FC2ブログ

『プリズム』

『プリズム』26*G・Wの再会ー43

「香川さん」
俺には全く分からなかったけど、意図を悟った苑田さんが香川さんを呼んだ。
「止めるのか? 苑田」
「いいえ。俺に、やらせてください」
俺の腕を軽く叩いて二人の方へ行き、手を差し出す。

え?
ひろさん・・?

ひと言に目を瞠って苑田さんを見た香川さん、苦笑して、
「忘れてたよ、おまえがそういう男だってことを。俺はどうすればいい? 」
当たり前のようにスタンガンを手渡した。
「押さえていてください。動けないように」
「了解。上か、下か? 」
「下は俺がします」
「蹴飛ばされるなよ」
「そんなドジ」
俺が踏むとでも? と口角をあげるひろさんが、なんだか怖い。
周防の方は、
「はは・・、やっと来たか。客、を大事にしな・・・、うあっ」
勘違いしてたけど、ひろさんが片方の脚を跨いで腰を下ろしたのに苦痛の声を出す。
「誰があんたを客にすると? 寝言は寝て言うんだな」
冷たい声で言い、無造作に奴の縮こまったブツを摘まんだ。

「っ、あ・・、ん、くォっ、・・はっ」
どんな動かし方をしたのか、見る見る育った分身が首をもたげ、香川に両肩を押さえつけられている周防の顔が満足げになる。
「最初からそうやって・・、止めるな、続けろ」
「理解ってないな。コイツは宮崎さんが必要だと言っていたから邪魔にならないよう立たせただけだ」
薄く笑い、ひろさんはスタンガンのスイッチを入れた。
「何を・・する、気、だ」
やに下がった顔が青ざめる。
「俺と崇に、二度と手を出さないと誓え」
「なんだと」
「俺と崇、俺たちに関わる全てに手を出すな」
「はっ。そんな脅しにYESと答える馬鹿などおらん」
「そうか、では話し合いは決裂だ」
感情のこもらない声で打ち切り、苑田は予備動作も無くスタンガンを押し当てた。

「がぐぎゃあああ! 」

思わず手で耳を保護するほどの絶叫が響いた。


俺には見えなかったけど、範裕さんは、周防の内股、性器すれすれの位置にスタンガンを押し当てたそうだ。




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




スポンサーサイト



『プリズム』

『プリズム』26*G・Wの再会ー44

あとで、聞いた。

「ひろさん・・。あれ、って、大丈夫だったの? 」
「何が? 」
「いや、色々と・・・」
「毛が少し焦げたのと、火傷の痕ができたくらいさ。それだって時期元に戻る」
平然と言い切ったひろさん。
「子種が全滅したわけじゃなし、おまえが心配すること無い」
ニッコリ笑って、その話はお終いになった。
そうなんだけど。。
ひろさんは、本当に怒るととんでもないことになる。 と、改めて肝に銘じた俺だった。


「もう一度だけ言う。俺と崇、俺たちに関わる全てに手を出すな」
白目をむく周防に言い捨て、ひろさんは立ちあがる。
「田代さん。三宅さん。どっちでもいいですが、これ、用済みだから持って行ってください」
男性に、手に持つ方を向けて渡そうとする。だけど男性は後ずさった。
「持って行ってくれないと困るんです。それに、あなた方の持ち物でしょう? 」
穏やかに言うけど、男性、額に汗を浮かべ両手を激しく振って受け取るのを拒む。

「苑田、ひとまず俺が預かろう」
周防が気絶したのを確かめた香川さんがあいだに入った。
「ああ、済みません。では、お願いします」
受け取った香川さん、男性の前へ歩いて行って、
「そら。ケースがあるはずだ。ちゃんと入れて持っていけ。ああそれと」
顔を近付け何か囁いてる。
「は・・はいっ! 必ず、そのようにいたします! おい、行くぞ」
男性は何度も頷き、女性を呼んでスタンガンをケースにしまい、逃げるように部屋を出て行った。

「でっ、では、失礼しますッッ」
「おう。途中で落としたりするなよ」
にこやかな香川さん、さっきのひろさんみたいで笑顔に凄味がある。きっといま内緒の取引があったんだろうな。
知らない方がいいよなきっと。

「残ってるのは身内みたいなもんだし、宮崎さんを呼んでくる」


「苑田くん、申し訳なかった」
香川さんと戻ってくるなり宮崎さん、範裕さんに頭を下げる。
「いいえ、おれもた、新井も無事ですから。・・頭を上げてください」
「だがそれは結果論だ。私も、香川さんも間に合わなかったら、君・・君たちは」




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




『プリズム』

『プリズム』26*G・Wの再会ー45

「信じていました」
範・・、苑田さんの言葉に弾かれるように頭をあげる宮崎さん。
「俺が先走っても、宮崎さんは必ず来てくれると思っていました。まあ・・、体を繋げた状態になる前に来て欲しいと、それはありましたが。
香川さんは、思っていなかったので嬉しかった」
「おいおい。
これでも激走して来たんだがな」
肩を竦め、わざとらしくハンカチを取り出し額の汗を拭く真似をする。
くす、と笑うひろさん。その顔はいつもの顔で、俺はいつの間にか力の入っていた肩を脱力させた。


まだ気絶している周防を車椅子に乗せ、香川さん、範裕さんに、
「俺たちは引き上げる。おまえはぼうやと残れ」
「え・・、ですが」
「治まってないだろ」
目で示され、ひろさん、初めて自分の格好に気付く。かあぁ、とすぐにまっ赤になった。それにウインクして手を伸ばし、耳たぶを小さく引っ張る。
「素のおまえは可愛いんだが」
「か川さんっ! 」

あーっ! と声は出さなかったけど口が大きく開いた。
何だよそれ!

「坊やもまだ元気だから今夜一晩ゆっくりすることだ」
俺?
ハッと気付いた。ひろさんだけじゃない。まだチャックが全開だ。 慌てて背中を向け、引き上げかけ、うっと息を詰まらせる。
(だめだ、刺激が)
これ以上金具を引き上げられない。鼻を摘ままれ飲まされたアンプルのせいなら、倍飲んだひろさんの方がもっと疼いてるんじゃないだろうか。

(・・香川さんは、知ってるんだ・・・)

俺とひろさんの体が、今どうなってるのか知って、それでここに残れと言っている。
敵わないのは分かってるけど、見せつけられたようで。

へこんだ俺の背中の向こうで、

「苑田くん」
「はい、宮崎さん」
呼ばれて、急いで真面目な顔になり、宮崎へ体ごと向く苑田。
「息子が・・、克彦が済まない事をした。
これは、君に見当違いの嫉妬をしている。何度も言って聞かせたがとうとう・・・。
私がしなければいけない事まで香川さんと君にさせてしまった」
哀しげな目で息子を見、苑田を見る。
「結果論ですが、誰も何もありませんでした。お気になさらないでください」
「だが、私の気が済まない。せめて謝罪の代わりにこれを・・・、受け取ってはくれないだろうか? 」
差し出したのは厚みのある封筒。






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ





お知らせ

雑談のビックリ箱その106 ・・・でもあり、&お知らせ。

怒らないでネ。
驚かないで聞いて。

いえ、それ、怒りますし驚きます。
言いだす方は本気でそう思ってるかもしれませんが、聞かされる方は大概真逆の反応しますよ。

「ふーん、それで? 」
「なんだ、そんな事か」
って返される方がいいのでしょうか?

私はこういう聞き方、あまりしないので迷うのですが。


じつは、お知らせ、と書いたようにお知らせする事ができたんです。
入院・手術、の予定・・です。
今月、左股関節・人工関節置換、をする事になりました。。 約1ヶ月半ほど病院です。

左足を庇うようにしていたのでこれはまあ仕方ないかと思うのですが、 付随して、大問題。
パソコンが使えないのと、ネットが出来ない!

もちろんスマホは持って行きますけど、ネットを使えない環境になる可能性大・・・。
なので、申し訳ありませんが、退院するまで、お休みします。

あ、9月14日が入院日なので来週はありますからね。

『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*カラコンと名前-27


お袋・・、母さんに言われて駈けつけたのは総合病院。

「智・・」
「未、遊・・っ、優奈ちゃん、はっ? 」
「・・こっち来て」

時間外だったから病院の出入り口は救急車も入る時間外外来。その出入り口に未遊が待っていた。


「とにかく、落ち着いて」
缶コーヒーを差し出され、一気飲みする。
「・・それで、どうなったんだ?! 優奈ちゃん」
手の甲で口を拭う。
「うん。。
優奈、目の病気になっちゃったらしいの」
「目の、病気? 」
「そう。
能見くん、優奈の目がきれいだ、って言ったんだって? 優奈、その事ずっと気にしてたんだ」
病室へ案内しながら未遊が言う。
「気にしてた、って? 」
「・・・、あのね。
優奈、カラコン、してたんだって」

迷いながらそう口にした。
カラコン? 聞き慣れない単語に足が止まる。

「何それ? カラコンって」
「知らないの? カラーコンタクト。今は普通の子でもよくやってるわ。
で、優奈もしてたの、友達に教えられて」
「コンタクトって、目に入れる、あれ? 」
「今はファッションでするのよ。近視とかじゃなくても。 目が大きく、綺麗に見えるって」

「それ・・」
あのデートの時?


↓ランキングに参加しています。ポチッとしていただけると励みになります♪
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ


『プリズム』

『プリズム』26*G・Wの再会ー46

「宮崎さん・・・・」
「現金では無いよ。開けて、見てくれ」
躊躇いながら受け取った苑田が中身を引き出し見たのは、小切手帳。金額欄だけ白紙のそれは、いくらでも金額を書き込める。

「受け取れません」
「苑田くん」
「無理です。それに、頂いても使い道がありません」
目を見張る宮崎。
「仮に受け取ったとしても使うたび思い出してしまう。それはご免です」
「苑田くん・・・」
「本当に謝罪のお気持ちがあるなら、これ以上俺たちと家族に関わらないでください。それで十分ですから」
宮崎の顔色が変わる。
「本気、なんだね」
「はい」
「・・・・・そうか。
私が、この絵屋を出たら、縁が無くなる。仕事上の付き合いしかしない。そう言う事か」
「ええ、それで結構です」

ひろさん・・。本当に、いいの?
思わず背後を見た。


深く息を吸って吐き、宮崎は手を指しだす。
「約束しよう。ここを出たらビジネス以外話をしない」
苑田もしっかり握って握手し、思いを込めて力を入れたあと、静かに手を広げた。


香川さんがドアを開け、宮崎さんが車椅子を押す。
「宮崎さん」
背中を向けたまま立ち止まる宮崎へ、苑田は、
「今まで、ありがとうございました」
深々と腰を折り、頭を下げた。



ドアが閉まり、ひろさんがこっちを向く。
「終わったよ、崇」
澄んだ夜明けのような笑みに、堪らず抱きしめた。
「ひろさん。ひろ・さん・・・」
「うん、もう何も無い」
俺の背中に手を回し、ポンポン叩いて宥めてくれる。でも、
「傷、しばらく残るな」
そうっと頬を指でなぞられ、ブツっと理性が切れた。
「ふ、んっ。・・・ん、ぅんんっ」
腰と後頭部を押さえ言葉を発して開いた唇にむしゃぶりつく。
あいつの痕跡なんか残さないと舐め、またキスして、何度も繰り返す。




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




ssもの

中秋の名月を見に

今日からSSが入ります。
新井くんたちは、ベッドインの前で一旦停止(ゴメン)。 まあ、最中よりはいいでしょう。

出てくるのは香川さんと高松さんと、苑田。 季節に合わせてお月見です。





ホテルのラウンジでコーヒーを飲んでいると、着信音がした。

「はい」
― 悪かったな。待たせたか? 」
「いいえ。ここのコーヒーは美味しいですから」
くすくす、お互いに笑い合う。
― 無理なら断っていいんだぞ」
「そんなことはありません。ですがこのお天気では・・」
外は傘をさす人ばかりだ。
九月に入ってから連絡があり、明日は休みを取った。誘われた行事は野外で、雨が降っては中止せざるを得ないはずだから、と思っていたのだが。
― 中止は無い。それと、悪いが移動してくれ。場所が変わった」
「変わった? どこです? 」
― 今から迎えに行く。高松の車、覚えてるか? 」
「高松さん・・。ああ、青い車でしたね」
― そうだ。玄関に着けるから」
「わかりました」


「よお」
「・・お久し振りです高松さん」
「早く乗れ。目立つ」
エントランスの中からでも分かる真っ青な車。近付けば助手席の窓が開き、高松が笑顔で出迎える。運転席には香川。
応えてすっと車に乗り込んだ。

「まさかほんとにあんたを誘うとはね」
俺は会えて嬉しいが、と続ける高松。
「しょうがないだろ。そこらの女じゃ連れていけん」
不機嫌そうな声の香川。
「あの」
「ああ、済まん。喉が渇いてるならそこらに何かあるはずだ」
苑田の呼びかけに、香川は優しい声を出し、バックミラー越しに目を合わせた。
「まったくなー。この差だよ。
俺達には容赦ねぇんだからこの男は」
「なんだ、優しくして欲しいのか? 」
「ブルルッ、そりゃ’猫なで声‘ってんだ。 やめろ、背筋が寒くなる」
わざわざ体を震わせる真似までして高松は言い返した。
「場所が変わったと言いましたね。どこなんですか? 」
苑田の問いかけに、間が開く。

「国内だ」
「国内? 」
答えた香川の含みのある言い方に引っかかる。
「あー・・、済まねぇ、俺のせいなんだ」
「高松さん? 」
「俺がつい口を滑らせちまって」
「雨が降ったら中止のはずだ、なんて安請け合いするからだぞ。次は無いからよく覚えとけ」
「分ぁかってるって」
「今夜の’月見‘、中止にならなかったんですか? 」
会話からそう察した苑田に、眉を下げた高松が振り返る。
「そうなんだ。俺もまさか飛んでまで見に行くなんて思わなかったから・・」
「金持ちの酔狂を見くびるな」
香川が言ってハンドルを切った。


訳も分からず、車から降ろされた先にあったのはセスナ機。
「どこへ行くんですか?! 」
「晴れて、月が見える場所だとさ」
香川が、もう諦めた口調で教えてくれるが。
「月・・。まさか、’お月見‘のために、晴れている場所まで移動って」
「心配するな、アシ代は向こう持ちだ」
「そういうことを言ってるんじゃありませんっ」
「頼むよ苑田さん。俺もまさかここまでやるたぁ思わなかったからよ・・」
「馬鹿馬鹿しいにも程がある。遠すぎると言って、断って帰れ」
「香川~! 」
「・・・無理でしょう、今さら。行きますよ。
ですが、場所ぐらい教えてください」
「・・北海道の山荘、だ」
「ほっか・・」
驚きで言葉が続かない。
「あのう、もうよろしいでしょうか? 」
おどおど言ってきたのはどうやらパイロットらしく、帽子を被っている。
「そ、そろそろ行かないと、天気が・・」
「分かったわかった。
香川、苑田さん、頼む」
「・・わかりました」
ため息をついた苑田が一歩踏み出し、高松がホッとして、香川は無言で最後に乗り込んだ。

◇  ◇  ◇


「香川さんが着ると、映えますね」
「おまえもなかなかだ」
「そう言ってもらえると少し安心します」
あてがわれた部屋で着替えた二人。
香川は、裾に薄と白萩を描き、羽織で隠れてしまうが右の肩甲骨あたりに月が浮かぶ着物。
苑田は細く銀糸を織り込んだ蒼のグラデーションカラ―スーツに、品のいい茜色のネクタイ、ポケットチーフ、深い赤のカフス。
並べば、夕暮れから夜にかけての風景が浮かぶ組み合わせだ。

「支度、できたか? 」
ノックがして、高松が顔をのぞかせ、ヒュッと口笛を吹いた。
「絵になるなァ、お二人さん。もう始まってるからそっと潜りこんでくれ。美味いもんもあるし、腹が膨れたら適当に帰りゃいい」
「そんなに簡単でいいんですか? 」
「顔を出した、のが分かればいいのさ。じゃあな」




ssもの

中秋の名月を見に -2

会場は、庭園のような庭へ出ることも出来るガラス張りのサンルーム。
「確かに、お金持ちの家ですね」
苑田も呆れるくらい広いサンルームは、コンサートホールのようだ。実際、琴などの和楽器が秋の調べを奏で、名月を眺める気分を盛り上げてくれる。

口々に月を愛でる言葉が聞こえる会場の一隅で、
「俺は、雨なら雨で、雲の上の銀月を思いながら酒を飲むのも好きなんだが」
「それもいいですね」
グラスワインを手渡され、香川のそんな姿を想像しゆったり微笑む苑田。
「月下美人もかくや、だな」
彼の後ろに置かれた花を咲かせる鉢植えを見、グラスを掲げながら例える香川に、
「そんなにきれいじゃありませんよ」
澄まして返す。

「気に入ったぞ。儂の手付きになれ」
いきなり、嗄れ声が割って入り、苑田の腕を掴み引く。
「!? 」
危うくワインを零しそうになりながらも、体勢を整える苑田に、見知らぬ老人が顎を取る。
「女には無いきれいさじゃの」
不躾な視線を浴び、氷の視線を返した。

「手を、放してください」

気圧されたのか、顎を捕えた手の力が緩み、すぐ戻った。
「ほう、儂に命じるか。なお良い。したが、誰に向かって言ったか理解るかの? 」
「ええ。赤の他人の顔にいきなり手を出す老人に、です」

「ぶはっはははは・・! 」
唾を飛ばすようにしながら大声で笑いだす老人は、紋付袴の正装だ。
「お方さま、どうされました? 」
目立たない服を着た男が一人、すい、と老人に近付いた。
「ノリ、揉めたか? 」
香川も呼ぶ。
「別に何も」
「・・・っほうほう、そう来るか」
笑い疲れた老人が、少し前かがみになって両膝に手を置き、深呼吸する。背筋を伸ばし、
「おい、こ奴はおまえのか? 」
香川に向かって、扇子で苑田を指した。
「いいや、俺のじゃない。対等の付き合いだ」
「儂に寄こせ」
「聞こえなかったのか? 爺さん。こいつは、俺の大事な人間の一人なんだ」
物じゃない、と暗に訂正を迫ったが意に介するもなく、
「儂の手の内に収まれば誰からも攻め込まれず浮世の苦労と無縁。
来い」
「人の幸せはそれぞれ。私は充実しています」
「仕事か? 」
「それもあります」
「儂を拒否すれば今日にも仕事は無くなる」
「ならば自分で作ります」
「どこに? 」
「海外。でなければ宇宙に」
老人は目を見開いた。 口まで開けて、ポカンとした表情になる。

くっと吹き出したのは、香川。
「爺さん、止めとくんだな。こいつは水面の月と一緒だ。自分が望まない方へは一瞬でも靡かない。
手を突っ込んでも掬えないのさ」
外の空気を吸おう。の誘いに、
「行きましょう」
老人など眼中にないと見事な振り切りをして、外へ向かう。


「あの二人、」
「は。ただちに(調べあげます)」
残され、立ちつくす老人の命に踵を返す男は、
「儂を待たせるな」
追い打ちをかけられ、背中を冷や汗が伝った。


「やはり外で見る方が美しいですね」
「空気が冴えてるからな」
戸外に置かれたテーブルから取った物を口に入れ、うん、旨いと苑田にも手渡す。
「本当だ」
そのテーブルにとどまり二人であれこれと食べていると、背後に衣擦れ。
「男と暮らしておるとはの」
ぴく、と手が止まる苑田。
「ネットで流せば面白かろう」
「やったら、俺はあなたを許さない」
静かな反撃に、老人の方がたじろぐ。
「やりたいなら、やればいい。俺は守り抜くだけだ。
そして、あなたが謝っても許さない」
背中を見せたままバッサリ切り捨て、
「俺はもういいです。どうします? 」
向かい合う香川に問いかける。
「そうだな、戻ろうか。やつの顔は立てた。義理も無い。飯も酒も旨かった。
好い気分でいるところを台無しにされたくない。

爺さん、野暮はするな」
老人の背後で不穏な気配を漂わせる男を目で射抜き、苑田を促した。

◇  ◇  ◇


部屋へ戻り、鍵をかけた途端、苑田が足をもつれさせふらつく。

「どうした? 」
「ははっ、ここまで、よく保ったと思って。・・あの人、ただの老人じゃなかった、ですね」
「恐らく、ここの主人だろう」
抱きとめた香川に凭れた苑田が、震える。
「すぐ、叩き出されるかもしれませんね。 ですが、許せない事だってあります」
「おまえがそう思うなら、やり通せ」
「・・香川さんが抱きしめてくれたら、出来そうです」
「それだけでいいのか? 」
「力をください。 俺はさっき、使い果たして・・、明日出会ったら、負けてしまいそうなんです」
「そりゃ、困るな」
スーツは脱げ、と笑いを含んだ声で言い、釦(ボタン)に指を伸ばす。
「します」
だが、震えが治まらず手く出来ない。
「してやろう」
はい、と頷く。自分が思う以上に消耗したようだ。






にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ




ssもの

中秋の名月を見に -3


シャワーを浴びて備え付けの寝間着に着換え、部屋に置かれている酒で胃を温めていると、ノックがした。
香川が立ってドアを開ける。高松だ。
「ちょっと、出てくれ」
「ああ」
「香川さん? 」
「高松だ。部屋に居ろ」

「おまえ、やったそうだな」
顔が厳しい。
「佐々木翁(ささきおう)に呼び出された」
「佐々木・・・。あの、爺さんか」
「こっちじゃ影のドンだ。
おまえたち、何したんだ。 翁に『この二人はおまえの知り合いなようだが』って写真まで見せられたぞ」
「盗撮か。趣味が悪い」
「冗談言ってる場合か。俺ァ、組の援助と引き換えにおまえらを寄こせとまで言われたんだ」
睨み合ったあと、
「どうする? 売るか? 」
「馬ー鹿。するわきゃねぇ。 「揉めたんなら自分たちで解決してくれ」 て突っぱねてきたさ」
「さすが、若頭だ」
「誉めても手は貸さねぇぞ。
・・・それだけ、言いに来た」
表情は変わらないが、目の奥に苦悩が見える。
裏のつながりで波風を立てられない高松が、友人を助けられない、ことと次第では切り捨てなければならないと悩んでいるのだ。

「心配するな。生きて帰るさ」
「香川・・」


部屋へ戻ると暗くなっていた。ベッドから寝息が聞こえる。
「・・よく寝てる。
俺より度胸があるな、おまえは」
高松に言われて、少しびびったんだけどな。 と苦笑して、眠っている苑田を起こさないよう横へ体を入れる。
「・・・・ぅ・ん・・~~」
気配を感じたのかもぞもぞ動き、香川の方へ身を寄せてきた。
「寝てろ」
囁き、頬にかかった髪をそっとかきあげる。
触れるだけのキスを額に落とすと、仄かに笑みを浮かべた


翌朝。
食事を取りに行こうとドアを開けた廊下に、
「おまちしておりました。どうぞこちらへ」
慇懃に頭を下げる男が一人。

案内されたのは二階のサンルーム。
「やっぱりあんたか」
「ここからはよい眺めでの。連れはどうした」
香川しかいないのを不審に思い問う佐々木翁へ、
「名指しも無かったし二人来いとも言われてない。待たせていた男が気の毒だから俺が来た」
しゃあしゃあと言う。
眉を寄せた佐々木だったが、
「まあいい。おぬしとも話がしたかったでな」
パンを手に取る。 佐々木が口に入れるのを見て、香川も手を伸ばした。
「・・用心深いの。毒など盛っておらん」
「用心は必要だ」

食事は、満足できるものだった。
「良い紅茶だ。セカンドフラッシュか」
「アフリカ、ブルンジ共和国と言う土地のじゃ」
「ほう」
正当な作法で紅茶を淹れる香川に驚き、目を細める佐々木だったが、
「取引は」
「しつこいぞ。俺もあいつも個人だ。それに、高松まで引っ張り込むな」
「ここから生きて帰りたくないのか? 」
「帰るさ。必要なら爺さんを盾にして」
言うなりテーブルクロスを引き抜き投げつける。
「うおっ」
予想外に反応が遅れた佐々木翁たち。
香川は素早く老人の背後に回り、側に付いていた男に蹴りを入れるとバターナイフを取った。
「爺さん、俺たちはあんたの月見に呼ばれた客だ。その客に無理を吹っ掛けるたァ、どういうことだ。いい加減にしろッ! 」

「香川! 」
「香川さん! 」
「来るな! 」

一気に緊迫したサンルーム。 最初に動いたのは、部屋の片隅に置いてあるバスケットだった。
「みゃーぉ~~」
ぱたっと蓋が開き、中から猫が顔を出す。くるりと周囲を見回し、大きく欠伸すると、ヒョコッと前足を出して出てきた。
場の空気など知らん顔で伸びをし、すたすた老人の横へ行き、すり寄る。見上げて、みゃあ、とまた鳴いた。

くくっと苑田が笑う。
まっすぐ猫のそばへ行きしゃがみ込んで頭を撫でるとまた鳴き声をあげ、もっとしろとばかりに頭を手に押し付ける。
「可愛いですね。何かあげてもいいですか? 」
「・・・ああ」
老人の言葉に、じゃ、と立ち上がってチーズを取り前に置くと、匂いを嗅いだ後食べ出した。


「・・何で来た」
憮然とする香川。
「香川さんを呼びに」
「そろそろ帰る時間だしな」
近付きながらほかの客も帰りだした、と高松が外を指さす。
「苑田さんが、『香川さんだけ呼ばれた』と俺を探しに来たから、この家の人間に聞いて、案内してもらったんだ」
取り込み中だったみたいだな。 
目だけで聞く高松に、
「爺さんに言い聞かしてたところさ。客にいちゃもんつけるもんじゃ無い、ってな。支度が出来てるなら、帰ろうか」

「待て」

「佐々木さん」
佐々木翁の制止に苑田が答える。
「中秋の名月の月見に呼んでいただき、ありがとうございました。久しぶりにゆっくり月を見ました。食事も、たいへん美味しかったです。
お礼を言いたくて、高松さんと一緒に案内してもらいました。

これで帰らせていただきます。色々、ご馳走さまでした」
ではこれで、と姿勢をただして一礼する。
目をしばたたいて苑田を見上げた佐々木。にこりと笑った苑田を凝視し・・。
「また、会えるかの? 」
「よろしかったら、名刺をお渡ししましょうか? 」
「・・・もらおう」



三人が帰り、穴が開いたような空間に佐々木は座っていた。テーブルは片付けられ、膝の上では猫が丸くなり毛づくろいをしている。
「翁、どうかなさいましたか? 」
苑田の名刺を、一度しまった袂から取り出し眺めている佐々木に、蹴り飛ばされた付き人、阿部が声をかけた。
「この男・・。‘あさひ’を手懐けて帰るとは」
「そうでしたね」
人見知りするはずの猫、あさひが、苑田には自分から甘えていた。
「あれは、天性のたらしかもしれん」
「お気になりますか? 」
そうよのう・・。 ますます気に入った。あの、三人。

呟きは佐々木の口の中で消えたが、 もし香川、高松、苑田に聞こえていたら、どう答えただろうか。




にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ



雑談のビックリ箱

雑談のビックリ箱その107

はじめに。  みなさま、本当にありがとう! 心からお礼申し上げます

先週入院のお話をしたところ、本当にたくさんの激励の言葉をいただいてビックリするやら嬉しいやら。
こんなにたくさんの人と繋がっていたんだなぁ、と感動しました。


そこで。
もうちょっと詳しくお話しようかと。  あ、いらないわ、という方はごめんなさい。

入院(手術も)が決まってから、入院のご案内・なるパンフレットをもらいました。 中には書類が色々。
必要な物品やら承諾書やら。チェックしたり名前を書いたりしてました。 ・・自分の名前が毎回違って、だんだん下手くそに見えてきてちょっと落ち込み。 半分本気でフルネームの判子、作りたくなりました。

変わった?準備は、筋トレ。
なんでも手術前に筋肉をつけておいた方が良いのだそうです。  はいはいと言われた通り、車で5分の所にあるスポーツクラブに入会。
でもー、もうちょっと痩せてから行きたかった。。

ジムで筋トレ、プールでウォーキング。
そして入会しての楽しみ♪ お風呂です! 日替わりでハーブなどの入浴剤が入っていてお肌にも体にも癒し~。

頑張りました。翌日は休まないとダメなやわな肉体を痛感しつつ(笑)、あと少し、と通ってます。
自分のことだけを考える機会、今度はいつ巡ってくるか判らないので大変だけど楽しもうと思います。


皆さまも人間ドックなど、チャレンジなさってみても良いかもしれませんよ?  





にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ






『耳から始まる恋愛』

『耳から始まる恋愛』*カラコンと名前-28

これから少し、病院の話になります。
ただ、お話なのでリアルと違う点もあります。 どうぞご了承くださいませ。




病室へ行くエレベータを降りたところで、釘を刺された。
「いい? 優奈はまだショックから立ち直ってないんだから、目の事、あんまり言っちゃだめよ? 」
「わかった」

優奈ちゃんは同室の人が四人いる大部屋に居た。窓から外が見えたが、それぞれのベッドを区切るようにカーテンが引いてある。
名前を確かめて、入ろうとした。

「わ・・! 」
「あら、ごめんなさい」
出会いがしらにぶつかりそうになってのけぞる。そのおばさんは、片目に金物(かなもの)の、小さな穴のたくさん開いた眼帯・・、のようなものを当てていた。
「優奈ちゃんのお見舞い? 」
「あ、はい」
「ふーん」
おばさん、意味ありげな顔でおれをじっと見ると、
「頑張ってねー」
と外へ出ていく。

なんだろ? 

「誰ですか? 」
「優奈ちゃん? 」
カーテン越しに会話が聞こえたのか、声がした。
「・・・智さん・・?! 」
顔を覗かせると、優奈ちゃんが驚いて両手を口に当てている。ベッドの横まで行って、
「ごめんね、今までお見舞いにも来なくて。
連絡が無かったの、気にしてたんだけど、まさか病院に入院なんて知らなくてさ。
お袋に怒られて初めて知ったんだ。
遅くなって・・、ごめん」
見舞いの、何も持って来てなくて、それもゴメンと謝ると、
「いいえ。
私の方こそ知らせなくて、ごめんなさい」
「謝らなくてもいい。  それで、目を悪くしたんだって? そう聞いたけど」
「・・・はい。ちょっと・・・」
「今は? もういいの? 」
「先生が、早く見つかったから大丈夫だろうって・・・」
「そっか」

それなら良かったと、ほっとする。


↓ランキングに参加しています。ポチッとしていただけると励みになります♪
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ

プロフィール

ますみ

Author:ますみ
FC2ブログへようこそ!

最新トラックバック
フリーエリア
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR
ようこそいらっしゃいました!
よろしければポチっとしてください(ペコ)。

Page Top