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『プリズム』

『プリズム』6*焼き鳥屋と二人の実家ー4

「そうだ。・・・苑田さん、山って好きですか?」
「山?」
いきなり話題が変わる。酒飲みの話は大体こんなものだが、
「山っていいんですよー。空気も違うし、頂上着くと、達成感あって」
一緒に行きませんか~、行きましょーよ。と子供のおねだりよろしく続ける新井を微笑ましく見ながら思う。
(山、か。俺には縁の無い場所だ)
「そんな事を言うけど面白いのか?」
「はい、面白いです。・・途中、苦しかったり辛かった、り、・・っく、しますけど。・・特にな・かまなんかと・・、行くと、さいこ(最高)・・・で・・っす。」
しゃっくりしながら力を込めて言う。
「俺は・・、小学校の遠足で行ったくらいだ。」
「じゃ!今度行きましょ・・・・」
俺、案内しますから・・、と喋る続きがだんだん小さくなる。
「新井?」
ゆっくりテーブルに前のめりになり、見れば瞼も閉じて、寝落ちしていた。

「・・・・・。焼き鳥屋から数えてビール四本、か。まだまだだな。」

気持ち良さそうに寝息を立てているのを見て、自分の部屋へ帰らせる事は諦めた。幸いスーツは汚れていないし、Yシャツも洗っておけば乾くだろう。とにかくベッドまで移動させようと肩を入れ、声をかける。
「ほら。寝るならトイレくらい済ませてからにしろ。」
「ふぁ・・あい、  そのらさ・・・」
夢うつつになっている新井を何とかトイレまで連れて行き、用を済まさせる。
「・・っとに、酒も鍛えないと営業は、困るんだぞ。」
「・・・・い、・・すいませ・・」
「・・・っわ」
寝ぼけたまま謝ろうとした新井が頭を下げた拍子に支えていたバランスが崩れ、ベッドに縺れるように倒れ込んでしまう。

「あらい。どいてくれ。・・・・・重い。」
年下の男の全体重がかかって、身動きできない。これが床ならこぶか痣だ。ベッドでよかったと思いながらも呼吸が少々苦しい。

「んーー・・・」
「新井、たのむ。」
ポンポン、と背中を叩くと、ようやく意識がクリアになってきたらしく、もぞもぞ動きだす。
「あ・れ・・?そのだ、さん。なんでそんなとこに、いるんですか・・・?」
「おまえに押し倒されたんだ。重いからどいてくれ。」
「ぁい。ちょっ・・ろ、・・・って・・・」
酔っていて、頭も口も正常に回っていない新井が動いてくれるのを待つ。
不意に、目を大きく見開いた。

「なんだ?」
覗きこまれて問いかけると、
「そのださんて・・・、きれいですね・・・」
そんな、返事に困る事を言ってくる。
「目も・・、口も色っぽくて・・・」
「新井?なに・・・・!」
抵抗する間もなく唇が塞がれる。次(つ)いで抱きしめられそうになるのを両手で新井の体を押し上げるようにして、やっと阻止した。

「・・・・・。気がすんだか?」
ただ重ねるだけの口付けは不快ではなかった。
新井は色事に関してはほとんど経験が無いようで、息苦しくなったのかすぐ唇を離す。そして、
「その・・・さん、くちびる、やーらかい・・・」
うっとり言われ、恥ずかしくなる。
「よかったな。だけどおまえは重い。どいてくれないと息が出来なくなる。」
「へ?・・・あ」
やっと状況を理解してくれたらしい。のそのそと体を動かして離れてくれた。
深呼吸しながら横になったままでいると、
「そのださ・・・」
隣で寝転がり、今度は俺の背中に抱きついてくる。その、子供っぽい仕草になぜか、ぞく、とした。

「放せ。まだ片付けが残ってるんだ。」
情動を抑えて言う。
「・・・・い・・」
一文字だけ聞こえ、後は意味不明な音がむにゃむにゃと続く。仕方なくかぶさっている腕をどけ、起き上がった。
ふう、と息をつく。
片付けを終え、寝室に戻る。 新井はとっくに夢の中だ。
「幸せそうな顔して」

既視感(デジャヴ)があった。 昔、こんな風に笑っている寝顔を見た記憶が・・・・・。

(隆裕)

思い出した途端、胸が苦しくなる。

次回、苑田の回想が入ります。お兄さんの、隆裕さんのことが出てきます。
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コメント

新井クン、また撃沈しちゃいましたね(^^;
確かに営業さんはお酒も少しは強くないと…それかまるっきりのゲコか。ゲコに無理矢理飲ませるのは減ってきましたからね…危険だから(*_*)

でも前回はトイレとお友だちになっていたから、今回は少し進歩したかしら?(笑)
苑田さんの唇も奪ったし♪フレンチ・キスだけど(^m^)

泥酔しちゃ出来るものも出来ませんからね(笑)
強くなれないなら自分のペースを覚えましょう♪一緒に飲みに行きたいです、新井クン(*^^*)


爆睡じゃん(爆

ますみ様 こんにちは(〃⌒ー⌒〃)ゞ

(*≧∀≦*) 新井君の言動可愛い♪
しゃっくり迄出ちゃうって
浮き足だっしゃった(笑)

しゃっくりって、赤ちゃんがえりの一種って聞いたことありますヨ

瞬間移動に一瞬記憶喪失
気づけば目の前に美味しそうな口唇 チュパッ

気がすんだか?と言われたって
どこまで自覚してることやら(^o^;)

にしても、よくよく考えれば
お酒に酔って、絶好のチャンスを逃したって事ですよねぇ。。

苑田君も、ちょっとエチな思いもあった訳だし…

ホント!営業も恋愛も、
ある程度はお酒飲めないと損をするかもですね♪(笑)

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Re: タイトルなし

坂崎若さま。 ようこそ。

>新井クン、また撃沈しちゃいましたね

ええ。もう少し飲めるといいんじゃないかと思います。それとも、苑田といるとテンションあがるんでしょうかねェ・・。


>苑田さんの唇も奪ったし♪

腐腐。ですが本人覚えているでしょうか(?!)。翌日、全部思い出せるかなあ?
苑田の方は知らん顔出来ますけど。


>強くなれないなら自分のペースを覚えましょう♪一緒に飲みに行きたいです、新井クン(*^^*)

それはそれは。 新井くん、よかったね。飲み方意外にもアレコレ教えてもらえそうだし、メアドとか教えてもらってネ。


ありがとうございました。

承認待ちコメント

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Re: 爆睡じゃん(爆

うさメリさま。 ようこそ。

>瞬間移動に一瞬記憶喪失

くすくす。お酒飲むとそんな風になる人、いますよね。記憶が無い方がいい場合もあるようですが、今回の新井くんはどうでしょうか?
しゃっくりしながらの会話、覚えていたら恥ずかしいかも。笑。


>お酒に酔って、絶好のチャンスを逃したって事ですよねぇ。。

結果から言えばそうですネ(ププ)。ですが、楽しみは後になる方が・・・です。
しばらくは小学生並みのお付き合い(?!)。

坂崎若さまから、新井くんへ飲み友コールがありましたが、どうしたやら・・・。


ありがとうございました。

Re: これだめなんだぁ…

うさメリさまへ。

あの・・。3通無事届いてましたよ?
代表で1つOPENにしましたけどこちらでは受け取れています。 不思議・・・・。
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