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『プリズム』

『プリズム』17*あなたに告げる。-4

苑田家の悲しい過去を聞かされた新井くん。




戻ってきた和美さん、テーブルを拭いてコップを置き、また前に座る。
「・・・・ねえ、崇さん。
世の中はあなたが思っている以上に優しくないわ。それでもその想い、貫きたい?」

さっきまでと声音が違っている。
「私は隆裕さんが亡くなったあとの事を知ってるの。
こっちの親戚はほとんど事情を知らないけど、向こうのお家へ謝りに行っては罵られて帰って来たわ。静代も、浩司さんも、範裕さんもやつれてしまって、私は見かねて強引にこの家に来た。
心労で静代は亡くなり、浩司さんもこの間まで引き摺っていたのよ。

私はふたりに二度とあんな思いをさせたくないの。
・・・それでも?」

突き付けられた事実の重さと、諦めろと諭されているような声に、決心が崩れそうになる。
中島部長や、ひろさん本人から聞いたより哀しい話、それに、和美さんは本当にひろさんたちを心配している。

「ごめんなさい・・。それでも俺、範裕さんが、好きです。」
「・・ちゃんと振られないと、諦められないのね?」
「はい。」

「しょうがないわね。。ちょっと、待ってなさいね。」
また大きくため息をつくと、和美さんは立ち上がった。

しばらくして戻って来た時、地図帳と、筆記具を持っていた。テーブルに地図帳を広げ、略図にして写し取ると、ある場所に印をつける。
「ここが、浩司さんと範裕さんがお墓参りに行った場所。行って、答をもらっていらっしゃい。そして、取りあえず一緒に帰ってくること。」
驚いて目を合わせると、
「そこまで決心しているなら、結果は見届けないといけないでしょ?」
ほら、ぐずぐずしない。すれ違いにならないようにするのよ。
と急かされ、慌てて麦茶を飲んで家を出た。



「お墓の前で聞いて来い・・って、いう事なのかな・・・」
地図を片手に道を辿る。


和美さんの話は、重かった。
今も胃のあたりに溶けない塊りがあるみたいで、足まで重くなる。

途中迷って、目的地に着いた時には汗が流れていた。
「ここ、か・・。」
ふう、と一息入れて山門をくぐり、三枚目の地図を取り出す。それは、ひろさんの家の、お墓の場所を示したものだ。
お寺を回った裏手に墓地がある。回りかけて、お花や桶*(閼伽桶:あかおけ)、線香なんかが置いてある小屋のような場所が目に入った。
「持っていってもいいのかな?」
立ち止り、覗きに行く。

使い易いようにとそれぞれが丁寧に纏められ、脇にお金の入ったお盆があった。
「幾らくらいおけばいいんだ・・・?」
呟きに、近付いてくる足音が重なる。振り向けば父子(おやこ)がすぐそばに来ていた。

「あの・・」
「はい?」
見知らぬ人物に声をかけられ立ち止まる男性に、手をつないだ子供が父親を見上げ、俺を見る。にこっと笑って、あいさつ。
「こんにちは。」
「こ、こんにちは。」
「お墓参りの方ですか?」
「は、あ、まあ・・そうです。・・・あなたも、ですか?」
「はい。」
「そしたら、ここにあるものって、いくらぐらいかご存知ですか?」
「さあ、それは・・。気持ち、でいいのではないですか。私も適当ですから。」
そう言って、その人は一番大きい硬貨を出してお盆に置き、花と閼伽桶を持つ。
「では、お先に。」
「おさきに。」
会釈して、真似た子供へ笑顔を見せて墓地へ歩いて行った。

俺も同じようにして二つを持ち、お墓を探す。
「あ・・・」
範裕さんが見えた。水がこぼれない程度に早足で近付く。


*閼伽桶(あかおけ)・・・お墓参りなどで使う、持ち手のついた水を入れる桶。柄杓(ひしゃく)付き、です。


 新井くんの思いの強さは和美さんに通じたようです。
そして何と、墓地で再度の告白となります。。 苑田のお母さんとお兄さん、見守ってくださいね。


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コメント

No title

和美さんの心情を思えば和美さんの味方につきたいと思う。

新井君の事が気に入っているから、
なんの障害もなければ応援したいだろうし、
かといって、実際に辛い出来事を経験しているからこそ
同じ辛さをあじあわせるくらいなら
今は辛くてもスパッと引き裂いた方が二人のためになるのではないかと考えてしまうでしょうし。。。

でもやっぱり新井君の味方にもつきたい!

新井君にこの現実を背負えるだけの男気を見せられるかどうか
それはまだ未知数なものであるけど
『スキだからこそ』を貫けるように頑張ってなって欲しい!
(スキだけじゃどーにもならない現実もあるのだけれど...)

なんて八方美人なワタシ...

今頃和美さん、頭抱えてるんだろなぁ…
歓喜か、玉砕か?!
運命はどっちに転ぶかっ?!
墓前に手を合わせ、
男らしくお伺いと決意表明してみるのだ!m(。≧Д≦。)m

Re: No title

うさメリさま。 ようこそ。

>和美さんの心情を思えば和美さんの味方につきたいと思う。

・・その通りです。゜傷つくのは、自分達だけでたくさん’ と、和美さん思っているでしょう。新井くん一人っ子なのも、世の中の普通が一番安全なのも知ってる。
同じ会社にいるから辛いかもしれないけど・・・、と考えたり。


>でもやっぱり新井君の味方にもつきたい!

もちろんですっ!ここはBL(あ、ML?)ですもの。味方して頂かないと(←ヲイ)新井くん凹みます~。
好きだけじゃどうにもならない。それは薄々感じてると思います。でも今は範裕さんが大事。あとのことはあとで考える!な新井くんです。


>なんて八方美人なワタシ...

そ・・んなことっ(スミマセン、ちょっと笑ってしまった・・)! 応援したい人を応援できるのがイイトコロではないですか。
和美さんも新井くんも、苑田だって中島部長等々の皆さんも判ってますから大丈夫です、はい。
心おきなくエールを!


>男らしくお伺いと決意表明してみるのだ!m(。≧Д≦。)m

「うさメリさん・・(ジーン)。はいっ、いってきます!」
あ、でも、来週になると思います・・・。




ありがとうござました。

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