思った。崇が傷つかなければ、それでよかった。

すん、と鼻をすするような音がした。それから、こと、と小さな音。

「私、きっと一生新井さんが好きです」
頭上で、絹里さんの声がした。 ・・・その気持ちは、痛いほど分かる。
「・・顔を上げてくれませんか? 苑田さん」
促されて体を起こす。
目を赤くした絹里さんが俺を見つめていた。決意を秘めた瞳で。
きれいだと見惚れていたら、

「苑田さん。私が譲るのは一回だけです。
新井さんを悲しませないでください。
これから先、新井さんを悲しませるようなことがあったら、私、その時結婚していたとしても、どんなことをしても新井さんを手に入れますから」

はっきり言葉にする。
こんな短い時間の中で、何をどれほど考えたのだろう。

ここまで潔い思い切りをした絹里さんに俺はただ、答えるしかない。
「約束する。必ず、崇を悲しませない」
「ありがとうございます」
彼女は深々とお辞儀をした。





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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-13

苑田視点のターンが終わります。



 そろそろ部屋を出ようか、と二人とも立ち上がった時になって、
「ひとつだけ、聞いていいですか? 」
絹里さんが上目使いに俺を見る。
「うん。・・なに? 」
もし、私が苑田さんより先に新井さんを好きになって、お付き合いしていたら・・・」
「崇は君を選んでした」
「・・苑田さん・・・・」
俺の即答に声を失くす絹里さん。
「話してて、絹里さんと俺はよく似た感覚を持っているのが分かるんだ。崇も感じていたと思う。
それに絹里さんは女性だから男とは違う目線で物事を切り取っていく。打ち合わせの時何度もヒントをもらったよ。
もし・・・、もし、俺と知り合う前にあなたと会っていたら、崇は俺を選んでなかった」
断言できる。 それくらい俺と絹里さんは重なる部分が多い。

「新井さんとは、いつから・・? 」
「一年と少し前。
崇、挨拶回りで相手先の社名間違えてへこんでた。俺は当時の、中島主任、に頼まれて様子を見に行って。それが最初だった」
「相手先の、社名・・ですか? 」
「廣済堂を、‘さいこうどう’って三回も連呼したらしい。それもその会社の中で」
これくらいはいいだろうとあの話をする。

絹里さん、目が丸くなって・・、とうとう笑い出した。


店の前で別れ、駅に着くと脱力する。改札を抜け、ホームへ向かう階段の壁に寄りかかって、何故か泣きそうになった。
(崇・・・)
無性に声が聞きたくなる。

― もしもし。 範裕さん?」
電話の向こう、崇が下の名前で俺を呼ぶ。
― もしもし? ひろさん、どうかした? 」
― ・・なんでも、ない。ただちょっと・・。声が聞きたくて」
― 俺、今日はもう終わって帰る途中なんだ」

あぁ、だからそう呼ぶのか。

― ひろさん・・、どうかした? 今どこ? 」
― 俺も、これから帰る」
― こっち(俺の部屋)、来る? 」
声が、心配そうなトーンになる。
迷った。

― いい。自分の部屋で寝る」
― ・・分かった。 ひろさん」
― なんだ? 」
― 好きだよ」
そのひと言で光が差し込んだような気がした。
― 崇。 ・・もう一回言って、くれないか? 」
― 大好きだよ、ひろさん。・・おやすみ」
最後に、ちゅ、とキスの音を立てて電話を切る。
本当に耳にキスされた気になり、思わず赤くなった。 ~~





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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-14

新井くんの回想?のあと、苑田視点になります。 ~~ からですね。




仕事帰り、自分の降りる駅のホームに着いた時、着信がある。この音は、ひろさん。

― もしもし、範裕さん? 」

こんな時間だし、つい下の名前で呼んで、返事が無くて焦る。

― もしもし?ひろさん、どうかした? 」
言ってから失敗したか? とスマホを握る手に力が籠もったけど、‘声が聞きたかった’なんて言われて飛び上がりたくなる。
心配にもなり勢いで誘ったけどやっぱり平日は、断られる。でも嬉しかったからキスを送った。

ひろさん、どんな顔しただろう? 想像したら寝られなくなりそうだ、俺のムスコが。



~~ 翌日は中畝の歓迎会。 アクシデントがあった。

「・・っえぇーっ! ブッキングってそんな、・・ですけど、・・はい、・・・・はい、分かりました・・」
午前の社内、最後はため息をついて電話を切る河上に、
「どうした? 」
通路を挟んだ横にいる苑田が声をかける。
「あ・・、苑田さん。
歓迎会の場所、ポシャッちゃいました・・」
今からもう一度探します、中畝には内緒にしていてください。そう言ってがっくりした気持ちを無理やり持ち上げてる。
「焼き肉屋だったな」
「ええ。女子も誘っていたんで、デザートなんかが充実してるトコ選んだんですけど・・・・。入力ミスされたらしいっす」

時計を見ればもうじき昼休みだ。この分では河上、昼抜きになるかもしれない。
「店を探すのも良いけど、食事はしろよ」
「はい・・」
うわの空の答に、苑田は自分のPCのあるファイルを開いた。

午後の休憩時間。
「河上、見つかったのか」
PC画面を見ているのへ声をかける。
「あ、苑田さん・・。すいません心配かけて。取りあえず予約、入れられました。ランク、落ちるんですけど」
「そうか。・・・これ、仮押さえしてある。十七時が最終確認だから、検討してみてくれ」
「ありがとうございま・・す・・」
眉が下がった相手に二件の店の情報を渡す。受け取り、内容を見た河上が、
「これ・・これ、って!? そ・苑田さんっ 」
思わず苑田の腕を掴んだ。
「仮押さえだ。値段もあるし、種類も違うから無理なら・・・」
「ぜ、全然オッケーですって! 何なんですか、この値段・・。信っじらんない!しかもこんだけ食べられる・・なんて」
「少なくは無い程度だ」
「だって、AAクラスの肉が」
「かわかみ」
慌てて声を小さくする。
「中畝の歓迎会だから、な」
「あ、そか、苑田さんの後輩でしたっけ。・・分かりました、ありがたく使わせていただきますっ」
仕事より張り切りだした河上に苦笑して、苑田は仕事に戻った。 





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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その86

便せんに書いて封筒に入れる、 手紙

ほとんどしなくなりました。
送り物やプレゼントへの添え書き、葉書はまだ出す機会が多いのですけど。機器を使ったメールの方が使ってますね~。


手紙は、作業としては手間がかかる。
出す相手、季節、話題に応じて便箋、封筒、時には切手を揃え、下書きして誤字脱字の確認。清書、封筒への宛名書き。
投函するまで、してからも・・ドキドキ。

返事が戻ってくるまでいつもの倍はポストを覗き。
自分宛の表書きを見た時のワクワク感といったら・・!

デコレーションのためのシールやカラーペンを買いに文具売り場をウロウロしてた頃もありましたよ♪
もうちょっと字が上手くなりたいと、今でも思います。
そうそう、昔は七夕の短冊を書くのに、ハスの滴をとってきて墨を磨ったのだそうです。それで書くと筆字が上手くなる・・・って言われてたようで。
雨が降った翌日なら、たくさん滴があったでしょうね~。

手紙を書く時は、夜は止めた方が良いらしい。
のは実体験。 気持ちが盛り上がるんですよーー。自分に酔う、というか。 書いて、封までして出すのを忘れた手紙、なるものがありまして、その横にあった下書きをふとそれを読んでしまい、サァーーっと、血が下がる気がしました。。
普段の自分では考えられないような事を、書いてましたー!!

気をつけましょう、夜の書き物。






『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*カラコンと名前-9

「智ー、どうしたんだ? 元気ないけど」
「んー、別に」
「分かった。彼女とケンカした」
「違う」
「じゃあゼミで駄目出しとか? 」
「外れ」
あれからひと月ぐらい経っても、俺はまだ心の整理がつかないでいた。
もちろん和叔父さんとは会って・・、会えて、ない。

「おい智」
「へ? ・・・ひゃっっ!!」
いきなり項に冷たい感触が来て首と全身を縮める。
「な・・なにすんだよ内海! 」
「だから、言ったじゃん。聞いてなかったのか? 」
わざとらしく呆れる内海に、吹きだして笑う涼二と和泉。
「こっち向かないと首につけるからな、って言ったのに、『うん』とか空返事してたおまえが悪い」
ほら、と改めてくれたのは、冷たい缶。
「・・・サンキュ」
「でさ、どうすんの? 」
「どうするって? 」
「おまえそれも聞いてなかったのか? 」
「悪かったな」
「もー、ケンカしない。
あのね智、今度会社見学しないか、って話してたんだ。もちろん外観眺めるだけなんだけど。外側見るだけでも違うと思って」
俺と内海の間に入ってくれたのは和泉。
「外を見るだけなんてつまんないと思うんだけどさ」
「そんなことないよ、涼二。だって俺、この大学に決めたの、校舎見てからだったもん」

まじ? 

俺達は思わず和泉の顔を見てしまった。



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バレンタインSS

バレンタインSSーーホワイトデー。香川と苑田の場合

外回りが終わり、社へ戻る途中自分のスマホの着信音。宛名は、
「・・・香川さん」
しばらくぶりの連絡。

『元気にしてるか? あの部屋に生物(なまもの)を置いてきた。取りに行ってくれ』

「生物・・って、なにを」
メールを読みながら少し呆れて呟く。
「俺が出張とかだったら、どうするつもりでいたんだか」
それでも何があるのか、と楽しみにしてしまう。



香川の部屋だったマンションの一室は空気の入れ替えや一人で考えたい時、訪ねていた。ここは、新井にも知らせていない。

「な・・・」
灯りをつけたリビングの真ん中にあったのは、煌びやかな。
「花・・じゃない。これは・・飴? 」
テーブルの上には豪華な花籠。近付いてよく見れば、それは全て飴細工で出来ている。
「確かに生物だけど、食べられるのか? 」
目立つ場所には触れられない。葉の一枚をそおっと折り取り、口にする。
「・・・抹茶味」
口の中で転がしながら味わう。香りが鼻に抜け、甘みがゆっくり溶けていく。
紅い花、黄色・白・オレンジなど、それぞれが何かの素材を使っているのだろう。
それにしても豪華だ。

「どうしよう・・。(自分の)部屋には置けないし、第一持って歩けない」
この形を崩さす移動させるのは無理だ。

「それなら宅配に手配させる。どこへ送りたい? 」
「 ! 」
背後から声が聞こえ、同時に抱きこまれる。
ビクリと身を竦ませたのは、耳の後ろに口付けられたせいだ。
「香川さん」
「うん? 」
「いきなり出てこないでください」
「ヒトを幽霊みたいに言うな」
くつくつと笑いが鼓膜を擽り、苑田は体の力を抜き、凭れかかる。

「相変わらず人を驚かせるのが好きなんですね。・・どうしたんですか、これ? 」
「高松から押し付けられた。あいつの付き合いのあるオヤジ(組長)からもらったんだと」
「『もらった』? 」
「ああ。どんなところにも甘党ってのはいて、その甘党オヤジには可愛がってるパティシエがいるんだそうだ。
ああ、囲ってるんじゃないぞ。
でな、そのパティシエがコンテストに出るとかで、腕試しも兼ねて作らせたらしい」
「でしたらここへ持って来なくても」
「そんなやつが二十近く在ってみろ、口の中が甘ったるくなってしょうがない」
「二十・・・」
確かにそれは苦手な人には大変だ。

「あいつ、断り切れなくて半分も持って帰って来やがった。俺も得意じゃないがこれは綺麗だったんでおまえに見せたくなったのさ」
「・・ありがとうございます」
「礼ならこっちを向いて言ってくれ」
促され、体を反転させて向き直る。目が合い・・、
「・・ん・・っ」
気付いたら唇が重ねられていた。
啄むように軽く、角度を変えて深く。舌が苑田の口の中に差し入れられ、新井のとは違う感触と愛撫に酔わされていく。
「っふ・・んっ、ぅ、んん・・」
「・・・は、っ。その、顔・・。ノリ」
苑田の膝が崩れ、少し離れた隙間を香川の熱い声が埋める。
「今知ってるのは、あの坊やだけか」
「・・妬いてるんですか? 」
「まさか」
少々きつめに見返され、ふっと笑う。
「そこまで言う余裕があるなら、もう少し味わわせてもらおうか」
「あ・・」
逃げる間もなく開いた唇が香川のそれで塞がれ、舌が、明確な目的を持って動き回る。
「んっ、・・んぅ。・・っ、む、は・・ッぁ! 」
香川の手が苑田のジャケットの背中を撫でおろす。腰に止まり、ぐい、と引いた。
その刺激に苑田の手が香川のスーツを握りしめる。
そこは新井が見つけた弱点だ。香川には知られていないがビクリと大きく反応してしまう。


・・・なぜ、この腕を振り払わないのだろう。
強制された訳ではない。
香川だって無理やりした事は無い。 拒めばそれ以上は続けない。


「どうした? 考えごとか? 」
「・・・っちが、あ! 」
唇の隙間で言葉を発した香川がするりとスラックスの前立てを掌で撫で、全身が跳ね、
「感度が良いな」
「・・っ」
舌でぺろりと耳たぶを舐められ甘噛みされて、ブルッと震えが走り抜けた。
口腔に片耳を含まれ襞を上から辿っていく舌先が、官能を揺さぶる。
「ぃ・・、ぁ・は・・っん、かが・・」
「今は、ゆういちろう、だ」
「や・・、そこ・・っ」
耳に息を吹き込みながら囁く香川に煽られ、腰の奥に熱が溜まっていく。
後頭部を押さえられたまま。ぴちゃ。くちゅっ。・・と音が耳の中に直に落とされ、追い上げられて限界に近付く。
「んあっ・・!」
耳の中に舌が潜り込んできた。 ドクンと腰に響く。

(だめだ。服が・・、汚れて)

だが、腰が揺れてしまうのを止められない。
「ぁ・・っ、も、っ、ういち・・さ」
ふっ、と笑い声が聞こえ、顎の先を指先で動かされ、反対の耳に音を立てて口付けされ。
「はうっ。や・・、だ、め・・ぇ、ん・んっーー・・」
ビク、ビク、と躰が強ばり下着が濡れるのが分かる。目の裏に白い火花が散って、
絶頂感がこみ上げた。
じぶんの喘ぐ息がすすり泣いているように聞こえ、羞恥の入り混じった快感に抗えなくなる。
「あ、止め、てく・・」
ファスナーを下ろす音と直に手が触れる感触。
「・・出してしまえ、ノリ」
嫌だ、と首を横に振ろうとするが、また深く口付けされ舌を絡め取られてしまう。
「んん・・っ、ん、ふっ、――・・ッッ! 」


ひんやりとした肌触りが気持ち良い。
「気がついたか? 」
ああ、香川さんの声がする。
「水は? 飲むか? 」
欲しい、と口を動かした気がする。
体が起こされ、唇にガラスの感触。こく、とひとくち。喉に、全身に沁み渡る。
もっと、と思ったのが伝わったのか、また水が与えられる。

ほう、と息をついて、やっと自分のことに意識が向く。
目を開ければベッドの上。香川に上半身を支えられていた。
「・・着換えさせたんですか? 」
「ああ。役得だ」
しゃあしゃあと言うのに腹は立ったが、怒る気持ちは無い。
「・・・送ってくれるんですね? 」
「飴細工か? 今送り先が分かるなら手配する」
「では、私の実家に」
「分かった。おまえはどうする?タクシー、呼ぶか? 」
「ええ」



翌日の昼休み、和美から電話が入った。
― 範裕さん?! 凄いのが届いたんだけど! 」
― ええ、貰ったんです。俺一人ではどうしようもないんで、和美さん、お願いします」
― ・・いいの? 」
― はい」
― ・・・分かったわ。適当に分けていいのね? 」
― 和美さん」
― なに? 」
― 食べ過ぎて、虫歯にならないでくださいね」
― 大丈夫よ! 」
笑い声と、誰に分けようかしら、と言ううきうきした声んで電話が切られた。
突然届いた品物に、驚きはしても勘ぐらないところが伯母の懐の深さだと事あるごとに思う。感謝しつつ電話を切り、自分の部屋の冷蔵庫にある飴の花を思い出した苑田だった。













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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-15

「・・・では、中畝くんの今後の活躍に期待して、・・乾杯! 」
「乾杯!」
「かんぱーい! 」

課長の一之瀬の音頭でビールのグラスがいくつも上がり、打ち合わせる音がする。
歓迎会は苑田が仮押さえした店の一つ、‘はせ川’で行われた。

「お肉おいしー」
「このタレだって旨いよ」
「なんだこれ? 口の中でとろけてく! 」
「ね、河上くん、会費無理してない? どんどん出てくるけど」
料理の質と量に驚きの声が何度も上がる。
酒もすすみ、デザートのアイスとフルーツの盛り合わせが出てくる頃には、
「大満足~」
「あー、参加してよかった。この店、最高! 」
「もう入らない・・。でも、美味しそう・・・」
ほとんどが店のファンになっていた。

「河上―、またここで・・っく、やろーよ」
「え、え、それは」
お開きのあと、同僚に言われてちらりと苑田を見る河上。
「今回はずい分探して粘ったらしいよ、河上。だから特別だったみたいだし、無理をさせても、・・だろう? 」
「苑田くんの言う通りかもしれないね。サービスがたくさん付いたようだ」
苑田と河上のやり取りに一之瀬も気付いたらしく、フォローが入る。
「そ・か。・・んなら、ちぎ(つぎ)は・・・っふぅ」
「お客さまがた、タクシー、来ましたよ」
スタッフが呼びに来る。
「あ、はい。じゃあ皆さん、出ますよー」
「は~い」
「ごちそうさまでしたー」
「とっても美味しかったですー」
「またどうぞお越しください。お帰り、お気をつけて」


「苑田さん」
何人かずつに分かれ、タクシーに乗り込む前に中畝が苑田を呼んだ。
「あの・・、ちょっと相談したい事が」
「構わないけど」
今からか? と小さく聞けば頷く。
「お? どうしたんですかぁ、中畝さん」
「北森さんすいません、先輩に相談したい事が」
一緒に帰ろうとしていた北森の問いかけに、苑田を‘先輩’と呼び、個人的な相談だと匂わせる。
「何だなんだ、内緒ごとか? 」
「まあいいじゃないか北森。苑田さんは俺らより年上なんだ」
幹事の河上が北森を止め、
「じゃ、お疲れ~。明日からよろしくな」
ほら、北森タクシーこっち。と引っぱって行く。
「お疲れさまです。河上さん、ありがとうございました」
頭をさげる中畝に、河上は手を振って北森とともにタクシーに乗り込んだ。

「・・・さて、相談て? 」
タクシーを見送って苑田が聞く。
「・・飲みながらでもいいですか? 」
「ああ。どこか、知ってる店は? 」
「いえ・・。この辺りはあまり」
「俺の知ってる店でもいいか? 」
「はい」





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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-16

すでに酒も入っているから・・、と少し考えて選んだのは、駅近くにあるワインバー。
女性オーナーのそこは落ち着いた雰囲気がある。
「こんばんは」
「こんばんは。あら、苑田さん」
「ご無沙汰してます。・・・向こうの席、いいですか? 」
「ええ、どうぞ」
さり気なく店内を見まわし、ボックス席が空いてるのを確認して頼む。
「中畝、こっちだ」

「それで? 」
辛口の白を頼み、喉を潤してから問いかける。
「・・・・、今日、総務の人たちも来てましたね」
「ああ」
「絹里さん・・・」
言って、黙ってしまう。
そういえば、来ていなかった。

「嫌われたんでしょうか・・・」
項垂れる中畝にどう言えばいいか・・、困った。原因は俺かもしれないからだ。
「嫌われるような事でもしたのか? 」
「・・分かりません。どうすればいいのか、どうしたいのかそれも判らなくなって。僕はただ、絹里さんに笑っていてほしいだけなんです」

その落ち込み様に、中畝の本気を知る。 手を貸して・・やりたくなった。

「中畝」
「はい・・」
「かけてみるか? 」
「は? 」
俺の問いかけに顔をあげた中畝の前にスマホを差し出す。画面には絹里さんの番号。
「・・え? 苑田さん? 」
俺とスマホを見比べるのへ、
「俺と新井と、市島さん。三人でチーム営業していたの、覚えてるな? 」
「あ、はい」
「サポートは総務。担当は・・、絹里さんだった」
ええっ、と息を呑む中畝に、
「落ち込むぐらいなら一歩踏み出せ。 骨は拾ってやる」
ニヤッと笑って通話ボタンをタップする。 呼び出しているスマホを握らせた。

何度目かのコール音のあと、

― もしもし。何かあったんですか? 苑田さん」
心配そうな絹里さんの声が聞こえる。
中畝がスマホをぎゅっと握るのが見え、ポン、と肩を叩くと驚いた顔をしたので、
『トイレ』
口だけ動かした。
― もしもし? 聞こえてますか、苑田さん」
「あっ、あのっ」
慌てる中畝を置いて席を離れる。ここから先は中畝のことだ。

五分ほどして戻ると、微妙な表彰で自分の端末を見つめていた。
「どうした? 」
「・・・驚かれて、でも、おめでとうと言ってもらって。携番交換・・しました」
「上出来じゃないか」
返されたスマホを内ポケットにしまいながらそう言うと、
「そう、ですね。・・・・ただ」
「・・? 」
「新井くんのことを聞かれました。一緒なのかと」
思わず動きが止まる。
「後から割り込んで振り向いてもらうのって、厳しいなぁ・・。 が、今の心境です。でも、諦めつくまでやるしかないですよね」
はは、と、意外に明るく笑って、中畝は立ち上がった。
「苑田さん、ありがとうございました。これからも宜しくお願いします」
では、お先に失礼します。





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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-17

「もういいの? 」
カウンターにグラスを持っていくと、声をかけられた。
「はい、マダム。もう一杯いただけますか? 」
座りながら頼む。
「同じもの? 」
「・・・ロゼを」
それから、と、ポケットから小さな包みを取り出す。
「あら、かわいい」
それは、桜の形をした煎餅の小袋だ。
「私が和菓子好きだって覚えてくれてるのね、苑田さん」
しなやかに手を伸ばして受け取り、ふわりと笑う。
「美味しいお酒があるいい店ですから」
「私は? 」
「マダムが居てこその店でしょう? 」
「お上手」
クスッと笑って彼女はワインの栓を抜く。

飲みながら中畝のことを考える。
前向きなのは、大学で知り合った頃と変わらない。
(あいつなら大丈夫だろう)
グラスが空になったのを潮に、礼を言って店を出た。



翌日から、中畝は今まで以上に動き出した。
何と言っても転勤族の家に育った彼は人との話が上手く、話題も多い。

「中畝さん、もう一人で営業出来そうですよ」
それに、これ以上一緒にいたら俺の仕事が減ります。 と、北森が冗談交じりに一之瀬課長に言ってくるほどだ。

「そうか。じゃあ中畝くんはもう大丈夫だね」
「まだ自信無いですけど」
「大丈夫ですって、中畝さん。俺が太鼓判押しますよ」
ははは、と一之瀬が笑う。
「北森くんもああ言ってる。来月からは担当を決めて言ってもらうよ」
「はい。やってみます」
「どうしてもわからない事が発生したら、私か・・苑田くんに相談するといい」
「苑田さん・・に? 」
「彼は私より物知りだからね」
「そうです! 俺もすぐ相談に・・・っと」
一之瀬に言えない事は、まず苑田に聞きに行く北森が慌てて口を塞ぐ。
ぷっと吹き出した一之瀬と中畝だった。 ~~


◇  ◇  ◇


中畝さんが、なんだか元気だ。
俺が、絹里さんにどう答えようと悩んでいるからだろうか、周りの人の元気が目に付く。
それが中畝さんだと尚更(なおさら)。

(早くちゃんとしないと)

ひろさんの時もそうだったっけ。悩んでいたって迷うことが増えるばかりだ。
決断に弾みをつけたのが、聞こえてきた一之瀬課長たちの会話。

『「どうしてもわからない事が発生したら、私か・・苑田くんに相談するといい」
「苑田さん・・に? 」
「彼は私より物知りだからね」』

どうして聞こえたのか判らないけど、それは聞き捨てならない事だった。範裕・・苑田さんは、後輩だからと中畝さんに手を貸したり声をかけたりしてるけど、俺は嫌なんだ。
(意外に俺って嫉妬深いのかも)
苦笑いが出て考えごとを中止し、仕事に戻った。





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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-18


昼休み、絹里さんの都合を聞こうと社食へ探しに行く。
「あ、居た」
いつもなのだろう、仲の良さそうな人たちと三人ほどでお喋りしながら食べている。遠目に見ていて気付いたのは。
(絹里さんだけ、なんとなく・・)
他の女子よりキラキラしてるような。じっと観察してて、
「そっか、生きいきしてるんだ」
と気付く。
あの顔を曇らせる事になるんだ、と思うと胸に痛みを覚えるが、だからと言って苑田さん以外俺は選べない。

と、視線を感じたのか絹里さんがこっちを見る。一瞬、強張った顔をみせ、すぐ笑顔になる。
なぜだろう、俺は一つ頷いて背中を向けた。 後でメールを入れよう。

仕事を続けながら考えた。
絹里さんは多分、俺と苑田さんのことを聞いても話す事はしない・・と思う。でも、その後は?
同じ会社だし、色んな噂が出るだろう。俺が悪者になれば済むことだけどどうやれば・・。


◇  ◇  ◇


金曜日、絹里さんと待ち合わせた。

「ごめん、会社帰りで」
「いいえ」
「話は、食事の後でいい? 」
「・・はい」

選んだのは、絹里さんが好きだと言っていたイタリアンの店。
「ここ、自家製の野菜を使ってるんだって」
「そうなんですか? 」
「うん」
店のドアを開けるとすぐ、壁一面に水耕栽培のレタスや、よく知らない種類の菜っ葉が目に入る。
「わぁ」
何の話か判っていて硬かった表情が柔らかくなり、ほっとした。
個室は無いけど、頼んでおいたように人目に付かない奥の席へ案内してもらう。
前菜がすぐ運ばれてきた。
「ここのサラダは、あの水耕栽培と、近くの畑で採れたものなんだって」
「だからあんなにたくさん育てているんですね」
ちょっとだけ、にわか仕込みの話をする。

「おいしい・・」
「うん。一回しか来てなかったから心配してたけど、うまい」
「え? 」
絹里さんの聞き返しにあっと思ったけど、
「ごめん。ここは年末に来ただけで今日が二度めなんだ。
俺がいつも通ってるのは焼き鳥屋とかでゆっくり話も出来ないし、色々聞かれるのは絹里さんも困ると・・・」
「新井さん」
食事の手を止めて俺を見ていた彼女に、言葉が出なくなる。ナイフとフォークを置いて
「お願いがあるんですが、いいですか? 」
「・・・なに? 」
「ここに居る間だけでいいんです。・・名前を、呼んでくれませんか? 」

名前?

「真希、って言って欲しいんです。・・駄目ですか? 」
「・・・いいよ。 真希 さん」
たった、それだけなのに真希さん、の表情がとても嬉しそうに笑顔になる。目は、涙がこぼれそうに潤んでるのに。





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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その87

お風呂で洗髪中泡が目に入ってしまい、「洗面器、どこ~」 と手探りで探しました。 実際はすぐ近くにあったのですが。
ふと、 似たような事を見た覚えがあるなー・・・、と思っていたら。  
思い出しました!

座頭市!!


ご存知の方も多いでしょうが、私が思い出したのは 昭和の座頭市さん。 今は亡き勝 新太郎さんが演じてました。
『座頭市』(ざとういち)は、兇状持ちで盲目の侠客である座頭の市が、諸国を旅しながら驚異的な抜刀術で悪人と対峙する、アクション時代劇です。

どんなシーンかと言いますと、
雨の中、『座頭の市さん』が地べたに這いつくばって一生懸命あたりを手探り。なにを探していたか――? 答は、薬の袋。
膝を付いたすぐそばに落ちていたんですけど、悲しいかな目が見えない彼には分からない。  で、必死に探して、探して、ようやく見つける・・・。というものでした。

どんな話で、何故そんな事をしてるのか?  いや、私にも判りません(笑)。覚えてるのはそこだけなんですもの。。



そして、座頭市さん、これがフルネームだとずーーっっと思いこんでたんですね。  実は、違ってたんです!
上の文中に、、『座頭の市さん』 としたように、名前は、市。座頭っていうのは、いわば職業名。
酒屋の○○、八百屋の△▲、みたいなの。 知った時にはビックリ!


この、座頭、官位なのだそうです。
江戸時代には盲目の方の職業のひとつ(男性のみ。女性には別の組織があったそうです)としてあったらしく、例えば琵琶法師みたいに楽器奏者とか、鍼灸(針治療・お灸)・按摩(指圧やマッサージ)に従事する人たちが試験を受け、お金を納めてもらうもの。
大雑把に分類すると上から・・偉い方から順に、惣(そう)検校・・検校・別当・勾当(こうとう)・座頭(ざとう)などの官位があった。そうですよ。(ものすごく端折った説明です。汗あせ)


ほわー、そうだったのか。  市さんも試験受けたのね♪  ・・って、あの時代も昇級試験があったんだ。 やれやれ。





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お知らせ

お知らせ

 今日、23時過ぎて、拍手が4998になってましたーー!

5000 のキリ番踏まれた方、お知らせくださいネ。

お知らせ

お知らせ。 いつの間に~・・!?


今日はお休みの日ですが。。
 昨日出したお知らせのあと・・、今朝見たら突破していました。 5012拍手になっていて!!

・・・とっても嬉しいです。ありがとうございます!

キリ番5000踏んだ方、おめでとうございまーす♡ よかったらお知らせくださいネ。

前回4000番踏んだ方。
お知らせくださったおかげでやることができました。感謝♡ 

『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-19

「ありがとう、新井さん」
「じゃあ俺も。崇、でいいから」
真希さんの目が見開かれる。
「どうかした? 」
「いいえ」
急いで首を横に振って、口を動かす。声を出さずに俺の名前を繰り返し、やっと、
「たかし、さん」
「はい」
名前を呼ばれ、返事した俺を眩しそうに見た。 胸が、ぎゅっと痛んだ。。

黙ってしまった俺達の横にウエイターが来て、空になった皿を持って行く。

メインディッシュ、パスタが終わり、デザートが運ばれてくる。
俺は、息を吸い込んだ。


「真希さん。 食べながらでいいから聞いて。

俺は、卑怯な事をしたと思ってる。
真希さんが勇気を出して 「好き」 って言ってくれたのに、ちゃんと答えられなかった。社内報とかで会社中に知られてから断るなんて、本当に悪かったと思う。
でも。 俺にはもう、好きな人がいるんだ。

前にも話したけどその人とはいろんな事情があって結婚できない。だけど俺は、その人を守って、一生手をつないで生きていきたい。

ごめんね、真希さん」

一度言葉を切った。深呼吸して、気持ちを奮い立たせる。

「それと。‘会わせて欲しい’って言ってたね。’会って、話がしたい‘と。
真希さんは、もう会ってるよ。
俺が付き合ってるのは・・、社内の人で、真希さんも知ってる。その人は、男で。

苑田 範裕さん、だ」

デザートに視線を落とし、話を聞いていた真希さん。手を止め、意味を理解しようとしているのか何も言わず。俺も黙って次にやってくるだろう言葉に、緊張して待つ。
だけど聞こえてきたのは・・・、予想外。

「崇さん。もし・・・、もし、私が苑田さんより先に崇さんを好きになっていたら、付き合ってくれましたか? 」

「真希、さん? 」
俯いたままの真希さんの質問は、言葉が耳を素通りした。
今、何て言ったんだ?

「私が先に、‘好きです’ と言っていたら崇さんは」
「真希さん」
「っ、ごめ・・なさ・・・」
そうじゃないよ。
「違うんだ。怒ったりとかしてる訳じゃない」
涙声になってたから、テーブルの上に置かれてる手に、手を重ねる。

「答になって無いかもしれないけど。 それは、判らない。
ただ、真希さんは、俺が今まで出会った女の人の中で一番だ。
本当だよ。 誰より話しやすくて、俺に色んな事を気付かせてくれる。・・・・うん、苑田さんより先に会っていたら、好きになったかもしれない」
最後の言葉に、真希さんの手が、ぴく、と反応した。





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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-20

「・・・苑田さんと会ったのは、廣済堂の名前を間違えた時だ、って聞きました」
「え? 」
誰か、ら??
「それから色々あったんだそうですね」
「きぬ・・・真希さん? 」
誰に聞いたの? と言いたかったけど、真希さんは顔を上げて、まだ涙が残ってる目でにっこり笑って、
「誰に教えてもらったかは教えません」
ぴしゃりと撥ねつける。そして、俺の手の上に手を重ねた。
「私、崇さんのこと、好きです。
ずっと横で声を聞いていたい、同じものを見て笑ったりしたい。そう思ってます。今でも。・・・・それはもう無理だって、分かってるんですけど。
私の事も真剣に考えてくれて・・、嬉しかった。
だから、今度だけ、諦めます。

幸せになってくださいね、崇さん。・・・・私が、後悔しないように」

真希さん―――――― 。



店を出て、駅まで一緒に歩く。帰りは別の方向だから、真希さんを見送ることにした。
「あら・・、崇さん。今日は、ありがとうございました」
俺をまっすぐ見て言った真希さんの声はしっかりしていて、俺も負けないように返す。
「こちらこそ。ありがとう、真希さん」


電車に乗り、・・降りる。
飲みたい気分。 子湖塚さんのバーへ向かった。

「こんばんは」
「いらっしゃいませ。新井さん」
久しぶりですね。いつもの笑顔と柔らかな声に迎えられ、何だかほっとして肩の力が抜ける。
「あの」
「はい」
「一人で飲みたいんですけど」
「おや、お珍しい」
軽く目を瞠った子湖塚さん。けど、面白そうに笑って、
「それならボックス席へどうぞ」
以前ひろさんと話をしたあのボックス席へ手を伸ばす。
「すぐに(お酒)持って行きます」

「・・・マスター、子湖塚さん、って呼んでもいいですか? 」
ボトルキープした酒を持って来てくれたマスターに聞いてみた。
これは、中島主任が部長になった頃に作った、というか、入れたものだ。カクテルだと毎回レクチャーしてもらうので、お酒を飲みたいと思った時はこれにしてもらってる。
「そうですねぇ・・。もう二十分ほどしたらまた来ます。その時なら」
「じゃあ、待ってます」
特に話したいのではないけど、‘子湖塚さん’に聞いて欲しい。





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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-21

「お待たせしました」
そう言って俺の前に来たマスタ・・・、子湖塚さんはバーテンダーの姿ではなく。
思わず目を瞬かせて二度見する。
「どうかしましたか? 」
笑いを含んだ声で聞くのは、黒のジャケットにコーデュロイのスラックスを合わせ、薄いピンクのスタンドカラ―シャツにグレーのセーターを着た子湖塚さん。
「あの・・、服」
「ああ。今日はもう終わりにしたんです。これは私服」
服が変わるだけでこんなに雰囲気が変わるんだ、子湖塚さんて。初めて見る姿に、ついまじまじ見つめてしまう。
「それで、私に何か? 」
「あ・・。あの、話、聞いてもらえますか? 」
「聞くだけで、いいんですか? 」
問いかけに考えて、頷いた。
じゃあ、と子湖塚さんは一度立って自分用のお酒を作ってくると、黙って俺の前に座る。
そのまま、俺が話し出すのを待つ体勢になった。

「・・俺、今日断って来たんです」
一口飲んでグラスを置いたあと口を開く。

「 『好きです』 って告白してくれた人のこと。
どうして俺のことを好きになってくれたのか、は聞けなかったからそれは謎のままですけど。
彼女と話してると楽しくて、格好つけずにすんでました。 後から聞いたんですけど、社内で一番お嫁さんにしたい女性だったそうです。
それ聞いた時、‘やった’みたいに思ってしまって。・・・浮かれてたのかもしれない。
でも、俺の方から好きになって、追いかけて、やっと振り向いてもらえた人のことを悲しませた。
ちゃんと捕まえておかないとすぐ居なくなってしまう人なのに、高を括ってたんです」

言葉を切って思い出したのは絹里さんと二人でひろさんの部屋に行った時のこと。
『おまえが買って来てくれたから』 と、
キムチとコーラを、本当においしそうに食べたり飲んだりしていた、範裕さん。

「あの人と生きていくのは大変なんだろう・・、と思います。親も・・・、賛成はしてくれないだろうって。
けど、頑張ろうって決めたから・。
あ・れ?

な、何か取りとめなくなっちゃった。 済みません」





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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-22


「いいえ、謝らなくてもいいですよ、新井さん。
私は商売柄色んな事を聞いてきてます。仕事、恋の悩み、人生の愚痴まで」
穏やかに笑ってゆっくりグラスを空ける。俺も琥珀の液体を喉に流し込んだ。

「決心するまで悩んだんでしょう? そして選んだのなら後ろは見ない事です。
お断りした方のためにも、苑田さんと幸せにならないと」
「はい。ありがとうございま・す・・? え? 」
あまりにもさり気ない笑顔で範裕さんの名前を出され、頷いてから、気付く。
「ね、、子湖塚さんっ?! 」
ガタッとテーブルの音をさせながら立ち上がれば、
「おや、気付かれないと思ってたんですか? それくらい見てれば判りますよ。まあ、落ち着いて」
不思議そうに俺を見上げ、また笑う。
「あ・あの・・、はい・・」
座りなおしたけど、そわそわして落ち着けない。
とうとう子湖塚さん、くすくす笑いだした。
「苑田さんもポーカ―フェイスをしているようですが、私から見れば。新井さんはもっと・・、素直な方なので」
誰にも言いませんよ。安心してください。 ふふっ、と笑ってそう言われ、密かに汗が出た。

通りでタクシーを拾う子湖塚さんと一緒に店を出る。並んで階段を下り、外へ出たら風がびゅっと吹きつけ思わず首を縮めた。もう春のはずなのに今夜の風は冷たい。
「サラリーマンの皆さんは大変ですね」
俺と違い、暖かそうなフード付きのブルゾンコートを着ている子湖塚さんが手袋を嵌める。
(あ、俺も手袋は持ってた)
思い出して取り出すと、ふぅん、と言う顔をされる。
「ど・どうかしましたか? 」
「いえ。それ、お揃いにしてるんだな、と」
もう、固まる事も出来ず、
「どうして、わかるんですか? 」
念のため聞く。
「苑田さんが来た時、色違いでしたが同じ手袋を大事そうにポケットに入れてました。
『良い手袋ですね』 と声をかけたら、
『うん、揃えたんだ』 そう教えてくれました。一緒に買われたんでしょう? 」
「はい・・」

子湖塚さん、俺たちのことどこまで見てるんだろう?


部屋へ帰りつくと、疲れがどっと押し寄せてきた。スーツを脱ぐのがやっとでベッドに沈没する。
「つっかれたーー」
ネクタイを解くのも一苦労だ。

絹里さんのことは、きっと何とかなるだろう。
子湖塚さんは・・、
「・・・あの人の考そうな事って、わかんないよ・・・」
酔った頭ではぐるぐる回るだけだ。
「寝よう・・」


翌朝は頭痛の目覚めになった。出来るだけ音を立てないように動く。休みでよかったと思い、
「頭痛が治ったら、ひろさんの所へ行こうかな・・・」
レトルトの雑炊を食べながら、キーホルダーの合鍵を眺めて呟いた。

やっと痛みが治まってきたのは夕方。洗濯機を動かして部屋を出た。
ひろさんが居てもいなくても、部屋に行きたい。





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雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その88

3月は年度末。学校はもう春休みで、車を運転する身としては普段以上に注意しないといけない時期です。
この時期、確定申告などもあって気忙しさもひとしおですね。

でも、何で3月で区切るんでしょ?  1年は1月から始まるのに。
昔、江戸時代は寺子屋とか武士階級の通う学校に、私塾とかもあったけど、随時入学だったような。
じゃあ、寺子屋が学校になったのは・・・・あ、明治時代?

あの時代は西洋に追いつけ! な時代だったからなあ。 いえいえ、私は生きてません。 あの時代から今まで生きていたらとっくにギネスブックに載ってます~。アハハ。


なになに、明治19年に、高等師範学校(明治に設立された教員養成機関)が学校の年度を行政に合わせて4月1日から翌年3月31日にすることを決定し、それが各地域に広まった・・、のか。
あれ?ほかに、陸軍が入隊の届出開始日を9月から4月に早めたから。つまり、学校と陸軍との人財獲得競争が理由の一つでもある。。ふーん、いわゆる青田買い的なものがあったのね。

うん?? 政府の会計年度が4月-3月になる。→会計年度に合うよう、小学校で4月入学が奨励されるようになる。って、記述もある。 お役所の都合~?

あー、でも、昔はお米を換金していたから、1月からだと難しかったのもあるんだ。
日本特有の事情もあった訳。


色々絡まって、結果が4月始まりなのね。
現代では外国に合わせた入学制度を取り入れてる学校も出てきてるけど、9月、落ち葉の頃に入学・・、より、桜の花が咲く頃の卒業・入学が、気持ち的には盛りあがる気がするわ♪


太陽暦、旧暦(太陰歴)、年度。  これだけでも結構大変だけど、2学期制が本格的になったら学生のいるご家族、カレンダーがいくついるのかしら・・・・?

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*カラコンと名前-10

会社見学の4人組♪ さあ、お出かけです。



「えーーっと、この角を曲って・・、あ、あれだ」
「へえ、こんなビルなんだ」
「・・全部自分の会社じゃないんだな」
結局全員で出掛けてきたのは平日の午後。スーツ姿が行き交うなか、俺たちみたいなカジュアルな服は目立って、居心地が悪い。
「せめてジャケット着てくれば良かったな・・」
「今更だろ?俺だってデニムだし」
歩くスピードまで違う人の流れに何だか気圧されてしまう。
「あ、あそこ、入ろう」
「おお」
ビジネス街にあるコーヒーショップに逃げ込み、やっと一息ついた。

「卒業したらあんなになるんだな、俺たち・・」
「なれるかなぁ。」
「ばーか、あの人たちだって昔は学生だったんだよ」
「・・・でした」
コーヒーを飲みながら言い合う。

「どうする? もう少し回る? 」
「・・大手とか、金融関係は自社ビル多いけど、けっこう何社も入ってる所があったよな」
「うん。保険会社とかも」
「それ以外はフロアで使ってる会社、あったね」
「・・・・」
「智? 」

窓の外、目の前を通り過ぎていく、スーツ姿の・・・。
和叔父さんっ?!




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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-23

「あ、灯りついてる」
それなら連絡しようと携帯を鳴らす。

― どうした? 崇」
― 今近くまで来てるんだ。行ってもいい? 」
― ああ」

「お帰り」
そう言って出迎えてくれたひろさんに抱きつく。
「崇? 」
「ちょっとだけ」

ひろさんの体温と心臓の音。それが俺にゆっくり沁みこんで来る。
(ああ、やっぱり好きだ・・・)
また思う。ひろさんが俺の腕の中にいてくれる。それが・・幸せだ。

ぽんぽん、と頭を軽く叩かれ、
「もういいか? 」
と聞かれる。
「うん」
腕を解き、頬にちゅっと音を立てる軽いキスをして、離れる。
「崇ッ」
「へへっ。あがるね」
玄関で、靴も脱がずハグしてたから、寒い。部屋へはいり、炬燵に潜ろう、と。
テーブルの下に炬燵布団が無い。
「ひろさん、炬燵はー? 」
「片付けた。替わりにホットカーペットに電源入れてある」
「えー、まだ寒いのに」
確かにホットカーペットは暖かくて、足元は冷えないんだけど、さ。

そのまま寝られるスエットに着替えて、本を広げていたひろさんの横に座ると妙な物体が目に止まる。
「これ、何? ひろさん」
「ああ。着てみるか? 」
「着るものなの? 」
悪戯っぽく笑って頷く。
じゃあ、と言われるまま手足を通して。
「・・っく、は、ははは・・っ」
ひろさんが弾けるように笑いだす。
「なっ、ひろさん? そんな笑わなくたって」
「ごめ・・、わ・るい、崇。動かないでくれ・・」
とうとう背中を向けて、俺を見ないで笑い続ける。 ・・・傷つくぞ。
「もう。俺が自分のカッコ見られないから、って」
確かクローゼットに全身が映る鏡があった、とそこまで行って鏡の前に立つ。
奇妙な顔が、俺を見返した。

茶色の、毛布のようなものから、手足と首から上を出した俺。余裕があり過ぎるから手足を大きく広げるとまるで・・、モモンガみたい、そう思ってふと体を捻り背後を見ると、本当に尻尾みたいなのが付いてる。もう一度鏡を見れば、ポンポンのような飾りのついたホックが首から下、縦に七つほど並んでて。
ぷっと吹き出してしまった。

(これじゃ、ひろさんが笑っても仕方ないか)

でも、どこでこんなの。まさか、買った??

もこもこ・着る毛布




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『プリズム』

『プリズム』24*それぞれ、一歩ずつ-24

「た・かし。悪かった。コーヒー、淹れたから」
まだ笑いを含んだ声でひろさんが呼ぶ。どうせだし、わざと腕を伸ばして行くと、
「・・っそれ、止めろ崇」
口を押さえてまた笑いだす。

何だかとてもほっとする。 
おかしそうに笑った顔が嬉しくて、ととと・・、と近付き、ぎゅっと抱きしめた。
「ひろさん」
「・・どした? 」
「好きだ」
「・・・うん」
爪先だって少し背の高いひろさんの肩に顎を乗せ、耳元で言う。そんな俺を抱き返して、
「俺も、好きだ」
同じ言葉を返してくれる。  と思ったら、
「おまえの体温と、この、‘着る毛布’のお陰であったかいよ」
何て言われてしまう。がくりと踵が床に着く俺に、
「でも、俺を温めてくれるのはおまえだけだ」
額にキスを落とした。


「ねえひろさん、これ、買ったの? 」
「いや、貰いものだ」
二人でホットカーペットに寝転がりコーヒーを飲みながら、結局脱がずにいる俺を毛布代わりに体を半分潜らせているひろさんが教えてくれる。
「波枝部長の娘さんがビンゴゲームで引き当てたそうだ。ただ、サイズが大きくて誰も着られない。会社へ持って行って希望者を募ろうとしていたところへ偶然俺が行き合わせたらしい」
「それで、貰ってきたの? 」
「そう」

何の用事で浦島商事へ行ったのかは知らないけど、波枝部長とはプライベートで付き合いがあるようだ。
そんな事を大事にしてるから、色んな情報が入ってくるのかもしれない。俺も、真似してみよう。
ひろさんに、追いつけるように。

残念なことに、この夜は俺が先に着たまま寝てしまい、せっかくひろさんの方から
「今日はおまえと一緒に寝る」
と手を伸ばして抱き込んでくれたのに、肌を合わせる事をしなかった。
あーあ。


「ひろさん、このパン、変わった味だね」
「それ、天然酵母のパンだ」
「『天然酵母』? 」
「干しブドウや果物、玄米などから作る酵母を使ったパンのことさ。オーガニックの店を見つけたんだ」
普通のパンより味があるだろう? と続けるひろさんにもぐもぐしながら頷く。よく噛まないと飲み込めない。
歯応えのあるパン。とっても‘食べてる’気分だ

いつものように並んで会社へ向かう途中、急に思い出した。
「ひ・・、苑田さん、俺、ちょっと先に行く」「新井? 」
「思い出した用事があって。ごめん」
不思議がる苑田さんと離れて急ぎ足になる。
(さすがに今日は並んで歩かない方がいいよな)
絹里さんと別れ話をしたの、一昨日だったんだ。





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