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『プリズム』

『プリズム』6*焼き鳥屋と二人の実家ー7

日曜。

「あっ、苑田さん。」
うれしくて、つい手を振って呼んでしまう。
「わざわざ来なくてもよかったのに。」
改札を出てきた苑田さんは、待っていた俺を見て笑う。

今日は私服で、三色ストライプのシャツ(トリコロールカラ-・ピンストラ
イプのデザインシャツです)、スラックスで、紙袋を提げている。お洒落だ
なあ。俺なんかポロシャツにGパン。

「まあ、いらっしゃい。」
笑顔になるおふくろへ、
「初めまして。先日は電話で失礼しました。苑田です。・・・これ、少しです
が。」
挨拶して紙袋を出す苑田さん。
「あらそんな。・・・では、いただきますね。どうぞ中へ。」
おふくろは遠慮せず受け取り、中身を見て、もう一度笑う。そして、廊下にズラッと並んだ本棚に目を向けている苑田さんに気付くと、
「崇が話したんですか?」
悪戯っぽく聞いた。
「はい。・・本当に多方面なんですね。」

ハードカバーから文庫本まで、それなりに高さと厚みを揃えた本がずらりと並んでいる。
「主人は、そのうち床が抜けるぞ、って言うんですけど。」
苑田さんも本が好きそうだ、と見てとったおふくろ、にこにこ続ける。
「崇も小さい頃はよく取り出して読んでたのに、今は見向きもしないで。苑田さん、お好きでしたら後で本の話でもしませんか?」
「はい、よろこんで。」
すっかり気に入られたのは、リビングに落ち着いて、出されたケーキ皿と紅茶カップのセットを見ても分かった。家で一番高価(たか)いものだったから。

そしておふくろは本当に苑田さんを一人占めして本の話を始めてしまい、そっちのけにされた俺は面白くない。

「なんだよ、俺だって苑田さんと話したいのに。」
キッチンでぼやいていると、デニムのエプロンをつけ、大工仕事の途中の父さんが入ってくる。
「どうした?崇。今日は人が来るって駅まで行ったんじゃないのか?」
「あ・・、父さん。何か作ってたの?」
「ああ。母さんに頼まれて脚立を作っていたんだが、サンドペーパーが無くなって。」
言いながらリビングを覗く。
「・・来てるじゃないか。あの人か。」
「そう。おふくろが一人占めしてるんだ。俺だって話したい事あるのに。」
つい口を尖らせると、ははは、と笑って、入っていった。

「母さん。こっちにも話をさせてくれ。」

「あ、はじめまして。苑田です。お言葉に甘えてお邪魔しています。」
「こちらこそいつも崇がお世話になっています。」
「・・あの、もしかして木工のお仕事されていましたか?」
「分かりますか?ちょっと、脚立を作ってまして。
ああそうだ、足りないものがあって今から買いに行くんですが、苑田さんもどうですか?」
立ち上がって挨拶する苑田さんを、父さんも気に入ったようで一緒に行こうと誘っている。
「あらお父さん、私が話をしてるのに。」
「母さんは食事の支度があるんじゃないかい?」
「え?・・まあ、こんな時間。苑田さん、お昼食べていくでしょう?」
「あ、いえ、そこまでは・・・」
「いいじゃないですか。他に予定でも?」
「ありませんが・・・」
「でしたらどうぞ。こんな時にしか買わない食材があるんです。」
「食べないともったいないですよ。」
二人掛かりで説得し、とうとう、
「・・・・ごちそうになります。」
苑田さんと昼食、になった。  やった!

メニューは、母さん得意のちらし寿し。確かにいつもより豪華で旨かった。デザートは苑田さんが持って来てくれた果物だ。
食事が終わる頃には苑田さんも寛いでいて、帰る頃には、
「また来てくださいね、範裕さん。」
「今度範裕くんが来たら、一緒にやってみたい物があるんだ。楽しみにしているよ。」
というぐあいに、苑田さんは名前で呼ばれていた。
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コメント

良い感じ

苑田さん なんか家庭的な暖かい味が少なそうだし…
少しづつ々 あるべき感情が溢れはじめたらいいな

ちらし寿司 友人が来ると定番でした(笑)懐かしい~
満月は見られませんでしたが、ホッコリしました

いい雰囲気

お父様とお母様の両方に気に入られてましたね。
そういうオーラを醸し出しているんですかね?

>三色ストライプのシャツ(トリコロールカラ-・ピンストラ
イプのデザインシャツ

こんな描写好きです。
文庫本読むとかなり詳しく着ているファッション書いてありますよね。
そんなところ大好きなんです。

BLで私の好みはストレートチップの靴とピークドラペルの上着です。

♪チ~ラシ~寿司な~ら♪

ますみ様 (●´∀`)ノ*【こ】*【ん】*【に】*【ち】*【ゎ】*

苑田くん、帰りには名前で呼ばれちゃう程ここでも営業力発揮!?
んな訳ない(笑)

ふと、苑田くん、訪問販売しても、物凄い成績獲れそうと思いました。

顔は良いし、人当たりも良いし、話術も長けて。
インターフォン越しの顔から開門okでしょ(笑)

普段息子では打っても靡いてこない会話でも
話上手、聞き上手な苑田くんに
新井チチハハは嬉しかったんでしょうね!(^o^)

何気に新井チチ、次回の予約みたいなのしてるしww

新井君は苑田くん取られて不満の様子だけど、
酔った勢いでキッスしてるの覚えてるのかなぁ…?

私も新井家特製チラシ寿司
ご相伴にあづかりたーーい!

Re: 良い感じ

nichika さま。 ようこそ。

>苑田さん なんか家庭的な暖かい味が少なそうだし・・・

そうですね・・。大学時代にお兄さんが不慮の事故・で亡くなってから、家庭の味とは縁遠くなってます。
和美さんはいますが叔母さんですから。


>ちらし寿司 友人が来ると定番でした(笑)懐かしい~

作り方難しくなく、見た目豪華。ご馳走の定番です。 新井母、奮発して作った(アワビなぞ入れちゃいました)ので、きっと美味しかったはずです。


>満月は見られませんでしたが

まあ、nichikaさまもでしたか。。私も淋しくTVやネットの月を見ました。
新潟では、所により’ハート形’の月だったとか。  次回に期待しましょう。


ありがとうございました。

Re: いい雰囲気

蝶丸さま。ようこそ。

>そういうオーラを醸し出しているんですかね?

それもありますが、新井くんの家の雰囲気、以前の苑田の家と似ているんです。馴染み易かったのでしょう。
’営業’ではない顔で笑っています。


>読むとかなり詳しく着ているファッション書いてありますよね
>ストレートチップの靴とピークドラペルの上着

う・・。これからも頑張りますっ。 でも、身だしなみに気を使う男性って全体的にポイント高いです。苑田、成績もいい営業マンですから。 いつかご希望のスタイルさせてみますね。


ありがとうございました。

Re: ♪チ~ラシ~寿司な~ら♪

うさメリさま。 ようこそ。

>訪問販売しても、物凄い成績獲れそうと思いました。

確かに。ただ、本人にその意思全くありません(もったいない・・)。顔だってほとんど自覚なし。逆に、
「もう少し男っぽい顔が欲しかった」(苑田曰く)だそう。
かといって、石原某天気予報士みたいな顔だと主腐は引いちゃいますよ~~。笑。


>新井チチハハは嬉しかったんでしょうね!(^o^)
 何気に新井チチ、次回の予約みたいなのしてるしww

はい。新井くん一人っ子なのでお兄さんが出来た感じ(新井より5才年上)だと思います。


>酔った勢いでキッスしてるの覚えてるのかなぁ…?

そこまで思い出していたら拍手ものです(笑)。苑田には、’酔ったらキスする奴’と覚えられていることでしょう。


>新井家特製チラシ寿司

新井くんのお母さん?いかがです?
「お客様が来るのはうれしいですからいつでも。とはいえ、やはり急に来られるとちらし寿しにはならないので、是非ご一報を。
苑田さんが来た時 ・・ですか?鯛の昆布〆、鮪のづけ、海老、金糸卵に人参や椎茸の甘煮、、煎りゴマ、あとは針生姜・・、アワビ、だったかしら。気持ちいいくらい食べてくださって、『美味しい』って誉めてもらって。しばらくうきうきしてました♪」

だそうです。 私も食べに行きたい・・・。


ありがとうございました。

No title

フフv-290新井ママ 嬉しそう
美味しく食べてもらったら、
おもてなしした甲斐が有るってもんですよね!!

それにしても、メチャ豪勢なチラシ寿司(@_@)
鯛の昆布〆?アワビ??
東京で食べたらどれぐらいするんだろ…(下世話)

新井ママ~ 宅配ナウ

Re: No title

うさメリさま。 ようこそ。

>フフ新井ママ 嬉しそう

ええ、息子の先輩がイケメンで、話も合う。となれば出し惜しみしません。笑。
あ・・、東京かー。そちらでは高いでしょうね・・。
こちらは時期によって多少値段が変わります(旬ならちょっとお安いです)。

宅配は・・・。
「真空パック出来ないので、無理です(笑)。」
だそうです(シュン・・・)。


ありがとうございました。
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